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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー81



お互いの紹介も終わったので、怪我の具合と状況を確認しようと休息を取ることになる。



・・・ま、ぶっちゃけ俺達は入ったばかりだから疲れてないけど。



「なるほどなぁ、罠にはまったのか。」


「はい、宝を取った瞬間岩が折れて大きな音が鳴っちまって。そしたら多くの魔物が、、、。」



なるほど、そういう罠もあるんだな。

この前俺たちがあったのは対策できなければ完全な即死罠だったからね。



「先ほどは失礼なことを言っちまってすみません!まさか善意で助けていただいていたとは思ってもいなくって!」


「・・・まぁ、普通はダンジョン内で貴重な薬を分ける事はまずないからな。」



あ、そうなんだね。


グラグロが頷きながらそう言うとスイとハイルも同じように頷いている。でもミリアがいるからあまり問題ないんだよなぁ。



「・・・ミニーはいつ仲間に?」


「少し前にこのまちに立ち寄ったら前衛募集の張り紙を見て参加しました。一時的なものですけど前衛をもう一人探してたみたいなのでちょうどいいかなと。」



あ、雇われの傭兵だったのか。


まぁ珍しくはないのかな?自分たちのパーティーの穴を埋めるのに人を雇うのは悪くないしね。



「・・・それで? 仲間の一人が怪我を負ったわけだがお前らはどうする。・・・円環は手に入れているのか?」


「い、いや、それは、、、。」


「ないのか。」



即答しなかったってことはないんだろうね。

持っていたら別に隠す理由はない。



・・・さてどうするかな。



俺たちに取れる選択肢は2つ。


1、別れて次の階層への手がかりをさがす。

2、一緒に円環を探してあげる。


2とかクソ甘いかな?でも俺たち余裕あるんだよなぁ。足元見られそうで嫌だけど、うーん、悩む。



「大丈夫です!まだ私は動けます!」



ミニーはそう言ってまだ動けると立ち上がる。

確かに思ったよりダメージ受けてはいなさそう、ただ骨折っていう致命的な怪我を負ってはいるけど、、、。



「・・・無理は命を捨てるだけ。」


「でも!」


「ぼ、僕もやめたほうがいいと思う。怪我は悪化すれば治るのに時間がかかる、よ?」



それに関しては全員が同意見なのか、無言でミニーに視線が集まる。そしてその視線を受けたミニーは気まずそうに座り直す。


するとミリアがそっと手を挙げた。



「あの、このままほっとくのはそれはそれで危ないと思いますし、次の階層への手がかりを探しながら円環も探せばよいのでは? 別に一人くらい守れますよ?」



サラリと提案されたミリアの案に何を無茶なって笑おうとした、が、、、


あれ?別にありか?


それなら俺達も進めるし、彼らも怪我人を連れてこの広いダンジョン内でメンバーが欠けた状態のまま探索する必要はなくなる。

もちろんミリアの障壁がメインだけど、さすがにそこは信用があるしね。



「俺達も手掛かりは欲しいし、助けてくれるならありがてっすけど。」


「・・・少しだけ、理由を教えてもらいたい。」



すると、ルームと名乗った蝙蝠の羽根を持つ青年は疑うような眼差しを向けながらそう言う。


無償の助けなんてそりゃ怖いか。



「・・・ミニーがいるし、助けないとかなって。」


「スイお姉様、、、! 大好き!」


「・・・暑い。」



ミニーに飛びつかれてスイは少しだけ無表情に鬱陶しそうな影を落としている。するとなぜかミリアがミニーを引き剥がして、スイを自分の方に引き寄せた。


何その嫉妬。



「ま、ダンジョン経験者の探索ってのを見てみたくてな。グラグロはいるけど、うちのパーティーは基本的に誰もダンジョンに潜ったことない。・・・先陣切って進んでもらうっていう斥候みたいな役割を頼みたい。」



建前だけどね。

でも俺たちの攻略は魔力と技量とボックスのゴリ押しだから正当な探索というのは見てみたい。


それに楽に進めるならそれに越したことはない。確かに守る範囲は増えるがささいなものだしね。



「・・・・・ギリギリ納得しました。」


「そりゃどうも、悪いようにはしないからよろしく頼むよ。」



ニコッと笑って言ったのに何故か相手には顔をしかめられた。おかしいな、笑顔は壁を溶かすためにあるんじゃないの?何故か強固になったんだけど、、、。



「(ちなみにミリア、骨折は治せるの?)」


「(え、治せますよ。特殊なポーションを持ってるで押し通してもいいですけど治します?)」



そう言って手をワキワキさせるミリアの手をそっと降ろさせる。治してもいいんだけど怪我って簡単に治るものって印象はつけないほうがいいんだよな。怪我するから人は無茶をやめて、やってはいけないことを理解するんだし、、、。


それにやっぱ人バレは仕方ない場合を除いてできるだけない方がいい、どこから魔王軍が嗅ぎつけてくるか分からないしね。


さて、方向性はなんとなく定まったし進むことにした。


ここからわからないことが多いし上層みたいにサクサク進めることはないだろう。



・・・はーやくかえりたいなー。




ーーー




ーー???




地面に赤いシミが広がる中、ユースはその真ん中でニコニコとした笑みを浮かべながら剣についた血を払う。



「いやー、久しぶりに剣を抜いたね。たまには歯ごたえがないと腕がなまるし嬉しい悲鳴かな。」


「真祖の吸血鬼、、、相手、に〜、嬉しい悲鳴とか、怖いです〜。」



息も絶え絶えになったミルルは動かなくなった左手の出血を抑えるために応急処置をしながらユースの軽口にそう返す。彼はそんなミルルに向かってニパッと笑う。



「にしても珍しく苦戦したね? 最近デスクワークが増えて腕が錆びついた?」


「・・・貴方じゃなかったらブチギレて喧嘩売るところですよ〜? 真祖なんて普通、相手にできるものじゃないですから〜。」



太陽や杭、銀すらも克服した完全無欠の不死存在。

長い年月を生き、この世のありとあらゆる事柄に精通した怪物相手に経った20数年しか生きてない人間が勝利できただけでも褒めてほしい。


むしろそんな相手に無傷で完勝するユースのほうがおかしいのだ。



「そうかなー? この世にいるんだしやりようはいくらでもある気がするけど、、、。それこそ『厄羅』じゃないんだし。」



彼が名を挙げた世界を食らい尽くそうとした厄龍の名にミルルは眉をしかめた。



「・・・・・先生はいい加減〜、記憶戻りましたかね〜?」


「んー、まだじゃない? 彼につけられた『呪縛』は魂に刻まれちゃってるからそれこそ一度命を落とすような出来事がないと無理だと思うよ。」


「・・・人間って命は一つなんですよ〜?」


「それくらいギリギリじゃないと無理ってことさ。」



ユースは軽く考えるように頭を捻っていたが、ミルルはその答えに少し俯く。彼の呪縛、それを知っている私達は彼に対して何もできることはない。いや、できないのだ。



「そもそも霊界干渉のやり方なんて僕だって律兎のを見てから覚えたんだしね。その前までは理論しか思いついていなかったんだ。」



律兎は霊界干渉を当然のように行えるが、それができるのは律兎以外にユースだけだ。他の七剣達は精霊などの霊界の存在に対して有効打は与えられても決定打は与えられない。

完全に倒し切るのは不可能なのだ。



「・・・なのにあの人は〜、私達の至技を不完全とはいえコピーしますからね〜。どんなチートだ、って話ですよ〜。」


「だねー。皆が他の至技を覚えられないのって目指したものが違うのもそうだけど、まず体の構造の問題もあるからなー。普通真似しようとしたら身体に合わなくて死ぬよ? 僕だって似たようなことはできるけどあれは別のやり方で再現してるだけで本家のやり方に則ってないしさ。」



と、真似ができる人がケタケタ笑いながら言う。

そう、もし私が剣鬼の至技を真似すれば、心臓が破裂して死ぬ。逆に剣鬼が私の技を真似すれば、流れが伝わらずに自分に返って死ぬ。そんなピーキーなものなのだ、至技というのは。



「・・・・・ただもうそろそろ1度目の転機が律兎に訪れるだろうね。流石に他世界だ、僕も見通すのは難しい。」



初めてユースは真剣な顔で心配そうに悩んでいる。

彼がここまで真面目に考えるのは珍しく、ミルルは少し驚いた。



「僕たちものんびりしてられないよ。彼に喚び出された時、負けるなんてことがないようしないとだからね。・・・悪いけどこの程度にてこずってちゃだめだよ。」



ユースはそう言いながら厳しい目をミルルに向ける。

ミルルはゾクッとした冷や汗を流しながらも、彼の言葉にやる気を滾らせて、立ち上がった。



「真祖の吸血鬼がこの程度、ですか〜。厳しいですね〜。」


「彼がこれから相手にしていくのはそれ以上だからね。もし彼に置いて行かれたくなかったら必死に食らいつくことだよ。・・・ふふ、彼の一番弟子を名乗りたいならさ。」



突き放すように厳しく、だがどこか期待を向けてくる。その何とも言えない感覚に溺れることのないよう気を引き締めた。


見上げた月に目を細める。

次に会う時、彼に弱いところを見せなくて済むように、、、。




ーーー




「案外あっさりとたどり着いちゃうもんだな。」


「ですね。」



結構な大所帯になってしまったが、思ったよりも問題はなく部屋っぽい場所まで来れた。


綺麗に切り抜かれた正方形の部屋には壁に描かれた黒い円に向かって彫られた溝が向かっている。



「・・・あとは渡る方法、だけだね。」



スイが壁に手を添えながら、探るように魔力を広げている。その間に俺は腕を組みながらチラリとロングポートの面々の様子を窺う。


彼らも特に疲れた様子はなく、これからどうするかを話し合っていた。


ロングポートの探索は危なげがなく、まさしくプロと呼べる安定したものだった。


まずルームが音の反響転移で洞窟の構造を把握、見えない場所に潜む敵や罠を察知。そしてワニィアが罠の解除と渡れない崖に糸を張って簡易的な橋を作って向こう側へと渡る。

戦闘になったらブロンが前に立って敵を引きつけ、ミニーが魔法で援助という見事な連携だった。


ミニーは腕が折れているが、魔法を使うのは特に問題ないらしい。ミリアが常時障壁を張って守ってはいるが、特に攻撃は受けたりしていない。



それにしてもやっぱりダンジョン探索は大荷物なんだなー。



ブロンとルームはほかの二人よりも大きめなリュックを背負っている。単純な筋力の差だろうけど、だいぶ足腰が鍛えられそうだ。



「・・・やっぱミリアにも持たせるか?」


「それごと律兎さんが背負うことになりますので荷物が増えるだけですよ?」



荷物になってる自覚はあるのね。利便性が高いから捨てたりはしないけどさ。



「まぁいいや、ところでこれどうやって次の階層にいけんの?」


「うん、ま、まったくわからな、、、いったぁ!?」



足を滑らせたハイルが溝だらけの部屋で思いっきり転ぶ。頭を打ってついでに腕を切ったらしく、赤い血が床に垂れた。


すると、その赤い血が溝をたどって吸い込まれるように黒い円に流れていく。そしてハイルの血は円に飲み込まれた。



「つまりそういうことか。」


「ですね、ハイルくんの血を絞り尽くしましょう。」



あっれ、ハイル一人の血で賄おうとしてる?鬼かな?



「一人分の血で足りるのかな?」


「ま、待ってよ!? 人数いるんだし皆から少しずつでいいじゃん!」


「え、指切るの痛そうですし嫌です。」



いやそうだけどさ、そうだけどすげぇぶっちゃけたなこいつ。


確かに自分の意思で血を出すのって結構勇気いるよね。俺も契約とかで血を指から出すことあったけど普通に嫌だったもん。



「・・・気持ちはわかるけど、でも我慢しよ? せっかくハイルが見つけてくれたんだし。」



スイはそう言いながらナイフを取り出してそっと自分の指に当てる。スイの綺麗な細い指にナイフが押し当てられて血が、、、



「ま、待ってやっぱ僕に任せて!」


「・・・え?」



滲む前にハイルが焦ったようにスイの手を取って止める。


そしてハイルはナイフを取って自分の腕に、、、いやなんで?



「いったぁあああっ!?」


「・・・そ、それはそうだよ!? ・・・早くキズ見せて!」



好きな人が傷つくよりは自分って考えだと思うけど、気合い入れて勢いつけすぎたね。腕から血がダクダク溢れ、スイがポーチに入れていたポーションをハイルの腕にかけている。


貴重な薬をこんなお馬鹿なことで消費してしまっているのを探索ベテラン組に冷たい目で見られて気まずい中、円を目を細めて凝視する。


思ったより血は溜まったがそれでも円の四分の一も満たされていない。



「結構欲深いなこの円、、、。血を貯めるのに俺達の血を注ぐって言うよりは魔物を連れてきて血を流したほうが良さそうだ。」


「と言うかそれが本来の開け方では?」



ミリアも俺と同じような感想を抱いたようで、隣で納得したように頷いている。


ただ魔物を連れてくるのがめんどくさい。


溜まり具合的にはここにいる人数で少しずつ垂らせば賄えそうだな。



「じゃあみんな集まれー、ほらー、ひとりひとり血を流すよー。」


「・・・悪魔召喚されそう。」



スイの嫌な予感のよぎるセリフを考えないようにしながら、各々血を垂らして円を満たすのだった。





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