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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー93



さて、ようやく里に戻ってこれたな。



ミリアに喚び出されたりしなかったからまだ平気かと楽観的になっていた自分を恥じる。


まず、ダンジョンはほんの僅か手前で攻略を中断している。その前にレリックとやらを回収をできたのでその時点で切り上げたのだ。


少し地上で変な連中に絡まれたがそいつらは適当に処理してグラグロに預け、俺とスイはミニーとルームを連れて里に全速力で向かった。


スイとミニーは俺のスピードについてこれるが、ルームは無理だったのでミリアのように背負って森へと到着。


すると森では煙が上がっており、明らかに異常事態だと直ぐに認識する。


燃えた森をスイとミニー任せで消火しながら突破し、俺達はなんとか里へと到着した。


そして、野戦病院のような様相になっていた里に驚き、辺りを探して今にも崩れそうなミリアを回収。

そして水を得意とするスイと土魔法が得意なジャユ族に消火を担当させ、エルフには周囲の警戒を優先させた。


どちらかの背中を信用しないと成り立たない策だが、必ず一人はお互いの種族を警戒させると決め、何とか消火はやりきることができた。


あとは負傷者の治療だが、それはどうしても時間がかかる。ミリア頼りになってしまうが、ひとまず応急処置を施し目覚めるのを待つことにした。



そしてようやく目を覚ましたミリアにホッと胸を撫で下ろす。


もしかしたらワンチャンあの危険な存在が顔を出すのではないかと危惧したが、どうやら杞憂で終わったようだ。



「律兎さん、落ち着いてきたのでもう大丈夫です。広場に向かいま、、、」


「その前に食事だな。」



立ち上がろうとするミリアを止めて作り置きしといてもらった料理をボックスから取り出す。


よくある卵スープだが、他の野菜を多く煮詰めてあるので栄養は豊富なはず。それと軽いチョコレートを添えておく、一応カロリーね。


ちなみに作ったのは勿論スイさんなので味は保証されています。


優しい香りが漂うと、ミリアから「くぅ」と可愛い音がして顔を真っ赤にさせてお腹を抱えている。



「食べさせてやろうか?」



からかうような笑みを浮かべてスプーンを向けると、ミリアは少し顔を赤くしたあと口を開けた。



・・・え、ホントに?



「・・・ふぁだれふか?」


「あ、悪い悪い。」



軽い冗談だったのだが、今さらあげないのも可愛そうなのでそっと口に運んであげる。


すごく、いや結構気恥ずかしいが、ミリアは食べたあと美味しそうに顔を輝かせているのをみてどこか微笑ましく感じた。



「これスイの料理ですね、相変わらず味の加減が完璧です。」


「よくわかるな、でもスイって別に調味料とか計ってないしもう染み付いてんのかね?」


「長年の経験ですか、、、。」



あれ、スイっていくつだっけ? 確かミスルルは人族に比べて長命って言ってたし結構ババ、、、怖いからやめとこう。



「あ、そう言えば律兎さん、これお返ししますね。」



ミリアはそう言って指輪を外して手渡してくる。


俺はそれを受け取って自分の指にはめた。



「上手くやれたか?」


「それなりに?ですかね。ミルルさんにはよくしてもらいました。・・・謝られてしまいましたけど。」


「あ~、あいつそう言うところ真面目だからな。仲直りできたか?」


「はい、話してみてよかったです。」



そう言って嬉しそうに笑うミリアに自然とこちらも笑みが浮かぶ。


少しは前向きになってくれたようでこちらも安心できる。普通の会話もできてるし、もう大丈夫かな。



「あ、そう言えば律兎さん、その目的のお宝とやらは手に入ったのですか?」



ミリアがそう首をかしげながら聞いてくるので、俺はポケットにしまっていた四角い箱を取り出した。


見た目は何の変哲もない白い長方形の箱だが僅かに発光している。



「・・・箱?」


「箱だな。」


「効果は?」


「んー、今使っても仕方ないし、また今度見せるよ。」


「え~、何ですかそれ。すごい気になります。」



そりゃミリアの言いたいこともわかるけど、適当に使うと迷惑掛けそうなんだよな。あとでみる機会はあると思うから許してほしい。


ミリアはどこか納得いってないようだが、まぁいいかと流してくれた。



「ところで律兎さん、おかわりあります?」


「お前もう食ったの? てか病み上がりなんだし胃に負担がかかるものは「物足りないです。」話し聞けよ。」



お腹空いてるのにスープだけじゃ物足りないのはわかるけど今のコンディション理解してんの?


仕方ないので適当にボックスをいじってスイに作ってもらっていた俺用のサンドイッチを取り出した。


ミリアは普通に受け取ってパクッと食べ始める。

おっきい肉が挟まった結構ガッツリめなサンドイッチなのにホントに美味しそうに食べるな。



「ふおそいおいひいれふね!」


「飲み込んでから喋れ。たくっ、俺の飯なんだけどな。」



そう言うとミリアは止まって何か考えたあと「はい」とこちらにサンドイッチを向けてくる。


いやまぁ食べたいのはそうなんだけど、、、


俺はため息をついて立ち上がりスタスタと歩いて玄関の扉を開けた。



「・・・わっ」


「わっじゃねぇよ、なに聞き耳立ててんだ。」


「・・・勿論ミリアが心配だったから、他意はない。」



開いた扉からスイが転がる。

若干責めるような視線を向けたが、スイは平然とそう言い放った。



「なら様子みてやれよ、元気そうだぞ。」


「あ、スイ、何だか久し振りな気がしますね。」


「・・・ん、久し振り。スープ食べれた?」


「はい!とても美味しかったですよ!」


「・・・よかった、またいつでも作るから言ってね。」


「じゃあ今食べたいです!」


「少しは遠慮しろ。」



多少は別の思惑があったように思えるが、心配の方が割合的には多いだろうし、責めるのは止めておいた。


実際、ホッとしたような顔してるしね。



「・・・じゃあお腹空いている人も多いと思うからご飯作ってくる。食材だしてもらっていい?」


「あいよ。」



言われて俺はボックスから多めの食料を袋に詰めて手渡した。

スイは魔法で浮かせながら外に出ていく。


俺はため息をつきながらミリアのベット横においてある椅子に座り直した。



「律兎さん律兎さん。」


「ん?なんだよ。」


「チョコ失くなっちゃいました。」


「・・・あんまり食べると太るぞ。」


「太っ、、、?! え、太ってます!?太ってますか!?」



地雷を踏んでしまったのかミリアはあたふたしながらお腹とか二の腕を触っている。ちょっと直視しづらいからやめてほしい。


てかそんな気にするほどか?



「あまり太ってないだろ。」


「でもでも!最近律兎さんから美味しいもの食べさせてもらってますし、スイの料理も美味しいです。明らかに教会や街で生活している時より食べすぎてます、、、。」


「なら我慢と運動を覚えろ。」


「辛いことはしたくありません!」



こいつダイエットを頑張ってる人達に土下座してこい。


呆れたようにため息をついていると、なぜかミリアはこっちに両手を広げてくる。



「・・・なんだよ。」


「今と前、どっちの方が重いか確かめてください。」


「人を体重計代わりにするんじゃねえ。」



出来るだけ冷静に返しているが、下から上目遣いで抱っこをせがまれるのは思ったより可愛い。


て言うか移動のために仕方なく背負うのと今じゃ状況が違くない?普通に緊張するんだけど。



「・・・あの、手が疲れてきました。」


「・・・・・はいはい。」



変に断っても意識してるみたいだし、軽く持ち上げるようにミリアを抱き抱える。


重いか軽いかで言えば人一人だしそれなりに重い。

でも正直に言うとめんどくさそうだしいい匂いするしいろいろやわら、、、ゴホンッ



「ど、どうです?」


「ぶっちゃけ重いけど、筋肉ないし軽い方じゃない?」


「・・・つまり贅肉しかないと?」


「そこまで言ってねぇから力込めんな、いろいろとまずい。」



力を込められても押し付けられるだけで全く痛くない。


何とか反応しないよう耐えていると、やけにミリアが静かなことに気付く。

そっと下をみると、白い髪から真っ赤な耳を覗かせていた。


それを面白く感じて上に上げるように持ち直すと、「わっ!」と短い声がして真っ赤に染まった顔が眼前に持ち上げられる。



「~~~ッ! な、何で持ち上げたのですか?」


「ん? なーんか、からかいたくなってな。」



ミリアは赤い顔を隠す様に両手で覆う。

その可愛らしい反応に微笑ましく感じる。



「お、降ろしてください。」


「声が小さくて聞こえねえぞ?」


「・・・いじわるです。」



なんかイケナイ気持ちになってきていると、「ガチャッ」とドアが開く音が聞こえた。

首だけでそっちを向くと、顔を赤くしたシルルカと呆れたようなペリナが立っている。



「へ? え、え、あっ、ご、ごめんなさい!お邪魔したわ!」


「・・・逢瀬を楽しむのはいいが、時と場合は選んでくれないか?」



入ってきた二人のお陰で何とか踏み留まれる。

二人を見ると上のミリアが暴れだしたので、そっとベットにおき直し、「んじゃ、元気そうだしまた後でな。」と言い残して部屋を後にした。




ーーー




広場に戻ると炊き出しのようにスイが真ん中で料理を作り、他の者達は動けるものは怪我人の看護、スイの手伝い、負傷者は静養している。


それを眺めながら、小さくため息をついた。



「・・・結構被害が出てるな、手練れでも集められてたのか?」


「というよりは搦め手が得意な連中が集められている印象だな。それに練度もあるが、火災の鎮火に慣れてる者が少ないのも怪我人が多くなる要因の一つだ。」



大規模な森林火災になってしまえば消火はほぼ不可能になる。ここはまだ魔法があるため打てる手は多いが、それでも慣れてなければ消火は難しいだろう。



「・・・ロドは随分手加減してくれたんだな。」


「さすがに本隊を動かせば森を破壊しかねない。そもそもエルフと完全に敵対するのはログロド様の本意ではないし、恵みを壊すのも有り得ん。」



それはそうだろうな、と手すりに肘をつきながら目を細めた。

どうも話しぶりからロドとユリジャは既知の仲っぽいし、お互い本気で攻撃し合う気はなかったんだろう。お陰で被害は最小限に抑えられてるけど、、、



「・・・んであの二人は今いったい何処にいるんだ? てめぇらの仲間を放ったらかして?」



普通にその事に口元をヒクつかせながら青筋を立てる。何とかペリナとシルルカが代理として指揮を取って消火と敵の撃退を行ってくれたが、それは本来あいつらの仕事だろ。



「それは、、、さすがに私もわからん。」


「・・・戻ってきたら一発殴る。」



ペリナもさすがに困ったように眉を潜め、シルルカに至っては拳を握りしめていた。



「にしてもリクリカさんは囚われ、精霊たちも未だに目を覚ましてはいないか、、、エルフ勢の戦力は半減してるな。」


「そうね。」



俺が里に戻ってきたときには既に、精霊たちは全員無力化、、、と言うか霊力をごっそり持っていかれていた。


一応見て回ったが、存在を保つ霊力が軒並みギリギリ存在を保てる程度まで奪われていた。

霊力と言うのは命そのもの、それを霊体が維持できないほど奪われれば精神体である精霊は存在が消える。



「ま、残ってんならそのうち回復するだろ。時間はかかるだろうが仕方ない。」


「・・・回復、するのか?」


「ああ、普通に自然回復する。・・・てかなんとなくわかった、存在を残してるのは霊力の特色を失わせないためだ。火の精霊や水の精霊、霊体の特色は意思によって色付くから存在を消せばそれはただのエネルギーに戻っちまう、相手さんは性質を失わせるのを嫌ったのか。」


「・・・?な、なるほど?」



俺の呟きに横のペリナは目をぐるぐるさせている。

まぁここら辺は霊界を知覚できる俺だからわかることだし言われても理解は難しいだろう。


・・・剣帝には一発で見抜かれたけどな。


ただの独り言だし理解してもらわなくてもいい。

まったく、敵さんは何をしようとしてのかねぇ?



すると、下で料理を作っていたスイと目が合う。

どうやら準備は終わったようでこれから配るのかな?


こっちもやることないし、手伝いますかね、、、、





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