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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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100/107

喚ばれた剣聖ー100



なーんか嫌な気配がしたから元凶目掛けて剣を振るったけど、あんな派手に魔法を使おうとするなんてな、、、。


・・・正直、あれだけ派手だと場所を教えてくれてるようなものだ。


遠すぎると状況がつかめなくて安易に攻撃できないけど、里の中心、それも気味の悪い気配を感じ取れればほぼ確定で悪意のある攻撃と判断してもいいよね、たぶん。



「余所見とは余裕だな?」


「ーーっげ!?」



ギュリカの声に、ハッと我に返る。


その隙を疲れてギュリカの剣を真正面から受け止めてしまい、そのまま吹き飛ばされてしまった。


木の幹に背中を思いっきり叩きつけられ息がし辛い。



追撃で黒い影みたいな狼が顔を喰い千切ろうとしてくるのを下から蹴り上げて魔力を送る。

それだけで狼は弾けとんだ。



「ぬおおおおっ!!」


「・・・いい加減貴様は鬱陶しいな。もう飽きた、とっとと眠れ。」



ギュリカを狙ったロムドットの斧を片手で受け止めた後、ギュリカは背後に扉を召喚する。


天能と共に片手に黒の剣を持ち、それを突き立てるとボッと短い音と共にロムドットの体に穴が空いた。



「ーーぎぶっ、だらああっ!!」



だが、それでもロムドットは足を踏みしめて斧を下から振り上げてギュリカにぶつける。

決死の一撃にギュリカは弾かれ、吹き飛んだ。


しかし限界だったのか、ロムドットは膝をついてそのまま動かなくなってしまう。



「ふん、しぶとかったな。」



ロムドットの実力は俺とギュリカには一歩劣っていた。それでも、気力と頑強さで食らいついていたのは見事の一言に尽きる。


ギュリカは鎧の埃をはたきながらこちらに視線を送る。



「さて、ようやく一対一だ。」


「・・・おまえ俺なんかの相手してていいのか? 一応魔王軍の指揮官だろ?」



今更なことを聞くと、ギュリカは「ふんっ」と鼻をならした。



「総指揮であって、現場の指揮は優秀な副官に任せている。もちろんこの異界を見つけるための印もな、、、むしろ貴様のほうこそ余裕を見せていいのか?」


「・・・こっちにも優秀な仲間がいるからな。」


「くくっ、そうか、それはさぞ不安に揺れているだろう。」



どこかこちらの心情を透かす様にギュリカは忍び笑う。


不安がないかと言えば嘘になる。

七剣という俺よりも優れた仲間達なら確かに安心だ、でもいま彼らはいない。


今の仲間達はまだ発展途上の段階だ。

彼らは伸び代があっても成長しきてれいない。

それでも戦いは待ってくれない、なら信じるしかない。土壇場の馬鹿力をな。



「お前こそ、油断するなよ? 高みにいてもいつ引きずり落とされるかわかったもんじゃねえからな?」


「ああ、肝に銘じよう。」



ギュリカは天能を解放させて戦闘態勢をとる。

それに対して俺もガイアとヤクラを構えて、全力で踏み出す。


早くかたをつけないと、、、。




ーーー




黒い鎧を身に纏ったギュリカの副官である『キラグ』は岩に刻まれた文字に触れる。


キラグはカリティの派手な戦闘に紛れて前線を越え、既に森の深くまで潜っていた。



「・・・なるほど、異界ですか。」



ギュリカの残した暗号を読み解き、思案げに顎に手を当てる。

異界を空ける手段は空間に歪みを作らせるほどの圧倒的な破壊か、魔力を多く注いでこじ開けるかのどちらかになる。



だがそれは強行手段をとるならばの話、、、。



皆が皆、そんな開きかたをしていれば辺りはボロボロになるし、何より目立つ。正規の手段としてはキーがあるのが当然。


キラグは後ろの部下に目配せして、捕えたエルフの男を運ばせて目の前で拘束させた。



「・・・さて、どうやってここを開ける? 教えてくれればこちらも穏便に済ますことが出来るぞ。」


「ーーっ、教えると思うのか?」


「そうか。」



静かに呟きもう一人エルフを連れてくると、足の指に向かって剣を刺した。



「ぎっ、ぎゃあああああっ!?」


「ーーっ、おい!やめろ!」


「やめると思うか? 自分の痛みにはある程度耐えられる、しかし他者の、それも顔を知る者が苦しんでいる様は見るに耐えないものだ。」



キラグはそういいながら腰を下げて痛みに悶絶しているエルフの肩に剣を添えて皮膚を切り落とす。また苦痛に叫ぶがその口を無理矢理押さえた。



「・・・どうする? 次は、鼻を、その次は耳を落とす。お前は痛くないだろうが、早く答えなければこいつは死ぬぞ?」



痛みに震え、涙と鼻水を垂らすエルフは震えながらなにかを懇願するようにもう一人を見る。

その視線に耐えかねて無傷の男は静かに漏らす。



「フラヌ・ユラ・シュクラスト、そう魔力をこめながら言えば開く。」


「そうか、ありがとう。」



キラグはそう言って二人の首を落とした。

すぐに血を払って同じように呟くと、景色が歪み、異界の門が開く。


特に達成感もなく、キラグは異界に入ろうとしたが、冷たい殺気を感じて後ろに跳ぶ。


すぐ後ろにいた部下が斬られ、すぐに剣を抜いた。



後には異界の門の前に2人の少女が立ち塞がった。



一人は首を落とされたエルフを見て顔をしかめている。



「ミスルル族か、何故ここにいるのか知らないが、邪魔をするなら敵になりえるぞ?」


「・・・上等。」



スイは静かに怒気を燃やしながら跳び出す。

流れるような剣技でキラグと斬り結ぶ。



「・・・水刃。」



剣の技量では劣っている。

しかし、出来る隙を補うように魔法を発動させて、スイはキラグに踏み込ませないようにしていた。



「スイ姉様! その男は『首無し公 キラグ』、首無族です!」


「・・・!!」


「余計な情報が入るな。」



スイはキラグの剣が僅かに揺れたのを見て、すぐに距離をとった。

キラグはめんどくさそうに溜め息をついて、剣を仕舞う。



「・・・首無族、死の呪いを得意とする種族。」


「御名答、後少し打ち合えれば終わりを確定出来たのにな。」



落胆した様子のキラグを警戒しながら首無族の種族魔法を思い出す。

確か触れると相手の寿命を奪い、物伝いでも呪いを伝播させることが出来たはず、、、。



「・・・厄介。」



スイは小さな水球を手のひらに浮かばせ、それをパチンっと弾かせる。



「何をした? 無意味、、、な、訳はないな。」



キラグは腰を落として、呪いを発動させた。

黒い蛇のような小さな無数の竜がこちらに伸びてくる。


しかしそれは流れるように逸れていく、、、。



「・・・流れた?」



キラグは自分の魔法の予想外の軌道に首をかしげる。


その隙をついて振るわれたスイの剣をキラグは小手でうけた。


黒い靄が剣を伝ってスイに上っていくが、その靄はまた同じように流れる。



「流れが操られている?」



スイは何とか相手をしながら汗を流していた。



・・・思ったよりも集中力を削られている。



そう、スイはほんのわずかな時間にミルルから教わった技を実践していたのだ。



・・・・・。



「私の真似をしなくていいんですよ~。」


「・・・でも、律兎は、真似して、みろって。」



全部を返されて息も絶え絶え、汗だくになりながら何とか返事を返す。ミルルは苦笑しながら剣をくるくるしている。



「確かに~、私も~真似してみろとは教えます~。でも~、私を参考に~、真似し続けても限界はきますよ~。」


「・・・そう、なの?」


「ええ~、だって~、これは私が一番得意で練習したやり方ですから~。一から教えるなら~、それでもいいんですけど~、スイさんは~、自分の能力を応用して~、伸ばすべきだと思うんですよね~。」


「・・・応用。」



ミルルさんから言われたことを反復する。


得意なことと言えば水魔法と、波を読むこと。

それを受け流すことに応用するとは、、、



「・・・もしかして、魔力じゃなくて波を見たほうがいい?」


「・・・・・ふふっ、理解が早いですね~。ただ少し違います~。波を見るんじゃなくて起こさせるんです~。うすーく、水を満たし、その内側で相手が動いた際に感じる流れを読む。その方が~、スイさんの性質には合ってると思いますよ~。」


「・・・でもそれって、魔力の揺らぎを見るのと同じじゃ?」


「読んで~、操るんですよ~、流れを手にとって任意の方向へと流す~、最初は返せなくて流すのが精一杯でも~、最強の防御には変わり無いですからね~。」



・・・そんなこと出来るのだろうか?


水魔法は得意だが、もちろん薄めれば干渉するのは難しくなる。要は水の性質だけを残して極力薄めた魔力を操れってことだ。


とてつもない集中力と、器用さが必要になるだろう。


そんな不安を感じ取ってる自分の顔の横をギュンッ!と何かが通りすぎた。


後ろをチラリと見ると、木に撃ち抜かれたような跡が残っていた。


顔を青くしながら前を見ると、ミルルさんは鼻歌を歌いながら剣を変わらずくるくるしている。



「たった小石一粒~、たった葉っぱの一枚~、その全てが武器になりえます~。この森は特に~、私と相性がいいですね~。」



その言葉に引きつった笑みを返すことしか出来ない。


まさか今のは小石か葉っぱ?


レベルと言うより段階が違いすぎる。



「簡単に到達できると思わないでくださいね~? 目指す壁はまだまだ高いですよ~?」



そう言って浮かべられた彼女の笑顔は黒く、目は嗜虐的に光っていた。


挑発するようなミルルに対してスイも汗を流しながらも笑みを浮かべる。



「・・・望むところ。」



・・・・・。



結局あのあとも矢より早く飛来する礫に翻弄され、一回も返すことが出来ずに力尽きてしまった。


でもまだあのときは訓練の範疇にすぎない。

いまが本番、ここで見せきるしかない。



「ふむ、先ほど弾かれた水球によって魔力の流れが作られたのか? 何と器用な、そんなものいくら集中したところで出来るものではあるまい。」


「・・・でもできてる。」


「なるほど、それなら半端な攻撃は意味をなさないな。」



・・・くる。



相手から強い殺気が放たれると、同時にキラグは剣を真上に投げた。

それに視線をとられるが、キラグが走り出したのを波の揺れで察知する。


流せる隙がないほど濃く込められた死の呪いを纏った拳が突き込まれるのを、魔力を水に変えて無理矢理逸らした。


だがそれに対応を迫られ、上から降ってくる剣を大袈裟に避けることになる。態勢を崩した自分に、キラグは落ちてきた剣を持ち直して振りかぶった。



「・・・水霧!」



到達する前にからだの内側から水の霧を発生させて相手の視界を遮る。何とかその霧に乗じて体を水滴に変化させて剣を躱した。


そして下で魔力を練り上げ、相手に対して放つ。



「・・・水牢渦!」


「死人の俺に、水責めは意味がないぞ。」



確かにキラグは首無族、呼吸はしていないだろう。

でも逆巻く渦によって脱出は難しいはず、、、。


そう思ったが、キラグは足から黒い鎖のようなものを伸ばして地面に固定する。ギュンっと勢いをつけてそのまま水牢渦から抜け出した。



「おっと。」



だがその拍子にキラグの首が外れる。

首無族は文字通り首と体が離れたアンデットの一族。


ただその首が離れると、死の呪いが放たれると聞く、、、。


聞いた通り、離れた首から呪いが溢れだした。


周りにいたキラグの部下らしき魔族達は呪いに侵され倒れていく。



・・・まずい!



すぐに自分と、邪魔が入らないよう他の魔族を牽制してくれていたミニーに流れのある水球を張って呪いを流す。


すると、キラグは不機嫌そうに舌打ちした。



「・・・ちっ、やはり少し骨のある相手には呪いなど無意味だな。雑魚にしか意味をなさん。」


「・・・仲間が、死んでるのに。」


「俺について来ているなら承知のことだ。」



キラグはついてきた仲間が死んだと言うのに至極冷静で、冷徹だ。

それでも、スイは心を落ち着けるように息を整える。憤りは奥底に、剣には冷たさを乗せろ、、、!



ーーリィンッ



「・・・え?」


「?」



するとその瞬間、透明な煙のような何かが流れてるのを感じ取れる。そしてその流れは剣にまとわりつくように追随していた。


よくわからず少し剣の先端を動かすと、同調するように流れはついてくる。


・・・波? いや、波は感じ取れるだけで見えたことはなかった。でもこれは確かに見えている、波のように感じられる、読み取れる。



「・・・・・何を突っ立てるのか知らぬが、良い的だぞ。」



放たれる黒い大蛇のような呪いが大口を開けて迫る。その濃い密度に、先ほどまでの流れを操作するのでは通じないと理解できた。


できた、、、が、、、



透明な波が呪いに乗っているのも同時に見て取れた。


それが剣の先に到達するのと同時に合わせるように振るうと、同じように呪いもついてくる。



ーーズオンッ!



なぞるように体を回しながら、キラグに向かって剣を振り払う。すると黒い呪いは、まるで初めからそういう軌道だったかのように勢いよく放たれた。



「ーーなっ?!」



油断していたキラグに呪いはぶつかる。

衝撃でキラグは吹き飛んだが、よろめきながら立ち上がった。


既に死んでいる死人に死の呪いは意味をなさない。

それでも返された呪いにキラグは困惑する。



「・・・何をした?」


「・・・返した。」



端的に真実を返す。


キラグは警戒心を引き上げて、剣を構えて腰を落とした。


飛び出してくる、速度はいままでで一番早い。


それに同時にキラグの影から別の波も感じ取れた。迫ってくる剣にまた同じように波を合わせ、下から感じ取れる気配にぶつける。


すると、キラグの剣と影から現れた黒い刃がぶつかった。



「何故見えている!?」


「・・・。」



わからない、何故こんな景色が見えているのか、むしろ私が知りたいくらいだ。


自分の鼓動がやけに早く感じる。

でもいまは体がひどく軽かった。



今度はこちらから走り出す。

透明な波が集まる場所を避けると、相手の攻撃がうまく空振った。


そして次に振るわれた片手剣を受けるのではなく合わせるように引き付け、波が満ちた時を狙って弾き返した。



ーーバキインッ!



「ーーバカ、、、な、、、。」



弾かれた剣はすさまじい勢いで回転し、キラグの胴体を斬り抜けた。


回る剣は後ろの大木に刺さってようやく動きを止める。



「・・・ごふっ! 負け、、、るか、、、この、、、私が、、、死人が、、、また、、、死ぬとは、、、滑稽、、、だ、、、な、、、。」



ーーゴシャッ



キラグは黒い煙を漏らしながら崩れ落ちた。

そのまま動かず、光を失っていく。



「はぁ、はぁ、はぁ、、、はぁ、、、ひゅーー、ふーーー、はぁーーーっ」



何とか決着がつき、息を整えようとするが、うまくまとまらない。


緊張感の喪失に、一気に激しい頭痛と倦怠感に襲われていく。



「ーーお姉様! だ、大丈夫なの!?」


「・・・み、ミニー、少し、、、動けない、、、かも、、、何とか、、、したけど、、、里がバレるのは、、、時間の、問題、、、みんなに、、、伝え、、、」



ドサッ



なんとか歩きだそうとした瞬間に足の力が入らず崩れ落ちる。そのまま意識を保つことができず、気を失ってしまうのだった。






なんだかんだ100まで書けました。


でもぶっちゃけ100でエルフの里終わらせたかったんですよね~(*´・ω・)


もし面白いと思っている方がいらっしゃいましたら、遅筆ではありますが、付き合って頂けますと嬉しいです。

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