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氷河期ストレージ ~裏切られて死んだ俺は、30日前に戻り無限収納で世界を生き抜く~  作者: 宵白レン


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18/74

第18話 Day 4 本命

翌朝。


Day 4。


暖炉では薪が小さな音を立てながら燃え続けており、蓮がゆっくりと目を開けると、室温はいつもと変わらない二十二度に保たれていた。


しかし、カーテンを開けた先に広がっていたのは、昨日までとはまるで別の世界だった。


猛烈な風が大量の雪を巻き上げ、昨日まで見えていた向かいのマンションさえ吹雪の向こうへ消えている。街全体が白い霧に包まれたようになっており、室内の温度計の隣に設置してある外気温計へ目を向けると、表示されていた数字は-22.5℃まで下がっていた。


「……ついにここまで来たか。」


蓮は静かにコーヒーを淹れ、湯気の立つマグカップを片手にテレビの電源を入れた。


画面には朝から『緊急特番』の文字が表示されている。


『全国的な寒波はさらに勢いを増しています。現在も気温は低下を続けており、不要不急の外出は絶対に控えてください。』


昨日まで冷静に情報を伝えていたキャスターも、今日は明らかに表情が硬かった。


画面が各地のライブ映像へ切り替わる。


高速道路は大量の雪に埋まり、取り残された車は一台も動いていない。新幹線のホームには運休によって足止めされた人々が残され、運転再開の目処は立っておらず、空港ではすべての便が欠航となり、滑走路そのものが雪に覆われていた。


続いて映し出されたのは都内だった。


普段なら朝から大勢の人で溢れている駅前にも、今日は数えるほどしか人影がない。外を歩いている者たちは帽子やマフラーで顔のほとんどを隠し、身体を前へ傾けながら必死に進もうとしていたが、猛烈な風に煽られ、まともに歩くことさえできていなかった。


現地から中継していたレポーターも、立っているだけで精一杯だった。


「身を切るような寒さです! ……もう耐えられません!」


一瞬、身体が大きく風に煽られる。


「危険です! 本当に危険です!」


スタッフが駆け寄り、中継はそのまま慌ただしく打ち切られた。


再びスタジオへ画面が戻ると、キャスターは硬い表情のまま政府からの新たな発表を読み上げた。


『政府は先ほど、全国民に対し改めて外出自粛を要請しました。企業には休業を勧告し、物流会社、大型商業施設、工場の多くも本日より操業を停止しています。命を守る行動を最優先してください。』


そこまで確認したところで、蓮はテレビを消した。


部屋に静けさが戻る。


残っていたコーヒーを飲み干すと、蓮はゆっくりと立ち上がった。


「ようやくか。」


そのまま監視室へ向かい、大型モニターでマンション周辺の様子を確認する。


一階エントランスには誰もおらず、駐車場では昨日まで並んでいた車のほとんどが、その場所から動かないまま雪に埋もれていた。交差点では信号だけが律儀に赤と青を繰り返しているものの、その指示に従って走る車は一台もなく、商店街もすべてのシャッターが閉ざされ、コンビニの店内まで真っ暗になっている。


しばらく複数のカメラを切り替えながら周囲を確認した蓮は、ようやく静かに頷いた。


「……これなら大丈夫だ。」


収納空間を開き、用意しておいた防寒着、防寒ブーツ、厚手の手袋、ヘルメットを一つずつ取り出して身につけると、最後にガレージへ向かった。


何も置かれていない床へ手をかざした次の瞬間、収納空間から新品のスノーモービルが姿を現し、その車体がガレージの照明を鈍く反射する。


蓮がエンジンを始動すると、低い振動音が静かなガレージに響いた。


そのままスノーモービルへ跨がり、深く息を吸ってからシャッターを開ける。


猛烈な吹雪とともに冷気が一気にガレージへ流れ込み、肌を刺すような寒さが僅かな隙間から入り込んできた。それでも完全防寒装備を身につけた蓮にとって、その冷たささえ今はどこか心地よかった。


アクセルを握る。


スノーモービルは大量の雪を後方へ蹴り上げながら、白銀の街へ飛び出した。


道路はすでに完全に雪に覆われ、車線がどこにあったのかさえ分からない。普段なら朝から渋滞する幹線道路にも今日は一台の車も走っておらず、信号も街灯もまだ動いているというのに、その下を行き交う人間だけが消えていた。


まるで、世界から人間だけがいなくなってしまったようだった。


蓮はそんな街の中を、スノーモービルで一気に駆け抜けていく。


駅前にも人影はなく、大型ショッピングモールや家電量販店も固く扉を閉ざしたまま静まり返っていた。途中には何台もの乗用車が道路脇へ乗り捨てられており、中にはドアを開けたまま雪に埋もれ始めている車もあったが、運転席にも助手席にも人の姿はない。


蓮は速度を落とすことなく、その横を通り過ぎた。


それから三十分ほど走った頃、吹雪に覆われた視界の先に巨大な建物の輪郭が浮かび上がった。


雪に覆われていても、その規模だけは隠しきれない。


巨大な物流センターがいくつも集まる園区だった。


青い看板には、大きく企業名が書かれている。


『アマゾニア物流センター 第七配送基地』


そのすぐ隣には、


『楽々天物流センター 第五配送基地』


さらに周囲には、大型ドラッグストアの倉庫や有名チェーンの物流倉庫がいくつも並んでいた。


蓮はゆっくりとアクセルを戻し、スノーモービルを止める。


目の前には数え切れないほどの大型トラックと、何十もの搬入口が並び、その奥には街一つ分さえ収まりそうな巨大倉庫が雪の中に立ち並んでいる。


ヘルメットの奥で、蓮の口元が僅かに緩んだ。


「……本命だ。」


────────────────


Day 4


外気温 -22.5℃


積雪 312cm


電力 ▲

ガス ▲

水道 ▲

通信 ▲


【今日のメモ】


「自然の前では、人の文明はあまりにも無力だ。」


────────────────

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