58話 黒狼から来た魔法少女
龍鳳学園、澪の部屋の寝室――。
久しぶりの現界でゆっくり睡眠を……と思ったのだが、自分の意思で眠ることができない変身体のせいで、眠いはずなのに何故か目が冴えて眠れない。
しょうがないのでゴロゴロすることにした。
ゴロゴロゴロゴロ……。
ミアって才色兼備で可愛いよな。
何より、わたしのこと甘やかしてくれるし! わたしのこと甘やかしてくれるし!
ミアと居ると、心までJCになっちゃうよ!?
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
魔法少女連中も、わたしみたいなクズばっかりかと思ったら、意外に良いヤツもいる。
特にカーミラさんとセラさんは、わたしのこと甘やかしてくれるし! わたしのこと甘やかしてくれるし!
ああ、あの2人は『ホンモノ』だから『魔法少女なんかやってるクズ』のカテゴリーには入らんか。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
しかし、なんか『前』よりよっぽど楽チンなんだよなー、魔法少女生活。
周囲からのプレッシャーはないし、契約っていっても、ただ戦うだけでいいし、悪くてもただ死ぬだけだし、こんな楽チンでいいのだろうか?
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
うーん、契約は遵守しているんだし、いいよね?
鏡界で死んだら……ミア達のことはカリアさんが上手く処理してくれるだろう。海外留学とかになるのかな?
どうせいつかは鏡界のどっかで死ぬんだろうけど、願わくば苦しまずに逝きたいところ。
『前』に死んだ時は、メチャクチャ苦しかったからね!
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深夜、鏡界。Y08ベース。
しばらくゴロゴロしていたけれど、結局寝付けずに鏡界へ転移……したのだが、『血の宣誓』の活動日はまだ先だし、『桜華乱舞』作戦と、それに続く『落花清域』作戦のせいで魔塊獣が一掃されてしまっているので、狩りもできない。
当然のことながら中央ロビーはガラガラで、魔女っ子一人いないという状況。
手持ち無沙汰なので、忘れないうちにと、カリアさんに『ネコミミ着ぐるみポスター』についての一連の報告と対応をお願いすることにしたのだ――。
「困ったわね。今まで、そんな前例、聞いたことないわ」
生活支援課の面談室で、出されたコーヒーを飲みながら事情を話すと、カリアさんが困った顔を浮かべる。
メタルチョーカーをしている限り認識阻害が働くので、変身体とはいえ、人間離れした美を誇るこの完璧なボディーが衆目に晒されるなんて、普通は起こりえない。
「リリナちゃんの話からすると、早急に手を打ったほうがよさそうね。勤務部の管轄じゃないから、今から外事部に行って対策を講じてもらうわね」
「なんかすいません……」
「いいのよ、私の仕事だから。でも、リリナちゃんって、聖導連盟の奇襲からはじまって、『桜華乱舞』作戦での強制任務からのBBランク魔塊獣動乱まで、結構酷い目にあってるわね」
あってるよ!
酷い目にあいまくりだよ!
「でも、酷い目にあい続けても生き延びてるってことは、リリナちゃんはそれだけ運が良いってことだからね」
いやいや、運が良ければ酷い目にあわないのでは?
「リリナちゃん、運が良ければ酷い目にあわないって思ってるでしょ? 違うのよ。運が悪ければ、酷い目にあおうがあうまいが死んじゃうの。現界で交通事故にあったりね? だから、生き延びてるって事実だけで運が良いのよ?」
「そんなもんですかね?」
「ええ、そうよ。だからリリナちゃんは、これからもちゃんと生き延びなさいね!」
カリアさんは、ずっとわたしの命の心配をしてくれる。その過保護なほどの気遣いが、裏にある魔法少女の死亡率の高さを想像させるんだけどね……。
「それじゃあ、私は外事部に行ってくるわね。そうだ、そろそろ『活動拠点移動』の任務が発行されると思うから、もしヒマなら他のベースの転移装置に登録しに行ってきたら? 魔塊獣が一掃されている今なら楽に回れるわよ? いい運動にもなるし!」
『活動拠点移動』か……。
未制圧エリアの魔塊獣を一掃したからといって、千桜の支配エリアになるわけじゃない。
まず『ベース』を建設し、周囲のエリアにマナ通信設備を設置して、他のベースとマナネットワークを構築してから初めて支配エリアとして機能し始めるのだ。
今回の『桜華乱舞』『落花清域』両作戦で魔塊獣を一掃した千桜は、多数のベースとマナ通信設備の建設し一気に支配エリアを増やすという話だ。
千桜としては、新しく増えたベースに魔法少女の活動拠点を移させたいのだろう。
まあ、転移装置に登録してあれば、どこのベースを拠点にして活動しようと大した違いはないんだよね。
地形を覚えてるか、覚えてないかってことくらい?
とはいえ、転移装置への登録は必須だ。
現状、登録するには鏡界を走っていくか、現界で目的地に移動してから潜界するかの2つしか方法がないので、カリアさんの言う通り、魔塊獣が一掃されている今がチャンスかもしれない。
魔塊獣が居ないなら、神奈川中のベースを回っても2~3時間くらいだろう。
良い運動になりそうだし、行ってみるか!
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深夜、鏡界。藤沢・FJ01ベース。
鏡界の夜景を楽しみながらのベースの転移装置巡りは意外に早く終わり、『東京のベースも回っちゃう!?』と思ってマップを確認したら、これが神奈川より断然多いので面倒臭くなって断念。
今は仮設ベースとされている藤沢のFJ01ベースの転移装置の登録を終え、中央ロビーへと来ていた。
「これで神奈川のベースは全部登録終わったな……ちょっと休んでいくか」
仮設ベースと言われるだけあり、まだ工事中のようで、FJ01ベースの中央ロビーは資材置き場と化していた。
それでも、ギリギリ5~6人が座れるかなというスペースにはベンチが置かれ、奥の方には自販機(多分工事する魔法少女用の)があったので、カップコーヒーを買って少し休憩。
色々ベースを見て回った感想だが、ダントツで規模がデカいのが新宿ベース。
まあ本部だしね。
次がY08ベースで、他のベースの数倍の規模がある。
他のベースと比べてみて、初めてY08ベースが大規模ベースなのが分かった。
その他のベースは似たり寄ったりで、規模としてはY08ベースの半分以下って感じ。
ベースとしての機能は揃っているんだろうけど、多分Y08ベースにいる魔法少女全員は入らない。
リレッタが『どのパーティーも鏡界に自分達の秘密基地を作ってる』と言っていたけど、多分ベースが狭いせいだな。
5~6パーティー集まったら、中央ロビーが満員になりそう。
で、この藤沢・FJ01ベースは、今日見て回った神奈川のベースの中で一番狭い……というか、普通のベースと実面積は同じなんだろうけど、そこら中に資材やら何やらが置いてあるせいで狭く見える。
転移装置ルームは他のベースと同じだったので、おそらくベースとしての基本的な施設は稼働しているのだろうが、一般魔法少女用のスペースの整備が全然終わっていないって感じ。
Y08ベースには100人以上の魔法少女がいたと思うけど、他のベースって何人くらいいるんだろう……っていうか、千桜って何人くらい魔法少女がいるんだ?
そこらへんは機密らしく、まったく情報がない。
わたしの同期が40人だったはずだから、毎年40人ずつ製造していると考えるとかなりの人数がいそうな気はするが……結構コロコロ死んでるみたいだし、よく分からん。
「こんばんは? ここ、いいかい?」
突然声をかけられ振り向くと、肩より少し長いくらいの外にハネた灰銀色のボブカットの髪に、紺と灰と黒の衣装の魔法少女。
少し釣り目の険しい顔立ちなのだが、目の奥のどこか疲れたような光が老熟した印象を与える。背が高く、かなり強化されている感じだ。
魔法少女なので当然見た目は美少女なのだが、纏っている雰囲気が完全に『くたびれたサラリーマンのオッサン』で、妙に落ち着く。
慣れ親しんだ空気感に、わたしの気持ちが緩む。
「どうぞ」
魔法少女は、バス停の待合室のような狭い空間の向かい側のベンチに腰を下ろす。
手に持ったカップの中身はミルクティーのようだ。
「グラウだ。邪魔するよ」
丁寧ではないが、居酒屋で隣に座った『くたびれたオッサン』がする自己紹介のような感じ。
わたし的には気楽に話せそうで、好感度アップ!
「リリナだ。よろしく」
もしかしたら工事担当の魔法少女かもしれない。確か、工兵課の仕事だったはずだ。
くたびれたオッサンのような雰囲気の魔法少女に、少し興味が湧く。
「こんな時間にどうしたんだ? 今は狩りだってできないだろ?」
特に深い意味はなさそうで、軽い世間話という感じでグラウが聞いてくる。
その気楽さが、また心地よい。
「転移装置の登録だ。魔塊獣が居ないうちに、神奈川のベースを回ってたんだ」
「ああ、そういえばそんなのあったな。あたしもやっといた方がいいな……」
グラウは、まるでカップ酒をグビリといくかのように、ミルクティーの紙コップに口をつける。
どうにも仕草がオッサン臭い。『前』のクセが抜けていないのかもしれない。
「ソッチは、何してるんだ?」
「そうだな……ちょっとこの辺りを散歩ってところだ」
魔塊獣は居ないし、他の魔法少女も居ない。
誰もいない鏡界の夜景をのんびり眺めながら散歩するには、確かにとても良さそうな夜だ。
ベース巡りのジョギングも楽しかったし、気持ちは分かる。
「なるほど、確かに散歩には良い夜だな」
「ああ、分かるかい?」
「神奈川にあるベースを一巡りしてきたけど、綺麗な夜景が楽しめて悪くないジョギングだったよ」
「リリナ、さん……」
「リリナでいいよ、グラウさん」
「あたしもグラウでいい。こう見えて、まだ千桜に入って1ヶ月も経ってない新入りだからな」
グラウはそう言うと、口元をわずかに歪めた。
この、くたびれたオッサンみたいなグラウが、後輩?
新しい魔法少女が造られたって話は初耳だが、あれだけ派手にヤられたんだ。追加で魔法少女を新造しないと、千桜でも人員が足りなくなるだろう。
しかし、意外だな。
強化の具合からして、かなりのベテランに見えるんだが……特殊な魔法持ちで、強化の費用を工兵課が持ってくれた……とかか?
「わたしも千桜に入ってから2ヶ月ちょっとだ。ほぼ同期って言っていいんじゃないか?」
「そうなのか? 新造の魔法少女は聖導連盟の奇襲でほぼ全滅したって聞いたんだが……」
グラウが考え込むような表情になる。
「もしかして、リリナも、あたしと同じ元『黒狼』組か?」
元『黒狼』組?
黒狼って、確か前に千桜と戦争してたところだよな?
「グラウは元黒狼なのか?」
「ああ! こう見えても銀狼隊にいたんだ! リリナはどこの所属だったんだ?」
グラウの目の奥にわずかに光が灯る。
わたしも元黒狼の魔法少女だと誤解させてしまったようだ。
「誤解させたみたいで悪いな。わたしは、聖導連盟の奇襲でほぼ全滅した千桜の新造魔法少女の生き残りだ」
「そ、そうか……」
グラウが肩を落とす。
「すまん、元黒狼のヤツなんかと話したくないよな。不愉快な気分にさせちまったら謝るよ。悪かった……あたしは行くよ……」
グラウが立ち上がろうとする。
「わたしが製造された時にはもう戦争は終わってたんだ。元黒狼だろうが関係ないよ。なあ、せっかくこんな時間に、こんな所で会ったんだ、ちょっと話を聞かせてくれよ」
「そっか……しかし、話っていってもなぁ……」
「戦争とか、よく知らないんだよ。魔法少女研修じゃ詳しく教えてくれなかったからな。同期なんだから助け合っていこうぜ? それとも千桜の魔法少女と話すのは嫌か?」
「はぁ……あたしのことを恨んでないなら別にいいけどな。で、何が聞きたいんだ?」
グラウは浮かせた腰を再びベンチへと戻す。
「じゃあ遠慮なく。最初に言っとくけど、わたしに黒狼のことを悪く言う気はないから、グラウの気に障るようなことを言っても誤解するなよ?」
少し踏み込んだ質問をして情報収集したいので、最初に断っておく。
「戦争に負けるってのは、具体的にどうなるんだ?」
「ああ、一般魔法少女は知らないか……そうだな、『魔法少女組織』のコアとなる施設は『オラクルデバイス』なんだが、これは知ってるか?」
『一般魔法少女は』ってことは、グラウは黒狼の運営だったんだろう。
「いや、初耳だ」
「『オラクルデバイス』ってのは、マギリングの『魔法少女組織』版だ。マギリングと同じように、MGを対価にアイテムやら魔法技術やらを購入できる。『組織』用のものをな」
マギリングの『魔法少女組織』版ねぇ……。
「『魔法少女組織』が所有している『オラクルデバイス』を全て失うと、その『魔法少女組織』は存続できなくなり消滅する。ここまでは分かるな?」
つまり、『オラクルデバイス』を失うと組織として成立しないということだな。
「そこで戦争の話だ。降伏するってことになれば、『オラクルデバイス』を相手の『魔法少女組織』に渡して併合されることになる。所属していた魔法少女も支配エリアも、全部相手の『魔法少女組織』へ編入される。編入された後の魔法少女の扱いも含めて、企業買収みたいなもんだ」
左遷、降格……魔法少女だと、危険な強制任務に従事させられる、とかかな?
「だが、黒狼のように降伏しなかったら? 黒狼は最後まで降伏せずに、本拠地の小田原ベースの『マギト炉』を暴走させて、『オラクルデバイス』ごと自爆したんだ」
何それ!?
松永久秀(信長に反逆して自爆したといわれる戦国武将)かよ!?
「ん? 小田原ベース?」
小田原というと、例の『六本腕』との戦いを思い出す……。
「ああ。あたしは横須賀からの撤退戦に参加してたから直接は知らないが、小田原周辺地域のマナ濃度が爆上がりして、倒しても倒しても魔塊獣が湧き続ける魔境になったらしい」
あー、もしかして、小田原周辺で『六本腕』が大量発生したのって、それが原因なんじゃないの!?
「話を戻すが、黒狼は降伏せずに『オラクルデバイス』を破壊した。するとどうなるか? ベースを中心としたマナネットワークは崩壊、黒狼の支配エリアだった所は未制圧エリアになり、黒狼に所属していた全魔法少女は無所属になった」
「無所属魔法少女なんてモンがいるのか?」
「ああ。いわゆる野良魔法少女ってやつだ。全国的にみると結構いるらしいぜ?」
野良魔法少女ねぇ。
「野良でも、未制圧エリアで魔塊獣を狩れば生命維持のためのMGは稼げる。千桜や聖導連盟の『残党狩り』に見つからないようにする必要はあるが、幸い未制圧エリアは多かったから、半年くらい野良魔法少女をやってた」
そこまで言って、グラウは大きくため息を吐く。
「でもな、黒狼から支給されたメタルチョーカーは消滅して通信もできないし、転移装置が使えないから、毎回『残党狩り』に見つからないか冷や冷やしながら、潜界と帰界で行き来しなくちゃならない。最悪なのは、カプセルを使えないことだ。ちょっとした負傷でも治療できずに死ぬ……」
それは中々ハードそうだ。
「で、そんな野良生活にほとほと疲れ果て、千桜に投降したのが1ヶ月ほど前。何年も殺し合いをしてた関係だし、処刑されるのを覚悟してたんだが……どうやら人員不足だったらしくスカウトされて千桜に入ったってわけだ」
聖導連盟の奇襲のおかげってわけね。
「なるほど。質問なんだけど、新しい『オラクルデバイス』は入手できないのか?」
「MGさえあれば、マギリングで購入できるぞ。高額なMGが必要だけどな」
「なら、生き残った魔法少女がMGを出し合って、『オラクルデバイス』を買いなおして新しい『魔法少女組織』をつくるってのはダメなのか?」
「『オラクルデバイス』ってのはMGで強化すると、機能が増幅したり新しい機能が追加されたりするんだ。で、どの『魔法少女組織』も長い時間とMGをかけて『オラクルデバイス』を強化してる」
魔法少女の強化みたいなもんか。
「新しい『オラクルデバイス』を買っても、大した力はない――と、言われている。それが本当なら、千桜や聖導連盟の脅威にはならないから、上手く立ち回れば存続を許される可能性もあるが……」
グラウが意味ありげにわたしの方を見る。
「実は、強化した『オラクルデバイス』を引き継ぐ方法があるらしいんだよ。潰れた『魔法少女組織』に所属していた魔法少女が、何らかの条件を満たせば、強化済みの『オラクルデバイス』を買えるらしい。それで黒狼では、潰した『魔法少女組織』の『残党狩り』を厳しくやってたんだ」
野良なんかやらずに、最初から千桜に投降すればよかったのにと思ったけど……なるほど、黒狼が『残党狩り』をしていたから、千桜や聖導連盟も当然やるだろうと考えたわけか。
わたしが製造されてからは、『残党狩り』なんて聞いたことないんだけどな。
「千桜では『残党狩り』とか聞いたことないな。野良魔法少女なんて初めて知ったし。他の野良になってる魔法少女も千桜に投降すればいいのに……ダメなのか?」
「あたしだって、絶対殺されると思ってたし、何年も殺し合いしてた仲だから千桜を憎んでる連中も多い。そう簡単にはな……。千桜に入ってから、あたしの他にも投降した元黒狼の魔法少女がいるって聞いて驚いたくらいだ」
他にも投降した元黒狼の魔法少女がいるんだ!?
「あまり強化してない魔法少女で、もう千桜に馴染んでるって聞いたから、てっきりリリナのことだと思ったってわけだ……他に聞きたいことはあるか?」
「んー、今のところないな。ありがとう。色々勉強になった」
「ハハッ、まあ同期っぽいしな。助け合っていこう」
グラウは疲れたように笑うと、ミルクティーを口へ含む。
「こっからは雑談だ。どうだ、千桜は? 黒狼と違うのか?」
「そうだな、かなり違う。何ていうか、千桜はアットホームっつうか、フレンドリーっつうか、ホワイトって感じだな。福利厚生も段違いだし。黒狼にいた時には気にならなかったが、黒狼は軍隊みたいで、いつも緊張感が漂っていたな……千桜にいると腑抜けそうだ」
「ランボーみたいな感じか?」
「ああ、そうそう、あれだな。戦友だった連中はみな死んじまったのに、あたしだけ、こんなに平和でいいんだろうかってな……ベトナム帰還兵みたいな感じで、千桜のアットホームな雰囲気に今一つなじめないんだ。千桜の魔法少女達と上手くやっていけるか自信がない……」
中途入社組が新しい社風に馴染めないなんて、よくあることだ。
黒狼が滅んでも生き延びた魔法少女だ、千桜の雰囲気に慣れさえすれば強力な戦力になるだろう。それに……わたしは、このくたびれたオッサンみたいなグラウを少し気に入ってしまった。
「転職なんてそんなもんだ。2、3ヶ月もすれば馴染んでくる。どうせ、みんな魔法少女なんかやってるクズのお仲間だ。気楽にやればいい」
「魔法少女なんかやってる、クズか……そうか、そうだな。ハハハ、違いない。確かに、みんな魔法少女なんかやってるクズのお仲間だわなぁ。つまらないことを気にする必要はないか……」
「ああ、魔法少女なんて、ただ戦って、最悪死ぬだけの楽な仕事だ。気楽にやればいい。鏡界のどっかで野垂れ死にするまでな!」
「ハハハハハッ! そうだな、確かに最悪死ぬだけだ!」
口元を歪めながら、グラウがミルクティーの入った紙コップを掲げる。
わたしもニヤリと笑いながら、同じようにコーヒー入りの紙コップを掲げる。
「魔法少女なんかやってるクズ達のために!」
「クズ達のために!」
「「乾杯!!」」
どうやら新しい友人ができたようだ――。
ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると凄っごく嬉しくて、凄っごく励みになるの、是非是非お願いします!




