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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー82



全員が血を垂らすと、特に悪魔が召喚されることもなく次の階層への穴が開かれた。


俺は一度振り返ってロングポートの面々にこれからどうするのかを問う。



「わがままを言うなら付いていきてっす。でもここで付いていけば足を引っ張っちまうのも理解しちまってる。なんで俺達はこれから円環を探して帰ることにするっす。」



彼の心情的には少しでも次の階層の情報を得たいし、先を越されたくないだろうが、それでも一人怪我人がいるという状況をちゃんと分析して帰還する選択をとった。



「わかった、また上で会ったらよろしくな。」


「もちろんっす。良くしてもらっちまいましたし、必ず恩はかえすっすよ。」



そう言ってロングポートの面々は手を振りながらこの部屋を後にしようとする。しかしその前にミニーにミリアが近づいて手を取った



「え?」


「少し待ってくださいね、おまじないです。」



そして、何事もなかったようにこちらに戻ってきてニコニコと手を振った。


ミニーは首を傾げながらも同じように手を振り返してくれる。



そして彼らが部屋を去った後に俺はミリアにそっと話しかけた。



「・・・何したんだ?」


「ちょっとした加護をつけました。強いのを掛けてしまうとバレますのでホントに些細なヤツです。一度受ける攻撃を8割減衰できます。」



え、お前そんな事出来るの? 今までそんなの掛けてもらった事ない気がするんだけど、、、。


あれ?って首を傾げながらも、穴が閉じる前に全員で飛び込む。また視界がグニャリと歪んで下の階層へと進んだ。




ーーー




そこは、、、氷の柱が立った大広間だった。



目の前に薄い膜があり、その先に広がる大広間の真ん中に、禍々しい鎧を着込んだスケルトンが不遜に座っている。



「えぇ、まさかのボス戦用フロア?」


「・・・俺も初めて見たな。」



まさかのグラグロも初なのか。


このフロアは本当にボス戦のためだけのフロアのようで他に迷路や宝も見当たらない。


ただ座ってるスケルトンの奥にまた穴が見えるので、座ってるボスを倒せば開く感じか、、、。



「ね、ねぇ、あれ座ってるのって、、、。」



ハイルは震えながら動かないスケルトンを指差す。

俺はただの凍った屍にしか見えなくて首を傾げた。



「・・・スケルトン最上位種『リーパー』。その強さは八ツ首にも匹敵すると言われてる。」


「は!? そんな化け物なのか!?」



俺は思わず声を上げる。

八ツ首と言えばギュリカやロドと同じ実力ということだ。そんなのがダンジョンの、しかも中間層を守る番人として存在しているのが理解できなかった。



「・・・いや、正確にはそこまでではない。八ツ首の方々は彼らを倒せる実力はあるからな。・・・ただリーパーにそれに準じた力があるのも確かだ。」



俺は「マジかぁ」と嫌なため息をつく。

ということは激闘必至の展開が確定しまったのか、この下にまだダンジョンは続くのにここで既に出てくるという事実に寒気を感じる。



「でもやるしかないか、円環もないし帰れないからな。」


「・・・まさかの円環は穴の方か。リーパーを倒せない限り、帰ることはできない。」


「もはや罠じゃないですか。」



ミリアの言う通り罠のようにしか感じられない。

つまり4階層から降りたら必ずこいつと戦わなければこのダンジョンからは出られないのだ。


半端な実力者では即死罠と同じものだろう。



「・・・はぁ、でも行くしかないか。メインは俺で行く、他のみんなにはフォローを頼みたい。」



振り返りながらそう言うとみんなは無言で頷いた。


俺達は意を決して広間へ続く薄い膜をそっと開ける。




ーーパキッ



俺達が入って少し進む、それに呼応してリーパーは身体にこびりついた氷を砕きながら立ち上がる。その片手には巨大な剣が握られていた。



・・・片手剣にしてはでかすぎるな。もはや大剣だろあれ。



俺も同じように片手にヤクラを握ってリーパーに相対する。睨むように剣を構え、力を込めるとリーパーの目に青い炎をが灯った。



ーーズガンッ!



その瞬間、爆発するような勢いで目の前に肉薄、振り上げられた大剣が大地を打ち砕く必殺の一撃を込められて振り下ろされる。

それを相手の剣の腹に自分の剣を合わせてなんとか逸らす、そして隙を突いて剣を振るおうとしたが、、、



ーーパキキッ



「ーーぐっ。」



身体が思うように動かない。

強い冷気が身体に霜を張り、満足な動きができない。


少しの硬直に剣の腹で殴るように吹き飛ばされる。

両足で氷の床を引きずりながら着地し、剣を構えた。



剣王一式 風間流派生 空斬り



空を斬る斬撃を飛ばしたが、それは空中に漂う冷気が集まって氷の壁を作られ防がれた。



【ぐぉおおお】



くぐもった唸り声とともに相手は剣を構えて溜めを大きくつくる。放たれた一撃は鋭い氷の棘と冷気を伴いながら氷柱を破壊していく。


俺はその一撃に目を見開きながら、口にそっと笑みを浮かべた。



ーーズガアンッ!



大きな音と土煙が舞ってリーパーの視線を閉ざす。

そして土埃が晴れると、そこには手を前に向けて息を切らすミリアが立っていた。


ミリアは冷や汗を流しながら律兎の前に立って、手に力を込める。



「悪いが、一対一で勝負する気はサラサラなくてな。」



ガギィンッ!



こちらに気を取られてできた隙をつき、近づいていたグラグロが剣を振るってリーパーを斬りつける。しかしその剣は即座に反応され、相手の大剣に防がれた。


ピチョンッ。


だが、上から振ってきた一粒の水滴が相手の腕を縫ってリーパーの足元に落ちる。そこから姿を形成したスイが相手の胸を貫き、魔法を放つ。



「・・・水振波。」



急速な波の波動がスイの剣を伝って放たれる。

リーパーの骨が軋み、ヒビがはいるが一度リーパーが地面を踏みつけると、伝わった波が氷の床へと逃される。


波の伝う瞬間を読んで地面へと流す離れ業、それを魔物の勘でやってみせるか、、、。


氷の床に伝わった衝撃によってスイとグラグロはバランスを崩す。その隙にリーパーは大剣を振り回して二人を追い払う。



「空斬り。」



その間を通して再び斬撃を飛ばす。

斬撃はリーパーの胴体に命中し、禍々しい鎧に大きな傷をつけた。



「ーーちっ、壊せねぇか。」



すると、リーパーは重い重低音の唸り声を上げ、魔力を自身に集中させる。



その一瞬、魔力が高鳴り一番集中する場所に一本の短剣が刺し込まれた。


リーパーは振り向くが、すでにそこにハイルはいない。

ハイルが刺し込んだ短剣にはミリアの光魔法が込められている。


ミリアは手を短剣に向け、そっと一言つぶやいた。



「『光乱反魔』。」



バァンッ!



一番魔力を集中させていた箇所の濃い魔力が乱れ制御を失う。制御を失った魔力は大きく暴れ、爆発するように反発した。



「へぇー、あんな感じになるんだ。」


「普通の魔法は基本黒魔法と呼ばれ、適した魔力が混ざり合うことによって事象の具現化を詠唱や杖で補助して行使されます。それを白魔法による女神様の加護による純度の高い魔力によって混ざり合うことを阻害するとああなります。」



うん、君誰? なんか魔法のことになるとこいつ結構詳しいよな。実際よくハイルと魔法談義してるし、、、。



リーパーは魔力の暴走によって膝をつく。しかしその目の灯火は消えていない。



【があああああっ!】



落とした剣を拾って振り上げると同時に氷の氷柱がいくつも地面から生える。スイもグラグロもうまく回避して怪我は負っていない。


俺はそっとヤクラを構えて横薙ぎに振り切る。



「幻渡り。」



すべてを通り過ぎてリーパーの体を斬る。すでに限界寸前だったリーパーは一度固まって灰のように崩れ落ちた。



「・・・ま、流石に八ツ首級って言っても知性と理性がなけりゃこんなものか。」



ギュリカだったら大振りな力一辺倒な戦い方はしない。ロドだったら魔法で常に細かな隙を埋めてくる。

その繊細さがなくただただ人間離れした膂力で攻撃を振るってくるだけなんて大した脅威じゃない。


すると、奥の膜がひび割れ、次の階層へ渡る穴が開放された。



「思ったよりも楽に終わったな。」


「・・・楽?というよりは策がうまく噛み合った感じ?」



そんなギリギリだったかなぁ?と思ってみんなを見ると、同じような感想らしい。


まぁでも噛み合ったなら良かったじゃん。てな感じで次の階層への穴へと向かうと、その横らへんの壁にやけに存在感のある二対の双剣が掛けられていた。



「・・・これってもしや?」


「・・・ダンジョン生成の一品だな。」



おぉ、てことは今度こそ罠とかもなく純粋な報酬かな?


ちなみにあのときの綺麗な槍も一応ボックスには収納してあるよ。案外高く売れそうだったしね。



「誰が取る?」


「・・・双剣は扱える気がしない。」「・・・あんな細いのはすぐ折れそうだ。」「綺麗なので欲しいと言えば欲しいですね。使えませんけど。」「怪我しそう。」



なんか全員消極的じゃね?

せっかくこんな綺麗であまりに希少性が高そうなのに全員の反応は淡白なものだ。せっかく宝が現れてくれたのにこんな反応じゃ宝も浮かばれないね。



「んじゃこれはハイルのね。」


「え、ぼ、僕!?剣とか使ったことないよ!?」


「あとで教えるよ。」



なんとなく、本当に確信もないただの直感だが、この剣はハイルにぴったりな気がした。剣の持つ雰囲気とハイルの魔力がどこか似ている。


俺は壁にかけられていた剣を取り外してハイルに手渡した。



ハイルは「・・・あれ? 思ったより軽い?」と不思議そうにしながら剣を腰に差す。



「よし、んじゃ次の階層へと渡って円環を手に入れたら帰るか。」


「あ、も、もう戻るの?」


「中間ボスも倒したしちょうどいい区切りだろ。」



別にここで戻ってもいいんだけど次の階層の様相くらいは窺っておきたい。それに全員まだ余裕がありそうに見えるが、リーパーとの対面で怖気が走るほどの殺気に精神を削られているはずだ。



・・・それになんとなーく、上で動きがありそうだし一度戻ってもいいだろ。



そう考えてもう慣れた暗闇へと足を突っ込み次の階層へと降りる。

そこに広がる景色は、、、そう、一番最初の第一階層と同じ、静止した海面と帆船がまばらに突き刺さったフロアだった。




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