94話 引けぬプライド・後編
ゴメンなさい! 予約投稿が上手くできていなかったm(_ _)m
「でも、澪ちゃん、凄く射撃が上手だね。迅くんと同じレベルの子なんて初めて見たよ!」
「ああ、確かに凄かった。俺も、澪があんな特技を持ってるなんて知らなかった。あの命中率は素人とは思えないレベルだったぞ!」
バーガーをパクつくわたしに、蒼牙くんと凛くんが話しかけてくる。
「フフフフ。それほどでもないけどね?」
まあ、素人じゃないんだけどな!
「いや、俺とほぼ同じレベルの射撃精度で、しかも狙撃は完全に俺より上だった……特技ってレベルじゃねーよ! 異常だろ、異常!」
迅は『拗ね拗ねモード』が終わったら、『愚痴愚痴モード』に入ってしまっていた。
「本当のこと言うと、さっきは運が良かったんだよ。迅に負けたくなくて集中していたら……なんと! 『ゾーン』に入ったんだ!」
「『ゾーン』って、一流のアスリートが言う『周囲が止まって見える』とか、『思い通りに身体を動かせる』とかいうヤツだよね?」
わたしの言葉に、蒼牙くんが解説役のキャラのように『ゾーン』の説明をしてくれる。
「そうそう! デカゾンビの身体を移動する弱点が、止まって見えたんだ!」
「澪は中身ただのオッサンかと思ったら、凄いじゃないか! 実生活での実用度はゼロっぽいけど、ちょっと見直した!」
「プ、プロゲーマーになれるかもしれないでしょ! 世界VRゲーム大会とかあれば、そっちでもいい線いけるぞ、多分!」
サラっと酷いことを言う凛くんに言い返しておく。
実生活の実用度はゼロだが、魔法少女としては実用度ありまくりなので別にいい!
「なあ、その『ゾーン』って俺でも使えるのか?」
迅が真面目なトーンで聞いてくる。
そんなに狙撃で負けたの悔しいのかよ……。
わたしだって、またやれと言われても自信ないので、そんなこと聞かれても困るのだが……真面目な顔の迅を見ていると可哀そうになってくる。
実戦を経験した大人の魔法少女として助言してやることにした。
「わたしだって3回しかなったことないから、分かんないよ。でも、迅は射撃能力に頼り過ぎ。全部射撃で何とかしようとしてるんじゃない?」
「当たり前だろ!」
「いやいや、重要なのは『立ち回り』だよ。さっきの最後のヤツだって、あんなの普通に撃ったって絶対当たらないよ。ああいうのは、一旦引いて、倒せる算段を立ててから攻撃するんだよ!」
「でも澪は全弾当ててたじゃねーか!」
「あの時はゾーンに入ってて、当てる算段があったから撃ったの。わたしだって、あんなの普通なら絶対当てられないよ。『引くこと覚えろカス』という至高の名言があるように、押すべき時と引くべき時があるんだ。迅は全てを射撃だけで解決しようとしないで、押すにしても引くにして、状況を俯瞰し大局を見て、最適な『立ち回り』を考えた方がいいよ。今回みたいに射撃が当たらない、当たってもダメージが入らないってことだってあるんだからね」
「うぐぐ……」
「そうそう、澪ちゃんの言う通りだよ。ボクの言った通りに動いていれば楽に倒せたし、システムがダウンすることはなかったはずだよ?」
「迅がどうしても自分の射撃能力だけで勝負したいなら、それこそ競技射撃でもやるしかないぞ。チーム戦で、チームワークを無視して勝てるわけがないだろ。さっきだって、迅が指示に従っていれば、最後までプレイできたはずだ」
いや、さすがに指示通りに戦ったとしても、時間的にシステムダウン前には倒せないと思うが……迅を反省させた方がいいので、腕を組んでうんうん頷いておく。
「そうかもしんねーけどよ……」
「だいたい迅は、射手として一番大切なことを忘れてる。『常に冷静沈着であれ』だ。銃をコントロールする前に、己の精神をコントロールするのは、射手として基本中の基本……らしいぞ!」
凛くんと蒼牙くんの2人に説教されて凹んでいる迅へ、追い打ちとばかりに何かの射撃動画で見たことを偉そうに言ってみたんだが……。
「確かにその通りだ……俺は射撃の腕の前に、射撃に対する心構えで澪に負けていたってことか。ああ、認める、認めてやるよ! 確かに今回は俺の負けだ!」
いや、どう考えても迅の勝ちだろ!
わたしは、迅みたいに連射であんなに当てられないから、最後までやっても多分結果は変わらなかったと思うぞ?
「うむ、迅よ、その謙虚な心こそ、泰然自若(落ち着いてどんな事にも動じない)を体現するための第一歩じゃ! 励むがよいぞ!」
結果は変わらなかったと思うが、口から出てきたのは偉そうな言葉である。
え、何となく偉そうなこと言う雰囲気だったでしょ?
「くっ、調子に乗りやがって! 今日は負けたけどな、次はぜってー勝つからな! まあ、今日の1位は澪だ、ほら、コレはくれてやるよ!」
ポイッと投げてきたのは、スコア1位だった迅が貰った『ネクサス・VR・パーク』のマスコットキャラクター、身体が半分腐った女の子ゾンビの『ゾンビちゃん』(マンマだなオイ!)のぬいぐるみである……。
いや、マジでいらねーんだけど!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
龍鳳学園、複合アミューズメント校舎、カラオケ店『エコービート』室内――。
お腹もいっぱいになったので、カロリーを消費しようということで4人でカラオケである!
VRゲーは途中までだったし、まだ時間あるんだよね。
ミア達と遊ぶ時と違って、男子と連るんで遊ぶのは、気楽というか、のびのびできるのよね。ほら、心は少年だから!
「♪♪♪~♪ ♪♪~♪ ♪♪♪~♪♪♪♪~♪」
しかも、ミア、美奈さん、瑠奈さん、それに深雪さん、輝夜さんまで、一緒にカラオケに来た女性陣は全員プロかセミプロってレベルで歌が上手かったのだが、コイツ等3人とも、イイ感じなのだ!
まあ、下手ではない。そこそこ上手いは上手いのだが、微妙に音程を外しているその歌唱力は、わたしの心に安らぎを与えてくれる……つまり、わたしと同レベルの歌唱力なのだ!
「素晴らしい! 凛くん、サイコー(歌唱力のレベルが)!」
「そ、そうか? 深雪や輝夜には微妙って顔されるけど……。何かこのメンツでのカラオケは気楽でいいな! 何にも気にしないで思いっきり歌えるわ!」
凛くんが、少し照れながら、わたしと全く同じ感想を言ってくれる!
「うーん、そうだね。上手い子がいるとちょっと緊張しちゃうけど、このメンバーならボクも気楽に歌えて楽しいよ!」
「わたしもー!!」
ミアの後に歌うのは『コレなんの辱め』って思うレベルの地獄である……。
聞いてるだけならサイコーなんだけどね!
迅の歌うちょっと古めのラブソングを、部屋に置いてあったマラカスで盛り上げてやると、嫌そうな顔をしながらも熱唱していた。
「澪、盛り上げ方ちょっとは考えろよ。ラブソングだぞ? まあ悪くはなかったけどよ」
ドリンクを口に含みながら、迅がまんざらでもない顔を浮かべる。
「フフフ、ちゃんとわたしの歌の時も盛り上げろよなー!」
迅がわたしの言葉に肩をすくめる。
「あ、そうそう、何で迅は、あんなに射撃に拘りがあるんだ? サバゲ―の有名プレイヤーとかなの?」
あの拘り具合はちょっと異常だ。
何となく聞いてみると、微妙な顔をされた。
「澪は、ビーム射撃って知ってるか?」
「ええと、巨大ロボットが撃つヤツ!?」
「ちげーよ! 弾の代わりに赤外線レーザーが出るビームライフルとかビームピストルで標的を撃つ競技な。普通の競技射撃の未成年版。俺、それやってんだよ。大会とかには参加してねーけど、スコアは日本でトップクラスなんだぜ!」
そんな競技があるのか!?
競技射撃なら、射撃精度に拘るのも分かるか。
「そうだったんだ。でも、迅の動きって、競技射撃っていうより、何ていうか、実戦向けって感じだったけど……」
迅もそうだけど、凛くんや蒼牙くんの動きも、実際の戦闘でも使えそうなくらい洗練されてたけどなぁ……。
「それは、さっき凛くんが言ってた護身術みたいなものの延長だね。ボク達は、銃で武装した相手と対峙した時の対処の仕方なんかも訓練してるんだ」
迅の代わりに説明してくれたのは蒼牙くんだ。
いつも解説係をやってるんだろうなーっと思わせるほど、すっかり解説キャラが板についている蒼牙くんである!
「それって、特殊クラスのカリキュラム的なヤツ?」
「違う違う、実家の方針だね。ボク達3人の家では護身術……武術を習得するのが必須なんだ。ビーム射撃は迅くんの趣味だけどね」
「おお、名家のご子息って感じだねぇ?」
「あはは、どうなんだろう? 少なくともボクは小さい頃から普通に武術を学んでいるから、特別って感じはしないけどね」
確かに、育ちの良さは感じるな。
迅以外は……。
「ちなみに迅くんは、実銃も撃ったことがあるって言ってたよ?」
ほお!
「まあな! グアムで、グロック、ベレッタみたいな拳銃から、AR15やAK47みたいなアサルトライフルまで撃ったことあるぜ!」
迅が自慢げに胸を張る。
くっ、わたしだって黒星撃ったことあるもん!
「それより、澪は何でそんなに射撃が上手いんだよ? 動きも普通じゃねーし?」
うーん、魔法少女とは言えないから、半分ウソを混ぜて答えるか……。
「わたしマンガが好きで、サナトリウムに居た時ずっとマンガ読んでたの。それでマンガに出てくる銃に興味がでてきて、銃器関連の動画をいっぱい見て銃の扱いとか立ち回りとかを覚えた」
実際は魔法少女になって、地獄の殺戮者を手に入れてから、銃器戦闘関連の動画を見て勉強したんだけどね。
「そう言えば、凛が、澪の中身はオッサンオタクだって言ってたなぁ。何かと思ったら、そういうことか! あっ! これは言っちゃダメなんだっけ!?」
「はぁ、まったく迅くんは……」
マンガ大好きという三枝理奈の設定のため、実際、かなーりマンガを読みこんで、凛くんとのやり取りでも結構オタ知識を披露している、しているが……。
さすがに(大体あってるけども)オッサンオタク扱いはねーだろ(しかも口止めしてるし)!
迅の言葉に、凛くんをジロリと睨むと――凛くんはすでに視線を逸らせて、唐揚げをもぐもぐしていた。
見事過ぎる鉄壁なスルー力である!
感心するのと同時に、ここまで鉄壁なスルー力を身に着けなければならなかった凛くんの過酷な生存環境を考えてしまい、心の中で涙する……。
「じゃあ、澪、次はデュエットしようぜ! せっかく『女子っぽい』のがいるんだから、みんなで澪とデュエット曲を練習しよう!」
都合の悪いことを鉄壁のスルー力で受け流してからの、爽やかで曇りない笑顔でのデュエットのお誘い……並みの男には真似できぬ、ハーレム野郎の恐ろしさである。
コイツがハーレム作るなら、まあしゃーないか、と思わせる、得体の知れぬ『謎の力』を感じさせる!
「『女子っぽい』言うな! 生物学上は間違いなく女子だわ!」
実際は生物学上だと人間かどうかさえ怪しい変身体だが、ここは一応ツッコミを入れておく。
しかし、デュエットねぇ……。
ん? 女子のはわたし1人、コレに参加すればこの後、ずっと歌いまくれる!?
何も気にせずに歌いまくれるチャンスなんか、そうそうあるもんじゃないよなぁ?
「よっしゃあぁぁぁ!! 今日はデュエットパーティーだあっ!」
ということで、わたしと凛くん達4人は、喉がガラガラになるまでデュエット曲を熱唱したのであった――。
いやぁ、音程とかまったく気にしないで歌うのって、ストレス解消にいいよね!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
龍鳳学園・特別クラス、澪の私室――。
ミアに貰った白猫のぬいぐるみ『ミャオ×2(本名:ミャオミャオ)』の隣に、今日、迅に貰った『ゾンビちゃん』を置いて、ベッドの上でゴロゴロする。
いやぁ、やっぱ遊ぶなら野郎相手の方が気楽でいいわ!
慣れてきたとはいえ、女の子相手だと色々気を使うからな。
ベッドの上をゴロゴロしながら、『ゾーン』のことを考える。
最初のは確かにゾーンっぽかったけど、2度目のは本当に『ゾーン』だったのかなぁ?
あの時、何か……そう! 何か違和感が……!
確か、ステラさんの『アストラル・インサイト』は変身体でも発動することがあるって言ってたよな。
同系統っぽいわたしの『フォーサイト』も同じように、変身体でも発動するなら、『フォーサイト』だったのかも?
いつもの光のラインは見えなかったけど、効果自体は『照準補助』っぽい状態だったし……。
「………………」
うん! よく分からん!
次に変身解除したら、鏡界で実験してみよう!
今日は遊び疲れて、何か面倒くさくなったので、わたしはふかふかのベッドの中にもぞもぞと潜り込むと、すぐに心地よい眠りについたのであった――。
・神代 凛
男子が憧れる精悍なハンサム。
特殊クラスの中学2年生で深雪と輝夜、迅と蒼牙の友人。
千年以上続く名家、神代家のご令息。
・霧守 蒼牙
黒髪、センターパート、中性的アイドル顔。
特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と迅の友人
人当たりが良く、空気が読める切れ者。
・高上 迅
茶髪、くせ毛、糸目、チャラそう。
特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と蒼牙の友人
思ったことをすぐ口に出す




