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氷河期ストレージ ~雪が止んだ日、世界は再び動き始めた~  作者: 宵白レン
第二章

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第18話 Day40 越えてはいけない一線

「そんな……いくら受刑者でも……ひどい」


 朝霧が小さく呟いた。先ほどまで黙って水城の話を聞いていた彼女の表情には、隠しきれない嫌悪が浮かんでいる。


「ええ。確かに、解放された受刑者たちは町で大きな問題を起こしました。しかし、すべての受刑者がああした凶悪な人間だったわけではありません」


 水城はそう言って、植松、久世、水野、寺川へと順に視線を向け、それから、その後ろにいる者たちをゆっくりと見回した。


「実際、ここにいる彼らは最後まで互いに助け合い、今日まで一緒に生き抜いてきました。受刑者だからという理由だけで、一括りにできるような人たちではありません」


「……今それを言うってことは、その看守たちがやっていたことは後から発覚したってことか?」


 それまで黙っていた蓮が訊くと、水城は一瞬だけ目を伏せた。


「ええ、そうですね。もう少し発見が早ければ、事態もあそこまで酷くはならなかったのかもしれません……」


 その声には、今も消えずに残っている後悔が滲んでいた。水城はそこで一度言葉を切ると、当時の記憶を辿るように小さく息を吐いた。


「あれから、さらに五日ほど経った日のことです」


 その日の朝も、刑務所の外には灰色の空が広がっていた。分厚い雲から降り続ける雪は山も道路も刑務所を囲む高い塀の外側も白く覆い尽くしていた。雪の中から黒い木々の幹だけがところどころ突き出し、何日経っても変わらない景色は、世界そのものが白く呑み込まれているようにさえ見えた。


 気温も依然として低いままで、暖房が生きている区画でさえ廊下まで出れば吐く息がわずかに白くなる。窓の内側には霜が張り、建物のあちこちから聞こえる暖房設備の作動音も、以前より頼りなくなっていた。


 そして刑務所の中でも、この五日間で確実に変わってしまったものがあった。


 看守による受刑者への暴力だった。


 最初の暴行が水城を含む管理職に発覚しなかったことで、それは日に日にエスカレートしていた。初めのうちは、看守の指示に従わない、暴言を吐く、反抗的な態度を取るといった受刑者だけが対象で、暴力を振るう看守たち自身も、それを「規律を守らせるための体罰」なのだと自分たちに言い聞かせていた。


 規則を守らせるため。秩序を維持するため。この非常事態の中で数少ない職員が大勢の受刑者を管理するには、多少強引な手段も仕方がない。そんな言い訳を重ねるうちに、一度越えたはずの一線は少しずつ見えなくなっていった。


 わずか五日で、暴力を振るう理由は驚くほど軽くなっている。夜中に騒いだ、態度が悪かった、返事が遅かった。中には目つきが気に入らないというだけで房から引きずり出される者まで現れ、もはや規律を守らせるためという最初の理由すら形だけのものになりつつあった。


 最初は理由があって暴力を振るっていたはずだった。それがいつしか、暴力を振るうための理由を探すようになっていた。


 極寒の刑務所に閉じ込められ、家にも帰れず、いつ終わるとも分からない勤務を続ける中で溜まっていく疲労と苛立ち。その矛先が、自分たちよりも弱い立場にいる受刑者へと向けられ始めていたのだ。


 そしてこの日、水城と大庭は二人で受刑者たちの収容区画を見回っていた。


「今日はずいぶん静かじゃないか」


 房が並ぶ長い通路を歩きながら大庭が周囲を見回すと、水城も左右の房へ視線を向けた。


「そうですね。男女を同じ収容区画へ移したことで、もっとトラブルが増えるのではないかと心配していたのですが……」


 少し前までとは、まるで違っていた。以前ならどこかの房から怒鳴り声が聞こえれば、それに反応するように別の場所から野次が飛び、食事が少ない、寒い、ここから出せと不満を訴える声も一日に何度となく聞こえていた。


 そのたびに看守が駆けつけて注意し、それでも収まらなければ別の職員まで呼ばれることも珍しくなかった。


 特に男女を同じ建物へ集約した直後は、離れた房にいる女性へ男性受刑者が大声で話しかけ、それを看守が止めれば別の房から笑い声や野次が飛ぶなど、ただでさえ人手が足りない職員たちを悩ませる問題が絶えなかった。


 それが今日は、嘘のように静かだった。


 房の中に人がいないわけではない。何人もの受刑者がベッドに腰掛け、あるいは壁にもたれながら、水城と大庭が通り過ぎるのを黙って見ている。それなのに大声を上げる者はおろか、隣にいる者と話す声さえほとんど聞こえず、何百人もの受刑者が生活している区画とは思えないほど静まり返っていた。


「おい」


 大庭が通路の先に立っていた看守へ声をかけると、看守はすぐに姿勢を正した。


「はい!」


「受刑者たちがずいぶん大人しいじゃないか」


「はい。前回の解放で受刑者の数が減りましたので、以前に比べればかなり管理しやすくなりました」


「そうか。職員たちの方はどうだ? 無理しとらんか? 夜勤もかなり増えているだろう」


「ありがとうございます。今のところ問題ありません。人数が減ったおかげで、以前よりは巡回にも余裕があります」


「そうか。それならよかった」


 大庭は安心したように頷き、看守の肩を軽く叩いた。そのやり取りを横で聞いていた水城は、もう一度だけ周囲の房を見回す。


 確かに説明としてはおかしくない。受刑者の数は減り、それに伴って食料の消費量も減った。管理する人数そのものが少なくなれば、限られた職員でも以前より目が届きやすくなるのは当然だった。


 それでも、何かが引っかかった。


「あれだけ騒いでいたのに、ずいぶん変わりましたね。何か特別なことを?」


「特別なこと、ですか?」


「ええ。少し前までは、注意しても聞かない受刑者がかなりいたでしょう?」


「ああ……以前は受刑者の数が多かった一方で、職員は減るばかりでした。それに食事の問題もありましたので、正直なところ、ある程度は放任せざるを得ない部分もありました」


 看守は少し考えてから、何でもないことのように続けた。


「ですが、今は状況が違います。人数が減った分、一人一人まで目が届くようになりましたので、以前よりもしっかり管理しています。受刑者たちも、ようやく理解してきたんじゃないでしょうか」


「そう……ですか」


 水城は小さく頷いた。説明そのものに不自然なところはなく、何となく感じた違和感だけを理由に、それ以上問い詰めることもできなかった。


「うむ。食料の問題もだいぶ改善できたからな。これからもしっかり頼むぞ。この雪もきっとそのうち止む。それまで何とか耐えろ」


「はい!」


 大庭の言葉に看守が力強く答えた、その時だった。


「……違う」


 房の中から小さな声が漏れた。あまりにも小さく、水城には何を言ったのかまでは聞き取れなかったが、続けて何かを訴えようとする声だけは確かに耳へ届いた。


「……あいつらは――」


「おい! 三〇八号房! 私語を慎め!」


 先ほどまで穏やかに話していた看守の声が突然鋭くなり、房の中にいた男がびくりと肩を震わせた。その瞬間、同じ房にいた他の受刑者まで一斉に口を閉ざして視線を落とす。


 その反応を不審に思った水城は三〇八号房の前まで歩いていき、壁際に座ったまま俯いている男へ視線を向けた。目の前まで来ても男は顔を上げようとせず、両手を膝の上で固く握っている。


「さっきは、何と言おうとしたんですか?」


「い、いえ……何でもありません」


「ですが、何か言いかけていましたよね?」


「ああ、こいつ、また飯を増やせって言おうとしたんだと思います」


 後ろから看守が口を挟んだため、水城は男から視線を外して振り返った。


「食事を?」


「はい。今は緊急事態だから、全員の食事を減らしているって何度も説明してるんですけどね。それでも時々、もっと寄越せって騒ぐんですよ」


 看守は困ったものだと言わんばかりに肩を竦める。その説明を聞いた水城は「そうですか……」と小さく答えると、再び房の中の男へ向き直った。


「今、刑務所内の食料は、できる限り節約しながら全員に分配しています。皆さんに十分な量を渡せていないことは私たちも分かっています」


 男は何も答えず、俯いたまま水城の話を聞いている。


「ですが、いつまでもこの状況が続くわけではありません。雪もまもなく止むはずです。それまで、もう少しだけ我慢してください。私たちも、できる限りこれ以上食事を減らさずに済むようにしますから」


 その言葉を聞いた男は、ほんの一瞬だけ水城の後ろにいる看守へ目を向けたあと、何かを諦めるようにすぐ視線を床へ戻した。


「は、はい……ありがとうございます……」


「行くぞ、水城」


「はい」


 少し先まで進んでいた大庭に呼ばれ、水城はもう一度だけ男を見てから三〇八号房を離れた。二人の足音が収容区画の奥へと遠ざかっていく中、男はその姿が完全に見えなくなるまで顔を上げなかった。


 その時の水城は、まだ知らなかった。


 あの男が本当は何を言おうとしていたのかを。


 ◇


 その日の夜、昼間よりも照明を落とした薄暗い通路には、暖房設備が発する低い作動音と、ときおり巡回する看守たちの足音だけが響いている。


 その中を数人の看守が歩き、やがて三〇八号房の前で足を止めた。その中心にいたのは、昼間、水城と大庭に応対していた看守だった。


「おい。お前、昼間あの二人に何を言おうとした?」


 房の中にいた男は呼びかけられた瞬間にびくりと肩を震わせ、強張った顔で看守を見る。


「い、いえ……何でもありません」


「ああん? この妙な異常気象が来たせいで、自分が受刑者だってこと忘れたのか?」


「そ、そんなことは……」


「だったら余計なことしようとすんじゃねえよ。あんまり調子に乗るな」


「す、すみません! もう二度としません!」


 男が慌てて頭を下げると、看守は「分かればいいんだよ」と吐き捨てながら腰の鍵束へ手を伸ばした。じゃらりと金属同士が触れ合う音が薄暗い通路に響いた途端、男の顔から血の気が引き、先ほどまで以上に必死な声で謝り始める。


「す、すみません! 本当にもう二度としませんから!」


 その訴えを無視して鍵が回され、重い扉が開いた。看守が房の中へ足を踏み入れると、同じ房にいた他の受刑者たちは何も命じられていないにもかかわらず、一人、また一人と壁際へ身を寄せ、狭い場所で身体を固めるようにして俯いた。


 誰も止めようとはしなかった。看守と目を合わせようとする者さえいない。


 入口には別の看守たちが立ち、外から人が来ないかを気にするように、ときおり通路の奥へ目を向けていた。


「二度とあんな真似ができないように、体に覚えさせてやるよ!」


 振り下ろされた警棒が男の脇腹を捉え、鈍い音とともに身体が大きく折れ曲がった。それでも看守は止まらず、「てめえらのせいで、俺たちまでこんなところにずっと閉じ込められてんだぞ!」と怒鳴りながら、今度は背中へ警棒を叩きつける。


「うっ……!」


「こっちは家にも帰れねえ! いつ終わるかも分からねえ夜勤までやらされる! それなのに、てめえらの飯まで毎日用意してやってんだぞ!」


「す、すみません……!」


「最初に帰ったやつらはいいよな! 今頃は暖かい家で待機ってか!」


 看守は吐き捨てるように言いながら男の腹を蹴ろうとしたが、男が反射的に身体を丸めて両腕で腹を庇ったことで狙いがずれ、その靴先が顔をまともに捉えた。


「がっ!」


 男が床へ倒れた瞬間、入口に立っていた看守の一人が慌てて声を上げる。


「おい! 顔はやめろ! バレるぞ!」


「……っち、分かってるよ! てめえが避けるからだろうが!」


 ここ数日、看守たちは何度も受刑者へ暴力を振るっていた。それでも水城をはじめとする管理職に発覚しなかったのには理由があり、彼らは腹や背中、脇腹、太腿など、意図的に衣服で隠れる場所ばかりを狙っていたのだ。


 気温が大きく下がった今、受刑者たちが身につけているのも寒さを凌ぐための厚手の受刑服だった。顔や手など露出する部分さえ傷つけなければ、衣服の下にできた痣や腫れを普段の巡回や食事の配給だけで見つけることは難しい。


 だからこそ、顔だけは傷つけない。


 それが彼らの間で暗黙の了解になっていた。


「てめえ……避けんじゃねえよ!」


「す、すみま――」


 男が謝り終えるより先に、警棒が再び振り下ろされ、先ほどよりも強く背中へ叩きつけられた。男は短いうめき声を漏らして床にうずくまったが、同じ房にいる受刑者たちは壁際で身体を寄せ合ったまま、誰一人として声を上げようとはしなかった。


 助けようとすれば、次は自分がやられる。声を上げれば、次は自分が標的になる。


 この五日間で、彼らはそれだけは嫌というほど理解していた。


 しばらくして看守たちが三〇八号房を出ると、男は何事もなかったかのように警棒を腰へ戻した。


「ったく……余計な手間かけさせやがって」


 そのまま数人で薄暗い通路を歩いていた男だったが、女子受刑者たちが収容されている区画まで来たところで突然足を止め、一つの房の中を覗き込んだ。


「おい。お前、出ろ」


「……え?」


 指を差された女は、自分のことだとは思っていなかったのか、戸惑った表情で周囲を見た。


「聞こえなかったのか。出ろって言ってんだよ」


「な、なんでですか?」


「昼間の態度について話がある」


「ここで話してください。私は何も――」


「お前、さっきの聞こえただろ?」


 その一言で女の口が止まった。少し離れた場所とはいえ、先ほどまで何度も響いていた鈍い音も、必死に謝り続ける男の声も、この区画まで届いていた。


「お前も同じように痛い目に遭いたいのか? 大人しくついてこい。そうすりゃ説教だけで済ませてやる」


「でも……」


 女はすぐには動かなかったが、先ほど聞こえてきた男の悲鳴を思い出したのか、その身体が目に見えて震え始めた。


「……やめときなよ。ここで話せばいいじゃん……」


 同じ房にいた別の女が勇気を振り絞るように小さな声を上げたが、看守がゆっくりと顔を向けて睨みつけると、それ以上は何も言えなくなった。周囲にいた他の女たちも視線を落とし、助けを求めるように自分たちを見る女から目を逸らしていく。


「ほら、来い」


 房の扉が開けられても、女はしばらくその場から動けなかった。それでも先ほどの悲鳴が頭から離れず、やがて震える足で一歩を踏み出すと、看守たちに囲まれるようにして収容区画を離れていった。


 連れて行かれた先は、看守用の休憩室だった。


 扉が閉まった直後、男は女の腕を掴み、その身体を乱暴に押し倒した。


「ちょっと! 何すんの! おい!」


 話をするだけだと思っていた女は必死に男の腕を振りほどこうとしたが、体格の差もあって押し返すことができない。その様子を見ていた別の看守が、さすがに顔色を変えた。


「おい! それはやりすぎだろ……!」


「うっせえんだよ! 冷めること言うなよ! バレやしねえよ!」


 男が怒鳴り返すと、残る二人の看守は動揺した様子で互いの顔を見合わせた。ついさっきまで自分たちも受刑者への暴力を止めず、それどころか誰かが来ないよう見張りまでしていた。それでも、目の前で必死に抵抗する女を見て何も感じないほど、まだ感覚を失ってはいなかった。


「お願い! やめて!」


「うるせえ! それ以上暴れたら外に放り出すぞ!」


「ならあたしも追放でいい! 外に出るから! だからやめて!」


 必死に叫んだ女の言葉を聞き、男は一瞬だけ動きを止めると、馬鹿にするような目で彼女を見下ろした。


「出るだって? お前、知らねえだろ。前に外に出ていったやつらのこと」


「知らない! でも……それでもいい! 外に出るからやめて!」


「全員死んだよ」


「……え?」


 女の抵抗が一瞬止まった。


「外はな、お前らが思ってる以上に地獄なんだよ。ここで毎日暖房に当たりながら飯まで食わせてもらって、いい身分だなおい。外はマイナス三十度だ。まともな装備もないお前が出てみろ。少し歩いただけでそのままお陀仏だ」


「…………」


 女も、何となく予感はしていた。


 外で普通ではないことが起きていることくらいは分かっていた。男性と女性の受刑者が同じ建物へ集められ、食事の量も以前とは比べものにならないほど少なくなった。毎日のように行っていた刑務作業すらなくなり、職員の姿も日に日に減っている。


 窓の外を見れば、何日経っても雪は降り続けている。


 今は、異常事態なのだ。


 その事実だけは、誰かに説明されなくても理解できた。


「分かっただろ? 外に放り出されたくなきゃ、大人しく言うこと聞け」


 男にそう告げられ、女は震えながら周囲へ視線を向けた。だが、助けを求めるように向けられたその視線を、二人の看守はまともに受け止めることができない。


 先ほどまで男の腕を必死に押し返していた女の手から、やがてゆっくりと力が抜けていった。


「おい……やっぱりまずいって」


 見かねた看守の一人がもう一度声をかけると、男は苛立ったように振り返った。


「っち、うっせえな。黙ってろ! こんな羽目になってんだ、これぐらいの楽しみがあってもいいだろうが」


 そして再び女へ目を向ける前に、二人へ下卑た笑みを向けた。


「俺の次は、お前らにも楽しませてやるからな」


「い、いや……俺はいい」


「俺もだ……」


「っち、ヘタレが……」


 二人はそれ以上その場にいることができず、逃げるように休憩室を出た。背後で扉が閉まると、それまで女を前にして強がっていた表情は消え、どちらからともなく互いの顔を見る。


 扉の向こうからは、同僚の下卑た笑い声が聞こえ、やがて、それに混じって女のすすり泣く声が聞こえ始めた。


 二人は廊下に立ったまま、何も言えなかった。


 ついさっきまで、自分たちも受刑者を殴っていた。誰かが来ないよう見張りに立ち、暴力が管理職に知られないよう手を貸していたのも自分たちだった。


 最初は、規律を守らせるためだった。


 それが、言うことを聞かせるために変わり、いつしか自分たちの苛立ちをぶつけるためのものになった。


 そして今、自分たちは閉ざされた扉の向こうで行われていることまで、黙って見過ごそうとしている。


 扉の向こうから聞こえる女の泣き声を聞きながら、二人はようやく気づいた。


 自分たちは、とんでもないところまで来てしまったのだと。


 ◇


「……ここが、超えてはいけない一線だったんだと思います」


 そこまで話した水城は、一度言葉を止めた。


 いつの間にか、水城は俯いていた。その表情には、これまでの出来事を語っていた時とは明らかに違う、重いものが浮かんでいる。


 朝霧も何も言わなかった。


 今の話だけでも十分すぎるほど酷い。それなのに、水城の口ぶりはまるで、さらにとんでもないことがこの先にあると言っているようだった。


 しばらくの沈黙のあと、水城はゆっくりと顔を上げた。


「そして――ついに事件が起きてしまったんです」

ここまで読んでいただきありがとうございます!


回想編もいよいよクライマックスが近づいてまいりました。

今後の展開においても大事な部分なので、もうしばらくお付き合いいただけましたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
タガが緩んできてるな
 スタンフォード監獄実験も再現性は無かったようだが、これは結局管理体制というシステムと個人の差異という属人性が事態を悪化させたということなんまろうか。  希望が見出しにくい極限状態では職業倫理や道徳心…
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