91話 凛くんと愉快な仲間たち
放課後、現界、龍鳳学園・複合アミューズメント校舎――。
放課後、収録へ向かうミアを地下駐車場まで見送った後、地下鉄に乗客わたし1人という贅沢な状態で乗り、複合アミューズメント校舎前駅へとやってくる。
エレベーターで最上階まで行き、長い廊下を1人でトボトボ歩く。
いつもミアと一緒に来ていたので、1人だと結構寂しい。
黒服が警備する核シェルターの隔壁扉のような重そうな扉を抜け、複合アミューズメント校舎のフロアへ出る。
いつも通り施設内は生徒達で混雑しているのだが……。
む? むむむ!? 誰からも注目されない!?
ミアがいないせいか、しばらく混雑した通路を歩いても、誰からもあのGを見つけた時のような『赤服来たぁーーっ!?』的な反応がない!
みんな、わたしに気づいていないかのように楽しそうに歩いていく。
これだよ、これ!
この身体は背が低いので人混みは歩きにくいけど、G扱いされるより100倍マシである!
うん、気楽に歩けていいわ!
わたしは鼻歌を歌いながら、待ち合わせの『マックリアバーガー』前へ向かうのであった――。
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龍鳳学園、複合アミューズメント校舎、『マックリアバーガー』前――。
良くあるファストフード店である。
正直、健康に悪そうなメニューなのだが、この前は特別クラスのレストラン並みに美味く感じられた。
たまに食べる分にはいいだろう。
店の前に、特殊クラスのイケメンハーレム野郎、神代凛くんと、メッセージにあった転入してきた友達らしい男子2人を発見!
1人は茶髪のくせ毛で糸目系男子。優しそうだが、どこかチャラい。
もう1人は黒髪センターパートの中性的なアイドル顔男子。
この2人に精悍ハンサムな凛くんが加わり、男性アイドルグループのようなオーラで、女子達が遠巻きに熱い視線を送っていた。
3人共、銀ライン制服の好感度が高い『ユニーククラス』だし、外見もアイドルユニット並みだし、人目を引くのはしょうがないのだが……何かムカつくのである!
わたしが近づいても、3人組……どころか凛くんすら気づかず遠くを見ている。
取り巻き女子の1人だと思われているのかもしれない。しょうがないので目の前でぴょんぴょんジャンプしてやる。
「おーい!」
ぴょんぴょんしながら凛くんの目の前で手を振ると、ようやく気づいてもらえる。
「ビックリした! 澪、いつの間に!」
アイドルの追っかけみたいな女子達に囲まれて視線を遠くにやっていたのは分かるが、さすがに気づかないのはどうなのよ?
「普通に近づいただけだよ! どうして気づかないかなぁ?」
ちょっと不満げに言うと、凛くんは少し考えて――。
「あー、澪がちっちゃいから?」
「ふざけんな、そんなにちっちゃくねーよ!」
凛くんの友人や周囲の女子達の存在を忘れ、ついいつものメッセージのノリで話してしまう。
ちなみに、凛くんと実際に会うのは2回目だが、毎日のようにメッセージしているので、ずっと連んでる友達みたいな感覚である。
ほら、年に何回かしか会わない親戚より、SNSで頻繁にやり取りする顔も知らんヤツの方が親しくない?
「なによ、あのチンチクリン……って、ウソっ、赤服じゃない!?」
「え、あっ、本当だ! マズい、マズい! 赤服はマズいって!」
「なんで突然赤服が……って、早く逃げなきゃ!」
突然ザワザワと騒がしくなり、スゥーーーーーっと潮が引くように周囲の人垣が消えていく……やっぱりG扱いである。
「あー、お待たせ?」
「ううん、今来たところだ」
凛くんはサラリとそんなことを言う。
今来たところなら、あんなに女子が集まってるわけねーだろ!
おそらく、そんな嘘がスラスラ出てくるくらいまで、深雪さんと輝夜さんに調教されてしまっているのだろう……中二男子としては少し哀れである。
「深雪さんと輝夜さんに、ずいぶん調教されてるようだねぇ?」
「くっ……否定できないのが辛い!」
わたしのツッコミに、凛くんが悔しそうに拳を握り締める。
まあとりあえず、凛くんは置いといて……。
「初めまして、白銀澪と申します。お待たせしてしまったようで、申し訳ございませんでした」
わたしと凛くんのやり取りを見てニヤニヤしている茶髪のチャラい糸目と、中性アイドル顔の2人に頭を下げる。
普通に社会人的挨拶である。
「ふふっ、澪ちゃんは、ちゃんとご挨拶できて偉いねー!」
中性アイドル顔がニコニコしながら頭をなでなでしてくる!?
「ほんと、ちっちゃいのに凄いわぁ!」
茶髪糸目が感心したようにわたしの頭をポンポンしてくる――。
「………………」
完全に小学生扱いされている!
凛くん、この2人にわたしのこと、ちゃんと説明してなかったな!?
「あー、2人とも、澪は俺達の1コ下だぞ。確かにちょっとちっちゃいけど、中身はオッサンだからな!」
どういう紹介だよ!
というか、雑すぎるだろ!
「そういうことですので、子供扱いはご遠慮くださいね!」
「本当だ、よく見れば立派なレディーだね。ふふっ、ボクは霧守蒼牙。よろしくね?」
中性アイドル顔・蒼牙くんが人懐っこい笑顔を浮かべる。
人当たりが良くて良い人っぽいが、経験上、他人からどう見られるか計算して動けるタイプ。
空気読めるし、付き合いは楽だんけどね。
「えっ、中1だったの!? 悪りい、悪りい! 小5くらいかと思ったわ! あ、俺は高上迅。よろしくな」
この失礼な茶髪糸目チャラ男・迅くんは、多分性格このまんまだな。
『ユニーククラス』に転入してきたってことは優秀なんだろうけど、あと何年かしたらナンパに精を出しそうなタイプとみた。
「蒼牙さん、迅さん、よろしくお願いします……って、凛くん、わたし、いつも通りでいいんだよね?」
一応初対面の儀礼的挨拶はしたし、凛くんの友達なら気を使う必要もない。
お嬢さまぶるのも面倒だ。
「ああ、いつもの通りでいいよ。蒼牙と迅に、澪は見た目は女の子だけど中身はオッサンだって言ってあるから!」
「なに、その雑な説明! もうちょっとちゃんと説明しといてよ!」
訳分かんねーだろ、その説明じゃ!
仕方がないので、自分で説明する。
「一応フィジカルの性別は女だけど、性別を気にする必要ないからね。あと、面倒くさいんで、凛くんと同じようにタメ口でいい?」
完全にぶっちゃけトークである。
ビジネスや将来的な人間関係があるなら考慮するが、ただの遊び友達だ。
SNSの向こうのハンドルネームしか知らんヤツと同じ扱いでいいだろ。
「ふふっ、凛くんが何言ってるのか意味分からなかったけど、そういうことね。うん、いいよ、お互い気楽にいこうね」
「子供だから性別関係ないって意味かと思ったわー。っていうか、本当は小5じゃないのー?」
マジで失礼な糸目である!
「失礼な糸目だなぁ、ほれ!」
迅に生徒証をかざして見せると、真剣にわたしと生徒証の写真を見比べている!?
コイツ、マジで小5だと思ってやがったな!
「おっ、マジで中1じゃん! もうちょっとメシ食った方がいいんじゃねーか? 大っきくなんねーぞ!」
余計なお世話である!
だいたい魔法少女は『ボディー強化』受けないと背は高くならない!
そして、もうMGはスッカラカンなので、しばらく背は伸びないこと確定である!
「今、糸目が良い事言った! よし! バーガー奢れ!」
失礼な糸目に、自分がどれだけ失礼なことを言ったか分からせる必要がある!
これは大人の義務! 教育である!
ということで、迅にインネンを付けてみる。
「うっわー! いきなりたかってきたぞ、このちっちゃいの! あと、糸目じゃねえ、迅だ!」
「迅がメシ食えって言ったんだから、迅がメシを食わせる義務がある! ということで、迅、バーガー奢れ! 大っきくなるから!」
「いきなり『迅』呼びかよ! あと、バーガー1コや2コ食っても大っきくなんねーよ!」
中々良いツッコミだが、迅が反省するまでは引くつもりはない!
わたしと迅は無言で睨み合う……。
「楽しそうなところ悪いんだが、続きはバーガー食いながらにしてくれ。先に行ってるぞー」
凛くんが、わたしと迅を置いてスタスタと『マックリアバーガー』の中へ入っていく。
蒼牙くんは微笑みながら手招きして待ってくれているが……。
「「……………………」」
さすがに店頭で睨み合ってるのも大人げないか……。
「確かに、小学生に間違えたのは俺が悪かったわ。バーガー1コおごってやるから、それで大っきくなれ!」
そろそろ許してやろうかと思ったら、迅が引いた!
最初からそういう殊勝な態度なら、わたしも妙なインネンはつけなかったんだけどな!
「頑張る!」
頑張っても大っきくならないけど、奢ってもらうので一応そう答え、仲直りした迅と一緒に『マックリアバーガー』へ向かうのであった――。
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ジャンクフード美味ーーーっ!
この油っこさがたまらない! 身体が油を『旨い』と感じるのだ!
この身体、最高である!
「なあ、澪が店に入ったら並んでたみんなが逃げていったけど、何かしたの?」
奢ってもらったバーガーをパクついていると、迅が不思議そうな顔で聞いてくる。
「この赤い制服は『特別クラス』のだからね。『特別クラス』って、問題を起こした超上級国民の子息・子女児を送り込む隔離施設って面があるから、普通の生徒は関わりたくなくて逃げるんだよ」
「問題起した……あー! 分かるわー! 何となく分かるわー!」
迅がわたしをジーっと見つめてから何度も肯いている。
本当に失礼な糸目である!
「わたしは違うからね! ずっとサナトリウムに居て学校に通うの初めてだから、お爺さまが心配してココに入れたの」
――という設定である。
「ふむふむ、そういう設定なのか? で、澪はどんな問題を起して特別クラスに送られてきたんだ?」
迅が中々鋭いことを言ってくる。
失礼だけどな!
「まあまあ、せっかく仲直りしたんだから、やめようよ。迅くんは、思ったことそのまま口に出すクセ、治した方がいいよ? 些細な事で恨まれて、命を狙われることだってあるんだからね?」
蒼牙くんが微笑みながら仲裁してくれる。
うーん、やっぱり迅みたいなクソガキと違って、蒼牙くんみたいな空気読めるタイプは付き合うの楽だわ。
「そ、そうだな。気いつけるわ……」
何か思い当たる節があったのか、蒼牙くんの言葉に迅が大人しくなる。
ちなみに凛くんは、わたしと迅の言い争いを完スルーである。
さすが、深雪さんと輝夜さんに鍛え上げられた鉄壁のスルー能力である!
「しっかしさあ、澪って何かヘンだよな。最初近づいてきた時、気づかなかった……というか気にならなかった。認識したら、凄っごく目立つのにな。もしかして魔法とか使ってる?」
冗談だろうが、マジで鋭い糸目である。
魔法じゃなくて魔法具だけどな――って、メタルチョーカーの認識阻害効果が効いてたから、みんなあんな反応だったのか!
ようやく、今日の複合アミューズメント校舎内での生徒達の反応に納得がいった。
いつもはミアが注目されるから一緒に認識されていたのだ。
わたし1人だけだと、ほぼ認識されないほどの効果を発揮していたのである!
普通の人には、ちゃんと認識阻害効果が働いていた。
メタルチョーカーの機能を突破できるのは、やはり特別な人間だけなのだ!
「そういえば、確かに最初は何かおかしな雰囲気だったよね……」
「……………………」
蒼牙くんも違和感を感じたようだし、無言の凛くんにはこの前指摘されている。
この3人、特別な方の人間なのかもしれない……。
正直に答えるわけにもいかず、誤魔化すことに決定!
「フフフ、もし魔法が使えたら、まず迅を黙らせる!」
「いやいや、バーガー奢っただろ! もう許してよ!」
迅が『降参』と軽く両手を挙げる。
「んー、分かった。許す! だけど一言、言わせてもらうと、どんな相手にも敬意をもって接した方がいいよ。相手を背丈で判断すると、思わぬ恨みを買うことがあるかもよ?」
これは大人のわたしからの忠告である。
わざわざ自分から面倒事をしょい込む必要はない。
迅には思い当たる節がありそうなので、痛い目に遭わないように少し脅しておく。
「分かった、確かにそうだな。これからは気いつける……」
「でもさ、龍鳳学園に小学生なんて居ないでしょ。赤いけど、一応中等部の制服着てるんだから、間違えようがないんじゃない?」
「あ、小学生ならいるぞ」
わたしのツッコミに応えたのは、迅ではなく凛くんだ。
「特殊クラスは幼稚園から高校まで揃ってるから、普通に小学生がいるんだよ。初等部の制服セーラー服だから、蒼牙も迅もカン違いしたんだろ」
特殊クラスって幼稚園からなんだ……知らんかったわ!
「そうなの!? 知らなかった……。そういうことなら誤解するのも、分からなくはないか。ちょっと大人げなかったかもしれない。ゴメンね迅」
「あ、いや、俺も悪かったな。まあ、ちっちゃいことにコンプレックス持ってるヤツが居るってのを忘れてたわ、スマン」
まったく、そういう物言いするから怒らせるんだよ!
「迅、言い方! 言い方ひとつで受ける印象が違うんだから、気をつけた方がいいよ。コンプレックス持ってる人にそんな言い方したら、普通怒るからね。そうだねえ……『言って良い事と悪いことがあるのを忘れてました』くらいにしておきなさい」
しまった、思わず、学生バイトに指導しているような口調になってしまった……。
「凛が中身オッサンだって言ってた意味が、今、分かったわ! マジで説教がオッサン臭い!」
失礼な! 心はいつだって少年なのに!
とりあえず、迅の頭をゲンコツで殴っておいた――。
引けぬプライド・前編 へ続く!
※毎週月曜日19時更新予定!
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・神代 凛
男子が憧れる精悍なハンサム。
特殊クラスの中学2年生で深雪と輝夜、迅と蒼牙の友人。
千年以上続く名家、神代家のご令息。
・霧守 蒼牙
黒髪、センターパート、中性的アイドル顔。
特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と迅の友人
人当たりが良く、空気が読める切れ者。
・高上 迅
茶髪、くせ毛、糸目、チャラそう。
特殊クラスの中学2年生、転入生で凛と蒼牙の友人
思ったことをすぐ口に出す
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