↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第五話 -実技試験-

 火球(ファイアボール)、風刃(ウィンドカッター)etc

 初級から中級程度の基礎魔法が飛び交う。


「あれって昨日俺がぶつかった!」


 個人を映す画面の一つにはシューリヒトの姿があった。

 素早い動きでステージを駆け回り、体術のみでゴーレムを破壊していく。


「やっぱり強かったんだな! ぶつかって痛いと思うとか久しぶりすぎてビックリしたんだよ!」


 獣化の力をもつオズに勝る耐久力だ。

 きっとすごい固有魔法を持っているのだろう。


「グループ2の人は準備室に移動してください」


 アナウンスでオズのいるグループ2の移動が始まる。


「いってくるな!」


 そうやって笑顔で手を振りながら去るオズを見送った。

 レイも映像を見ながらではあるが、一応手を振り返している。


「そこまで!」


 20分の制限時間が終了し、受験者はぞろぞろと準備室に戻っていく。

 ランキングを見るとシューリヒトが1位で16体。

 2位は9体でかなり差がついている。

 筆記はかなりいけたので、この調子なら実技では4体あたり討伐すればなんとかなるかもしれない。


 画面に映るステージは魔法によってどんどん修繕されていきあっという間に元通りになる。

 準備室のゲートが開き、いよいよ試験開始だ。


「グループ2、試験開始!」


 ん?

 合図と同時に映像に映ったのは両脚兎化(ビーフス)で高く跳び上がったオズの姿だった。


「やってやるぞ! 右獣拳(ラブパンチ)!!」


 脳まで揺れるようなとんでもない轟音が待機室にまで響いた。

 おいおい、嘘だろ。


 画面に映ったのは準備室から対角方向にステージの1/4以上が衝撃波で吹き飛ばされ、抉られたようになった景色だった。

 崩落した建物、大きなクレーター。

 準備室付近は災害の後のようになった。

 討伐数を見るとオズが一位になり26体と表示されている。


 だがオズはそれでは止まらなかった。

 再び跳び上がり、ステージ中央に右獣拳をもう一発。

 討伐数は56体にまで増えた。


「そ、そこまで!」


 試験開始から40秒もたたないが終了の合図がかかる。


「試験場の過剰な破損とゴーレムの不足から公平を期すためグループ2は時間をおいてもう一度試験を行う」


 本気のオズの技を見るのは久しぶりだったがこれほどとは。

 さすがに学園側も想定外だっただろう。

 何せ他の受験者は瓦礫の山を越えるので精一杯だ。


「おいおい嘘だろ」


「同じグループじゃなくてよかったぁ」


「凄すぎだろあいつ」


「あんなん見たら自信無くすわ」


 周囲もざわつき始め、恐怖、感心、安堵、さまざまな声が聞こえてくる。

 無理もない。

 これで平常心を失って平均点が下がりでもしてくれたら俺的には1番嬉しいのだが・・・


「レイもやりすぎんなよ?」


「目立ちすぎても嫌だし本気出す気ないけど、ギリギリ特待のあたり目指してみる」


 特待生は戦士科の実技試験と総合点のそれぞれ2位までと学園全体の筆記試験3位までが対象だ。

 学園生活にかかる費用は全て免除されるので、寮暮らしになる俺たちには欠かせない。

 冗談まじりに突っかかってみたが恐ろしい返事が返ってきたものだ。


「それではグループ2、試験開始!」


 20分ほど経ったところで、グループ2の2回目の試験が始まった。


 試験が始まると1人の女の子が目につく。

 さっきの時間でオズの一撃に皆が唖然とする中、同じステージで1人だけ瓦礫を越え、走り出していった銀の長い髪が綺麗な女の子だ。

 他者に流されずに泥臭く挑もうとする姿勢、素晴らしい!


「あいつだぞ」


「おいおい、やばいって」


 映像を見ていると後ろの方が騒がしくなってきた。


「ただいま・・・」


 振り返るとすっかり有名人になったオズが帰ってきていた。

 だがその表情はどこか曇っている。


「あなたは2回目には参加しなくていいって追い出されちゃった。これヤバいやつかな」


「あー。ヤバいだろうな・・・」


「え、どうしよう。俺だけ不合格とか嫌だ!」


 少しからかってみるとオズは顔を真っ青にして怯えはじめた。

 あれだけの強さを見せて不合格なら誰が合格するんだ。


「冗談だよ。ランキングも1位だし、筆記0点とかでも無い限り合格だろ」


「そ、そうか。1点くらいなら取れてるはず、多分」


 安心させようと思って言ったはずが、まだ少し怯えている。

 あれだけ強大な力を持っているやつとは思えないな。


 そんなことを思いながら再び映像を見るとまた銀髪の女の子が映っていた。

 圧倒的といえるほどではないが、魔法を纏わせた剣で安定した戦いをしている。


「えっ! あの子魔法装填できんのか!」


 オズも同じ映像を見ていたようで、女の子に感心している。

 魔法装填とは武器に魔法を纏わせる技術で、難易度の高い部類にあたる。

 彼女もまた上位にくるのではないだろうか。


「グループ4の受験者は準備室に集合してください」


 他の受験者をみているとあっという間に俺のグループの招集が始まった。


「頑張れよ!」


 そうオズに背中を叩いて送り出された。

 レイもながらではあるが手を振ってくれている。


「ああ、行ってくる!」


 そう元気よく準備室にむかったが、到着した途端とてつもない緊張に襲われる。

 先ほどまではオズの暴れっぷりのおかげで気が紛れていたのだろう。


「武者震いですか?」


 突然後ろから声をかけられ、うわぁと情けない声を出してしまった。


「ただ緊張で震えてるだけだよ」


「そんなまさか。さっきの赤髪の元気!って感じ子とも知り合いみたいだし、ポーションも持たない軽装。強者のそれじゃないか!」


 さっきの子とは間違いなくオズのことだろうが、どうやらこの背の低い少年は大きな勘違いをしているらしい。

 綺麗な空色の髪にやわらかい顔立ちの少年。

 上の身分の子なのだろうか。


「勘違いしてるよ。俺はあいつには全然敵わない」


「そっかー。邪魔してごめんね」


「気にしないでくれ」


「僕はソラ、よろしくね!」


「俺はアントニーだ。アントって呼んでくれ」


「お互いベストを尽くそう、アント」


 そう言って求められた握手に応じる。

 そうだ、やれるだけのことをやるしかない。


「まもなく試験開始ですが、内容の最終確認を行います。こちらはグループ4のステージ1です。今回の実技試験では400m四方のステージには180体の土属性ゴーレムがおり、その討伐数を競っていただきます。与えたダメージによって討伐数に小数点以下が記されることもありますがこれらは公平に採点されています。制限時間は20分で、それ以降の討伐はカウントされません。またゴーレムによる攻撃で危険な状況になった場合、配布したバッジから魔法を展開、攻撃を停止させます。そうなるとその受験者はそれ以降討伐を継続できませんので注意してください。」


 ソラのおかげでさっきまでの緊張はかなりほぐれた。

 よし、やってやる!


「それではグループ4、試験開始!」


 エリアに入ると、手前にいるゴーレムは無視して奥へと急ぐ。

 これまでの傾向から手前ではゴーレムの数が多めに配置されているが、取り合いになりやすいことは予想できていた。

 他数名も走っていることからこのことに気づいているのだろう。


「ここらへんでいいか・・・蜘蛛脚展開(エクスレッグ)」


 蜘蛛の脚を展開し、建物に登る。

 大勢の前で固有魔法を使うのは初めてだが改めて考えるとなかなかキモがられそうだ。


 辺りを見渡して、孤立していたゴーレムを見つけ、急いで向かう。


「ハアァ!」


 不意をついて左肩関節に蜘蛛脚を刺し、破壊する。

 作戦通りだ。

 ここまですればゴーレムも恐るるに足らない。

 攻撃を剣でいなし、蜘蛛脚で関節を破壊していく。

 左の股関節付近を破壊したことでゴーレムが倒れゴドンッと鈍い音が響く。


「うおおおぉぉ!」


 全ての蜘蛛脚と剣を使って渾身の力で胸の辺りの核を破壊する。

 これで1体。

 いくら物理攻撃に強いゴーレムでも蜘蛛脚を駆使すれば倒せるというのはなかなかの朗報だ。


 残り時間は14分。

 この調子ならいける。


 ----


「お友達なんですか?」


 アントを見送ったオズに銀髪の少女が声をかける。


「俺か? 俺らはあそこにいるレイも合わせて3つ子なんだ!」


「それでみなさんで試験に来たんですね!」


「てか魔法装填してた子じゃん!」


「見ていてくださったのですね。私はアイン・ニュートと申します」


「アインニ・・・、あー難しいな!」


「アインと呼んでくだされば結構です」


「アインだな。わかった! 俺はオズワルド。オズって呼んでくれ!」


「オズさんですね」


「あー、もっと楽に話してくれていいぞ! さんもつけなくていいし」


「ほんと? じゃあ崩して話すね」


「それでいいぞ! で、なんか用があったのか?」


 オズの問いかけにアインはもじもじし始める。


「それが、話す友達がいなくって心細かったから。オズたちが楽しそうにしてるのを見てつい」


「なんだそうだったのか! いっぱい喋ろうぜ! もう友達みたいなものだろ!」


「ありがとう!」


 オズは持ち前のコミュ力を発揮し、アインも笑顔で応える。


「レイもどうだ! お花あげたら仲良くなれるんじゃないか?」


 こうなっては関わらないわけにもいかず。

 レイは小さなピンクのライラックを生やし、アインに渡す。


「レイです。よろしく」


「アインです。こちらこそよろしく」


「ちょっと無愛想だけどいいやつだから! 今も内心喜んでると思うぞ!」


 余計なフォローにレイは少し眉間を寄せるが、アインはライラックを受け取って満足そうな顔だ。


「もうすぐ次のグループが始まりそうだね」


「アントをみといてくれ! あいつは強いからな!」


「アント・・・? ああ。さっきの! また実技試験2回目になったりしない?」


「あいつは賢いから俺みたいなヘマはしないぞ! さっきは参加しなくて良いとか言われてほんと怖かったんだ!」


 そんな話をしながら俺のいない待機室では時間が過ぎていっていた。


 ----


 2体目のゴーレムを見つけた俺は1体目と同様の作戦を実行し、左腕を奪うことに成功した。

 このままいけば倒せる。

 動きも確実に良くなってきていた。


 しかしそのタイミングで後ろからゴーレムの足跡が聞こえてくる。


 (しくじった)


 油断して周囲の警戒を怠ってしまっていた。

 だが目の前のゴーレムの脚を奪うところまでは済ませたい。


「せりゃぁ!」


 ゴーレムに背を向け、左側の蜘蛛脚2本でゴーレムの左膝を破壊する。

 ゴーレムの右腕を蜘蛛脚と剣ではらい、新しいゴーレムとの戦闘に向かう。


 対峙すると早速、隙をつくるため打ち合ってみる。

 しかし強敵だ。

 不意打ちなしでの正面勝負では分がわるい。

 なんとかして打開策を・・・


 (まずい!)


 考え事をしている間に左胸あたりに一撃もらってしまった。

 かなり強い。

 次はなさそうだ。


「仕方ない。討伐数1体で終わるよりマシだ。・・・風鎧(ウィンドアーマー)」


 風魔法を全身に纏わせ、機動力を高める。


 (一か八かだ)


 ゴーレムの腕の予備動作に合わせ一気に核を攻撃しにいく。


 バキバキという硬い音とともに蜘蛛脚がゴーレムの胸を貫く。

 動きは止まり、決着がついた。


 (本当に良かった)


 しかし次の瞬間には後ろからゴーレムの動く音が聞こえてくる。


 (しまった)


 戦闘に夢中で気づけば倒れたゴーレムの攻撃がとどく距離まで後退してしまっていた。


「隕石衝突(メテオストライク)!」


 突然声が聞こえ、振り返るとゴーレムは岩に潰され動かなくなっていた。


「危機一髪だったねー」


「ソラ!」


 どうやら少し離れたところから援護射撃をしてくれたようだ。


「もしかして、助けはいらなかったかな?」


「いや、ほんとに助かった。ありがとう」


「フフッ・・・なら良かった。残り6分頑張ろうね!」


 そう言ってソラは早々に去っていった。

 あと1体はなんとしても倒そう。


 ----


「試験終了です」


 アナウンスとともに準備室に戻る。

 結局あの後2体倒すことができた。

 上出来だろう。


「お疲れ様でした。この後は待機室に残っていただいても、帰っていただいてもどちらでも結構です。合格発表は明後日の10時になります。」


 試験監督の言葉を聞き、更衣室で着替えてから待機室に向かう。


「おーい、終わったぞー」


「アント! お疲れ!」


「お疲れ様です!」


 ん?

 なんで銀髪の子がオズと一緒にいるんだ?


「銀髪の子はどうしてここに?」


「アインのことか? 友達だぞ!」


「はじめまして。アインって呼んでください」


「は、はじめまして。僕のことはアントって呼んでもらったら大丈夫です。あと畏まらずに話してくれて大丈夫」


 全くオズの社交性は大したものだな。

 おかげでアインとも自然に話せそうだ。

 それにしても幼いながら1人だったら少し緊張してしまうくらいには綺麗な子だ。


「試験みてたよ! すごかった!」


「ああ、ありがとう」


 結果はどうだったのだろうか。

 ランキングを見ると4.6体で18位となっていた。

 よしっ!

 目標は達成だ。


「アインの試験も見てたけどすごかったよ。何体くらい討伐したんだ?」


「6体だよ!」


「断然アインの方がすごいじゃん・・・」


 少し悔しさを覚えつつも素直に感心した。

 あれだけ安定した戦いぶりだ。

 このぐらいが妥当だろう。


「グループ9の受験者は準備室に集合してください」


 軽く話しているとあっという間にレイの番がきた。

 いよいよ入試も大詰めだ。

楽しんでいただけていると幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。