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ノワールナイト  作者: Dai
第二章 地獄のデビル編

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第22夜 悪魔の罠

昼。

蓮と美咲は、街を歩いていた。

二人で並んで歩くのも、最近ではすっかり自然になっていた。

「ねえ、蓮くん」

「ん?」

「この前行ったお店、また行かない?」

「ああ。あそこか」

「うん。今度はちゃんとデザート食べたい」

美咲が笑う。

蓮も小さく笑った。

デビルの事件が続く中でも、こうして美咲と過ごす時間は、蓮にとって大切なものになっていた。

だが――

蓮のスマートフォンが震えた。

画面を見る。

相馬からの連絡だった。

蓮の足が止まる。

「どうしたの?」

「……ごめん、美咲さん」

「え?」

「急用が入った」

「また……?」

蓮は答えなかった。

それだけで、美咲には分かった。

「……そっか」

「本当にごめん」

「ううん。気をつけてね」

美咲は笑ってみせた。

蓮はその顔を一瞬見つめる。

「……ありがとう」

そう言って、蓮は走り出した。


同じ頃。

都内の銀行。

「動くな!」

白い悪魔のマスクを被った男たちが、銀行内へ銃を向けていた。

「金を出せ!」

銀行員たちが震えながら指示に従う。

数分後。

男たちは現金の入ったバッグを抱え、銀行から飛び出した。

「走れ!」

待機していた車へ乗り込もうとする。

その時だった。

一台のバイクが、遠くから走ってきた。

「……あいつらか!」

蓮だった。

今日は休みの予定だった。

だが、銀行強盗がブラックレジデンスの構成員だと知り、急いで相馬モータースへ向かった。


相馬モータース。

蓮は地下整備場へ駆け込んだ。

「相馬さん!」

「来たか、蓮」

相馬が地図を広げる。

「強盗犯はここを抜けている。警察も追っているが、まだ距離がある」

「分かった」

蓮はナイトスーツへ手を伸ばしかける。

だが、手を止めた。

昼間。

この時間にノワールナイトとして動けば、目立ちすぎる。

ナイトバイクも同じだ。

蓮は普通のバイクへ目を向ける。

「……これ、借りる」

「ああ」

蓮はヘルメットを被った。

「無茶するなよ」

「分かってる」

バイクのエンジンをかける。

そして――

蓮は強盗犯の後を追った。


しばらくして。

強盗犯の車は、人通りの少ない道へ入っていった。

蓮は距離を保ちながら追跡する。

やがて車が止まった。

男たちが車から降りる。

そして、古びた建物の中へ入っていった。

蓮はバイクを止める。

ヘルメットを外し、建物を見上げた。

「ここが……アジトか」

蓮はスマートフォンを取り出す。

「相馬さん」

『蓮か』

「強盗犯が古びた建物に入った。アジトの可能性が高い」

『本当か?』

「ああ。場所を送る」

蓮は位置情報を送信した。

「俺は一度戻る」

『分かった』

蓮はバイクへ乗り、建物を後にした。


夜。

相馬モータース。

地下整備場。

蓮はナイトスーツを身につけていた。

黒いマスクを装着する。

そして――

ノワールナイトとなった。

その頃。

神崎たちも現場へ向かう準備をしていた。

「アジトの場所が分かった」

背後から声がした。

神崎が振り返る。

そこには、ノワールナイトが立っていた。

ノワールナイトは地図を差し出す。

「ここだ」

神崎が地図を受け取り、場所を確認する。

「……分かった」

ノワールナイトはそのまま立ち去ろうとした。

「待て!」

神崎が呼び止める。

ノワールナイトが振り返った。

「また一人で乗り込むのか?」

「ああ」

「俺たちも後から行く」

「……分かった」

ノワールナイトはそれだけ言うと、建物の外へ出た。

そして――

屋上から夜の街へ飛び降りた。


古びた建物。

ノワールナイトが中へ入る。

暗い廊下。

足音だけが響く。

やがて――

広い部屋へ出た。

そこに、一人の男が立っていた。

その隣には、数匹のドーベルマン。

「……デビルか」

男がゆっくり振り返る。

「待ってたぞ……ノワールナイト」

デビルが笑う。

そして――

指を鳴らした。

「行け」

数匹のドーベルマンが、一斉に飛びかかる。

「!」

ノワールナイトは身をかわす。

しかし、一匹が腕へ噛みついた。

「ぐっ……!」

ノワールナイトは犬の身体を掴み、力任せに振り払った。

その隙に、デビルは上階へ走っていく。

「待て!」

ノワールナイトが追う。

だが――

階段の先から男たちが現れた。

金属バット。

鉄パイプ。

ナイフ。

「ノワールナイトを殺せ!」

男たちが一斉に襲いかかる。

ノワールナイトは拳を握った。

そして――

一人。

また一人。

襲いかかる男たちを次々と倒していく。

最後の一人を床へ叩き伏せる。

ノワールナイトは息を整え、さらに上を目指した。


屋上。

扉が開く。

ノワールナイトが姿を現す。

そこにはデビルが立っていた。

逃げ場はない。

ノワールナイトがゆっくり歩み寄る。

「お前を捕まえる……デビル」

デビルは震えた声を出した。

「ゆ、許してくれ……ノワールナイト……」

「……」

「お、俺が悪かった……だから……」

ノワールナイトは一歩前へ出る。

「許すつもりはない」

その瞬間――

デビルの口元が歪んだ。

「……なんちゃってな」

「ヒャハハハハハハ!」

デビルが大声で笑い始める。

「全く……まぬけな奴だ!」

「これで俺様を追い詰めたつもりか?」

ノワールナイトが構える。

「お前に直接伝えたいことがあってな」

デビルが両手を広げる。

「だから、ここまで来てもらったんだよ」

「……何?」

「こんな所がアジトなわけないだろう?」

「……なんだと?」

デビルは笑った。

「最大のテーマパーク……ドリームランド」

ノワールナイトの動きが止まる。

「今日は夜中まで開園するそうじゃないか」

「!」

「何をした!」

「爆弾を仕掛けた」

「……!」

「今から一時間後に爆発するよう、セットしてある」

ノワールナイトは時計を見る。

「ここからドリームランドまで急いでも……一時間はかかるんじゃないか?」

デビルが笑う。

「もう時間がないぞ?」

「こんな所で油を売ってる場合か?」

デビルはノワールナイトを指差す。

「早く行かないと――」

「子供や家族、年寄り……」

「多くの死者が出るな!」

「ヒャハハハハハハハハハ!」

ノワールナイトは拳を握りしめる。

「……くそっ!」

そして――

ノワールナイトは屋上から飛び降りた。


しばらくして。

神崎たちが建物へ到着した。

「ノワールナイト!」

神崎が屋上を見上げる。

「デビルは!?」

ノワールナイトが振り返る。

「今はそれどころじゃない!」

「ドリームランドが爆発する!」

「一時間後だ!」

「なんだと!?」

神崎が息を呑む。

「くそっ!」

神崎は部下たちを見る。

「急いで現場に向かうぞ!」

「神崎さん!」

「デビルはどうするんですか?」

神崎が叫ぶ。

「今は多くの人の命が優先だろうが!」

「……分かりました!」

神崎たちは急いで車へ乗り込んだ。

ノワールナイトもナイトバイクへまたがる。

エンジンが唸る。

神崎は二人の部下を振り返った。

「お前たちはここに残れ」

「はい!」

「建物内を捜索しろ。デビルがまだ潜んでいる可能性がある」

「分かりました!」

「ただし、見つけても無理に追うな。俺たちに連絡しろ」

「了解です!」

そして――

ノワールナイトと神崎たちは、ドリームランドへ向かって走り出した。


その頃。

古びた建物の屋上。

誰もいなくなった場所で――

デビルが一人、立っていた。

「ヒャハハハハハハハハハハハ!」

遠ざかっていくノワールナイトたちを見下ろしながら、高笑いを続ける。

「行け……ノワールナイト……」

「お前は、そうするしかないんだからな……」

デビルは楽しそうに笑う。

やがて――

建物の中から、神崎たちの部下が走ってきた。

「デビルはどこだ!?」

「探せ!」

二人の部下が建物内を駆け回る。

だが――

誰もいない。

「……いない?」

その時、一人の部下が床に妙な隙間を見つけた。

「ちょっと待て……」

床板を動かす。

ガコンッ――。

そこには地下へ続く階段があった。

「これは……隠し通路か?」

別の部下が階段を下りる。

長い地下通路。

そして、その先には――

建物の外へ続く出口。

部下が立ち止まる。

「……逃げられたか」

誰もいない地下通路に、その声だけが響いた。

そして――

ドリームランドへ向かうノワールナイトと神崎たち。

その先に待つのは――

史上最悪の事件だった。


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