78話 真夜中の来訪者・前編
ぷにぷに……。
「むにゃぁ……」
ぷにぷに、ぷにぷに……。
「むにゃ……にゃめてよぉ……むにゃぁ……」
ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに……。
「むにゃ……しょんなにひっぱったりゃ……ほっぺ伸びちゃう……むにゃぁ……」
ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷに……。
「んにゃぁっ!?」
ミアにほっぺを何度もびょーんってされる夢を見て飛び起きると……目の前に濃紺サイドポニテの女の子っ!?
「ふぁっ!? ス、ステラさん……っ!?」
「おはよう、リリナ!」
何で、AAAランク魔法少女がわたしの部屋にいるのよ!?
「ふわぁっ!? 何!? 何があったの!? 何で!? どうして!? 何で居るの!?」
「何度も呼んだんだけど、リリナが中々起きないから、柔らかそうなほっぺを突いてみちゃった!」
えー、何それ!?
「『突いてみちゃった!』じゃないでしょ……ないですよ?」
一応、偉い人なので敬語を使わなくちゃと、寝ぼけながらも言い直す。
「ああ、別に敬語じゃなくてもいいよ?」
「はあ? それより何でまた、こんな時間に……ん? ステラさん、何か口調が……」
ステラさん、さっき会った時と話し方が違う?
「ハッ!? ニセモノ!? まさか、魔法か魔法具で造られたステラさんのニセモノが!?」
「ハハハ、リリナは面白いこと言うね! もしかして、まだ寝ぼけてる? ほら、ちゃんと起きなさい?」
着崩れたパジャマのまま、ステラさんのニセモノ(?)っぽい娘に手を引っぱられ、ベッドから立ち上がらされる。
「ええと、ニセモノさん……でしょうか?」
「ニセモノじゃないよ! 本物だよ! しかし、リリナも凄いね。あんなにぷにぷにしたのに、よくグースカ寝てられるよね? まだ寝ぼけてるし!」
いや、だって眠かったんだもん!
「まあ、ここじゃなんだから、鏡界で話そうよ。ほら早く変身解除して!」
変身解除って、ベースの許可が……あ、本物のステラさんなら変身解除できるのか?
まあ、試してみるか……。
「変身解除!」
淡い光に包まれた後、いつもの魔法少女の姿に戻る――と、さっきまでの眠気が吹っ飛び、頭がシャキンとする!
「終わった? じゃあ、ほら、行くよ!」
後ろからステラさん(?)に抱きすくめられる!?
っ!? ステラさん(?)って結構胸あるな……って違う!
「え、あ、自分で……ひゃあぁぁぁ」
混乱したままステラさんに抱きすくめられ、一緒に潜界されてしまったのであった――。
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「はい、到着ーっ!」
ステラさん(?)に抱きすくめられたまま、鏡界のわたしの寝室に潜界してくる――。
部屋の中は、現界と同じように常夜灯の淡いオレンジ色の光で照らされているものの、寝崩したはずのベッドが綺麗にベッドメイクされた状態なので、現界とは微妙に違いがある。
「ええと、その、本物のステラさん……なんでしょうか? 何かさっきと、ずいぶん口調が違うんですけど……?」
魔法少女の強化された視力なので、暗くは感じない。
目の前のステラさん、見た限りでは本物っぽいけど、正直、魔法や魔法具のことはよく分からんので、本物だと断言もできない。口調が全然違うし……。
「本物だって! 口調くらい、リリナだってTPOによって使別けるでしょ?」
まあ、そりゃそうか。
口調が違うのは分かったけど、どうして違うのか……事情がサッパリ分からん。
疑い出したら切りがないので、とりあえず本物ってことにしておく。
「じゃあ、本物ということで……失礼しましたー!」
寝ぼけて、かなり失礼なことを言ってしまったような気もするので、ついでに謝っておく。
「アハハハ! 本当、リリナは面白いなぁ! じゃあ本物だと納得してもらったところで、続きはリビングで話そう!」
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当然のことながら、リビングも常夜灯しか灯っていなかったのだが……。
「灯りを付けるね」
ステラさんがそう言ってテーブルの上に置かれた器具を操作すると、部屋の中は明るい光につつまれる。
「おおおーっ!」
「照明用の魔道具だよ。せっかくだし、一杯やりながら話そう。酔わないけど、喉越しは最高だよ?」
ステラさんが用意してくれたのだろう。テーブルの上にはケータリングのオードブルセットに、ビール瓶やジュース類が何本も並んでいる!
「おおー」
「まあまあ、座って、座って」
さっきのように、ステラさんはニコニコしながらソファーを勧めてくる。
言葉遣いは、さっきと違ってかなりフランクに変わったが。
「おおー、やはり良いツインテールだ!」
?
突然ステラさんが訳の分からないことを呟く。
ニナと比べたのか? ツインテールに良し悪しがあるのだろうか?
ツインテールといえば、強化で外見を変えられるのに、なぜツインテールがウルトラレアと呼ばれているのだろう……?
「はぁ、ありがとうございます? ツインテールと言えば、強化で外見を変えられるんなら、ツインテールってそれほど珍しくないんじゃないかって……」
思いついたたわ言を呟きながら、ステラさんに勧められるままソファーへ座る……。
「はぁ? 何言ってるの!? 強化で変えられる外見は、素体によって限度があるの! どんなに巨乳好きでも素体がペッタンコなら大した巨乳にならないし、ストレートロングの娘は絶対にツインテールにはならないの!」
!? ステラさんにメチャ怒られた!
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ! じゃなきゃツインテールはウルトラレアなんて言われないでしょ! 制限がなければ、みんなツインテールに……ハッ! んっ、んんっ……ごめんね。ちょっと興奮しちゃったみたいだ」
途中で興奮している自分に気づいてバツが悪くなったのか、トーンダウンする。
しかし、やっぱりツインテールは他の所でもウルトラレアって言われてるんだ……。
「はあ、別に大丈夫です」
しかし、ステラさん、何か外見にコンプレックスでもあるのだろうか?
他のAAAランク魔法少女に比べて幼く可愛い感じの顔立ちが嫌だったとかかな?
地雷っぽいから触れないようにしよう。
「じゃあ、気を取り直して乾杯しようか? リリナはどの銘柄のがいい? 好きなのを選んでね?」
「はい……」
わたしの隣に座ったステラさんは、さっきと打って変わって凄っごく楽しそうにニコニコしている。
「本当はどこかの料亭を手配したかったんだけど、現界だと色々ね。今度、あらためてちゃんとした席を用意するから、今日はこれで、まあまあ、御一つどうぞー」
グラスを渡され、ステラさんにビールを注がれるという謎の接待モード。
「ありがとうございます。ステラさんもどうぞ……」
社会人としてはお返しをしないわけにもいかず、ステラさんのグラスへビールを注ぎ、もう何が何だか分からないまま飲み会へと突入する。
「じゃあ、リリナの活躍に乾杯しよう! カンパーイ!!」
「カンパーイ?」
よく分からんが、わたしの活躍(?)に乾杯されてしまった!
ステラさんはビールを飲みながら、とっても上機嫌だ?
「あの、どういうことか説明していただけると助かるんですけど……」
「もう、敬語とかいらないって! あははは!」
ニコニコ笑いながら、わたしの肩をポンポンと叩く。
魔法少女は酔っぱらわないのに、完全にデキ上がってるステラさん……。
なーんか、そこはかとなく会社に居たセクハラオヤジの臭いがする。
「はぁ……」
こういう時にお偉いさんに遠慮して距離を取っていると、後から『あいつは可愛げがない』とか『気取ってる』とか言われるので、礼を失しない程度にフランクに対応するのが、上手なオヤジの転がし方なのである!
「あの、ステラさん。それで、わたし何か活躍しましたっけ?」
「したした! スパイ発見の大活躍!」
おっ!
気づいてないと思っていたのに、あの一言でわたしの意図を理解して、ニナの前だから気づかないフリをしていたのか!
お人好しだと思ったけど、あの一瞬でそこまで考えて行動できるのであれば、中々の切れ者と言わざるを得ない。顔色一つ変えなかったし……。
まあ、それくらいじゃなきゃ千桜の防諜トップなんか務まらんか……千桜のAAAランク魔法少女を舐めてたわ。
でも、わたしの意図に気づいたのはいいとして、あれから何時間も経っていないけど、大喜びするほど進展があったのかな?
「ええと、ニナさんですか?」
「そう。ニナは悪いツインテールだったよ」
ステラさんが、少し寂しそうにボソリと呟いた――。
・ステラ :濃紺のサイドポニーに金の星瞳の魔法少女、内務部長
※創設メンバー
・ニナ :銀髪ツインテールに紅眼の魔法少女、ステラに引き抜かれた




