第11夜 二十年前の真実
夜。
相馬モータース地下工房。
蓮は黙って相馬を見ていた。
昨日、RAVENの隊長と出会った。
そして知った。
父、黒崎恒一が。
相馬と共に、ブランを追っていたことを。
「相馬さん。」
蓮が口を開く。
「父さんは……。」
「昔、何をしていたんだ?」
相馬の手が止まる。
工具を置く音が、静かな地下工房に響いた。
しばらく沈黙。
やがて相馬は、ゆっくり口を開いた。
「二十年前。」
「俺と恒一は、警察として一つの組織を追っていた。」
「ブラン。」
蓮は黙って聞く。
「当時のブランは、今より遥かに大きな犯罪組織だった。」
「裏社会の多くに影響力を持っていた。」
「そして、その中心にいた男がいた。」
相馬の表情が険しくなる。
「黒羽零司。」
「RAVEN隊長だ。」
蓮は息をのむ。
「黒羽……。」
「奴はただの犯罪者じゃなかった。」
「頭脳も、戦闘能力も、全てが異常だった。」
相馬は遠くを見る。
「俺は潜入捜査を担当した。」
「ブランの内部に入り、情報を集めた。」
「その時、何度も奴と顔を合わせた。」
「だが……。」
相馬は自分の左腕を見る。
「ある任務で、奴に正体を見抜かれた。」
「俺は命からがら逃げた。」
「深い傷を負ってな。」
蓮は黙って聞いている。
「その傷が原因で、俺は警察を辞めた。」
「もう前線には立てなかった。」
「だが。」
相馬は拳を握る。
「恒一は諦めなかった。」
「俺が引退した後も、一人でノワールとしてブランを追い続けた。」
「俺は表には出られなかった。」
「だから、裏から支えた。」
「装備を作り、情報を集めた。」
「ノワールは、恒一と俺の二人で続いていたんだ。」
蓮は驚く。
「じゃあ……。」
「今のノワールナイトは。」
相馬は頷く。
「恒一が始めたものだ。」
「そして、お前が受け継いだ。」
しばらく沈黙が流れる。
「数年前。」
「俺たちは、ついに黒羽零司を追い詰めた。」
相馬の声が低くなる。
「引退した俺と、恒一。」
「二人で奴の隠れ場所を突き止めた。」
「あと少しだった。」
「もう終わると思っていた。」
だが。
相馬の表情が苦しそうに歪む。
「……俺が油断した。」
蓮は顔を上げる。
「黒羽は、俺を狙った。」
「恒一は……。」
「俺を庇った。」
静かな工房。
相馬の声だけが響く。
「その瞬間。」
「奴の刃が、恒一を貫いた。」
蓮の手が震える。
「父さんが……。」
相馬は目を伏せる。
「恒一は最後まで戦った。」
「最後まで、ノワールだった。」
「そして俺に言った。」
「蓮を頼む、と。」
沈黙。
相馬は拳を握りしめる。
「俺のせいだ。」
「俺が狙われたから。」
「俺がもっと強ければ。」
「恒一は死ななかった。」
蓮は何も言えなかった。
いつも冷静だった相馬が。
初めて見せる後悔。
「だから俺は、お前を守る。」
「もう二度と……。」
「大切な人間を失わないために。」
地下工房には、重い沈黙が残った。
蓮は静かに拳を握る。
父が残したもの。
相馬が背負い続けてきたもの。
全てを受け継ぐ覚悟を決める。
「相馬さん。」
「俺が終わらせる。」
「父さんが止められなかったものを。」
「俺が止める。」
相馬は蓮を見る。
その姿に、かつての恒一を重ねていた。




