90話 暗影の偵察兵(シャドースカウト)・後編
読んでくれている皆様方!
大変申し訳ございません~m(_ _;)m
今回でストックが全滅でございます!
今後は、毎週月曜日の19時に更新していく所存でございますので、どうか、どうか、この後も読んでくださいませぇぇぇーっ!!
深夜、鏡界、小田原・OD04ベース近くのビル屋上――。
屋上からは、とても『六本腕』に破壊しつくされた廃墟と同じ場所だとは思えない、穏やかな小田原市街の夜景が広がっている。
というか、『六本腕』と、その配下のレイド級魔塊獣の連中、よくあれだけ徹底的に破壊しつくせたものだわ。
確かに、全ての建物内に入って魔法少女を探すのは現実的ではなかったが、わずか数人の魔法少女のために周辺一帯の建物を全部ぶっ壊すって頭おかしい。
一連の『六本腕』の動きを見ると、結構な知能レベルだと思うんだけどなぁ……ああ、それだけ魔法少女の脅威を高く見積もっていたのか?
「んっ!?」
周辺視界に動くものがあり、ブラボーの視界へ意識をフォーカスすると……ブラボーの前方に3人組の魔法少女!?
他の魔法少女のパーティーっぽい。
マズい! 魔法少女との遭遇は考えていなかった!
コレ見つかったら攻撃されるんじゃないか? 外見は完全に人型魔塊獣だし。
「ブラボー隠れろ!」
とっさにブラボーへ隠密行動を命じると、ブラボーは建物の影へ移動する。
心の中で命令すればいいんだけど、声で命令しても問題ない。インターフェイスとして発声の方が慣れていたので、思わず声が出てしまった感じ。
ちなみに意識で操作する方法ってのが、心の中で『ブラボー隠れろ!』と叫ぶというものなので、ちゃんと慣れておかないと、一緒に声が出ちゃいそうである。
偵察兵だけあって、隠密行動能力が備わっているようで、しばらく物陰に隠れさせていると、魔法少女達は気づかずに去っていった。
一応、アルファーとチャーリーにも同様に隠密行動を命じておく。
空を飛べるラティーナの使い魔は、他の魔法少女との接触を気にしなくても良かったんだろうけど、わたしの暗影の偵察兵はちゃんと気をつけないと魔塊獣と誤認されて攻撃される可能性がありそう。
やられても約24時間で再召喚できるが、用心に越したことはない。
うーん、ベース内で連れて歩いて、他の魔法少女達に周知させるか……何か考えておいたほうがいいかもしれない。
今、わたしが居るビルの周囲を3体で偵察させているんだけど、市街地だと3体じゃ死角がなくなることはないな。
こんな風にテクテク歩きまわさせるんじゃなくて、見晴らしのいいビルの屋上かなんかに配置して、上から周囲を監視するように運用するのが正解なのかもしれない。
「ん?」
何となく3体の位置関係を確認しようと簡易マップへ意識をフォーカスすると、周辺の立派な3Dマップが出来上がっていた!?
拡大縮小、回転なども意識するだけで自由自在である。
操作方法は、スワイプやフリックを『意識のフォーカス』で行う感じ。
詳細な3Dマップは、暗影の偵察兵が移動した範囲しか表示されていないが、マギリングのマップ機能より遥かに高精度で、何より使いやすい!
「おっ、凄いっ!」
思わず叫んだのは、小田原・OD04ベースと、その周辺マップに青い人型オブジェ――千桜の魔法少女の位置が表示されていたからだ。
多分、わたしのマギリングのマップ機能と勝手にリンクしたのだろう。
これで、他の魔法少女との不意遭遇はなくなるはずだ。
マギリングのマップ機能は使い勝手が悪くて(戦闘や移動中にマップ開いて操作とか面倒くさ過ぎだろ!)あまり使わなかったのだが、コレは意識するだけでいつでも操作できる上に、詳細情報を狙撃姿勢のまま確認できる優れモノである!
さすが偵察兵!
この機能だけでも大金を出した甲斐があるというものだ!
大金を出した甲斐があるというものだ!
大事なことなので2度……以下略。
などと、3Dマップを弄り回してニマニマしていると、アルファーの近くのマップに赤い獣っぽいオブジェクトが表示されたので、アルファーの視界へ意識をフォーカスする。
視界や視力は魔法少女と同等ってところかな……。
「おっ、この前のビースト級か……」
通りの向こう側のかなり先の方に、黒煙の影が見える。
工兵課の護衛ミッション時に見た、ビースト級と呼ばれる全高2m・体長3mほどの獣型魔塊獣だ。
群れる習性がないので倒すのは比較的楽なのだが、数が多いらしく、何度も何度も襲ってきて鬱陶しかった。
特に周囲を警戒しているという様子はなく、ただウロウロ歩き回っているという感じ。
1匹だけだな……これは暗影の偵察兵の戦闘力を試すチャンスか?
暗影の偵察兵が戦闘可能なのはデータから分かっているが、肝心の戦闘力のデータがない。
ビルの屋上からは射線が通らないし……暗影の偵察兵1体だと厳しいか?
いや、どうせ明日になればペナルティーなしで再召喚可能なんだし、試しに戦わせてみるか。
ミニマップを確認すると、ブラボーもチャーリーも1分もかからずアルファーに合流できる距離にいる。
アルファーで攻撃してダメそうなら、ブラボーとチャーリーと合流して3体で攻撃させよう。
ビースト級魔塊獣への攻撃をアルファーへ指示。
同時にブラボーとチャーリーをアルファーの居る場所へ向かわせる。
視界をアルファーへ戻すと、アルファーは装備していた黒煙の短剣らしきものを抜き、ビースト級魔塊獣へ静かに向かっていく……。
アルファーは物陰を伝ってスニークでビースト級の背後へ近づいていくが……ビースト級が不意にこちらへ首らしき部分を向ける!?
ヒュッっとビースト級がジャンプするのが見え――一瞬後、目の前にビースト級の魔塊獣黒煙の中に光る赤い目が見えた直後、視界共有が切れた!?
「えっ!? なに!? ヤられちゃったの!? いや、コレ、戦闘になってないだろ!?」
ブラボーへと視界を移し、十数秒後、合流したブラボーとチャーリーが現場に到着した時には、アルファーは影も形もなくなっていた。
だが、ビースト級魔塊獣はまだその場に留まっている……。
今度は2体同時に攻撃するよう命令する。
ブラボーとチャーリーが左右に分かれて音もなくビースト級へと近づいて行く。
ビースト級はブラボーとチャーリーを認識したようだ。
黒煙の中に浮かぶ赤い目で、ブラボーとチャーリーを品定めでもするかのように順番に睨みつけ――ブラボーの視界に黒煙で作られた爪のようなモノが見えた直後、視界が消失。
さらに一瞬遅れてチャーリーの視界も消失する!?
「マジか……」
ブラボーとチャーリーの視界が消え、わたしの視界にはミニマップだけが残った……。
瞬殺である!
「いや、あのさ……暗影の偵察兵、メチャクチャ弱えぇっ! これで戦闘可能なら、幼稚園児だって『戦闘可能』って表記されるだろ!」
うーむ、さすがに弱すぎる……装備を強化してないからか?
実は、暗影の偵察兵の上位装備がショップ機能で購入できるらしいのだ。
つまり、今の暗影の偵察兵は無強化状態ということである。
それにしても、いくら無強化だって、説明に戦闘可能ってあれば、魔塊獣の1匹くらい倒せると思うでしょ?
あの惨状から見ると、戦闘可能ってのは『逃げるための最低限の戦闘』ということなのだろうけど……。
上位装備を購入して暗影の偵察兵に装備させれば強くなるらしいけど……と、そこまで考えて凄っごく嫌な予感がしてくる。
「ムムム……今までの経験からして、絶対高いよね?」
暗影の偵察兵は明日まで召喚できないので、今日の実験はあきらめてマギリングのショップ機能を起動する。
とりあえず買う買わないは別に、値段くらいは確認しておこう。
「これか……」
どうやら暗影の偵察兵を購入しないと表示されない仕様だったようで、さっきは表示されていなかった上位装備が、暗影の偵察兵の付属品コーナー(?)に表示されている。
『装備1』、3体用で、お値段450万MG――。
シャドースカウトほどじゃないけど、結構良いお値段である。
さらに、『1』ということは『2』もあるという訳で……はい、止め! マギリングの表示をOFF!
450万MGとか、射撃実験150回分だよ?
当分ムリっ!
とりあえず、しばらく新しい装備の購入はスッパリあきらめて、地道に魔塊獣狩りで稼いでいこうと心に決めたのであった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
深夜、現界、龍鳳学園・特別クラス、澪の私室――。
暗影の偵察兵の偵察能力と戦闘力の確認を終えたわたしは、どっと(魂的な)疲れが出て、それ以上魔塊獣狩りに勤しむこともなく現界へ戻ってきていた。
「美味、美味ーーーっ!」
もう23時を回っており、太る時間(脂肪を蓄えるタンパク質の分泌がピークになる時間帯)と言われているが、わたしは遠慮なく冷凍庫からアイスデザートを取り出してパクついていた。
失った魂(1756万MG)の痛みを和らげるには、糖分しかないのである!
ちなみに、今回テイクアウトしたのは『極冷ソフト』という超濃厚ソフトクリームである。
専用容器に入れられた『極冷ソフト』は、まさに極上の絶品!
舌の上で淡雪のように蕩ける食感と上品な甘み、濃厚な味わい。さらに温度が少し上がるとフルーツコンフィの香りが立ち上がり、冷たいのに香りが広がるという、パティシエの職人技が光る特別仕様のソフトクリームである!
そう、舌の上で『極冷ソフト』が蕩ける一瞬だけが、わたしの失った魂(1756万MG)の痛みを忘れさせてくれるのだ……パクパクパクパクパクパク!
ヴーヴー!
わたしが『極冷ソフト』をやけ食いして傷ついた魂を癒していると、スマホにメッセージが入る。
見ると、特殊クラスのイケメンハーレム野郎こと、神代凛くんからである。
凛くんとは結構メッセージのやり取りをしていて、東雲くんより多いくらいだ。
東雲くんはメッセージが業務連絡っぽくて話が続かないんだよ!
良いヤツなんだけどね!
えっ、凛くんとはどんなやり取りをしているのかって?
普通に雑談とか、読んだ漫画の話とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんの愚痴とか、深雪さんと輝夜さんと他のハーレム要員の愚痴とかである!
ちなみに、
雑談1:漫画1:深雪&輝夜の愚痴7:深雪&輝夜&他のハーレム要員の愚痴1
の比率である!
最初は『なに贅沢言ってんだコイツ!』『はぁ? 自虐風自慢?』『ふざけんなハーレムクソ野郎!』とか思ってたんだけど、色々愚痴を聞いているうちに、わたしにも少し分かるようになってきた……。
『食堂で左右からアーンってされたらどうすればいいの?』とかは『もげろ!』だけど、『俺がいなければ2人は仲良くできるんじゃないか』とかメッセージがくると、ちょっと考えちゃうわけよ。
『クズになる勇気!』って返信しといたけどね!
それに、どうも凛くんのクラスの男子達は、深雪さんと輝夜さんからのプレッシャーと、凛くんへの嫉み(まあ分かる!)から、凛くんをそれとな~く避けているっぽい。
それで、わたしのことを男友達(女だけど!)の代わりっぽく思っている感じ。
わたしも、友達……というか、年の離れた弟みたいで凛くんのことは結構気に入っているので、|深雪さんと輝夜さん絡みの件《面倒事》に関わらないのであれば、愚痴を聞くくらいはやぶさかではない。
まあ、ぶっちゃけ、いくら相手が美少女達とはいえ、四六時中引っ付かれて恋の駆け引き(?)を強制されるのは、普通の中学生男子としてかなり居心地が悪いだろう。
大人のわたしから見ると、美少女達に引っ付かれれば引っ付かれるほど、凛くんの懊悩が溜まっていくわけだ。ククククク!
『遅くに悪い。ちょっとお願いがあるんだけど、今、ちょっといいかな?』
いつもは21時くらいまでしかやり取りしないのに、今日は珍しい。
『別にいいけど、なにー?』
ん? 通話がきた。これは結構長い話っぽい?
『夜遅くすまん。ちょっと時間いいかな?』
「んー、べつにいいけど」
『実は――――』
どうやら、凛くんのクラスに転入生(男子)が2人入ってきたらしく、ようやく凛くんにも普通に話せる男子の友達ができたらしい!
それで、凛くんと3人で、明日、複合アミューズメント校舎のVRゲームをしようという話になったらしいんだが、あのVRゲームって4~6人で1組なんだよね。
『それで、暇だったら、明日一緒にVRゲームやってくんない?』
ミアは収録があるということで放課後は空いているといえば空いているのだが、実はユナちゃんと小説の話でもしようと思っていたのだ!
別に約束してる訳じゃないけど、ユナちゃんとは、ミアが休んだ日からずっと挨拶しかしてないからさ。
「アレって、4人から6人用だから、深雪さんと輝夜さんを誘ったらいいんじゃない? 5人でもできるよ?」
『あー、それなんだけど、今回は男だけって感じでいきたいんだ。な、頼む!』
「えー、わたし女なんですけど!」
さすがに『男だけ』ってのに異議アリ(ちょっとだけ)だったので、伝説の92っぽく言ってみる。
『いや、澪は中身オッサンだから大丈夫!』
大丈夫じゃねーよ!
大体合ってるけどさ!
「VRゲームすればいいの?」
『そうそう、射撃に自信のあるヤツが1人いて、VRゲーに挑戦したいって言ってるんだ。ほら、女の子がいると、どうしても色々気を使うだろ? その点、澪なら気兼ねしないでいいからさ。下手でもかまわないから参加してくれよ』
ああ、凛くん、今ではすっかり『澪』呼びである。
まあ、一応同じ学校の先輩ではあるので問題はない。
しかし、VRゲーか……。
ミア、水無瀬くん、真壁くんの4人で挑戦した時のことを思い出す。
あの時は、3人に守られての姫プレイ(?)で、わたしは3人の後ろから適当に撃ってただけなのだが、VRゲーム自体は凄くリアルで、本気でやってみたいとは思っていたんだよね。
某事件(※ミアのコンサートツアー黒星参照)のおかげで、鏡界だけじゃなく現界での射撃の腕にも自信がついたので、チャレンジしてみるか!
「OK! プレイ料金、凛くん持ちなら参加するよ?」
『さすが澪、しっかりしてるなぁ。了解した! じゃあ明日の放課後――』
しょうがない、凛くんのために一肌脱いでやるか!
・神代 凛
男子が憧れる精悍なハンサム。
中学2年生で深雪と輝夜の友人。
千年以上続く名家、神代家のご令息。
・久我 深雪
黒髪セミロングの芸能人レベルの和風美少女。
中学2年生で輝夜と凛の友人。
千年以上続く名家、久我家のご令嬢。
・春園 輝夜
金髪ポニーテールに碧眼の芸能人レベルの洋風美少女。
中学2年生で深雪と凛の友人。
千年以上続く名家、春園家のご令嬢。
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