喚ばれた剣聖ー84
「わわわっ!? こんな速度のダンジョン攻略とかした事ないですよスイ姉様!?」
「・・・大丈夫、ミニーならできる。」
「何の根拠があって!?」
次の日、俺とスイはすぐにダンジョンに潜っていた、、、。
ちなみにメンツは
ミリア、ハイル OUT
グラグロ、スイ 固定
ミニー、ルーム IN
と言う異色なものだった。
「ミニー!静かにしてください!索敵に集中できません!」
「でもでも!」
何でこんなにベテランメンツがパニクっているかと言うと、俺たちは今、休憩なし、階層のすべてを素早く、くまなく探すと言う本来なら有り得ない体力をゴリゴリ削る攻略をしていた。
スイとルームには周囲の解析を任せ、スイが地形を把握、ルームが敵の位置を探るという役割分担をさせている。なので必然的に戦闘はグラグロとミニーになるよね、そりゃ文句も言いたくなるよね。
普通索敵するなら落ち着いた状況でバレない様にやるのに、今は敵に囲まれながら走って行わせている、、、鬼って言われても仕方ないな。
ちなみに今は第7階層、水中のエリアを探索していた。
上層ではフロアボス枠だった巨大プリームが普通にポップし、骨の鮫や鯨っぽいのなど明らかに難易度と殺意が向上している。
「・・・。」
「・・・全部任せてていいのか?」
今グラグロに指摘された通り、俺は戦闘も探索も全て他のみんなに任せていた。でも別に何もしていないわけではない、急ぎの行軍の隙間をついた敵の強襲とかには即座に対応している。
「・・・。」
「・・・おい、聞いてるのか?」
「・・・・・ん?あ、何か言ったか?」
「・・・まぁいい、何か理由があるんだろう。」
本当に話を聞いていなかったのだが、グラグロは何処か納得してくれたように頷いてくれる。
別に何かしていたわけではないが、今は任せた向こう側のことに思考を取られていた。
ーーー
パカラッパカラッパカラッ!
召喚された芝馬を走らせ、急いでエルフの隠れ里に向かうミリア一行。
メンツは
ミリア、ハイル、シルルカ、シルルカの護衛
後は巻き込まれたブロン、ワニィアと言う謎メンツ。
・・・前途多難な匂いしかしませんね、私も含めて。
それにしてもこの芝馬、股が痛いですね。
なんかすごい疲れますし筋肉痛になりそう、運転は自動で助かりますけど律兎さんのほうが遥かに乗り心地が良くて速いです、、、怖、、、。
「・・・くそ、まさか街がそんなことになってるなんて。」
「急がないと、だね。」
協力してもらうブロンとワニィアには今からどこに向かうのかと事情を説明した。
少し納得し難そうだったけど、エルフの存在とそんな嘘をつく理由はないと理解してくれた。
ブロンは顔を険しくし、その様子をワニィアは心配そうに見ている。
ちなみに今どこにいるのかと言うと、まだ砂漠を抜けられずにいた。
開拓基地を囲む白い砂漠は広く、馬に乗っていても簡単に抜けられない。本来なら砂漠に馬は相性が良くないが、芝馬は脚の形を変えて沈まないよう走っていた。
それでも遅い、と言うか律兎さんが速すぎ、化け物ですかね? まぁコツがあるとか何とか言ってたような気もしますけど、、、。
すると、ワニィアが背中から生やした節足を揺らす。
「ーー! ま、前の砂に魔物が潜んでいます!」
その叫びと同時に4本の巨大な鎌と大きく裂けた口を持った甲殻類の魔物が砂ぼこりを立てながら飛び出して来る。
すぐにブロンが拳を構え、シルルカとその護衛が魔法を唱えようとするが、、、
・・・別に戦わなくてよくないですか?
そう思って手をかざし、相手の落ちてきそうな場所に合わせて球形の障壁を展開する。魔物はその側面を滑るように私たちの上を通り過ぎ、後ろの砂へと潜って行く、、、。
「うぅ、やっぱり律兎さんがいないと魔物と遭遇する確率が高くて嫌です。」
「・・・や、やっぱミリアさんも規格外だよね。」
「俺たちいるか?」
いやいるに決まってるじゃないですか、私戦えませんし。
できるのはいつもこうやって受け流すか相手が飽きるまで攻撃を受け続けることだけですから。
「・・・おっとと、思わず暗い方に思考をきりそうでした。」
今は思考をネガティブに寄せるわけにはいかないと、切り替えるように頬をペチペチと叩く。
律兎さんに任されたんだ、やりきって見せたい。
まだエルフの隠れ里までは遠い、急がないと、、、
ーーー
「・・・今日はここまでだな、一度休むぞ。」
「や、やっとか。」「もう無理ぃ、、、。」
律兎が全員のギリギリを見極めて休憩を切り出す。
といっても主にギリギリなのはミニーとルームの2人でスイとグラグロはまだ余裕がありそうだ。
でも、ここは間違ってもダンジョン内、全員の体力を削りきってしまえば休んでる間の見張りができなくなるし計算通りかな。
「んじゃ、取り敢えず交代で休憩するか。まずはミニーとルームからかな。スイとグラグロは平気か?」
「・・・ん、私は大丈夫。」
「・・・俺も平気だ。」
予想通りまだ2人は余裕がありそうなので、テントを出して先にミニーとルームを休ませる。
残った俺達は海底?の砂の上に腰掛けて思い思いに休む。
「にっっしても第七階層は広いなー。まさかとは思うけど上の二倍くらいはあるんじゃねぇ?」
恐らく上層と区分される1層、2層も結構広かった。
ただそれでも果の見えない壁があったのだが、まだここでは見えていない。
・・・それに上の時はハイルに囮を頼んでボスを連れてきてもらったからなー。
まだボスの目安もついてないし、これは時間がかかりそうだ。
「・・・もしかしたらこのダンジョンは円錐のような形になってるのやもしれん。」
「うへぇ、まぁ3層4層は流れるように次に行ったし広さの実感とかなかったけど、宝探しとなるとこの広さはキツいなぁ。」
「・・・宝の位置がわからないから時間かかるのは仕方ない。」
スイの言う通り焦っても仕方ない。
2人を信じてここに残ると決めたし、こっちでできることをやるしかない。
それにしても、、、水飽きたなぁ。
「ここの魚って食えると思う?」
「・・・食べられるかもしれないけど、火がつかないから焼けない。」
そうでした、普通に息ができるから忘れてたけど一応性質的には水に近いんだったな。え、でも酸素あるよね?考えても無駄か。
「・・・刺身か。」
「・・・? 刺身?」
「えっと、魚を捌いて食べる。」
「・・・ふむ、齧りつくより丁寧だな。だがやはり火が」
「いやそのまま。」
俺がそのままと言うとスイとグラグロはピタッと固まる。そして2人とも何処か恐れるようにそっと聞いてきた。
「・・・そのままと言うのは切った魚を焼かずに食べるということか?」
「うん、水質が川っぽくないし、新鮮なら生でもいける気がするんだよな。もちろん寄生虫がいないかは調べるけど。」
「・・・お、お腹壊したら一大事だし、ここではやめておこ?」
まぁ確かに。
こっちの世界の魚の種類知らないし、この危険なダンジョン内で挑戦することじゃないか。
暇だし軽く小腹がすいたから名案だと思ったんだけどなぁ。ワンチャン、ミリアなら同意してくれそうだし今度同じこと言ってみよ。
「まだしばらくかかりそうだなぁ、、、。」
ーーー
2日後、、、。
「うわぁーん、また森ー!」
「いや2日で砂漠を抜けられたことを喜んだほうがいっすよ。俺達1週間はかかったんで。」
え、そうなんだ、律兎さんは1日で踏破したのに、、、やっぱ頭おかしいんだあの人。
何とかこちらの一行は砂漠を抜けて、元のエルフの森へと戻ってこれた。ただ森は森で広く、エルフの里へはもう少しかかる。
道案内としてシルルカさんもいますし、迷うことはなさそうですけどね。
「え、ゆれ、、、てる?」
そんな風に楽観的に考えていたら、ワニィアが小さく震えながらそうポツリとこぼした。
言葉の意味が分からず、立ち止まったワニィアに戸惑っていると、、、
ーーズドンッ!
一際大きな轟音が、森の奥から聞こえてきた。
「え、何の音!?」
本来静かで厳かな雰囲気すら僅かに感じられる森での場違いな音にシルルカが一際大きく動揺する。シルルカの護衛もその聞こえた音に目を見張っていた。
それだけじゃない、轟音はまだ続いている。
「い、嫌な予感がする、急ごう!」
ふつふつと湧き出る不安を抑えながら急ぐために馬を走らせようとすると、、、
「いいや、お前らはここで足止めだ。『土造 土下落』。」
突然地面に穴が空いて下へと落ちる。
ただそこまで穴は深くなく、何とか怪我は負わずに済んだ。
・・・と言うより今の声。
上を見上げると、穴の上に腕を組んで立つロドさんがいた。
「・・・ろ、ロドさん? どうしてこの森に?」
「・・・・・おおよそ、察しはついてんじゃねえか?」
今この状況下で森に一番いるはずがないロドさんがここにいる理由。先ほどの轟音と合わせてうっすらと察しはついていた。でもそれを認めたくなくて、つい彼に聞いてしまう。
「い、今すぐここからだせ! は、早く戻らないと皆が!」
「貴様、誰に向かって口を聞いている! むしろここで殺されないだけありがたく思え!」
思わずロドに食って掛かったハイルの言葉をさらに大きい怒声でロドの横に現れたペリナが遮った。
以前会った時の厳しい様相はそのままに、内にあった優しさが鳴りを潜め、今は冷たい目を向けている。
「ーーふんっ! こんな穴程度で止められると思ってるの!!」
シルルカはそう言って両手を翳して魔力を込める。
しかしその手は隣のブロンに慌てて下げられてしまう。
「ちょっ!? 何すんのよ!」
「な、何を考えてるんすか!? 相手はジャユ族の王っす!刃向かえるわけないじゃないっすか!」
ブロンの言う通り、相手は律兎さんと互角の戦いを繰り広げる八ツ首の一人、ここにいる面子で相手になるわけがない。
「ーーはっ、何でここにウチの同族がいるんだ?」
「そ、それは、だって話を聞いたっすから!」
「へぇ、で、お前はどっちにつく気だ?」
ロドからブロンに向けられた重い圧、ブロンは汗を流し、震える体を何とか必死に抑えて口を開こうとする。
しかしそれでも声が出ない、彼にとってロドはそれくらいレベルが違い、口を挟んでいい相手ではないのだ、、、。
すると、そんなブロンの服をワニィアが後ろから心配そうに握る。ブロンは振り返り、後にいるワニィアを見てグッと口を引き絞った。
「お、俺は! 実力主義のジャユ族から逃げた軟弱者っす。それでも、誇りを捨ててはいねぇ! 間違ってる可能性があるなら、騙されてるなら、自分の目で見て戦いを止める!」
ジャユ族にとっては許されない弱者が強者に楯突く、刻まれた価値観を振り払っての言葉にロドとペリナは目を見開いた。
そしてロドは嬉しそうに微笑む。
「・・・そうか、残念だ。ならやってみろ。」
タンッと軽く足で地面を小突くと穴の縁から土の棘が生えてきて上を覆ってしまう。
どうやら彼らは私たちをここに閉じ込めておくらしい。
殺されなかったのは温情ですかね、、、。




