表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/95

92話 引けぬプライド・前編

 複合アミューズメント校舎内、通路――。


「俺、VRゲーって初めてなんだよねー! お前らは来たことあんの?」


 わたしと凛くん達4人でVRゲーム施設『ネクサス・VR・パーク』へ向かって歩きながら、迅が楽しそうに声を上げる。


「ボクも初めてだよ。そういう施設があるのは知ってたけど、なかなかね。凛くんは、久我(くが)さんや春園(はるぞの)さん達とデートで来てるんじゃない?」


「いや、俺も初めてだな。深雪や輝夜は、こういうのに興味ないから。いつも混んでるし、訓練になるわけでもないからな」


「訓練?」


 何の訓練だろう?

 凛くんの言葉に、つい口を挟んでしまう。


「えっ! ああ。深雪や輝夜、俺もだけど、何というか……そう、護身術みたいなものを子供の頃から習っててさ」


 千年続く名家だと、いざという時に自分の身を守れるよう、子供のころから護身術(そういうの)を学ばされるのだろう。

 さすが戦国時代を潜り抜けてきた家系だ。ダテに千年続いている訳じゃないということだな。


「深雪も輝夜も、訓練になるなら遊びにも興味を持つんだけど、射撃とかは全く興味ないみたいでさ。俺は迅に誘われる前から気になってたんだけど、来るチャンスがなくて、今日ようやくって感じ」


 ミアはノリノリで楽しんでたから、女の子だからって訳ではなく、純粋にVRゲーム(こういうのに)興味がないのだろう。まあ分からないではない。


 深雪さんと輝夜さんが敬遠してるとなると、凛くんが1人で来るってわけにもいかないだろう。

 凛くんは『射撃に自信のあるヤツがVRゲームに挑戦したがってる』とか言ってたけど、凛くん自身がやりたかったのかもしれないな。


 一応1人でも遊べるはずだけど、強制的に知らない人達とチームを組まされるので、初めてのプレイだとハードルが高いからね。


「わたしは2回目だよ! この前来た時は実力が出せなかったけど、今日は本気出しちゃうからね! 射撃にはちょっと自信あるんだ!」


 自慢じゃないが、2000m越えの超・遠距離狙撃(ELR)から、拳銃での近接精密射撃(CQM)まで実践済みである。

 今日はどこまでやれるのか、全力でチャレンジするつもりだ!


「ほほう? じゃあ俺と勝負する?」


 わたしの言葉に、迅が自信満々の表情を浮かべる。

 サバゲーか何かでこういう射撃系ゲームに自信があるのだろう。

 凛くんが言っていた『射撃に自信のあるヤツ』ってのは、多分、迅のことだな。


「ほう? この、わたしと、射撃で、勝負すると?」


 日々戦闘に明け暮れる魔法少女を相手に、いい度胸だ!

 今は人間スペックだけど、実戦経験アリのわたしが、そこいらのリアル中2のクソガキに負けるわけねーだろ!


 少しプライドが刺激され、迅に向かって挑発するようにニヤリと微笑んでやる。


「へえ、澪はずいぶん自信があるみたいじゃねーか? 世間知らずのガキに『本物の力』ってヤツを思い知らせてやるぜ?」


 わたしの挑発的な笑みに、迅も不敵に微笑みを返してくる。


「じゃあ、賭ける? どっちがガキか思い知らせてあげるけど?」


「ほう? いいぜ! 後で吠え面かくなよ!」


 売り言葉に買い言葉。

 迅とわたしはバーガー10個を賭けて射撃勝負をすることになったのである!


「盛り上がってるところ悪いけど、VRゲーム、凄く混んでるみたいだよ? どうする?」


 蒼牙くんが指差す方を見ると、VRゲーム施設『ネクサス・VR・パーク』の入口付近には、この前ミア達と来た時よりさらに長い列ができている。


「人気の施設だからしょうがない。せっかく来たんだから、しばらく待ってみよう」


 凛くんはそう言うが――ふっ、ふっ、ふっ!

 こういう時こそ、『赤服』の出番である!


「わたしに任せて!」


 わたしは男性アイドルユニットのような3人組を引き連れ、颯爽と行列の最後尾へと向かっていく――。


「ん? えっ!? ねえ、あの3人カッコよく…………えっ!? あ、ああっ、赤服!?」


 ふと後ろを振り返ったセーラー服姿の女生徒が、まず凛たちに視線をやり、すぐにその前に居るわたし(・・・)に気づき……。


「えっ、赤服!?」


 『赤服』の叫びは劇的効果を生む。

 列に並んでいた全員(・・)が振り向き、わたし(・・・)の姿を確認する――。


「うわぁあぁぁぁぁ! 本当に赤服じゃねーか! に、逃げろーっ!」


「げえっ、赤服が来た!!」


「一時撤退だ……赤服と関わるのはマズい! 撤退! 撤退! 全軍撤退だぁ!」


 まあ、その、いつものように長蛇の列はあっという間に霧散。

 無人の野を行くがごとく悠々と受付までするすると辿り着く。


 やはり赤服のパワーは偉大なり!

 ちょっと悲しいけどな……。


「いやぁ、何て言うの? ヤクザ者が集団で来てもこうはなんねーぞ。澪、お前どんな悪逆非道を働いたんだよ!?」


 わたしじゃねーよ!

 何年にも渡って、特別クラスの連中による悪逆非道な行為が繰り返されたことは想像に難くないが……。


「まあまあ、並ばなくて済んだわけだし、ここは澪ちゃんの人徳……ということでいいんじゃないかな? ねえ、凛くん?」


「そうだな。澪のせいじゃない……いや、澪のせい……というか、澪のおかげ? とにかく澪が悪い訳じゃないから、ここはありがたく入らせてもらおう」


 わたしの微妙な気持ちを察してくれた蒼牙くんがとりなし、凛くんがフォローのようなフォローじゃないようなフォローを入れてくれ、4人は気まずい雰囲気で受付をするのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 『六本腕』の徹底的な攻撃を受けた後の小田原駅周辺のような、倒壊したビルや瓦礫まみれの荒廃しきった市街地を、わたし達4人は進んでいく――。


 もちろんVRゴーグルに表示された景色なのだが、前に来た時の洋館とは違い、今回は荒廃した市街戦フィールドである。


 プレイヤーが飽きないように、『ネクサス・VR・パーク』には複数のマップが用意されており、マップごとにシチュエーションや装備が変わる仕様で、定期的に新フィールドも追加される、とのこと(by『ネクサス・VR・パーク』HP)。


 今回の市街戦仕様は本日更新された新マップらしく、前より人が多かったのは、この新マップ目当ての連中が来ていたからのようだ。


「左翼、4!」


 ポイントマン(前衛)役の迅が叫ぶ。

 見ると、土気色の皮膚にボロボロの衣服を張り付けたゾンビの群れが、左前方のビル影からゾロゾロとこちらへ向かってくる。


 ダダダン! ダダダン! ガァン! ダダダン! ダダダン! ガァン!


 チームは瞬時に火力を集中し、あっという間にゾンビ4体を血祭りにあげる。


「左翼、クリア!」


 フォーメーションは、ポイントマン(前衛)がアサルトライフル装備の迅。

 レフトウイング(左翼)がショットガン装備の凛くん。

 ライトウイング(右翼)がショットガン装備の蒼牙くん。

 そしてリアガード(後衛)がアサルトライフル装備のわたし、という構成である。


「後方、5!」


「右翼、3!」


 後方に現れたゾンビを発見したわたしが叫ぶと、ほぼ同時に蒼牙くんが右翼側のゾンビを発見する。


 ダダダン! ダダダン! ダダダン! ガァン! ガァン!


 わたしと蒼牙くんは発見と同時に射撃を開始。

 すぐに迅が蒼牙くんの援護(カバー)に、凛くんがわたしの援護(カバー)に入る。


 ガァン! ガァン! ダダダン! ダダダン! ダダダン!

 ガァン! ガァン! ダダダン! ダダダン! ダダダン!


「右翼、クリア!」


「後方、クリア!」


 即席チーム、しかもVRゲー初体験者が3人という面子とは思えぬ、見事な連携である。

 長年()るんだサバゲーチームのような安心感……というか、こいつらサバゲーチーム組んでたんじゃないの!? 連携良すぎだろ!


 わたしのポジションのリアガードは実戦なら一番大変なのだが、VRゲーはバックペダル(後ろ歩き)もカットアンドラン(振り返り射撃)も必要ないので、時々振り返ってゾンビを確認すればいいだけの、一番安全で楽なポジション。


 大抵のゾンビは前方から襲ってくるため、ポイントマンが一番危険だ。

 わたしより学年が1コ上なので、ハンデということで迅がポイントマンに志願してくれた。


 わたしたちのチームは、即席とは思えぬ連携で一定数のゾンビを討伐し、自動的に廃墟の中を進んでいく――。


「12時! 大きい! 接敵(コンタクト)!」


 凛くんの声に正面を見ると、倒壊したビルからボスっぽい大きなゾンビが飛んでくる!?


 ムービー的なシーンはプレイが一時停止されるのだが、今回は中断されない。

 わたしは先手必勝とばかりに、飛んでくるデカゾンビへ照準――発砲!


 ダダダン! ダダダン! ダダダン!


 わたしの発砲音が誰かのと重なる。

 迅だ――落下しながら接近してくる敵を、わたしと同じ速度で照準・発砲している!?


 落下するターゲットを狙撃するのは激ムズである。

 残弾がある時は、ちょこちょこ射撃練習(『フォーサイト』なし)していたわたしでも、指切り3点バーストで1発当たればラッキーというレベルなのに、迅はほぼ全弾当てている!


 迅のヤツ、サバゲーか何かで相当鍛えられていると見た。

 エアガンよりはるかに命中率が高いVRゲーだからこそだろうが、圧倒的な射撃精度はわたしでさえ舌を巻くほどだ。


 ダダダン! ダダダン! ダダダン! ダダダン! ダダダン!

 ガァン! ガァン! ガァン! ガァン!


 デカゾンビの着地と同時に、凛くんと蒼牙くんも発砲開始。

 集中射撃でデカゾンビを削る。


 デカゾンビは巨体に似合わぬ軽快な動きで迅を攻撃しようとするが、迅は無言・無表情で全弾を頭部へ叩き込み、攻撃モーションをキャンセルさせ続ける。


 大言壮語を吐くだけの腕があることは認めよう……だがぁ!

 リアル中二のクソガキに負けるのは、魔法少女のプライドが許さねえんだよぉ!


 ダダダン! ダダダン! ダダダン! ダダダン!


 迅に負けまいと必死でバースト射撃を続けるが……連射に慣れていないわたしは6発に1発は外してしまい、全弾を当て続ける迅に差を付けられていく。


 『フォーサイト』さえ使えれば、こんなクソガキに負けはしないのに!

 とは思うものの、現界でゾンビに襲われた時にそんな言い訳は通じない。

 必死で自力での射撃を続ける。


 迅の的確な射撃でデカゾンビは一切攻撃できずにダメージを受け続け……その動きが止まる。

 一旦プレイが停止し、第二形態への変身ムービーが始まった。


「ちっちゃい澪の割には頑張ってる方じゃないの? その調子で後半も頑張れよー! まあ俺には勝てないと思うけどな!」


 迅がわたしを見てニヤニヤする……。


 これは挑発だ。

 わざわざ『ちっちゃい』を付けたのは、わたしを怒らせて冷静さを失わせようという心理戦だろう。

 人をバカにしたチャチな煽りである。


 分かっている、分かっているのだが……分かっていてもムカつくものはムカつくのである!


「えっ、わたし全然頑張ってないんですけどぉ? どうしよう、迅がそこまで言うなら、面倒くさいけど、そろそろ本気出しちゃおうかなぁ?」


「へえ……今までは本気じゃなかったってか? 強がりも……」


「そうだ、迅もそろそろ本気出していいよ? 迅だってあの程度(・・・・)で本気ってわけじゃないんでしょう?」


「あ、当たり前だ! 澪が可哀そうだから20%の力しか出してなかったからなー!」


「あれで20%? わたし10%だったんですけどぉ?」


「ああ、悪りぃ悪りぃ、桁間違えてたわ! 20じゃなくて2%だったわ! 澪は10%も出してたんだ! 俺の5倍? ずいぶん頑張ってたんだなぁ?」


「わ、わたしも桁間違えただけだから! わたしなんか1%だから、1%!」


「ヌググ……!」


「グヌヌ……!」


 蒼牙くんにヤレヤレといった生ぬる~い視線で見つめられながら、迅とわたしは怒りの炎を宿した瞳で睨み合う――。


 あ、ちなみに凛くんは完スルーね。


 引けぬプライド・中編 へ続く! ※同時投稿してあるよ!

――――――――――――――――――――――――――――――――

神代(かみしろ) (りん)

    男子が憧れる精悍なハンサム。

    特殊クラスの中学2年生で深雪と輝夜、迅と蒼牙の友人。

    千年以上続く名家、神代家のご令息。

霧守(きりもり) 蒼牙(そうが)

    黒髪、センターパート、中性的アイドル顔。

    特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と迅の友人

    人当たりが良く、空気が読める切れ者。

高上(こうじょう) (じん)

    茶髪、くせ毛、糸目、チャラそう。

    特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と蒼牙の友人

    思ったことをすぐ口に出す

――――――――――――――――――――――――――――――――

 ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると凄っごく嬉しくて、凄っごく励みになるの、是非是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ