第10話 Day3 始まりの3日間
水城はすぐには話し始めなかった。
焚き火の中で崩れた薪がぱちりと音を立て、舞い上がった火の粉が暗い天井へ吸い込まれていく。その向こうでは、先ほどまで蓮たちを警戒していた者たちが、それぞれ毛布を肩に掛けたり、壁にもたれたりしながら黙ってこちらを見ていた。
今ここにいるのは、二十人余り。
だが、水城がこれから語ろうとしているのは、この場所にまだ何百人もの人間がいた頃の話だ。
「まず、当時の状況からお話しします」
ようやく水城が口を開いた。
「私は当時、この刑務所で副所長を務めていました。水城恭介といいます」
「副所長だったのか」
「……はい」
蓮は改めて目の前の男を見る。
最初に見た時から、他の者とは少し違うとは思っていた。痩せて汚れた姿は周囲と変わらないが、蓮たちが現れて混乱しかけた場を収め、あの女を止め、話し合いを申し出たのもこの男だった。
「当時、ここに収容されていた受刑者はおよそ七百人です。男性が約五百人、女性が約二百人。もちろん収容棟は分けられていました。それ以外に刑務官、事務職員、医務や厨房、設備管理などの職員がいましたが、交代勤務ですから、全員が常に施設内にいたわけではありません」
「七百人……」
朝霧が周囲を見回した。
誰もいない廊下、閉ざされた扉、ところどころ割れた窓。その先にもいくつもの建物が連なっているが、今では人の気配すらない。
「結構人数がいるのね……」
「まあ。収容人数だけでみるなら、中から大ほどの規模になると思います」
七百人。
その数字を聞いてから改めて見ると、今の静けさが異様に思える。
蓮が何も言わずにいると、水城は一度焚き火へ視線を落とし、それから話を続けた。
「雪が降り始めた最初の三日間については……ここも、外とそれほど変わらなかったと思います」
◇
最初に雪が降り始めた日の朝。
刑務所は、いつもと同じ時間に動き始めた。
まだ日の出前の薄暗い時間から職員が持ち場につき、やがて収容棟の照明が一斉に点灯する。長い廊下に靴音が響き、各房では起床した受刑者たちが寝具を整え、点呼を待っていた。
鉄格子の向こうから番号と人数を確認する声が順番に続いていく。
その頃には、窓の外で白いものが舞い始めていた。
「雪か?」
一人の受刑者が、小さな窓へ顔を向けた。
「天気予報で寒波来てるって言ってたろ」
「こんな降るって言ってたか?」
「知らねえよ。俺、昨日テレビ見てねえし」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
珍しいものでも見るように窓へ寄ろうとして刑務官に注意される者もいれば、興味も示さず身支度を続ける者もいる。職員たちの反応も大差はなく、出勤してきたばかりの刑務官が肩についた雪を払いながら、同僚に「帰りまでに積もらなきゃいいけどな」と笑っていた。
誰も怖がってはいなかった。
刑務所の中では、いつもの一日が始まっていた。
点呼が終われば朝食が配られ、それが済むと受刑者たちは決められた手順に従って房を出る。刑務官の監視の下、列を作って廊下を進み、それぞれが指定された作業場所へ向かっていった。
金属を加工する音、機械の規則的な駆動音、作業を指示する職員の声。
別の棟では洗濯物が運ばれ、清掃を担当する受刑者たちが廊下を行き来している。
厨房では、それよりも早い時間から慌ただしい作業が始まっていた。
「そっち、次の釜いけるぞ」
「はい!」
「汁物まだか?」
「あと五分です!」
巨大な炊飯設備から湯気が上がり、大きな鍋では数百人分の汁物が煮込まれている。職員の指示を受けながら作業に当たる受刑者たちが次々と食材を運び、出来上がった料理は決められた量に分けられていく。
厨房責任者の田所正雄は、調理場の中央で全体を見ながら時計を確認していた。
「急がなくていいから間違えるなよ。数が合わなくなる方が面倒だからな」
「分かってますって」
「お前は昨日も一つ足りなかっただろうが」
「それ俺じゃないですよ!」
「じゃあ今日は自分じゃないって証明してみろ」
周囲から小さな笑いが起きる。
田所は五十代の腹の出た男で、厨房では古株だった。毎日何百人分もの食事を決められた時間に用意することに慣れており、雪が降った程度でその手順が変わることはなかった。
朝食が終われば昼食の準備が始まり、昼食が終われば夕食の準備が始まる。
七百人近い受刑者に加えて勤務中の職員までいる以上、厨房が完全に止まる時間などほとんどない。
「田所さん、外すごいですよ」
若い職員の一人が窓を見ながら言った。
「朝より積もってます」
「そうなのか? こんな時期に珍しいな」
「この天気じゃ帰れるかな……」
「帰れなかったらここで寝ればいいだろ」
「嫌ですよ!」
「じゃあ雪かきして帰れ」
田所は笑いながらそう返すと、すぐに手元の書類へ目を戻した。
その時は、ただそれだけだった。
午後になると雪はさらに強くなった。
運動場は午前中のうちに白く覆われ、屋外で予定されていた運動や作業の一部は中止された。代わりに施設内でできる作業へ変更され、受刑者たちには通常とほとんど変わらない日課が続けられた。
夕方になっても雪は止まなかった。
勤務を終えた職員たちは駐車場に積もった雪を払い、車をゆっくりと動かして山を下りていった。残る職員たちは夜勤へ引き継ぎを行い、収容棟では夕食、点呼、そして就寝へと一日が進んでいく。
これまでの日常と異なっていたのは、その夜だった。
「……おい、寒いぞ!」
消灯後しばらくして、一つの房から声が上がった。
「暖房どうなってんだよ!」
「静かにしろ!」
巡回していた刑務官が鉄格子越しに注意する。
「うるせえな。こっちは本当に寒いんだよ。毛布もう一枚くれよ」
「規定のものは渡してる。黙って寝ろ」
「じゃあお前ここで寝てみろよ!」
別の房から笑い声が上がり、すぐに刑務官の怒鳴り声が飛んだ。
普段ならそれで終わる程度のやり取りだった。
しかし、その夜は一か所だけではなかった。
別の階でも寒さを訴える声が上がり、女性収容棟からも同様の報告が入った。暖房は稼働している。それでも外気温の急激な低下に建物全体が追いつかず、特に外壁に近い房では冷え込みが強くなっていた。
管理棟では、水城が各棟から上がってきた報告に目を通していた。
「毛布ですか?」
「ああ。男の方だけじゃない。女性棟からも要望が出てる」
水城は手元の書類を閉じた。
「倉庫に予備があっただろ。全部じゃなくていい。冷え込みの酷い区画だけでも追加で出そう」
「分かりました。所長には?」
「俺から話す」
水城は席を立つと、そのまま所長室へ向かった。
扉をノックすると、中から低い声が返ってくる。
「入れ」
「失礼します」
机の向こうに座っていたのは、この刑務所の所長、大庭重徳だった。
五十八歳。
大柄というほどではないが、年齢の割に厚い肩をした男で、銀の混じり始めた髪をきっちりと後ろへ撫でつけている。机の上には翌日の予定表や報告書が並べられていた。
「どうした」
「収容棟から寒さについての訴えが増えています。暖房は動いていますが、外壁側を中心にかなり冷え込んでいるようです」
「それで?」
「倉庫の予備毛布を一部出したいと思います。全員分ではありませんが、特に冷えている区画を優先すれば――」
「必要ない」
水城の言葉が終わる前に、大庭が答えた。
「ですが、今夜はさらに気温が下がる予報です」
「規定の寝具は渡しているんだろう?」
「それはそうですが、普段とは気温が違います」
大庭はようやく書類から顔を上げた。
「水城。ここはホテルじゃないんだ」
「分かっています」
「なら、規定通りにやれ。寒いと言われて毛布を増やしていたら、次は暖房を上げろ、食事を増やせ、風呂の回数を増やせと言い出すぞ」
「今はそういう話をしているわけではありません」
「同じだ」
大庭は短く言い切ると、再び書類へ視線を落とした。
「受刑者の要求を一つ一つ聞いてやる必要はない。決められたものは与えている。それで十分だ」
水城はしばらくその場に立っていた。
「……分かりました」
結局、その夜に追加の毛布が配られることはなかった。
◇
二日目の朝になっても、雪は止んでいなかった。
前日のうちに除雪された通路には再び雪が積もり、職員たちは朝から玄関周辺や車両の出入りに必要な場所を中心に雪をかいていた。
「昨日より酷くなってないか?」
「ニュースじゃすぐに弱くなるって話だっただろ」
「その予報、昨日も聞いたぞ」
職員たちの会話にはまだ笑いが混じっていたが、昨日ほど余裕はなかった。
それでも刑務所の中では、また同じ時間に照明が点き、同じ時間に点呼が始まった。
受刑者たちは起床し、寝具を整え、朝食を取る。
屋外での運動は全面的に中止されたものの、屋内の作業場は動いていた。何百人もの受刑者を一日中房内に閉じ込めておけば、それだけで余計な問題が増える。施設側にとっても、可能な限り普段と同じ日課を維持することが秩序を保つために必要だった。
「二列! 間を空けるな!」
刑務官の声に従い、受刑者たちが長い廊下を進んでいく。
足音が幾重にも重なり、鉄扉が開閉するたびに重い金属音が響く。
作業場へ入れば機械が動き始め、午前中だけを見れば、昨日までとほとんど変わらない刑務所の日常が続いていた。
ただ、窓の外だけが違った。
朝から降り続く雪は塀の上にも積もり、監視塔から見える景色を白く塗り潰していく。遠くに見えていた山の輪郭も、昼前にはほとんど分からなくなっていた。
昼過ぎ、管理棟へ一本の連絡が入った。
「山道の積雪がかなり増えてます。このままだと夕方には車で下りるのが難しくなるかもしれません」
「除雪は?」
「業者には連絡してます。ただ、向こうもあちこちから依頼が来てるみたいで、いつ来られるか分からないそうです」
水城は時計を確認した。
まだ勤務時間は残っている。
しかし、全員を定時まで残して山道が使えなくなれば、必要のない職員まで刑務所内に泊まり込むことになる。
「今日の勤務で、今から帰しても支障のない職員を確認してくれ。事務方を優先して、現場も夜勤への引き継ぎが済んだ者から帰宅させよう」
「いいんですか?」
「帰れなくなってから考える方がまずい。必要な人数は残す」
「分かりました」
その判断に異論を唱える者はいなかった。
夕方を待たず、勤務を終えられる職員から順番に帰宅することになった。
「明日、来られなかったら連絡しろよ」
「大丈夫ですよ。朝までには除雪入るでしょう」
「そうだといいけどな」
そんな会話を交わしながら、職員たちは一人、また一人と刑務所を後にしていった。
正門が開き、雪を積んだ車がゆっくりと外へ出ていく。
その背後で門が閉まる。
一台、また一台。
この時、彼らを帰宅させた判断を間違いだと思った者はいなかった。
水城自身もそうだった。
夜になれば、前日と同じように寒さを訴える受刑者の声が上がった。咳をしている者も増えていたが、それでも医務室が対応できる範囲であり、命に関わるような重症者はいない。
食事も朝昼晩の三回、通常通りに出された。
水も出る、照明も点く、暖房も動いている。
刑務官が廊下を巡回し、時間になれば鉄扉が閉じられる。
雪が降っているという一点を除けば、刑務所はまだ昨日までと同じ規則の中で動いていた。
◇
三日目。
朝の職員点呼で、初めて空いた場所が目立った。
「佐藤は?」
「来られないそうです。自宅前の道路から車が出せないと」
「山本もか?」
「そっちは途中まで来たそうなんですが、道路が塞がって引き返したそうです」
名前を確認するたびに、返ってくる答えが似たものになっていく。
前日に帰宅した職員の何人かが戻ってこられなかった。
それだけではない。
交代で出勤するはずだった職員からも、次々と欠勤の連絡が入っていた。公共交通機関は大幅に乱れ、道路では立ち往生する車が増え、山の上にある刑務所まで辿り着くこと自体が難しくなり始めていた。
「今いる人数で回せるか?」
水城が尋ねると、担当職員は勤務表を見ながら難しい顔をした。
「今日だけなら何とか。ただ、このまま明日も来られないとなると、夜勤から残ってる人間を帰せません」
「今日来られなかった職員全員に連絡を続けてくれ。無理に来させる必要はない。事故を起こされたら余計に困る」
「はい」
「それと各部署の人員をもう一度確認しよう。止められる業務は止める」
刑務所の朝は、それでも始まった。
収容棟ではいつも通り点呼が行われ、受刑者たちには朝食が配られた。職員が不足しているため移動には普段より時間がかかり、一部の作業は中止されたが、屋内で実施できる刑務作業については続けられた。
ただ、二日前には雪を眺めて笑っていた者たちも、もう窓の外を楽しそうに見ることはなくなっていた。
「まだ降ってんのかよ……」
「いつ止むんだ、これ」
「ニュースじゃ何て言ってんだ?」
「知らねえ。今日も大雪だってよ」
受刑者たちの会話から、雪を面白がる声は消えていた。
廊下を歩く刑務官の数も、初日より少ない。
移動のたびに待たされる時間が長くなり、些細なことで苛立つ者も出始める。それでも大きな喧嘩にはならず、刑務官が注意すれば受刑者たちはまだ従っていた。
医務室では、朝から数人が診察を待っていた。
「昨日から咳が止まらないんです」
「熱はどうだ?」
「分かりません。寒くてずっと震えてましたから」
発熱を訴える者、喉の痛みを訴える者、寒さで眠れなかったと言う者。
まだ重症者はいないが、昨日より明らかに人数が増えていた。
一方、厨房では朝食の片付けが終わるより早く、田所が納品予定の書類を見ていた。
「まだ来てないのか?」
「はい」
若い職員が答える。
「業者には?」
「連絡してますけど、道路がかなり酷いみたいです。今日は難しいかもしれないって」
「今日は、か……」
田所は紙面に視線を落とした。
その日に使う食材はあるし、明日の分もある。
倉庫にも備蓄は残っている。
今日の昼食や夕食を減らす必要などないが、問題は毎日それを食べる人間の数だった。
受刑者だけでおよそ七百人。
そこに職員も加わる。
巨大な厨房から出ていく食料の量は、一日だけでも相当なものになる。
「田所さん、どうします?」
「どうするも何も、今日は予定通りだ。昼も夜も変えない」
「分かりました」
「ただ、在庫をもう一回数えといてくれ。冷蔵も冷凍も乾物も全部だ」
「納品、明日は来ますよね?」
田所はすぐには答えなかった。
厨房の小さな窓へ目を向ける。
その向こうでは、三日前から降り始めた雪が、まだ途切れることなく落ち続けていた。
「……来てもらわないと困るな」
それだけ言うと、田所は昼食の準備へ戻った。
昼になれば、いつも通り食事が配られ、午後になれば、限られた職員で可能な範囲の作業が続けられた。
夕方になれば点呼があり、夜になれば受刑者たちは房へ戻された。
電気は点いていたし、蛇口を捻れば水が出た。暖房設備も止まってはいない。
厨房では三食が作られ、医務室には職員がいて、刑務官たちは鍵を持って廊下を歩いていた。
まだ何も壊れてはいなかった。
少なくとも、その時はまだ誰もがそう思っていた。
◇
「――最初の三日間は、そんな状態でした」
水城の声とともに、蓮の意識は再び目の前の焚き火へ戻った。
炎の向こうには、荒れ果てた刑務所がある。
照明の大半は失われ、長い廊下の奥は暗闇に沈んでいる。三食を作っていたという厨房から料理の匂いが漂ってくることもなければ、何百人もの受刑者が歩く足音も、刑務官の号令も聞こえない。
聞こえるのは、薪が燃える音と、ときおり吹き込んでくる風の音だけだった。
「この時点でまだ死者は出ていないか」
蓮が尋ねた。
「ええ、まだ一人もいませんでした」
「食事も普通に出てたのよね?」
朝霧の問いに、水城が頷く。
「はい。三食とも通常通りです。少なくともあの時点では、すぐに食料がなくなるとは考えていませんでした。納品が一度止まった程度なら、施設内にある分で対応できますから」
「まあ、三日目ならそうでしょうね」
朝霧も納得したようだった。
「外もまだそこまで混乱してなかったもの。会社に行ってる人も普通にいたし、雪が長引きそうだって騒ぎ始めたのも、その少し後だったはずよ」
「ええ。こちらも同じです。三日目になってようやく、職員が出勤できない、予定していた物資が届かないといった問題が目立ち始めました。それでも、まだ全員が数日程度のことだと思っていました」
そこで朝霧が少し考えるようにしてから尋ねた。
「でも、毛布は本当に増やさなかったの?」
「……はい」
「予備があったのに?」
「はい、ありました」
朝霧の眉が僅かに寄った。
「暖房が動いていたとはいえ、あの頃にはもうかなり気温が下がってたでしょう?」
「私も同じ意見でした。ですから大庭には何度か進言しました」
大庭。
その名前が出た瞬間、焚き火の周囲にいた者たちの空気が僅かに変わった。
大きな反応ではない。
誰かが怒鳴ったわけでも、悪態をついたわけでもなかった。
ただ、それまで炎を眺めていた火野がゆっくりと顔を上げた。
その目には、先ほど蓮に食ってかかってきた時とは違う感情が浮かんでいる。
蓮は何も言わず、その表情を見た。
「大庭は、元々受刑者への扱いがいい人ではありませんでした」
水城が続けた。
「規則には厳しい人でした。ただ……その厳しさが、受刑者を更生させるためのものだったのかと聞かれれば、私は違ったと思っています」
「ずいぶん遠回しに言うじゃねえか」
火野が低い声で呟いた。
「火野さん」
「本当のことだろ」
水城はそれ以上何も言わなかった。
火野も続けるつもりはないらしく、再び炎へ視線を落とした。
だが、その短いやり取りだけで十分だった。
大庭という男が単に厳しい所長だっただけなら、百日近く経った今になって、名前を聞いただけでこんな顔をするはずがない。
おそらく問題は、この先にある。
「分かった」
蓮が口を開いた。
「最初の頃の話は、そのくらいでいい」
水城が蓮を見る。
「外も似たようなもんだった。最初の数日は普通に社会もまだ動いてたし、俺たちもその頃の状況は知ってる」
「そうですね」
「俺が知りたいのは、その先だ」
蓮はそう言ってから、ゆっくりと焚き火の周囲へ目を向けた。
火野がいる。
水城を止めるように声をかけたジョーという男もいる。
そのほかにも、壁際で黙って話を聞いている男や、毛布を身体に巻いた女たち、痩せ細った身体で炎に手を伸ばしている中年男がいる。
受刑者だけで七百人。
そこに何十人もの職員がいた。
それが今では、二十人余りしか残っていない。
「何が起きて、七百人いた人間がここまで減ったのか。それと――」
蓮の視線が、焚き火を囲む者たちの顔を順番に通り過ぎていく。
「特に知りたいのは、ここにいる奴らのことだ」
何人かが蓮を見る。
「こいつらが何をして、どうやってここまで生き残ったのか。そこを聞かせてくれ」
水城はすぐには答えなかった。
蓮と同じように、生き残った者たちを見回していく。
やがて、その視線が再び蓮へ戻った。
「……分かりました」
水城は静かに頷いた。
「では、一週間ほど経った頃からお話しします」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
本日から二話投稿で進めていきます。
もし「おもしろい」「続きが読みたい」と思っていただけたましたら、
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