↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノワールナイト  作者: Dai
第一章 伝説の誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/46

第14夜 夜の騎士

第14夜 夜の騎士

ショッピングモールを出た蓮は、周囲を見回していた。

だが――

少女と、あの男の姿はどこにもない。

「黒崎さん!」

後ろから美咲が追いついてくる。

「どうしたんですか? 急に走り出して……」

「……さっきの女の子」

「女の子?」

「あの親子みたいな二人組だよ」

蓮は、少女の仕草について説明した。

「助けを求めていたように見えたんだ」

「……そうだったんですか」

美咲の表情が曇る。

「でも、もういなくなっちゃいましたね……」

「ああ」

蓮は周囲を見回す。

人の流れ。

買い物袋を持った人々。

楽しそうに笑う家族連れ。

その中に、あの少女の姿はない。

「……俺の勘違いだったのかな」

蓮が呟く。

だが――

あの怯えた目。

そして、あの小さな手の動き。

どうしても頭から離れなかった。

「黒崎さん」

美咲が声をかける。

「警察に連絡したほうがいいんじゃないですか?」

「ああ」

蓮はスマートフォンを取り出した。

警察へ連絡する。

少女の特徴。

男の服装。

二人を見た場所。

そして、少女が見せた仕草。

できる限り詳しく伝えた。

しばらくして――

警察から連絡が入った。

『確認しました。現在、防犯カメラの映像を調べています』

「お願いします」

電話を切る。

蓮は大きく息を吐いた。

「……大丈夫かな」

美咲が心配そうに呟く。

「きっと大丈夫だよ」

蓮はそう答えた。

だが――

その言葉とは裏腹に、胸の奥には嫌な予感が残っていた。

* * *

それから一時間ほどが経った。

蓮のスマートフォンが鳴った。

警察からだった。

『先ほどの件ですが、確認が取れました』

「はい」

『少女と一緒にいた男ですが、父親ではありませんでした』

蓮の表情が変わる。

「……やっぱり」

『さらに、防犯カメラを追ったところ、二人はモールを出たあと車に乗り込んでいます』

「車の行き先は?」

『現在捜索中です』

「分かりました」

電話を切る。

蓮は拳を握った。

やはり、あの少女は助けを求めていた。

「黒崎さん……」

美咲が蓮を見る。

「何か分かったんですか?」

「ああ」

蓮は少し迷った。

そして――

「ごめん」

「え?」

「今日は……ここで帰らせてほしい」

美咲は驚いた顔をする。

「事件のことですか?」

「……ああ」

「黒崎さんが行くんですか?」

「俺にできることがあるかもしれない」

美咲はしばらく黙っていた。

そして、小さく笑った。

「……分かりました」

「ごめんな」

「謝らないでください」

美咲は蓮を見る。

「その女の子、助けてあげてください」

「……ああ」

蓮は頷いた。

「ありがとう」

そして二人は別れた。

蓮は歩きながら、スマートフォンを握りしめる。

その顔から、さっきまでの柔らかな表情は消えていた。

「……絶対に見つける」

* * *

それから数時間後。

外はすっかり暗くなっていた。

相馬モータース。

地下整備場。

「相馬さん!」

蓮が駆け込んでくる。

相馬は顔を上げた。

「どうした?」

「女の子が誘拐された」

蓮は昼間の出来事を説明した。

相馬の表情が険しくなる。

「確かなのか?」

「ああ。警察も誘拐事件として捜査を始めてる」

「そうか……」

相馬は黙って蓮を見る。

「それで?」

「行く」

即答だった。

相馬は少しだけ笑う。

「今日はデートだったんだろ?」

「……」

「楽しめたか?」

「少しだけな」

「そうか」

相馬は工具を置く。

「なら、なおさら行ってこい」

蓮が顔を上げる。

「え?」

「せっかくの休日を潰したんだ。せめて、その女の子を無事に助けて帰ってこい」

「……分かった」

相馬は装備を取り出した。

「ほら」

そこには、普段の生活では決して使うことのない装備がある。

ナイトスーツ。

ナイトブレード。

ワイヤーガジェット。

そして――

黒いマスク。

蓮は装備を見つめる。

昼間。

美咲と笑っていた自分。

会社員として働いていた自分。

普通の生活。

普通の休日。

それを捨てるわけではない。

ただ――

今は、助けを求めている少女がいる。

蓮は装備を手に取った。

「……行くか」

一つずつ装備していく。

スーツ。

ブーツ。

ナイトブレード。

ワイヤーガジェット。

最後に――

黒いマスク。

蓮はそれを手に取った。

そして、ゆっくりと顔に装着する。

カチャッ。

昼間まで普通の会社員だった男は――

夜の騎士へと変わった。

相馬が声をかける。

「気をつけろよ」

「分かってる」

蓮は歩き出す。

「行ってくる」

* * *

夜の街。

ナイトバイクのエンジン音が響く。

黒い車体が夜道を駆け抜けていく。

画面には、ノワールナイト専用の情報端末。

周辺の防犯カメラ映像を確認する。

「……いた」

目的地は――

使われていない廃工場。

蓮はアクセルを握る手に力を込めた。

「待ってろ……」

少女の怯えた顔が脳裏に浮かぶ。

「今、助けに行く」

ナイトバイクは夜の闇へ消えていった。

その頃――

廃工場。

薄暗い建物の中。

少女は椅子に縛られていた。

「……お父さん……」

涙を浮かべながら呟く。

目の前には、昼間の男。

男はスマートフォンを確認している。

「静かにしてろ」

少女は震えながら尋ねた。

「……お兄ちゃん……来てくれるかな」

「お兄ちゃん?」

男が振り返る。

「誰のことだ?」

少女は答えない。

だが――

その時だった。

廃工場の外から、

キィィィ……

と、金属が擦れるような音が響いた。

男が振り返る。

「……なんだ?」

暗闇。

何も見えない。

そして――

一羽の黒い羽根が、

静かに床へ落ちた。

男の顔が青ざめる。

「……まさか」

暗闇の奥。

二つの白い目が浮かび上がる。

ノワールナイトが、そこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。