第19夜 白い悪魔の取引
夜。
ノワールナイトは、一人の男を追っていた。
神谷大地。
昼間は弁護士。
だが――
夜になると、別の顔を見せる。
ノワールナイトはビルの屋上から、神谷の姿を見下ろしていた。
神谷は一台の車に乗り込む。
ノワールナイトは小型カメラを確認する。
「……また別の場所へ向かうのか」
画面には、神谷の移動経路が表示されていた。
ノワールナイトはスマートフォンを操作する。
「この数日……」
神谷が訪れた場所。
接触した人物。
車両。
すべてを記録していく。
そして――
「……ここだ」
神谷が向かった先。
街外れにある、古びた廃工場だった。
ノワールナイトは目を細める。
「何をしている……?」
数十分後。
ノワールナイトは、廃工場の屋上に立っていた。
下を見る。
工場の中には、複数の男たち。
そして――
大量の薬品。
小さな錠剤。
注射器。
スプレー容器。
「……やっぱりここか」
ノワールナイトはワイヤーを撃ち出す。
――シュッ!
工場内部へ降りる。
男たちが振り返った。
「誰だ!」
「お前……ノワールナイトか?」
「……」
そして、一人の男が殴りかかる。
――バッ!
ノワールナイトは拳をかわす。
そのまま腕を掴み――
――ドゴッ!
男を床に叩きつける。
「ぐあっ!」
次の男。
蹴り。
さらに一人。
拳。
次々と男たちが倒れていく。
その時だった。
「ノワールナイトか……」
声が響く。
ノワールナイトが振り返る。
そこには――
神谷大地。
「なぜあなたが、ここにいるんです?」
ノワールナイトは構える。
「例の薬を広めているのは、お前だな」
神谷は微笑む。
「……さあ?」
「答えろ」
「証拠でもあるんですか?」
ノワールナイトが一歩近づく。
その瞬間――
――シュッ!
神谷がスプレーを吹きかけた。
「……!」
ノワールナイトは咄嗟に腕で顔を覆う。
だが――
完全には防げなかった。
「……くっ!」
視界が歪む。
「何だ……これは……」
床が揺れる。
工場の壁が歪む。
そして――
聞こえるはずのない声が聞こえてくる。
『蓮……』
「……!」
父の声。
『正義を忘れるな』
「父さん……?」
目の前に、父の姿が見える。
「待ってくれ……!」
手を伸ばす。
だが――
その姿が突然消える。
「……!」
次の瞬間。
背後から衝撃。
――ドゴッ!
ノワールナイトが倒れる。
部下たちが襲いかかる。
「こいつをやっちまえ!」
「ぐっ……!」
蹴り。
拳。
ノワールナイトは必死に立ち上がろうとする。
だが、身体が思うように動かない。
「……くそ……」
その隙に――
神谷が出口へ向かう。
「お先に失礼します」
「待て……!」
ノワールナイトは手を伸ばす。
だが、神谷はそのまま工場を出ていった。
しばらくして。
ノワールナイトは、ふらつきながら立ち上がった。
「……はぁ……はぁ……」
視界がまだ歪んでいる。
「このままじゃ……」
ノワールナイトは天井を見上げる。
ワイヤーを撃ち出す。
――シュッ!
ワイヤーが鉄骨に引っかかる。
「……!」
身体を引き上げる。
そのまま屋上へ。
そして――
マスクを外す。
「……はぁ……!」
蓮はポケットから小さな薬を取り出した。
相馬から渡された解毒剤。
「これを……」
口に入れる。
しばらくすると――
呼吸が落ち着いてくる。
視界も戻っていく。
「……はぁ……」
蓮は額の汗を拭う。
「危険な薬だ……」
薬を見つめる。
「もう油断しない」
蓮は再びマスクを被る。
そして――
工場へ再び飛び降りる。
先ほどと同じ場所。
ノワールナイトが立っている。
「また、お前か……」




