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魔法少女ダイアリー♡  作者: 鈴森京也


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95話 お引越し!

 夜、鏡界、小田原・OD04ベース近くのビルの一室――。


「ああ、そのソファーは左側で、もっと窓側にピッタリに置いてください! もう、カーミラさん。それ斜めになってます! ちゃんと壁と水平に置いてください!」


 待ちに待った『活動拠点移動』の任務が発行され、『血の宣誓(ブラッドオース)』は活動拠点を小田原・OD04ベースへと移動。


 今はセラ先輩の指揮の下、『血の宣誓(ブラッドオース)』総出で秘密基地(ミーティングルーム)の引っ越し中。


 YH08ベース近くにあった秘密基地(ミーティングルーム)のから転移装置《トランスファーデバイス》で運んできた家具類を、新しい秘密基地(ミーティングルーム)へエッチラオッチラ運んできたところである。


 新しい秘密基地(ミーティングルーム)は、わたしとしてはなじみ深い、以前グレース達に攻撃されてメチャクチャにされるまで立てこもっていた例のビルの一室だ。


 部屋には明かりが灯り、家具はほとんど置かれていない。屋上に出れば視界が開けており、狙撃には絶好の場所。引っ越し先としてはうってつけと言えるだろう。嫌な思い出はあるものの、まあ不満はない。


「だいたいカーミラさんは、何で引っ越しに眼帯なんかしてくるんですか? 早く外してください!」


「でも、これは……」


「そんなのしてるから、ちゃんと水平に置けないんですよ? 真面目にやってください! リリナちゃんも眼帯外して!」


「わ、分かったわ……」


「はーい!」


 眼帯(裏地無し)を着用していたカーミラ先輩とわたしは、セラ先輩のごもっともな叱責を受けてしまう。

 『どうしましょ?』と、カーミラ先輩を見ると、カーミラ先輩はあっさり眼帯を外してしまっていたので、わたしも外すことに……。


 えっ、なんで律儀に眼帯(裏地無し)なんかしてたのかって?

 それは簡単、カーミラ先輩と一緒に眼帯をすると契約(約束)したからだ!

 契約(約束)は守られるべきなのである!


 ちなみに、カーミラ先輩が集合場所の中央ロビーに普通に眼帯(裏地無し)着用で現れたのを見て、メチャ焦って眼帯(裏地無し)を探して付けたのは秘密。


「カーミラさん、お友達として忠告させていただきます! リリナちゃんは優しい子だから、カーミラさんに合わせてくれてるみたいですけど、あんまりヘンなことを無理強いすると嫌われちゃいますよ? カーミラさんの趣味は特殊だってことを自覚してください!」


 情け容赦ない、見事な致命の一撃である!

 セラ先輩、思いっきりズバっとイったな、オイ!

 あ、カーミラ先輩が涙目になってる……。


「だ、大丈夫です! わ、わたしもそういうの(・・・・・)好きなんで、その……カーミラ先輩に、カッコイイ眼帯プレゼントしてもらって、凄っごく嬉しかったなー……なんて?」


 心の弱いわたしはギスギス感に居たたまれなくなり、思わずカーミラ先輩へ助け舟を出してしまう。


「そ、そうよね! リリナは私の同士で……」


「リリナちゃん、あなたが優しい子なのは知っています。でも、カーミラさんを甘やかせ過ぎるのはカーミラさんのためになりません! 時には厳しい躾けも必要なんですよ?」


「リリナ……」


 セラ先輩がニッコリ微笑みながらカーミラ先輩を睨みつけると、涙目のカーミラ先輩が、わたしの背中に逃げ込んでくる……。


 カーミラ先輩、中二クールビューティーかと思ってたけど、セラ先輩にメッチャ弱い。というか、セラ先輩の笑顔、メッチャ怖い……。


 わたしの背中で涙目になっているカーミラ先輩を、ニッコリ微笑みながら睨みつけているセラ先輩に、胸の前で小さく手を合わせ、セラ先輩だけに聞こえるくらいの小声で、『セラ先輩、今日はこの辺でカンベンしてあげてください! 半泣きになっちゃってますから!』と呟く。


 するとセラ先輩も、わたしにしか聞こえないくらいの小声で『リリナちゃん、あんまり甘やかすと、後であなたが苦労しますよ?』と言ってくれる。


 ごもっとも! まったくその通りでございます!

 でもさぁ、同じパーティーでギスギスすんの嫌じゃん!

 中二病の娘って結構好きだし!


「エステラちゃんは上手ですね! 綺麗に配置できて偉いです!」


 セラ先輩はギスギスした雰囲気を変えるように、1人真面目に引っ越し作業を続けるエステラの方へとくるりと向き直る。


「わたしくし、こういうことは得意ですの! 何でも申し付けてくださいませ!」


 自前の三角巾とエプロン、マスク、ゴム手袋を身に着け、バケツにモップまで持参して準備万端のエステラは、分解されていた家具をテキパキと組み立てると、セラ先輩と一緒に家具を配置していく。


 引っ越し慣れしているというか、引っ越し屋でバイトしてたんじゃねーの? というレベルで家具の組み立てから運び方、設置まで手慣れており、悪役令嬢風の外見と言葉使いに全く合っていない……。


「カーミラさんとリリナちゃんは、隣の部屋に置いてある家具を組み立てて設置していてください。配置図はさっき渡しましたよね?」


 小田原の秘密基地(ミーティングルーム)は、3LDKの部屋を2部屋という感じ。


「はーい、了解です!」


「お姉さま! こちらが終わりましたら、すぐにお手伝いに参りますので、少々お待ちくださいませ! あ、重い家具はわたくしが組み立てますので、そのままにしておいていただけますか?」


 エステラが家具を運びながら、わたしに呼びかけてくる。

 やっぱりメッチャいいヤツである!


「ありがとう、助かる! でも、急がなくて大丈夫だからね! さ、カーミラ先輩、行きましょ!」


 まだ背中で涙目のままのカーミラ先輩に声を掛けると、一緒に隣室へと向かうのであった――。


 ちなみに、リレッタは1人で引っ越し荷物の運搬係である。

 まあ5人の中で一番強化(エンハンスメント)しているので、1人でも大丈夫だろ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 1分後、さっきの部屋の隣室――。


「セラは時々あんな風におかしくなってしまうの。ヒステリーってやつかしら?」


 カーミラ先輩は、セラ先輩の姿が見えなくなった途端に眼帯(裏地無し)を再装着し、頼まれた家具の組み立てもしないで、悪の女幹部といった感じに腕を組んでそんなことを言い始めた。

 ついさっきまで涙目だったことが嘘のような不敵な表情である!


「……どうなんですかねぇ?」


 わたしはカーミラ先輩との約束(契約)を守り、眼帯(裏地無し)を再装着すると家具を組み立て始めた。


「凡百(ぼんぴゃく)の有象無象(うぞうむぞう)の愚民達に、私たちの崇高な志(こころざし)が理解できないのは仕方がないけれど、あのキレかたは異常だったわ。寄生タイプの魔塊獣(マゴル)に精神を侵されているのかもしれないわね……」


 どうでもいいけど、家具組み立てるの手伝ってくれないかなぁ。

 そっち側の端を持ってるだけでいいからさぁ!


「ふふふ、やっぱりこの眼帯はカッコいいわね! ほら、リリナもこっちに来てポーズを取ってごらんなさい!」


 カーミラ先輩は家具の組み立てを手伝うこともなく、自分の姿を窓ガラスに映し、真剣な表情でポーズを取っている。


「カーミラ先輩、家具を組み立てないと……」


「大丈夫よ! すぐにセラとエステラが向こうの部屋を片付け終えて、手伝いにやってくるわ! ほら、セラ達が来る前に、カッコいいポーズの練習をしておきましょう?」


 カーミラ先輩はかなりクズい事を言いながら、わたしを無理やり隣に立たせる。


「2人だと……そうね、こういうポーズがいいかしら? ほら、リリナもやってごらんなさい!」


 カーミラ先輩の隣に立たされ、『2人は魔法少女!』的なポーズを取らされる……。

 窓ガラスに映る姿は……うーん、まあ中二可愛いかなぁ……?


「おい、何やってんだよ! 遊んでないで、早く中に運んでくれ!」


 み、見られた!?

 リレッタの呆れたような声にハっと我に返る。

 後ろを振り向くと、大きな段ボール(家具を分解梱包したやつ)を両脇に抱え、脚で玄関のドアを押さえた状態のリレッタがこっちを睨んでいる。


「どう、リレッタ? カッコいいでしょう? ほらリリナもちゃんとポーズを取りなさい!」


「はーい!」


 もうヤケクソである!

 玄関のドアを脚で開けたまま立っているリレッタに、カーミラ先輩と一緒にさっきのポーズを決める!


「おい! あたし1人に荷物全部運ばせて遊んでんじゃねー! 早く荷物持ってけ!」


 ごもっともである!


「リレッタも怒りっぽいわね。2人とも寄生タイプの魔塊獣(マゴル)に精神を侵されているのかしら……?」


 わたしは『カーミラ先輩の頭の中に寄生タイプの魔塊獣(マゴル)がいるんじゃないですかねー?』とツッコミを入れそうになるのを、かろうじて自制……。


 まだポーズを取っているカーミラ先輩を置いて、黙ってリレッタから荷物を受け取ると、梱包を解き始める。


「まったく! セラもエステラも真面目にやってんのに、遊んでんじゃねーぞ! それと、あんまりカーミラにおかしなことさせんな!」


 ひどい冤罪である!

 おかしなことさせられているのは、わたしの方だというのに!


 あ、いや、もしかしてカーミラ先輩を甘やかさずに厳しく躾けろ、という意味か!?

 セラ先輩の反応を思い出すと、そっちの方が正解のような気がする。

 うーん、カーミラ先輩の立場って……。


「カーミラ先輩、家具だけでも組み立てておかないと、セラ先輩が来たらまた怒られちゃいますよ? 次はマジでヤばそうですけど?」


 プンスカ怒りながら残りの荷物を取りに行くリレッタを見送り、カーミラ先輩に声を掛ける。


「そ、そうね……家具の組み立てくらいは終わらせておこうかしら」


 ようやく真面目に仕事をする気になったらしいカーミラ先輩と2人で家具を組み立てることに……。

 片側を抑えていてくれるだけで、かなり作業ははかどるもので、わたし達はテーブルや椅子などを順調に組み立てていくのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 その後、小物の家具を組み立て終え、カーミラ先輩とダラダラと設置しているうちにセラ先輩とエステラが到着。


 急いで眼帯(裏地無し)を外して出迎えた後、エステラには大きめの家具の組み立てをお願いし、わたしたちはセラ先輩の指揮下、テキパキと家具を設置していった。


 最後にリレッタが運んでくれたみんなの私物類を梱包した段ボールを各自で開封し、引っ越しはエステラの大活躍により(大型家具の組み立て・設置はほとんどエステラがやった)無事終了したのであった――。


「「「「「カンパーイ!」」」」」


 新しい秘密基地(ミーティングルーム)で、持ち寄ったジュースやお菓子、セラ先輩手作りのプチケーキ類(わたしもスイーツセット持ってきたよ!)を囲んだ引っ越しパーティーである!


 リーダーのリレッタは、エステラ、セラ先輩、カーミラ先輩へ労(ねぎら)いの声を掛けて回っている。


 何にもしなそうなのだが、意外にちゃんとリーダーっぽいことをしているリレッタの姿に、1ポイント評価を上げる。あ、1000ポイント満点ね。


「リリナちゃん、大丈夫ですか?」


 カーミラ先輩がリレッタ達と話しているのをチラチラ見ながら近づいてきたセラ先輩が、プチケーキの美味しさを堪能していたわたしの耳元でコソっと呟く。


「ええと……」


「毎日のように特訓とかいって魔塊獣(マゴル)狩りに連れ出されているのは知っています。あの妙な眼帯も、カーミラさんに無理やり付けさせられているのですよね?」


 毎日のような秘密特訓(レッスン)に、眼帯着用訓練(?)など、カーミラ先輩のパワハラ行為は認識してくれているようだ。

 自主的にやってると思われてたらかなり精神的に辛かったので、少しホッとする。


「リリナちゃんが優しくするから、カーミラさんは甘えているんです。このまま流されていったら、カーミラさんみたいに平気で妙な眼帯をして歩き回るようになってしまいますよ?」


 えっ、マジでっ!? そ、それはイヤーーっ!


「わたし、どうすれば……」


「いいですか、リリナちゃん。カーミラさんに流されるのではなく、リリナちゃんがカーミラさんを正しい道へ導いてあげるんです!」


 わたしが中二病患者(カーミラ先輩)を正しい道へ導く?

 ムリじゃないかなぁ……多分。


「あなたはカーミラさんに唯一の理解者だと思われています。分かりますよね?」


 理解者? 理解者、理解者……ああ、理解者(中二病仲間)ね!


「はい……」


「それを利用するんです! さり気なく、リリナちゃんがカーミラさんを正しい道へ導くのです。最初は反発すると思いますけど、唯一の理解者であるリリナちゃんのお願いなら、カーミラさんは絶対に断れないはずです!」


 そうかなぁ? 暴走してどっかへぶっ飛んでいきそうな気がするけど……。


「心配しなくても大丈夫ですよ。カーミラさんって気が強くて強引に見えますけど、それは表面だけ。少し強く押せば、リリナちゃんの言うことを何でも聞いてくれるようになりますよ?」


 うーん、セラ先輩、腹黒……。

 いや、カーミラ先輩のせいで、『ホントに、ホント~~に面倒くさい』ことに何度も巻き込まれて腹黒(こんな風)になってしまったのかもしれない……セラ先輩も被害者なのだ。


「でも、どうなんですかね、そういうの……」


 中二病なんて放っておけば治るんじゃね、の精神である。


「わたしが調べたところによると、高校までに正常な人間に戻らなければ、一生あのままの状態から抜け出せなくなるらしいの……リリナちゃん、カーミラさんに残された時間はもう少ないんです! いくら明日をも知れぬ命の魔法少女とはいえ、カーミラさんが一生あのままなんて、そんなの非道過ぎます!」


 酷い言われようである!

 確かに高校までに治らなければ一生オタクのままになりそうではあるが……それはそれでいいんじゃないの? と思うけどね。

 中二病の方は放っておいても高校までに治りそうな気がするし……。


「わたしではダメだったんです……一時的には言うことを聞いてくれますけど、わたしの目の届かない所では、中二病患者(あの状態)へ戻ってしまうんです。でも、カーミラさんが唯一の理解者だと思っているリリナちゃんなら、カーミラさんを調きょ……正しい道へ導けるはずです!」


 セラ先輩、今『調教』って言おうとしなかったか?

 まさかセラ先輩……あっ、いや、これ以上考えないでおこう。深淵に覗かれる趣味はないのである!


 まあ、カーミラ先輩の中二病の暴走を許せば、わたしがとばっちりを受けることはほぼ確定(現状受けてるし!)だし、さすがに痛すぎるからなぁ……頑張って、ちょっとだけ早く中二病を卒業できる方向へ導いてみちゃう?


「とりあえず、頑張ってみます」


「そうですか! じゃあリリナちゃんは、今からカーミラさんのお世話係です! 何かあったら、わたしも、リレッタさんもできるだけ協力しますから頑張ってくださいね!」


「え゛っ!?」


 カーミラ先輩のお世話係ってなんぞ?


「これでようやく肩の荷が降りました! エステラちゃんのお世話は、わたしが引き受けますから、リリナちゃんはカーミラさんのお世話係、頑張ってくださいね! カーミラさんのお世話係、頑張ってくださいね!」


 ニッコニコのセラ先輩……大事なことなので2回言ったんですかねぇ?

 な~~んか、面倒事を押し付けられたような気がするんですけど……。


「リリナ、こっちに来なさい! さっき考えたカッコいいポーズをみんなに披露するわよ!」


「………………」


 よし! 決めた!

 カーミラ先輩を正しい道へ導くため(調教じゃないよ?)に、いっちょ頑張るか!


 と、そんなこんなで、和気あいあいな雰囲気(?)の中、秘密基地(ミーティングルーム)の引っ越しパーティーは無事幕を下ろしたのであった――。


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