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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー94



炊き出しを始めて数時間、既に夜が明け朝日が登り始めていた。


皆が食事を取り、何とか休める環境を整え思い思いに休息をとる。最初はジャユ族と睨み合っていたエルフ族も今ではお互いに協力して共に近くで休むものや、話したりしているのを見かけていた。


共通の敵がいれば仲良くなるってやつだね。



後もう少しすればミリアも起きてくると思うしそしたら魔法での治療も再開できる。

魔力は多いが、体力や集中力は人並みだし休ませながらだけどね。



「・・・律兎様、急ぎ伝えたいことがあるのですが、少しよろしいですか?」



俺もそれなりに疲れが溜まってきたので休息を取っていたらドウゲンとやらに話しかけられる。

ぶっちゃけ動きたくなかったが、急用なら無視するわけにもいかないか。



「なんだ?」


「ログロド様とユリジャ様が帰ってきました。敵の可能性を含め、今は2人とも門の前で待機してもらっています。」


「・・・ようやくか。よし、見に行ってくる。ペリナとシルルカ、あとスイにも声を掛けといてくれ。」


「はい。」



ドウゲンはそう言って他のメンツを集めてくれる。

そして集まったら門へと向かうと、ドカッと不遜に座るロドと相変わらす親しみやすそうにニコニコしてるユリジャがいた。


すると、横から黒い影が勢いよく飛び出す。

それはすぐにユリジャへと向かい、綺麗なドロップキックを、、、



「いったい何処で何してたんだゴラーッ!」


「ーーッはっぷらとっぷ!?」



シルルカに決められてユリジャは吹き飛ばされながら茂みに消える。

文句を言う前に制裁が加えられたし、もう俺のでる幕はないかな?


その横で吹き飛ばされるユリジャへ呆れたような目を向けているロドにペリナは丁寧に頭を下げた。



「お帰りなさいませ、ログロド様。」


「おう、悪かったな隊を任せきりで。・・・被害は出たか?」


「申し訳ございません、私の力及ばず3名ほど、、、。」


「・・・そうか、家族には労息地の移住を勧めてやってくれ。」


「承知しました。」



そんな短いやり取りが終わると、ロドは立ち上がってこちらへと歩いてくる。やけに嬉しそうな笑みで近づいてくるな、怖い。



「よ、久し振りだな。」


「そんな月日は経ってないけどな。でもお互い色々あったみたいだし久し振りか。」


「つーかお前、全然敵の鼻明かせてねぇじゃねえか。もう攻め込んじまったぞ?」


「・・・あー、正直情報は少しずつ増えては来てるんだがまだ原型が掴めなくてさ。でも気を遣ってくれて助かってるよ。」



実際彼と話したように第三勢力の突き止めには至っていない。やけにうまく隠れているのもそうだが、種族がバラけすぎてて整理がつかないんだよな。



「今んとこ敵はゴート族、ヒト族、それにエルフ族にも間者がいたな。」


「っち、幅広すぎだろ、てことはうちの内部にもいる可能性はあるか。」


「背中から刺された仲間もいるかもね。」


「後で聞き取りでもするか。」



雑に情報を交換していると、ボロボロになったユリジャが俺達に合流する。頭から血流してるけど大丈夫か?



「いやー、アグレッシブな再会だったよ。」


「まだ言いたいことはたくさんあるけどね。もっと里の管理者として責任をもって欲しいわ。・・・5人も被害が出てるのよ、私じゃ指揮何てとれないし。」


「・・・僕も指揮なんて里長になってからとったことないよ。もともとエルフは隠れる種族だしね。はぁ~~、ロドに守り人達任せた方が安定するかな?」


「おいおい、滅多なこと言うんじゃねぇぞ。お前の兵の指揮権を相手に渡すことがどう言うことか、わからないとは言わせねえぞ?」



ロドから割と本気の圧が掛けられる。

彼の言ってることは至極全うで、例えどれだけ信用に足る相手だとしても指揮権を渡すのは愚行と言えた。


指揮すればどうしても自分の隊を安全に動かしたいし、エルフに先行させて囮や壁にされる可能性だって高い。それに疑心感も募るし、連携だってうまく行くとは限らないんだ。


自分の手が届く内は、しっかりと掴んでおく方がいいだろう。



「勿論わかってるよ。・・・でもどうしよっかな~。うまく行くビジョンがまったく見えないや。それに、、、」



ユリジャは初めて冷たく、そして何にも興味が無さそうな冷たい目を覗かせた。



「まだリクリカを見つけられてないしね。いい加減、、、不愉快だ。」


「おい、だからってまた一人で突っ走るなよ? お前どれだけ殺したと思ってんだ。」


「仕方ないじゃん、律儀に全員口封じと視界共有の術式が刻まれてるんだもん。」



余計な情報は与えたくないのと、半分は八つ当たりっぽいな。焦りもあるのだろうが、今のユリジャは精神的に不安定そうだ。


自分が冷静じゃないとわかってるからこそ、冷静な判断力が必要な指揮を避けてるのかもな。

いや避けていいもんじゃないけど。



俺はため息をつきながら懐から白く発光した小さな箱を取り出す。



「・・・なんだそれ?」


「まぁ見てな。」



それを耳に当て少し待つと、、、



『え、何?この箱? 突然目の前に、爆発しませんよね?』


「お、ちゃんと通じたな。元気そうでなによりだ、リクリカさん。」


「ーーっ!?」


『ーーわっ!? こ、この声は律兎さん?どうしてこの小さい箱から、、、?』



俺が耳に当てた箱からリクリカの声が聞こえ、ユリジャに慌てたように引ったくられた。



「リクリカ?! 僕の声が聞こえるかい!?」


『ユリジャ?え、えぇ、聞こえるけど、いったいこれって何なの?』


『それは私も気になるね。』



すると、箱の向こうからまた別の声が聞こえた。

俺は目を細め、ユリジャから箱を奪い返し耳に当てる。



「よぉ、アムル。パルパンク以来だな?」


『・・・やぁ、これが月の湖畔で手に入れた魔法具かな? 随分と特殊で、、、厄介そうだ。』



・・・神器『遠きあの人に想いを』


やけに恥ずかしすぎるネーミングタグが注意書きと一緒に付けられてたのを見たときはぶん投げそうになったが、機能はあまりに優秀だったのでありがたく使わせてもらうことにした。


簡単に言えば使用者というか本機に設定した一台に知人の名前を入力するとその相手に子機が転送される。


そしたら遠くの人と意志疎通が出きる、、、ま、簡単に言えば通信機だよね。



「にしても随分と近くにいるみたいだな? なんだ、寝取り?」


『はっ、どうだろうね? それも面白いか、、、』


「ぶっ殺すぞ。」



案外乗ってきたアムルに俺の横から著しいほどの殺気でユリジャが睨み付けてくる。

殺意がわくのもわかるけどそれを俺に向けないでくれないかな?



「それで? まだ続けんのか?ある程度霊力は集まったんだろ?」


『・・・えぇ、よくお分かりで。』


「憶測だけどな、精霊は造れそうか?」


『・・・。』



俺の立てた仮説で聞いてみたら相手は無言になる。


何となくの経験則で聞いただけなんだけど当たりかな?



『ふむ、面白い話ですね。』


「そうか? 精霊の中でも霊力の高いリクリカさんを器にして他精霊を注ぎ込む。そうすりゃ霊力のバカ高い半神が出来上がる。・・・制御できるとは思えないけどさ。」



同じことを前にやった奴がいた。

そのときは結局高い霊力の奔流に耐えきれる器がなくて半神は暴走。七剣全員が出張るほどの大事件にまで発展した。


ただ向こうは器足り得る存在がいなかったから1から造ることなっていたが、こっちには精霊なども近い存在としているし、不可能とはいえない。


・・・できたらやばいなぁ。



『・・・ご忠告は頂いておきますね。』


「というかお前の声とかどうでもいいからリクリカさんと話させてくれない?」



すると、通話の向こうからカシャッと箱が投げられた様な音がする。精密機器(知らんけど)かもしれないし大事に扱えや。



『・・・知らない話しばかりだったのですが。なるほど、私は結構危機ということで?』


「あーまぁ、そうだけど器にするのは簡単じゃない。結構大掛かりな仕掛けと、環境が必要だ。後はそれが何処にあるかだけど、、、。」



言いながら俺はチラリとユリジャに視線を向ける。


無いわけがない、リクリカさんは完全に受肉しているし、器となった何かと仕掛けがあるはずだ。

それを実行したはずのユリジャが知らないわけがなかった。


おそらくアムルの狙いもそこにある。



「・・・え、てことは火の粉は全部僕?」


「割とそうなるな、、、。」


「ふーん、まぁいいや、で?教える気は勿論ないよ。」


『でしょうね、でもあらかた目星はついています。自力で見つけるので構いませんよ、では。』



ーーガシャンッ!



最後に踏み潰される音と共に子機は破壊され、通話は途切れてしまう。



残された俺達は全員ユリジャに視線を向けた。



ユリジャは視線を受けながら気まずく目をそらす。



「・・・え、僕だけが悪いの?」


「いや多分違うんだよな、ならジャユ族を巻き込む理由がない。エルフだけを潰せばいいのに敵をわざわざ増やす理由はないだろ。だから、、、」


「俺にも何か隠し事があるんじゃねえかってことか。」



俺の言葉の裏を読んでロドは眉をしかめる。俺は正解とばかりに首を縦に振った。


すると、ロドはため息をつきながらひとつの鍵を取り出す。



「・・・地下、つうのは厄介なもんを封じるのに適してんだよ。これはその鍵だ。」


「ちなみに何が封じられてるか聞いても?」


「・・・・・・邪神の一部だ。」



そのロドの言葉にここにいる全員が目を見開いた。

同じ種族で近衛であるペリナすら知らない代々秘匿されてきた情報なのだろう。


まさかそれをあっさり教えてくれるとは思わなかったが、今が緊急事態だと思ってくれたのかな?



「・・・邪神ってホントにいたの?神話かと思ってた。」


「知らねーよ、俺も先祖からそう言われただけだ。・・・でもただの代物じゃねぇ。近づくだけで気が狂いそうになる瘴気が常に溢れてる。天能を持ってなけりゃ俺もやばいだろうよ。」



別に邪神の一部が狙われてるって決まった訳じゃないけど、もし必要な理由があるとしたら邪神復活?


邪神復活が野望とかそんなデフォなー、とか思うけど実際に復活されたら相当やばい。神格存在を相手取るには準備と装備、それに実力が足りなすぎる。



「隠してんのはこれくらいだな。後は宝石や魔法具、高価な鉱石を宝物庫に溜め込んじゃいるが、そんなのいるか?」


「金目当てじゃないだろう。でももしかしたら狙ってる他の魔法具とかがないとは限らない。他にも土地起因の可能性もあるし、そこはまだ決めきれないな。」



てかドリム地下街完全放置だけど平気なのか?


本隊は動かしていないとは行ってたけどロドがいるかいないかで戦力には大きな差があるだろう。



・・・まぁいっかあ!



なんか考えてもわからないし、とりあえずは今をなんとかしよう。ロドが鍵持ってるぽいし多分平気だろ。


そんな風に楽観的に考えていると、手に持っていた白箱が震える。



「ん?もしもし?」


『あーー、聞こえてるさ?』


「聞こえてるよ。」



箱から聞こえた声に横で立っていたスイが目を見開いて固まる。



『ホント便利な箱さね。一応今パルパンクに着いたが気になることがあってさ。知らせた方がいいと思って連絡したさ。』


「へぇー、何があったの?」


「・・・ちょ、ちょっと待って、り、律兎は誰と会話、してるの?」



・・・?


なに言ってるのだろう?むしろ俺より君の方が詳しいんじゃない?


そんな風にとぼけていると白箱から答えが帰ってくる。



『お? その声はスイかい、まだそこまで月日は経っちゃいないが久し振りじゃないさ。』


「・・・お、オババ様? えっと、パルパンクにいる、、、の? な、な、、、ど、どうして?」


『・・・お前さん、説明してないのさ?』



呆れたように言われたので、俺はドッキリが成功したような気持ちで答え合わせをする。



「オババに助けを求めました笑。ミスルル族の移動速度なら救援も間に合いそうだからつい、、、。」


「・・・報告、連絡、相談、大事。」



スイに胸ぐらを掴まれてガクガクと首を揺らされる。だっておれもふと気付いて通話掛けてみよって思っただけで、ホントに来てくれるとは思わなかったし!



「・・・オババ? ミスルル族でオババといや、まさかオルババ・ロス・ミスルルか?」


『ほぉ?あたいを呼び捨てで呼ぶとは、随分と偉くなったさね、ロド坊。』


「・・・・・お久しぶりだす。」



なぜか威圧されてシュンと大人しくなるロドに横のペリナが驚いている。


て言うか2人面識あるの?

なら丁度よかったか。



『というか用件を伝えるさね。何故か魔王軍の一部隊がパルパンクから数時間前に出立したらしいさ。・・・しかも森に向かってね、他人事とは考えない方が良さそうさ。』


「ーー!」



オババの忠告に目を細める。

このタイミングで偶然目を付けられて兵を動かした? それともエルフへの用?森にの異変の調査?


いや、おそらく動かされたんだろうな、たとえ操る力はなくてもそこへの用事はいくらでも作れるんだし、誘導は可能だ、、、。



俺は息を吐いて気を引き締める。


そろそろ最終決戦も近そうだ。



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