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ノワールナイト  作者: Dai
第一章 伝説の誕生編

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第16夜 偽りの騎士

夜。

相馬モータース。

地下整備場で、蓮は一枚の資料を見つめていた。

そこには、一人の刑事の名前が書かれている。

神崎隼人。

年齢、経歴、これまで担当した事件。

そして――

警察内部での評価。

蓮はしばらく資料を見つめていた。

ノワールナイトとして活動を続ける中で、蓮は以前から一つの問題を感じていた。

警察との距離だ。

犯罪者を追う上で、警察の情報は必要になる。

だが――

誰でも信用できるわけではない。

もし、ノワールナイトの正体を知った人間が悪用すれば――

すべてが終わる。

だから蓮は、警察の中に信頼できる人間がいないか探していた。

その時、相馬から名前を聞いた。

「神崎隼人?」

「ああ」

相馬は答えた。

「俺が現役だった頃から知ってる刑事だ」

「どんな人?」

「真面目な男だ。自分の立場より、事件の真相を優先する」

相馬は少し考える。

「少なくとも、俺が知っている限りでは信用できる」

蓮は神崎の資料を見る。

「……分かった」

まだ会ったことはない。

だが――

蓮は神崎の行動を、しばらく調べていた。

そして――

今日。

その神崎が担当する事件が起きた。

* * *

テレビからニュースが流れていた。

『昨夜、都内の銀行で強盗事件が発生しました』

蓮は自宅でテレビを見つめていた。

『犯人は黒いマスクを着用し、黒い服を身につけていたということです』

画面に、防犯カメラの映像が映し出される。

黒いマスク。

黒い服。

そして――

黒い刀。

『警察は、以前から目撃情報が相次いでいる謎の人物、ノワールナイトとの関連も視野に入れて捜査しています』

蓮の表情が変わる。

「……俺じゃない」

テレビに映っている男。

確かに見た目はノワールナイトに似ている。

だが――

動きが違う。

戦い方も違う。

何より――

ノワールナイトの信条とは、正反対だった。

* * *

その頃。

警察署。

一人の刑事が防犯カメラの映像を見つめていた。

神崎隼人。

刑事になって十年。

冷静な判断力と鋭い観察力を持つ刑事だった。

「……やっぱり違う」

映像を止める。

銀行強盗犯の動きを何度も確認する。

「ノワールナイトじゃない」

隣の刑事が尋ねる。

「どうして分かるんです?」

神崎は画面を指差した。

「動きが素人だ」

「素人?」

「ああ」

神崎は映像を再生する。

「ノワールナイトなら、こんな無駄な動きはしない」

そして――

画面を止める。

「それに、こいつは人を傷つけることを躊躇していない」

神崎は眉をひそめる。

「ノワールナイトとは、まるで違う」

* * *

その夜。

神崎は一人、警察署を出た。

すると――

「神崎隼人」

背後から声がした。

神崎が振り返る。

そこには――

黒いマスクを被った男が立っていた。

「……ノワールナイト」

神崎は驚いた様子を見せない。

「やっぱり来たか」

ノワールナイトは神崎を見る。

「俺を知っているのか」

「ニュースで見たからな」

神崎は答える。

「それに……あんたが来ることは予想していた」

ノワールナイトは少し黙る。

「なら話が早い」

「銀行強盗の件か?」

「ああ」

ノワールナイトは言った。

「……あれは俺じゃない」

神崎は頷く。

「あんたじゃないことくらい分かっている」

ノワールナイトが神崎を見る。

「防犯カメラで映像を確認した」

神崎は続ける。

「あいつの動きは、まるで素人だ」

「……そうか」

「だから俺は、あんたを疑っていない」

ノワールナイトは少しだけ間を置く。

「偽ノワールは俺が必ず見つける」

「一人でやるのか?」

「ああ」

「無茶するな」

「慣れてる」

神崎は苦笑する。

「そうかよ」

ノワールナイトが背を向ける。

「何か他に情報があれば教えてほしい」

神崎が呼び止める。

「待て」

ノワールナイトが振り返る。

「俺も探す」

「……」

「犯人を捕まえるのは、刑事の仕事だからな」

ノワールナイトはしばらく神崎を見る。

「……頼む」

その一言を残し、闇の中へ消えていった。

神崎はその背中を見つめる。

「……変な奴だな」

だが――

その目には、どこか信頼の色があった。

* * *

数日後。

蓮は独自に偽ノワールを追っていた。

銀行強盗の映像。

逃走経路。

目撃証言。

すべてを繋ぎ合わせる。

そして――

一つの場所へ辿り着いた。

「……ここか」

古い倉庫。

蓮は中へ入る。

すると――

「誰だ!」

男が振り返った。

そこには――

あの偽ノワールがいた。

黒いマスク。

黒い服。

だが、本物とは似ても似つかない。

「ノワールナイト……」

男が後ずさる。

「なぜ俺を追ってきた!」

「お前が俺の名を利用したからだ」

「……!」

男が逃げようとする。

だが――

ノワールナイトは一瞬で距離を詰める。

「逃がさない」

男を壁に押さえつける。

「誰の指示だ?」

「言うわけないだろ!」

「なら――」

ナイトブレードを抜く。

男の目が怯える。

「……VALONだ」

「VALON?」

「犯罪組織だ……!」

男は震えながら話し始める。

「俺たちは、ノワールナイトの名前を利用して銀行を襲った」

「目的は?」

「金だ……それだけだ!」

ノワールナイトは男を離す。

「アジトは?」

男は答えた。

「……工場跡地だ」

* * *

夜。

工場跡地。

VALONの構成員たちが集まっていた。

「まさか偽ノワールが捕まるとはな」

「警察に吐かれてないだろうな?」

その時――

バンッ!

扉が吹き飛んだ。

「な、なんだ!」

暗闇の中。

黒いマスクが浮かび上がる。

「ノワールナイト……!」

「全員――」

ノワールナイトがナイトブレードを構える。

「動くな」

男たちが一斉に襲いかかる。

だが――

ノワールナイトは一人ずつ確実に倒していく。

ワイヤーガジェット。

ナイトブレード。

そして――

己の拳。

最後の一人が倒れた。

静寂。

ノワールナイトは奥へ進む。

そこには――

VALONのボスがいた。

「お前がノワールナイトか……」

「ああ」

「俺たちを潰すつもりか?」

「そのつもりだ」

ボスが銃を取り出す。

「死ね!」

銃声が響く。

だが――

ノワールナイトは弾丸をかわす。

一気に距離を詰める。

そして――

ドンッ!

拳が男の腹に入る。

「ぐっ……!」

男が倒れる。

ノワールナイトは銃を蹴り飛ばした。

「終わりだ」

* * *

翌朝。

警察署。

神崎の前に、ノワールナイトが現れた。

「……またお前か」

ノワールナイトはVALONのボスを突き出す。

「こいつがVALONのボスだ」

神崎は驚く。

「一人で潰したのか?」

「ああ」

「……無茶苦茶だな」

神崎はため息をつく。

「だが、助かった」

そしてVALONのボスを連れていく。

「これで偽ノワール事件は終わりだ」

「ああ」

ノワールナイトは背を向けようとする。

その時――

「待て」

神崎が呼び止める。

「あんたのようなマスクを被った男が現れることで、こんな奴も現れた」

神崎は一枚の白い紙を取り出した。

「これを見てくれ」

ノワールナイトが振り返る。

白い紙。

その中央には――

黒い唇のような、不気味な紋様。

ノワールナイトの目が細くなる。

「……黒い唇?」

「そうだ」

神崎は答える。

「最近、犯罪現場に必ず残されている」

ノワールナイトは紙を見つめる。

「……何者だ?」

神崎は少し間を置いた。

「闇の世界に“住む者たち”――」

「闇の住人……ブラックレジデンスという組織だ」

「闇の住人……?」

「ああ」

神崎は続ける。

「そのボスは――」

「デビルという男だ」

「デビル……」

「白い悪魔のようなマスクを被っているらしい」

神崎は白い紙を見る。

「最近、妙な犯罪組織が増えてきて困っている」

ノワールナイトはしばらく黙っていた。

そして――

「……そうか」

紙を見つめる。

「調べておく」

ノワールナイトは闇の中へ消えていった。

神崎はその背中を見送る。

「まるでいたちごっこだな……」

* * *

夜。

ビルの屋上。

風が吹く。

黒い羽根が一枚、夜空へ舞い上がる。

その羽根が――

白い月を横切った。

ノワールナイトは、昼間の白い紙を握りしめていた。

黒い唇のような紋様。

「……デビル」

その名を呟いた瞬間――

月の光が、雲に覆われた。

夜が、さらに暗くなる。


――第1章・完

第2章

デビル編

――開幕。

第2章へ続くーー。

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