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71話 挨拶回りも意外に大事

 現界、龍鳳学園特別クラス、澪の私室――。


 久々の龍鳳学園特別クラスレストランの素晴らしいディナーを堪能した後、部屋でユナちゃんとメッセージのやり取りなんかをしてからゴロゴロする。


 うーん、買った本はベースの私物ロッカーに入れてたんだけど、部屋に持ってきておいた方がいいかなぁ? もしかして、ユナちゃんが遊びに来るかもしれないし!


 ミアは芸能活動やレッスンがあるので、18時以降は忙しくなる。その後なら、ユナちゃんと本の貸し借りやお喋りをしても、ミアに睨まれることはないだろう。


 ミアは『お姉ちゃん』って感じだけど、ユナちゃんとは普通に友達として趣味の本の話とかできそう!


 大人になると趣味の話とかできるリアルフレンドを作るチャンスが少ないので、友達は非常に貴重なのだよ?


「あっ! もうこんな時間!」


 今日はエステラを『血の宣誓(ブラッドオース)』のみんなに紹介する予定なのだ。

 カーミラさんとセラさんが『ホンモノ』だってことはエステラに説明してある。色々細かく言って聞かせたから大丈夫だろう、多分……。


 戦力としてエステラが入ると、『血の宣誓(ブラッドオース)』はかなりバランスの良いパーティーになるはずだ。

 タンクのエステラ、近接アタッカーのリレッタ、ヒーラー兼エンチャンターのセラさん、万能職のカーミラさん、長距離アタッカーのわたし――強そうなパーティーである。


 このパーティーなら、レイド級と呼ばれるBランク魔塊獣(マゴル)4、5匹を相手にできるんじゃないかな?


 でも……エステラ達に会う前に、やることがあるんだよね。


「うー、気が重い……」


 実はカリアさんから呼び出しを食らっているのだ。

 多分、例の『30階での事件』の件だと思うんだよね……。

 魔塊獣(マゴル)とか魔法少女とかと同じ感覚で撃っちゃったんだけど、やっぱ現界で人を撃ったのはマズかったかなぁ?


 よく考えると、サクっと人を撃っちゃうって発想が出てくる時点で、人としてマズいような気がする。

 まあ魔法少女だからいいか? いや、いいのか? うーん……。


「ま、いっか!」


 一度死んでから、そこら辺の頓着が無くなっている気がする。あんまり深く考えないようにしよう!


 アンナは、魔法少女にされても精神的な強化はされないって言ってたけど、強化じゃなくて『戦闘ストレスを軽減するための適応処理』とかがされているに違いない!


 うむ! 自分の異常性を認識しても良いことなんかありゃしないからな!

 精神的ストレスを軽減するには、深く考えないことが1番である!

 サイコパスじゃないよ? 多分……。


 ということで、深く考えるのを止め、変身解除リリース・トランスボディーの許可をもらうためにメタルチョーカーを『マテリアライズ』するのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 Y08ベースの中央ロビーは、以前と同じくらいの人数の魔法少女達で賑わっていた。

 まだそんなに魔塊獣(マゴル)が湧いているという話は聞いていないので、ゴールデンウィーク明けで、みんな様子見に来たのかもしれない。


 え? 例のカッチョいい礼装マントは着ないのかって?

 んー、まあ、着たよ? というか、さっきまで着てたんだけどさ……。


 いや、注目度が半端ないのよ!


 転移装置トランスファーデバイスルームから、カッチョいいマント姿で颯爽と歩いてきたんだけど……頭の上に『なんだコイツ?』って吹き出しが見えるような顔をした魔法少女達が、ジロジロ見てくるのよ!


 最初は『カッチョいいだろ! 羨ましいだろ!』とか思ってたんだけど、今日は結構な人数の魔法少女達が居て、ほぼ全員にジロジロ見られるのよ……。


 はい、『ふふん♪』とか適当に鼻歌を歌いながら、さりげなーくマントを脱いで送還しました。さりげなーくね!


 いや、ムリ! ムリだって!

 中央ロビーのほぼ全員が、ジーっと見つめてくるんだぜ!? ムリだよ!


 ミアとか、あんな大勢のファンに見られながら、よく歌とか歌えるよ!

 わたしは絶対ムリ! 芸能人とか絶対ムリだわ!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「――ということで、リリナちゃんには芸能界デビューしてもらうことになりました!」


「……………………」


 カリアさんが、ニコニコしながら訳の分からないことを言っている。


 中央ロビーのカフェスペースで、口に含んだコーヒーを吹き出しそうになりながらカリアさんをジーっと見つめる。


「ええと……お手数をおかけして大変申し訳ないのですが、もう一度ご説明をお願いできますでしょうか?」


「もう、どうしたの突然ヘンな口調になって? 外事部の決定を伝えてるだけだから、私も詳しいことは知らないけど、いろいろな状況を勘案すると、リリナちゃんを芸能界デビューさせて少し知名度を上げておいた方がいいって結論になったらしいのよ。それで、打ち合わせをするから予定しておいてってだけ」


 だけ?

 だけだと!?

 『芸能人とか絶対ムリ』と思った直後に、この仕打ちである!


「詳しい話って聞いてます?」


「うーん、なんか、リリナちゃんの熱狂的なファンクラブがあるらしくて、もう完全に隠蔽するのは無理だから、芸能人として露出させて不自然さを薄める? みたいなこと言ってたわよ? あと、少し知名度があった方が、暗殺するにしても手が出しにくいって判断みたい」


 まあ、あんな恥ずかしいポスターに100万円も出す人が居るほどだから、今さら情報を消そうと思っても消せないか。

 芸能人として露出させて不自然さを薄めるというのは、『木を隠すには森の中に』的な戦術なのだろう。


「『未成年』という言い訳と、『新しい魔法具』で露出する情報を千桜側で制御するみたい。外事部と技研の共同プロジェクトになるらしいわ。打ち合わせの日程が決まったら連絡するから、覚えておいてね?」


「はーい……」


「そんな顔しないで。大丈夫よ、一応デビューするけど、芸能界のお仕事で忙しくなったりするわけじゃないらしいから、今までと大して変わらないわ」


 本当かなぁ?

 まあ、外事部と技研の人との打ち合わせの時に、色々聞き出すしかなさそうだ。


「今日はそれだけ、じゃあね!」


「あ、例の撃っちゃった件は大丈夫だったんですか?」


 肝心なことを思い出して、戻ろうとするカリアさんを呼び止める。


「ああ、ソッチは問題ないわ。無かったことになったから、気にしなくていいわ。何人も人を殺してるような悪いヤツ等だったみたいで、お手柄? みたいよ?」


 見た目の怪しさと装備(黒星)から、ヤバい連中だとは思ってたけど、やっぱりそんな悪いヤツ等だったんだ。

 じゃあ、気にしなくてもいいな(元からあまり気にしてないけど)!

 あ、サイコパスじゃないからね?


「あ、そうだ。コレ、生活支援課のみなさんで召し上がってください。いつもお世話になっているお礼の気持ちです」


 龍鳳学園特別クラスのレストランに頼んだ、特製スイーツセットである。

 『30階での事件』で迷惑をかけてたら……と思って用意した賄賂()なのだが、渡しておこう。


 最近はお中元とかお歳暮の習慣が無くなりつつあるが、だからこそ、こういう小技が意外に効果的なのである!


「あら、悪いわね。ありがたく頂いとくわ! じゃあね、リリナちゃん。打ち合わせの日程決まったら連絡するわ!」


 ニコニコ顔で去っていくカリアさんを、わたしも笑顔で見送ったのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 さて、次はポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃんの部屋へ向かう予定……なのだが、まずはカプセル室でソフィアさんに挨拶である。


 毎回駄菓子というわけにもいかないので、こちらもちゃんと龍鳳学園レストランの特製スイーツセットを準備してある。


「あのー、ソフィアさん?」


 カプセルルームに入って声を上げると、いつものように青髪ショートに白衣、眠そうな目をした魔法少女がヒョコっと現れる。


「どうしたのリリナ?」


「あの、ソフィアさん、これ……いつもウチのポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃんがお世話になり、ありがとうございます。多分、すごぉーーーーーくご迷惑をおかけしていると思いますが、見捨てないでやってください……」


 ソフィアさんには、アンナと義姉妹になったことを伝えてある。

 多分、アンナはソフィアさんに見捨てられると、千桜内でかなーーーーりマズい立場になりそうなので、義妹として頭を下げておく。


 いや、わたしとしては、あまりにアレ過ぎて見捨てられないというか、バカな子ほど可愛いというか……自分でも意外なのだが、結構ポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃんを気に入っているのだ。


「ありがとう。私の方こそ、リリナに面倒事(アンナ先輩)を押し付けてしまったようで申し訳ない。仕事の方でのアンナ先輩の面倒は任せて。最低限、死なないようにする。凄く面倒くさくて捨ててしまいたくなると思うけど、プライベートの方はお願い」


 うーん……千桜内でマズい立場になるどころか、ソフィアさんが面倒を見てくれないと、ポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃんは死んでしまうのか……ありそうで困る。


 お互い何度も頭を下げて、奥のアンナの部屋へ――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃーん!」


 一応ノックをしてから、わたしのコスプレポスターがペタペタ張ってある悪趣味なアンナの部屋(?)へ入ると――。

 アンナは、だらしない格好でエアーベッドに寝そべり、ポップコーンを頬張りながらマンガを読んでいた。例によって横にはコーラのペットボトル(大)。


 まあ、予想通りである。


「おっ、おおお! 最愛の我が義妹(いもうと)、リリナさんではありませんか! 10日も経たず、お姉ちゃんを訪ねてきてくれるとは、そんなにお姉ちゃんに会いたかったのですか!? そ、その……お姉ちゃんは、照れてしまいます」


 いや、この前会ったのは強制任務から戻った日だから、結構経ってると思うんだけど……まあアンナが喜んでいるならいいや。


「はあ……アンナお姉ちゃん、せめて勤務時間中(?)は、ちゃんと座って仕事するフリくらいしなさい! はい、差し入れ」


「えっ!? さ、差し入れって……その……えっ、本当に? あの、私にですか!? 私? ええと、間違いではなくて? 本当に私にですか?」


 ようやく起き上がったアンナに、龍鳳学園レストランの特製スイーツセット入りの紙袋を渡すと、なぜかポカーンとした表情を浮かべる。

 いや、それほど驚くことじゃないだろ。


「そ、その……生ゴミが詰まってるとか……開けると殺虫剤がスプレーされるとか……黒い虫がいっぱい入ってるとか……では、ないのですよね?」


 何だそりゃ?


「む、昔のトラウマを思い出してしまうので、もしそうでしたら、事前に言っていただけると嬉しいかなと……」


 全部やられたことあんのかよ!

 嗚呼(ああ)、哀れなポンコツの方の(アンナ)お姉ちゃん……。


「大丈夫だよ、アンナお姉ちゃん。凄っごく美味しいスイーツだから、勤務時間(?)が終わったら食べてね?」


 そう言うと、アンナは紙袋を開け、白い紙のケースの中を恐る恐る覗き込む。


「お、美味しそうなフルーツケーキにイチゴショート、シュークリームまで……あ、ああ……リ、リリナさんの愛が重すぎます……こ、この愛に、お姉ちゃんはどう応えればいいのか……」


 いや、普通に手土産持ってきただけだろ!

 これで『愛が重すぎる』とか言われるの怖えぇよ!


「どうどう、落ち着け! どうどう、どうどう……」


 鼻息を荒くして興奮するアンナの顎の下を撫でる。

 ハムスターみたいなもんだし、いいだろ。


「凄く美味しいから食べてみて?」


「ど、どうして、こんなことまで……ハッ! もしかして、毒……毒ですか!? お姉ちゃんを毒で!?」


「違うから! 毒なんか入れてないから! だいたい魔法少女に毒なんか効かんでしょうが!」


「た、確かに! それじゃあ、本当にお姉ちゃんにスイーツをくれるんですね……? ああ、信じられません……こ、これはもう、結婚! そう! 結婚するしかありません! お姉ちゃんが、リリナさんを幸せにしてみせますから! 絶対幸せにしてみせますから!」


 ポンコツだとは思ってたが、もっとヤバいナニカだった!


「はぁ……ちょっと聞きたいこともあるから、一緒にケーキでも食べて落ち着こうか……」


「わ、分かりました! ああ、リリナさんと一緒にケーキ……ウェディングケーキというヤツですね!? ああ、私にこんな日がくるなんて、信じられません……うっ、ううっ」


 ウェディングケーキじゃねーし!

 いつも無表情のくせに、こんなしょーもないことで泣くな!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ぐすっ……それで、ぐすすっ……お姉ちゃんに聞きたいことっていうのは、なんでしょう?」


 グズグズ鼻を鳴らしながらショートケーキをパクついていたアンナが、ようやく落ち着いてくる。


「ええと、わたしもそろそろ強化(エンハンスメント)しようかと思うんだけど、よく分からないから説明をお願いできるかな?」


 そう、たんまりMG(マギト)が入ったので、そろそろ強化(エンハンスメント)に手を出そうと思っているのだ。

 これで『ちっちゃいちっちゃい』と言われることもなくなるだろう!


「リリナさん、強化(エンハンスメント)するんですか?」


 なぜかアンナは、あまり乗り気ではなさそうな口ぶりである。

 アンナはマギドール整備・製造係なので、本来は強化(エンハンスメント)を施すのが仕事のはずなのだが……仕事が嫌なのか?


「うん、みんな『ちっちゃいちっちゃい』言うからさ。MG(マギト)も入ったし、そろそろ大っきくなろうかなって。身体が大っきくなれば、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)の反動も少しは抑えられるだろうしね」


「なるほど。まず注意しておきますが、急に身体を大きくすると周囲から不審がられます。さらに銃の反動抑制ですが、身体を大きくすることで実現しようとすると、かなりの強化(エンハンスメント)が必要になります。加えて、肉体の操作感も変わるので、慣熟するまでに時間がかかります」


 おおー!

 なんかアンナが専門家っぽいこと言ってる!


「外見的変化を及ぼさず、身体能力と魔力容量が向上する強化(エンハンスメント)がありますので、まずはそちらを受けることをお勧めします」


 ほお、外見は変わらず能力が上がるのか。

 外見を変える(大きくなる)方が主目的だったけど、能力向上は魅力的だ。


「ちなみに、外見的変化を及ぼす強化(エンハンスメント)を『ボディー強化(エンハンスメント)』、身体能力と魔力容量を向上させる強化(エンハンスメント)を『アビリティー強化(エンハンスメント)』と呼びます」


「『ボディー強化(エンハンスメント)』は、身体能力と魔力容量は向上しないの?」


「はい。『ボディー強化(エンハンスメント)』は基本的に外見を変えるものです。身体能力と魔力容量の『最大値』はボディーサイズに比例して大きくなる傾向があります。そのため『アビリティー強化(エンハンスメント)』を限界まで行ってから『ボディー強化(エンハンスメント)』を行うのが、一番効率の良い方法と言われています」


 なるほど。

 最大値がボディーサイズで決まり、限界が来たらサイズを上げて最大値を引き上げる……ということね。


「いきなり何段階も強化すると、軽自動車からいきなりF1カーへ乗り換えるようなもので、自分の身体をまともに操れなくなる可能性があります。まずは1段階の『アビリティー強化(エンハンスメント)』を受け、強化(エンハンスメント)を体感で理解してから段階的に強化していくのがよいでしょう」


 おお、プロの説明っぽい!


「効率は悪くなりますが、まったく成長しないと怪しまれるので、並行して小規模な『ボディー強化(エンハンスメント)』を定期的に受けるのもいいですね」


「その『アビリティー強化(エンハンスメント)』っていくらかかるの? あと、どれくらい向上するものなの?」


「『アビリティー強化(エンハンスメント)』は、身体能力と魔力容量共に、およそ3%から6%の向上が見込めます。費用は120万MG(マギト)ですね。今のリリナさんに最も効果的でしょう。能力の向上した身体に慣れたら、さらに次の段階の『アビリティー強化(エンハンスメント)』を受ければいいです」


 3%から6%って、人間基準ならとんでもない向上だと思うけど……魔法少女的には普通なのか?

 まあ、そういうものだと納得するしかない。


「えっと、強化(エンハンスメント)するのって、時間はどれくらいかかるの?」


「『アビリティー強化(エンハンスメント)』が約4時間、『ボディー強化(エンハンスメント)』は内容次第ですが、最大で24時間といったところです」


『ボディー強化(エンハンスメント)』は意外に時間がかかるみたいだ。


「あ、そういえば、服や外見を好きに変えられるって聞いたんだけど?」


「服は『変える』というより、もう1着増える感じになりますね。結構MG(マギト)がかかる割に実用性がないので、めったにやる人はいません」


 あー、それはリレッタが言ってたな。


「外見は、身体のサイズを大きくする他に、身体のパーツを変更することができます。胸を大きくしたいとか、鼻を高くしたいとか、脚を長くしたいとかですね。値段は変更するパーツと内容次第です」


「ええと、髪型は変えられるの?」


「ツインテールを すてるなんて とんでもない! お姉ちゃんは、リリナさんのツインテールが気に入ってるので許可できません」


 あー、そういえば前にツインテールはウルトラレア(UR)とか言ってたな。

 まあ、今のところ変える気はないけどさ。


「どうします? 強化(エンハンスメント)しますか?」


「んー、また今度にする」


 今から4時間だと、エステラ達との約束に間に合わなくなる。


「そうですか。これから忙しくなりそうなので、強化(エンハンスメント)するのであれば、早めの方がいいと思いますよ?」


「アンナお姉ちゃんが忙しくなるってことは、新しい魔法少女でも製造するの?」


「そうですね。新造されたリリアさん達104期のユニットはほぼ壊滅してしまいましたし、先日の魔力潮流(マナ・タイド)動乱でも、かなりのユニットを消耗したという噂です。手が足りなくなるのは分かり切っていますので、戦力補充のために臨時で魔法少女の製造を行う、というところでしょう」


 静岡や神奈川西部まで支配エリアが拡大しているみたいだし、手が足りなくなるのを見越して増産しておく、という判断なのだろう。


「あ! アンナお姉ちゃん、質問! 全然話は違うんだけど、魔法少女って何でユニットって言うの?」


 時々、魔法少女をユニットと数えることがあるので、不思議に思っていた。後学のために聞いてみる。


「『マギドール』と『魂』を結合させた結合体が『魔法少女』なので、まとまり(ユニット)と数えると聞いています。正式な場でなければ、気にする必要はないと思いますよ」


 なるほどね。聞いてみると納得する理由だ。

 わたしは正式な場とか行かないから、気にしなくてよさそう。


「あと、現界で聞いたんだけど、アンナお姉ちゃんって写真家として有名なの?」


 この前、水無瀬くんが『本多桃』のことを『コスプレ写真の大家(たいか)で天才写真家』と言っていたのを思い出し、本人に聞いてみる。


「? 何ですか、それは?」


 ん? 複合アミューズメント校舎でのポスターの件の後、ネットで調べたら『本多桃』のWIKIまであったくらいだぞ!


「なんか、アンナお姉ちゃん……というか『本多桃』は、コスプレ写真の大家(たいか)で天才写真家として名高いらしいよ? 知らないの?」


「私が天才写真家ですか? んー…………んっ! そういえば……実は最近、現界の知り合いからコスプレ美少女の撮影を頼まれることが多いのですよ」


 ほほう。


「高価な撮影機器を頂いてしまい断れないという理由もあるのですが、可愛い女の子のコスプレは大好物ですので、頼まれるまま撮影していました。もしかしてソレのことでしょうか?」


「多分ソレだ! わたしのコスプレポスターに裏書きとかした?」


 部屋中に貼ってある、わたしのコスプレポスターを指差す。


「リリナさんのコスプレポスターですか? あ、はい。裏書きといいますか、サインですが。勝手に複版を作られないように、後ろにサインしてくれと頼まれたので、何枚かサインした覚えがあります」


「アンナお姉ちゃんがサインした、そのポスター、1枚100万円で売買されてたよ?」


「な、なんですとぉ!?」


 アンナが目を見開く。

 1枚100万円。この部屋にペタペタ貼ってあるポスターだけで、家が建つ金額になる。


 アンナの反応からすると、本当に知らなかったようだ。

 アンナの言う『知り合い』ってヤツに、いいように利用されているんじゃないか?


「うーん、アンナお姉ちゃんの『知り合い』って人と、1度ちゃんと話し合った方がいいと思うよ。現界に行ったら、『本多桃』のWIKIを調べてみなよ」


「そんな……私の才能を理解してくれる、現界でただ1人の友達だと思ってたのに! 思ってたのに!」


 まあ、友達に裏切られるとかショックだよな……。

 凄く、すごーーーーーーく、よく分かるわ!


「必ず、必ず、必ず、必ず、必ず、必ず、必ず、必ず分け前をキッチリ取り立ててやります! 私がサインしたポスターが1枚100万円だとすると、貰った撮影機材全ての金額を合わせても全然足りません! 必ず正統な報酬を取り立てて、リリナさんとの結婚資金をキッチリ貯めさせていただきます!」


 結婚とかしねーからな!


 と、そんなこんなで、Y08ベースでの挨拶回りは終わったのであった――。


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