57話 澪の買い出し紀行・後編
複合アミューズメント校舎内、ボーリング施設――。
聞いたところでは、ミアも真壁くんも水無瀬くんもボーリング初体験。
つまり、ボーリング歴で圧倒的アドバンテージのあるわたしの独壇場になる……はずだったのだが。
「こんな感じか? 初めてやったけど、意外に面白いな!」
真壁くんは、その恵体から放たれる、ピンが砕けるんじゃないかと思うほどの圧倒的な威力の投球でストライクを連発する。
「ふふっ! またストライクよ! あたし、ボーリングの才能もあるみたいね!」
ミアもまた、天性の運動神経のおかげなのかストライクを連発……。
「もう、ようやく慣れてきたってのに、そんなにストライク連発されたら、頑張っても追いつけないよ!」
水無瀬くんは、最初こそわたしと同じ5とか7だったのに、3フレーム目には確実にスペアを決めるようになり、6フレーム目以降は連続でストライクを取っていく!
デ●(断言)のくせに! ●ブ(断言)のくせに!
「ど、ドンマイ……ほ、ほら澪は、ちっちゃいからしょうがないわ!」
「澪さん、大丈夫です! 俺、一生応援しますから!」
「澪さま……なんてあざと可愛ぃ!!」
「むぅぅぅぅぅ……」
結局、1ゲーム目のスコアは――。
真壁くんが182、ミアが174、水無瀬くんが152、そしてボーリング歴10年以上のわたしが119……。
何かがおかしい……。
ボールの重さ、フォーム、体重移動、いろいろ調整しているのに、なぜかわたしの投げたボールだけ、不思議な力が働いているかのようにゴロゴロと左右に逸れていくのだ……。
おかしいでしょうが!!
なに? なんなのこの差!?
わたしが119ってのは、まあこの身体でボーリングするのが初めてだから、そんなこともあるかなって思うけど、初めてやったヤツがそのスコアって異常だろ!
血統なのか!?
何世代も上級やってると、サラブレッドみたいに血統で優良遺伝子が集まって、頭も身体も優秀になるの!?
不公平だ! 遺伝子格差の撤廃を要求する!
変身体は『普通の人』に調整されているはずなのに、こいつ等といると『普通の人』の定義が揺らぐ……。
「そ、そうだ! 澪さまだけ+100ってルールにしましょうよ!」
「そ、そうだな。賛成だ!」
「み、水無瀬もたまにはいいこと言うじゃない! 澪が219でトップよ!」
悲しくなるからやめて!
みんなの暖かい気づかいが、ギリギリとわたしの心を締め上げてくるんですけど!
「だ、大丈夫だよ? 別に気にしてないし!」
そう、大人はボーリングのスコアくらいで怒ったり、落ち込んだり、執着したりしないのだ!
中1のお子さま達に気づかわれるとかあり得ないから!
「じゃあ、もう1ゲームやろっか!」
「あの、澪さま……もうそろそろ1時間過ぎるんで……」
「もう1ゲームやろっか!」
「お、俺は、いいと思うぞ!」
「そ、そうね。順番変えてやりましょ!」
「わ、分かりました、澪さまの御心のままに!」
「みんな手、抜いたら、わたし怒るからね!」
2ゲーム目の結果は――。
スコアが全てじゃないし! 楽しめればいいし! ただの時間つぶしだし!
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結局ボーリング場で1時間半ほど時間をつぶしてから、ミアがやけに優しくわたしの手を握りながら4人でキャラクターショップへ――。
「いらっしゃいませ。おすすめの品は届いております。こちらへどうぞ」
さっきの認識阻害系のショップ店員さん(?)が、にこやかに奥の部屋へと案内してくれた。
そこはスタッフルーム……ではなく、大きな机が置かれた商談室のような部屋だった。
白手袋をつけた店員さんは、B2サイズの金属製ケースから、恭しくゴスロリ姿、巫女服、メイド衣装、セーラー服を着てノリノリでポーズを決めるわたしのポスターを並べていく。
ああ、『生き恥を晒す』って、こういうことなんだなぁ……と、妙に他人事のように思いながら、その様子を呆然と見つめるわたし。
いや、確かに杏に撮ってもらった写真のわたしは可愛いよ?
でも、中身はアレだよ?
中身がアレなのが、コスプレしてノリノリでポーズ取って、ポスターで晒し者にされてるんだよ!?
死ぬほど恥ずかしいだろ!
知り合いにバレたら、地獄の殺戮者で自分の頭撃ち抜く自信あるわ!
「8点すべて『本多桃』氏本人の裏書付きです。美術品用のポスターパネルは特別クラスの美術室に正規ルートで納品済みですので、そちらでお受け取りください」
4枚セットを2セット。
白手袋をつけた水無瀬くんが全てをルーペで確認した後、受取証にサイン。
美術品のように丁寧に2つの金属製ケースへ入れられたわたしのコスプレポスターが、ミアと真壁くんへ手渡される。
うーん、何だかなぁ……。
「あの、コレってどれくらい出回ってるんですか?」
一通り取引が終わったので、大事なことを確認する。
「今のところ、入手できるのはこの8点が最後ですね。これも、たまたま『ネコミミ着ぐるみ』を目にしなかった広告代理店の担当が手放したものなので、この8点以外は市場にはまったく出回っていません。入手したいのであれば、マニアが手放すのを待つしかありませんね……ん?」
市場に出回っていないならいいか、とホッとしていたわたしの顔をチラリと見た店員さんは、怪訝そうな表情を浮かべ、もう一度わたしを見返してくる。
「んんっ!? っ……ええっ、『四樹莉里』!? えっ、ええっ、ほ、本物っ!?」
さらにもう一度わたしを見つめ直した店員さんは、驚愕の表情で目をパチパチと瞬かせる。
「えええっ!? そんな、ウソ……だろ……こんな美しい人間、見たことがない……こんな美しい人間が存在するものなのか……」
唖然とした表情の店員さんは、目を見開いてわたしをまじまじと見つめてくる。
「う、美しい……なんという美しさだ! 古の芸術家が一生をかけて創り上げた彫刻も、この美しさの前では色褪せる……ああ、これが……これが『四樹莉里教』の連中が崇めていた本物の『四樹莉里』……いや『四樹莉里』さまの御姿……」
やばい、認識阻害効果が効いてないっぽい!?
美術の鑑定士とかスカウトとか、本物の目利きには認識阻害が効きにくいって話だったけど……。
いや、どうすんのよ、コレ!?
「じゃ、じゃあそろそろ行こっか?」
とりあえず逃げることに決定!
ミアの手を握って部屋を出ようとすると……。
「お、お待ちを! やはり、それはお売りできません! 全額返金……いえ1枚200万……いえ、言い値を払いますから、どうか返してください!」
魔法少女ヤバい!
店員さんが真壁くんの足元に縋り付き、返品を懇願する……。
「クッ、ククク! 自分の愚かさを恨むんだな。水無瀬に頭を下げてまで手に入れた莉里さんのポスター、金なんかで手放すわけがねーだろ!」
真壁くんが悪い顔で笑い、店員さんを引き離す。
「ああ、私はなんて愚かなことを……四樹莉里さまの御姿を見るまで、その尊さに気づかないなんて……」
店員さんはガックリと肩を落として床に座り込み、ブツブツ呟いている……。
いや、知らんから!
わたしのせいじゃないからね!
あんなネコミミ着ぐるみを着せて写真撮ったヤツが悪い!
具体的に言うと杏が悪い!
「そ、それじゃあ……ね? あ、わたし、天女じゃないですから! (魔法少女です!)」
「ああ……四樹莉里さま……」
龍鳳学園、複合アミューズメント校舎の片隅で、カルト教団『四樹莉里教』の信者が密かにまた1人増えたのであった――。
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逃げるようにキャラクターショップを後にしたわたし達は、案内版の前で休憩を取った後、周囲の人混みが円形状に消える通路をVRゲーム施設へ向かって歩いていく。
「うふふふ! やっぱり、見る目がある人には澪の可愛さが分かるのよ! あたしの妹分として一緒にユニットを組んでデビューしましょ! そうすればずっと一緒にいられるわ!」
ミアは、繋いだ手をブンブン振りながら、ツインテールをふりふりして大喜びしているんだけど……あんまり目立つと暗殺されちゃうから!
「講演会のまとめとか、事務所の契約とか、面倒くさいことは全部俺が仕切りますんで、ぜひお願いします!」
「おおー、ミアさまと澪さまの姉妹ユニット! ぜひ拝見したいでございますです!」
「ふふっ、アンタ達、中々分かってるじゃない!」
休憩中にミアに認められ、荷物の運搬要員としてお供を許された真壁くんと水無瀬くんが、ミアに同調して囃し立てる……。
「あはは……お爺さまが許してくれないと思うから……」
しかし、あのネコミミ着ぐるみポスター、思った以上に大事になってるな。
ルビーさんが回収してくれたからまだマシなんだろうけど、気づかずに放置していたらと思うと恐ろしい……。
市場にはほとんど出回っていないとはいえ、ネコミミ着ぐるみポスターの件は千桜に相談しておいたほうがいいよな?
千桜所属の魔法少女として、上に報連相(報告・連絡・相談)さえしていれば、千桜の担当がなんとかしてくれる……はず!
「アレよ、澪! VRゲームってヤツだわ!」
どう報告したものかと考えながら歩いていると、光を放つ未来的なデザインの入口を見つけたミアが指差して嬉しそうに声を上げる。
「っ!? あっ……赤服じゃねーか!」
「しょうがないわね。また今度にしましょ……」
「赤服と関わると、ろくなことねーからな……」
周囲にいた生徒達は、一瞬だけチラリとこちらを見るが、赤服を確認するとすぐ視線を逸らして離れていく……。
「良かったわ、空いてるみたいよ!」
いや、空いてるんじゃなくて、みんながわたし達を避けてるだけだからね……。
「行くわよ、澪!」
「はーい!」
実は、わたしもVRゲームは初体験なので、ちょっと楽しみなんだよね!
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古ぼけた洋館の中を、未来的なデザインの短機関銃を装備し4人で進んでいく――突然、前方から身体が半分腐りかけたゾンビ達が現れる!?
ガンガンガン!
「真壁、水無瀬、澪のことをお姫様だと思って守りなさい! 澪が一度でもやられたら、お仕置きだからね!」
銃声が響く中、正面の暗がりから次々に現れるゾンビ達を撃ちながらミアが叫ぶ。
「了解だ! 澪姫を守る!」
「ははぁ、ミアさま、必ずや澪姫をお守りします!」
ガンガンガンガンガン!
真壁くんと水無瀬くんは、通路から溢れてくるゾンビ達に素早く反応し、ノロノロと現れるゾンビ達の頭部を確実に撃ち抜いていく。
ガンガンガンガン!
左右からのゾンビを掃討し終えた2人は、ミアと同じように正面のゾンビ達を撃ち始める――。
まあVRゲームなんだけどね。
ゾンビやらよく分からんモンスターが襲ってくる洋館に迷い込み、脱出を目指すよくあるゾンビモノのゲームなのだが、VRなので異様な迫力があり、魔法少女の戦闘訓練用に1つ欲しいくらいである。
「真壁! 水無瀬! ちゃんと澪を守るのよ!」
「任せろ!」
わたしを中心に、先頭がミア、左側に真壁くん、右側に水無瀬くんというフォーメーションで、そこら中から突然現れて襲ってくるゾンビからわたしを守ってくれている。
「右はオレが守りますから、澪姫は射撃に集中してください!」
「う、うん」
本来は何回死んでも数秒で復活するユルゲーなのだが、ミアが真壁くんと水無瀬くんに『澪が一度でもやられたら、お仕置き!』と宣言してから、妙な縛りプレイになってしまったのだ。
さらに、いつの間にか真壁くんと水無瀬くんから、姫呼びされるように……。
何ていうのコレ? 姫プレイってヤツ?
真壁くんと水無瀬くんが肉壁になってゾンビの攻撃を阻んでくれ、わたしは真ん中で守られながら安全に射撃しているせいか、スコアがどんどん上がっていく。
正面でランボー状態のミアには負けるけど。
「そろそろボスが出てきそうね、みんな注意しなさい!」
「左側は俺が死守する。水無瀬は澪姫の右を死守しろ!」
「言われずとも! 澪姫の右側はオレが守る!」
一定数の敵を倒すと自動的にステージが進む仕様で、ゾンビが途切れたと思ったら洋館の廊下を自動で進み、突き当たりの古びた扉が開いていく。
大きな広間のような部屋に入ると、後ろの扉が閉まり、デカいクリーチャーみたいなのが天井から降ってくる!
「やっつけるわよ! 澪がやられたら、分かってるわね!」
「了解だ、澪姫は俺に任せてくれ」
「ははぁー、ミアさま! 澪姫は、わたくしめが肉壁になってお守りいたします!」
真壁くんはカッコ良く、水無瀬くんはミアに恭しく一礼しながら宣言し、戦闘が始まる――。
――激戦の末、ラスボスを見事撃破し、洋館からの脱出に成功!
死亡数は、真壁くんが8回、水無瀬くんが5回、ミアが3回、わたしが0回。
スコアはわたしが1位、ミアが2位、水無瀬くんが3位で、真壁くんが4位。
ミアとは僅差だったが、なんとか1位を奪取!
地獄の殺戮者を使う魔法少女としてのプライドは何とか守れたようでホっとする……完全な接待プレイだったけどね。
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「ふぅ、澪の脹れっ面がなおってよかったわ。アンタ達、よく頑張ったわね。褒めてあげるわ!」
「澪姫のためなら、あれくらい何でもない」
「ミアさまと澪姫のお役に立てれば、恐悦至極!」
全部、聞こえてるし!
さっきだって、脹れっ面とかしてないし!
いや、この前もミレイユさんにドヤ顔してたとか言われたな……。
もしかして、魔法少女になってから表情筋の制御が上手くできていないのではないだろうか?
うーん、今度鏡を見ながら実験してみよう……。
「でも、脹れっ面の澪姫も可愛かった……」
「グフフッ、そうでゴザルな! またボーリングに誘って、澪姫を曇らせるでゴザルよ!」
「澪をイジめたら許さないわよ!」
うむむ、しかしやはりボーリングのスコアは納得できん。さすがに119はあり得ない!
少し練習して昔のカンを取り戻せば170……いや180はイケるはずだ!
「今回は練習不足だったけど、次は練習して180オーバー楽勝だから!」
「おおー! 澪姫、それは次のボーリングのお誘いですかな?」
「うっ、わたしがちゃんと練習してからだよ?」
「澪姫、お誘いお待ちしておりまする!」
「澪姫、俺もぜひお願いします!」
「2人とも調子に乗らないこと! あたしが居ない時は、澪と喋るの禁止だからね!」
「「了解です」」
うーん、なんだろう。
わたし、どうすればいいですかね?
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そして、わたし的には本日の主目的である駄菓子屋へ向かった――。
「澪、さっきのゾンビ屋敷で1番だったご褒美に、今日は全部あたしが買ってあげるわ!」
「えっ、いいの?」
龍鳳学園特別クラスの生徒にとって、買い物の金額は大した問題ではない。問題は月に30万までという限度額の方だ。
全員が金銭感覚のぶっ壊れた連中なので、あっという間に学園が決めた限度額の30万なんか使い切ってしまう。そのため、重要視されるのが限度枠ってわけだ。
「ふふふっ、澪はあたしの妹なんだから、甘やかされる義務があるわ!」
何じゃそりゃ!?
あ、でも甘やかされる義務とか……なんという心地よい響き!
ずっとミアお姉ちゃんに甘やかされたいです! はい!
そんなダメなことをニョロニョロ考えていると、ミアの宣言に真壁くんと水無瀬くんが反応する。
「澪姫のためなら、俺が全部払う!」
「ミアさまと澪姫のためなら、駄菓子屋ごと買い取る所存でございます!」
それ、生徒に配布されたクレジットじゃなくて、外部からの本格的な買収だろ!
そんな騒ぎをしながら駄菓子屋へ近づくと――。
チラっとこちらを見た店内の生徒達が、赤服の4人組を確認した途端、サァァァッと潮が引くように去っていく。
うーん、G扱いされてるみたいでちょっと悲しい……。
しかし、ここまで効果があると、赤服が複合アミューズメント校舎で何をしでかしたのか興味が出てくるな……。どんなヤバいことしたんだろう?
「良かったわ、空いてるみたいね!」
いや、空いてるんじゃなくて(以下略)。
「澪、ほら見て! この前あんなに買ったのに、チョコスティックが山積みになってるわ!」
「わぁ……!」
明らかにこの前より量が多い。
多分、この前のチョコスティックの異常な売り上げに店側が入荷数を増やしたのだろう。
まさかと思って美味E棒を見ると、チョコスティックと同様、異常に山積みになっている。
いや、1回の売り上げデータでそんなに仕入れたらダメだろ……チョコスティックは多分今日売り切れると思うけどさ。
「凄いわ! 前より断然増えてるわ!? きっとあたしのためにわざわざ入荷してくれたのね。中々見どころがある店だわ! 贔屓にしてあげようかしら?」
いや、まあ本当にそうなんだろうけどさ……。
うーん、チョコスティックは捌けそうだけど、美奈さん用だと思しき大量の美味E棒はどうなるんだろう……。
ミアが嬉しそうにツインテールをふりふりしながら、チョコスティックの棚へ突撃し、問答無用で全てのチョコスティックを確保して荷物係(?)の水無瀬くんへ渡す。
「ミアさま、澪姫、こちらの『ミニラムネ』もおすすめでございますぞ!」
「澪姫、こっちの『カレースナック』も美味いぞ!」
真壁くんと水無瀬くんは、ミアや美奈さんと違って子供のころから駄菓子屋を利用していたとのことで結構詳しい。その上、何か拘りがあるようで、自分のおすすめを教えてくれる。
「ちょっとアンタ達! 澪に触るんじゃないわよ! 澪はあたしと一緒に選ぶの!」
「「は、はいっ!」」
ミアの一喝で、真壁くんと水無瀬くんがビシッと直立する。
遠くから一般生徒達がチラチラ見ているんだけど、何やってんだこの人達……。
そんな中、ミアがチョコスティックを一本手に取り、袋を開けている!?
会計前に開けて食べちゃダメ!
「ミアお姉ちゃん、ちゃんと会計しなきゃ!」
「大丈夫よ、もう支払いは済ませたわ!」
ミアが指さしたレジの方を見ると、いつの間に移動したのか、水無瀬くんが支払いを済ませている!?
さらに、わたしの視線に気づいた店員さんが、ニッコニコでOKマークを出してくれている!?
まあこんだけ購入したらVIP待遇になるか……。
「澪、はい、あーん」
「えっ!?」
「いいから、あーん!」
「んふぁ……っ!?」
何だかよく分からず、ミアに説明を求めようとしたら――チョコスティックを突っ込まれた!?
「………………」
モグモグモグモグモグモグモグ……ゴックン!
うん、美味しい!
軽くてふんわり甘くて、何より食べた時の食感がいいんだよね、コレ!
「ふふっ、美味しいでしょ、チョコスティック!」
ミアが満足そうに微笑むと、真壁くんと水無瀬くんがヒソヒソと話し始める。
「み、澪姫、あざと可愛い過ぎでゴザル! これは動画が撮りたくなるのでゴザル!」
「み、澪姫、可愛い……俺も澪姫にエサやりしたい!」
オイ、小動物を餌付けしてるんじゃないからな!
ミアじゃなかったら食べてないし!
「これも、これもいいわね! 水無瀬のおすすめの『ミニラムネ』に真壁おすすめの『カレースナック』……こっちのよく分からないお菓子も一応買っときましょ!」
ミアがツインテールをぴょこぴょこさせながら上機嫌で店内を歩き回る。
チョコスティックは店にあっただけすでに会計済みで、他にも気に入ったお菓子を片っ端からミアの荷物持ちになった水無瀬くんへ渡している。
わたしも任務中に食べる用の飴玉や、『血の宣誓』の『お帰り会』に持っていけそうなお菓子を探して店内をウロウロしていると……。
「澪姫のお荷物は、俺に任せてください!」
どうやら水無瀬くんがミア、真壁くんがわたしの荷物係に決まったようだ。
「真壁くん、ありがとう。あと『澪姫』は恥ずかしいから、『白銀さん』とか『澪さん』って呼んでいいよ?」
真壁くんが嬉しそうなので、無下に断るのも失礼かなと思い荷物持ちをお願いしたのだが、『澪姫』呼びはさすがに恥ずかし過ぎる……。
「あの、ダメ……ですか? 俺が澪姫って呼んじゃダメですか……?」
えっ、強面の真壁くんが、捨てられた子犬のような悲しそうな顔になっている!?
「え、あ、いや、真壁くんがいいなら別にいいけど……ちょっと恥ずかしいかなって思っただけだから!」
「ありがとうございます、澪姫! よかった……」
うーん、コレ、学校でも澪姫って呼ばれるんじゃないだろうな……?
あまり深く考えないことにしよう……。
そんなこんなで、謎の4人組による駄菓子屋での買い物騒動(?)は幕を閉じたのであった……。
ちなみに、異常に大量入荷されていた美味E棒の半分はわたしが引き取りました。半分だけね――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「えっと、今日は楽しかったよ! 真壁くん、水無瀬くん、ありがとね!」
大量の荷物を抱えながら(真壁くんと水無瀬くんが)、例の『ハンバーガー屋』でダブルデートっぽく楽しく食事をした後、4人は無事(?)特別クラス棟へと帰還。
もちろん、件の全裸身体検査は全員ちゃんと受けたよ?
「アンタ達も、結構役に立ったわ。褒めてあげる! これからも精進しなさい!」
「澪姫とご一緒できて、俺、嬉しかったです」
「ミアさまと澪姫のために働けた僥倖、決して忘れはいたしませぬ!」
丁寧にお礼を言って真壁くんと水無瀬くんと別れ、ミアと2人になる。
「ミアお姉ちゃん、これプレゼント! ミアお姉ちゃんの『ミャアミャア』ちゃんに付けてね。わたしの『ミャオミャオ』ちゃん用の黒ネコちゃんの鈴とお揃いになってるんだよ!」
休憩した時に抜け出して買ったプレゼントをミアに渡す。
この前もらったネコちゃんのぬいぐるみのお返しとして選んだ、白ネコちゃんのキャラクター型の鈴だ。
ぬいぐるみの首輪に付けるのに丁度良いかなと思って買ったのだ。
社会人として、頂き物にはちゃんと返礼しないとね!
ミアに渡したのは、ミアの黒いネコちゃんぬいぐるみ『ミャアミャア』用の白いネコちゃん鈴で、ミアにもらった白いネコちゃんぬいぐるみ『ミャオミャオ』用の黒いネコちゃん鈴とお揃いになっている。
「あ、ありがとう澪! 大事にするからね!」
ミアにギューーーーっと抱きしめられながら、鏡界の戦場から生還した実感を噛みしめたのであった――。
ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると凄っごく嬉しくて、凄っごく励みになるの、是非是非お願いします!




