62話 ミアのコンサートツアー2 忍者登場!
白鳥プロダクションの本社ビルの金庫に2千万円を預けて、コンサートツアーに出発……するのかと思いきや、ミアは打ち合わせなど色々あるらしく別室へ移動。
わたしの方は、私服がちょっと目立ちすぎるということで、着替えも含めて全部白鳥プロダクションが用意してくれることになった。持ってきた服はすべて預け、わたしはミアの私服の予備に着替えて応接室で待機状態。
ちなみに、トップスは白Tシャツの上にパーカー、ボトムはグレーのスウェットパンツという、動きやすくて目立たないミアの予備の服。
千桜が用意してくれた『お嬢さまー』って服より着心地は良いし、動きやすいので良いのだが、ミアのサイズなので、わたしが着るとちょっと大きめだ。
現状、不本意ながら小学生高学年レベルの背丈なので、早く強化した方がいいだろう。
そういえば、強化ってどれくらいMGがかかるんだろう? そこら辺よく知らないんだよね。まあMGはタップリあるから足りるだろ。今度アンナの所に行ってみよう……。
「お待たせ、澪! あら、いいじゃない! あたしとお揃いね!」
スタッフとのミーティングを終えて、筒井さんと応接室へ戻ってきたミアが、わたしの姿を見るなり嬉しそうに笑う。
ミアは、わたしが借りている服と色違いの服に着替えている。まあ元々ミアの服の予備だし、お揃いになるよね。
「こうやって並べて見ると、本当に姉妹みたいね! 記念写真撮っておきましょ!」
「そうね! ほら、澪、こっちにきなさい!」
認識阻害は働いているはずなので大丈夫だろう。ミアには逆らえないし。
ミアの隣に並んで、筒井さんの構えるスマホに向かって一緒にピースサイン!
何というか、鏡の前で表情筋の確認をした時に百面相して色々遊んでいたので、普通に笑顔を作れた……と思う。
「あらぁ~! いいわね! いいわね! もうちょっと顔くっつけて……あらぁ、いいわよ~! そこでウインク! はい! 頂きましたぁ!」
筒井さんはニコニコしながら、パシャパシャと何度もフラッシュを瞬かせて写真を撮り続ける。何枚撮るつもりなんだよ!?
「筒井さん、撮った写真、後であたしにも頂戴ね!」
「あ、わたしも欲しい!」
ミアの言葉に、わたしも便乗。せっかくミアとの記念写真だし、わたしも欲しい!
ミアって龍鳳学園支給のスマホでは写真撮らないんだよね。メッセージのやり取りも最低限だし。かなり学園の監視体制を疑ってるみたい。
「ふぅ……良い絵が撮れたわ!」
5分以上続いた応接室での謎の撮影会(?)が終わり、筒井さんが撮った画像を見ながら満足そうにうなずいている。
「あっ! 失敗した! 澪ちゃんの私服姿も撮っておけばよかったわ……あっ、いや、目の前にいるんだから失敗じゃないわね! 澪ちゃん、もう一回私服に着替えてみない?」
「それ、いいわね! お嬢さま姿の澪の写真も撮っておきましょ! あたしも、お嬢さまっぽい服用意して!」
えー、また着替えるの面倒臭いんだけど……。
「澪、早く着替えなさい!」
「はーい!」
ミアには逆らえないのであった――。
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「ふぅ……いっぱい良い絵が撮れたわ! 2人とも、ありがと!」
お嬢さま衣装に着替えたわたしとミアとの謎の撮影会(?)が終わり、早速、良さそうな写真をチョイスして送ってもらう。
「いいじゃない! 澪が可愛く撮れてるわ!」
「ミアお姉ちゃん、可愛いー!」
ミアが着替えたお嬢さま衣装は、トップスが淡いミント色のシフォンブラウス、ボトムが白のミモレ丈スカートで、並んで写っていると本物の姉妹みたいだ。
「三枝の許可が出たら、最初は期間限定のユニットとして売り出しましょうね! 雪月華風にも悪くない話でしょ? ユニット名は何がいいかしら……」
「あはは、三枝の本家の了承がとれたら……ね?」
いや、やらないよ? 暗殺されるから!
うーん、カリアさんに頼んで三枝からNG出してもらうのが一番順当か……。
「それより、筒井さん。彼女のこと、紹介しておいた方がいいんじゃない? もう来てるんでしょ?」
「ああ、そうね! ちょっと待っててね」
しばらくしてから、筒井さんが1人の高校生くらいの女の子を連れて戻ってきた。
ポニーテールの、可愛いというより『美人』タイプの娘で、わたしとミアが着ているようなパーカーにスウェットパンツという格好。
何か違和感……。
美人なのに、認識阻害を使われているかのように、どこか影が薄い。
まさか魔法少女じゃないだろうな?
現界で魔法少女同士が接触した時どうすんだ? 研修で習わなかったぞ!?
富良野さんも、わたしに違和感を覚えたのだろう。軽く頭を下げた後、ジィーーッとわたしを凝視してくる。
「彼女は、富良野環さん。普通のボディーガードじゃ手が回らない所があるから、コンサートの時はミアのガードをお願いしているの。今度のツアーもミアと一緒に回ってもらうから、覚えておいてね?」
ミアのボディーガード?
変身体なら人間と同じ身体能力しかないはずだから、魔法少女じゃないのか?
「こっちの彼女は白銀澪さん。近いうちにミアとユニットを組む予定の子よ。今は雪月華風に所属していて、四樹莉里って名前で活動しているわ」
外堀を埋めるような、ちょっと嫌な紹介だが、富良野さんの反応を確認する。
魔法少女なら『雪月華風』の名前に反応するはずだと思ったが、特に反応もなく凝視を続けてくる……違和感はあるものの、お互い不干渉ということだと理解。
社会人同士の普通の挨拶として、名刺を渡すことにする。
「ご紹介いただきました。白銀澪こと、雪月華風の四樹莉里と申します。仕事ではないので、澪と呼んでください。よろしくお願いします」
「よろしく……」
寡黙なタイプのようだ。
「こんな可愛い子にボディーガードが務まるのかって思ってるんでしょ? 大丈夫よ、彼女は忍者の家系なの。修行を兼ねて、こういう仕事してるのよ」
マジ!? 忍者って現代日本に存在すんの!?
あ、いや、魔法少女が居るんだから、忍者くらいいるか……いや、居るのか!?
とにかく忍者……それも『くノ一』とご一緒できるとか、『心は少年』のわたしのワクワクが止まらないよ!
「忍者! 忍者、カッコ良いですね!! よろしくお願いします!」
わたしの言葉に、富良野さんがちょっと複雑そうな表情を浮かべる?
「2人は同時に守れない。困った……」
いやミアのボディーガードなんだからミア優先じゃないとマズいだろう。
「ミアは過激なファンが色々問題を起こしてるから、何かあるとしたらミアの方だと思うわ。でも、澪ちゃんもできるだけ気をつけてあげて」
そういえば龍鳳学園へ転入してきたのは、久遠くんの件もあるけど、ファンの過激な活動が目立ってきたからだって瑠奈さんが言ってたな。
「ああ、わたしのことはお気遣いなく。ミアお姉ちゃんのことをしっかり守ってください」
「澪、心配しなくても大丈夫よ! 澪はあたしが守ってあげるわ!」
わたしを心配したのか、両手を腰に当てて胸を張るミアお姉ちゃん、いつも頼もしいです!
ああぁぁ……もっともっと甘やかせて!
「ありがとう、ミアお姉ちゃん!」
実際問題として、わたしが狙われるとかになったら、多分相手は魔法攻撃してくるから、忍者といえど普通の人間じゃ相手にならないでしょ。
忍法でも使わなければ……つ、使えないよね、忍法?
魔法少女なんかがいるんだから、忍法を使う忍者がいてもおかしくないけどさぁ……認識阻害っぽいの使ってる気がすけど、どうなんだろ!?
魔法少女になって、自分がいかに『限定された情報』しか知らされていなかったのかを思い知ったので、否定できないんだよねー。
「あの、富良野さんは忍術とか忍法とか使えるんですか?」
『心は少年』のわたしは、好奇心が抑えきれず聞いてしまった。
「はぁ~、澪、さすがにそれは漫画の読み過ぎよ!」
「アハハハ! 澪ちゃん、夢があるわね。可愛いわ!」
「忍術とか忍法とかは使えない。ゴメン……」
ミアは呆れ顔、筒井さんは爆笑モード、富良野さんはすまなそう顔をしている。
「そ、そうですよねー! ちょっと興味があって聞いてみただけですから、気にしないでください。忍者の全員が忍術とか忍法とかを使えるわけじゃないですよねー」
と、一応富良野さんに謝っておくが、もしわたしが『魔法少女なの?』とか聞かれても、『はい、魔法少女です!』なんて絶対に答えないので、忍術や忍法が使えるけど隠しているのかもしれない!
「小さい子によく聞かれる。夢を壊して申し訳ない気持ち……」
富良野さんがショボンとしている……これは、本当に使えないっぽい!?
「ええと、環さん、澪は凄っごい箱入りのお嬢さまで、ちょっとズレてるのよ。環さんの実力はあたしが良く知ってるから、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ?」
優しいミアがションボリしている富良野さんをフォローする。
わたしもションボリして肩を落としている富良野さんを見ると、少々罪悪感が湧いてくる。高校生くらいの娘さんをイジめて喜ぶ趣味はないのである。
「わたし、忍者のことよく知らなくて……何かゴメンなさい」
わたしが頭を下げると、富良野さんがミアと筒井さんの視線を遮るように中腰になって、目線を合わせてくれる。
「澪は秘密を守れる良い子?」
おっ、もしかして、やっぱり忍術を使える!?
「守れます!」
「本当は秘密だけど、秘密を守れるなら特別に忍術を見せてあげる。でも、澪が良い子じゃないと失敗するかもしれない……」
そう言うと、富良野さんはわたしの目の前でパンと両手を叩く……そして手を広げると、キャンディーが1つ!
「おおっー!」
「澪が良い子だから忍術が成功した……澪にあげる」
そう言ってキャンディーを手渡してくれる。
簡単な手品っぽいけど、小さい子をガッカリさせないために覚えたんだろう。
富良野さんって、口数は少ないけどメッチャ良い娘だわ!
「凄い、凄ーいっ! ありがとう、富良野さん! やっぱり凄い忍者なんだね!」
「ふふふ、そうでもない」
富良野さんの優しい心遣いと努力を高く評価!
わたしが大喜びしてキャンディーのお礼を言うと、富良野さんが微笑んでくれた。
でも、富良野さん、わたしのことを本気で小さな子供だと思っているみたいで、ちょっと複雑ではある……。
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名古屋まで新幹線とかで移動するのかと思ったら、龍鳳学園にミアを迎えに来た白い車で移動するらしい。
今回はミアとわたしと富良野さんが後部座席、助手席が筒井さん。
「じゃあ、澪ちゃんに、この後のスケジュールの説明だけしておくわね――」
ミアのコンサートツアー……といっても名古屋と大阪の2か所なのだが、スケジュール的には、今日はこれから名古屋へ移動して会場の下見。
2日目が名古屋でコンサート、3日目に大阪へ移動して、4日目が大阪コンサート、5日目はお休み――という感じ。
当然のことながら、コンサートは『見る専』だったので、やる側の事情なんかまったく知らない。今回は社会科見学のつもりで、ミアのコンサートツアーを楽しませてもらおうと思ってたら……車の中で、ミアがコンサートの詳しい段取りなどを説明してくれた。
すごく面白くてためになるんだけど、学校と同じくらい、ずーーっと喋り続けるミアの喉を心配した筒井さんに途中で止められてしまった。
ちなみに富良野さんは、忍者らしく(?)寡黙でした――。
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わたし達がコンサート会場に着いたのは、もう夕方。
ミアは何度か同じ会場を使っているので、サクッと下見して今日はおしまい。
その後はゴージャスなホテルで宿泊する。
ちなみにミアとわたしは同室。セキュリティーの問題らしい。
もちろんベッドは別だよ?
その夜はガールズトーク(?)で、車の中で中断したコンサートのノウハウを、ミアからたっぷり叩き込まれたのであった――。
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