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52話 帰還、そして……

「え……ええと、本当にルビーさん……ですよね?」


 理解が追いつかず、どう見てもルビーさんなのに間抜けな質問をしてしまう。


「はい、ルビーですぅ。まさかリリナさんが、こんな所に居るとは思わず、かなり探してしまいました……おっと、さすがにBB(ビービー)ランクを1発では無理でしたか。少々お待ちくださいね」


 ルビーさんはレーザーライフルっぽいモノを見事な立射(スタンディング)姿勢で構えると、そのまま照射――。


 キュワンッ!!


 横へ薙ぐように光線が走り、ドンッという衝撃音が山林に響く。

 かろうじて形を留めていた2匹の『六本腕』は、その後ろの稜線ごと消失した!


「うっわぁーー!? 凄いわね……リリナ、誰なのこの人?」


「へ? エルフィーネ、知らないの? 技研の死神博士だよ?」


「ああ、あれが!? へぇ、あたし初めて見るわ!」


「リリナの知り合い? 結構可愛い娘だね!」


 唖然としたエルフィーネさんの問いに、少し顔をしかめながらシルヴァさんが答える。

 ミレイユさんはあだ名だけは知っていたようで興味津々。

 ラティーナは……まあ、平常運転。

 4人とも魔力切れで地面にへたり込んでいたが、表情には明るさが戻っている。


「お待たせしました。どうぞ…………これが、技研製のリリナさん専用スコープですぅ」


 破壊されまくり、煙が立ち上る山林の真ん中で、ルビーさんはニタァ~と笑いながら、背負ってきたジェラルミンケースをメチャクチャ普通の感じで開く。

 中には、長さ50センチ近くのドでかいスコープが収められている。


「技研がリリナさんの地獄の殺戮者(ヘルマーダー)用に製作した、4から120倍の可変倍率スコープですぅ。防水・防塵・耐衝撃・耐熱仕様で、センサーフュージョン(統合感知器)、火器管制システム(FCS)、自動弾道計算機能、さらに照準は気象条件に合わせて自動調整されるのでゼロイン(照準調整)も必要ありません。何より特別なのは、装着しておけば銃と一緒に召喚・送還ができるのです! これは凄い技術なのですよ! フヒヒ、中々の逸品です!」


 おおっ! よく分かんないけど、凄い性能っぽい!

 ……って、ソコじゃない!


 何で!?

 何で今なの!?

 何でココなの!?

 何で、こんな所まで持ってきてくれたの!?


 いや、凄く助かったんだけどさ……データリンクも切れてるような場所に、どうしてわざわざ届けに来てくれたのよ!?


 いやいや、色々疑問はあるが、凄ーーーっく助かったし、わざわざこんな所まで持ってきてくれたんだ。まずは、ちゃんとお礼をするのが社会人としての最低限の礼儀だろう。


「わざわざ、こんな所までご足労いただき、ありがとうございます。ええと、他にも色々お手数をおかけしてしまったようで……凄く助かりました。ありがとうございます」


 ジェラルミンケースごとスコープを受け取ったわたしは、とりあえずルビーさんにペコリと頭を下げる。


「フヒヒ、やはりリリナさんは素直で可愛いですねぇ。これは愛でたくなります」


 頭をポンポンとされた!?

 そういえば、この前も頭をポンポンされたな。ルビーさんて他人(ひと)の頭をポンポンするのが好きなのかな?


 まあ、命を助けてもらった上にスコープまで届けてもらい、さらに以前にはマガジンまでプレゼントしてもらった大恩人なので、そのままポンポンされるままになっておく。


「あの、すいません。状況がさっぱり分からないのですが……『桜華乱舞』作戦はどうなったんですか? よろしければ説明していただけないでしょうか?」


 ルビーさんに状況の説明をお願いする。


「そうですね、まず『桜華乱舞』は昨日の24時に中止になりましたぁ――」


 ルビーさんの話だと、昨日の午前中に神奈川東部から複数のBB(ビービー)ランク魔塊獣(マゴル)に率いられた大量のBランク魔塊獣(マゴル)が、『レイド級討伐隊』の後方を襲撃し、データリンクの中継のために駐留していた魔法少女達がほぼ壊滅。


 この段階で、神奈川東部に進出していた『レイド級討伐隊』は、複数のBB(ビービー)ランク魔塊獣(マゴル)に率いられた大量のBランク魔塊獣(マゴル)達に包囲された状態になってしまった。


 その後、『レイド級討伐隊』は、ベースとのデータリンクを切られ状況を把握できぬまま、BB(ビービー)ランク魔塊獣(マゴル)に率いられた大量のBランク魔塊獣(マゴル)達の奇襲を受け潰走――ということらしい。


「大体ですよ、『桜華乱舞』作戦が発令される前から、BB(ビービー)ランクへの『ランクアップ』現象は確認されていたのですぅ。数か月間放置され魔塊獣(マゴル)が大量発生していた神奈川東部で5日も経てば、『ランクアップ』現象が大量に発生することは予想できたはずなんですけどねぇ」


 ルビーさんは呆れたような表情で頭を左右に振る。


「せめて作戦開始前に相談していただければ、丁寧に教えて差し上げたのですがねぇ。戦略作戦部は、聖導連盟の奇襲を許した失態を取り返そうと焦っていたのでしょう。技研に何の相談もなく作戦を強行したのですよ」


 確かに強制依頼、メチャクチャ急だったもんな。

 色々と組織間の対立はあるのだろうが、大規模プロジェクトを進める時に組織間での『お話合い(根回し)』は必須。


 日本では、これをやっておかないと、思わぬところで足をすくわれるハメになることもある……面倒な話なのだが、これが現実だ。多分、千桜内でも同じだろう。


 逆に、各方面に『お話合い(根回し)』さえしておけば、失敗しても後々挽回可能なのだが……これは確かに焦ったと言われても仕方がないだろう。

 うーん、千桜内部は色々ありそうで、あまり関わりたくないなぁ。


「『桜華乱舞』作戦の中止と同時に、展開中の全『レイド級討伐隊』に撤退命令が発令されました。そして本日06時、AA(ダブル・エー)ランク以上の魔法少女を動員した『落花清域(らっかせいいき)』作戦が発令と同時に発動されましたぁ。現在は、神奈川東部の8割のエリアの魔塊獣(マゴル)討伐が完了していますねぇ」


「ええと、ルビーさんも、その『落花清域(らっかせいいき)』作戦に参加してるってことでしょうか?」


「いえいえ、わたくしは研究職ですから、戦闘は統合参謀本部のみなさまにお任せしております。わたくしは、純粋に依頼されていたモノをリリナさんへお届けにきただけ……ということにしておいてください。リリナさんが行方不明と聞いて、完成したスコープを持って探しに来てしまいました」


 あー、まあ、ようやく完成して納品しようと思ったら、発注元が行方不明とか困るわなぁ。

 分かる、分かるぞ、成果物はあるんだ、売掛金は回収したいよね……でも、どうしよう? 今手持ちがないんだ。戻ってから、強制任務の報酬で払うか……。


「ご心配をおかけしてしまったようで申し訳ありません。その、こんな所までご足労いただいておいて、大変申し訳ないのですが……その、今、手持ちがありませんで、ベースに戻ってからのお支払いということにしていただけませんでしょうか?」


「ああ、その件ですかぁ、そうですね……無料にしてもかまいませんよ?」


 マジか!?

 マガジン買ってくれた時も思ったが、太っ腹すぎだろルビーさん……いやルビーさま!


「その代わりと言ってはなんですが、ネコミミ着ぐるみ(マギスーツ)とは別件で、少々実験にお付き合いしていただきたいのですが、いかがでしょう?」


 じ、実験、実験かぁ。

 聞いた話だと、腕とか脚とかが千切れる実験だよね、多分……。

 マガジンの200万MG(マギト)にスコープ代の100万MG(マギト)、さらに命まで助けてもらった大恩人の頼み……だけど、腕とか脚とか痛そうだよなぁ。


「実は実験的に、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)用のマガジンと弾丸を試作してみたのです」


 どこからかルビーさんが、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)のマガジンと瓜二つの形だが、少しだけ色の違うマガジンを取り出す。


「威力はオリジナルの半分ほどで、使い切りですが、比較的安価に大量の弾丸を確保できますぅ。実験にご協力いただけるのなら、こちらを安定的にお売りすることができますが?」


 マジか!?

 威力は普通の魔塊獣(マゴル)に対して過剰だったので、大量の弾丸を確保できるのであれば、半分程度の威力で何の問題もない!

 問題は……。


「で、でもお高いんでしょう?」


「いえいえ、今回は特別価格! 驚きの1マガジン2万MG(マギト)ですぅ!」


 ルビーさん、意外にノリがいいな。深夜の通販番組とか見るんだ……。

 だが、1マガジン2万MG(マギト)は手ごろな値段だ。予備としていくら持っていても多すぎるということはない。


 マガジンの200万MG(マギト)にスコープ代の100万MG(マギト)、さらに命まで助けてもらった大恩人の頼み……これは人として(人じゃないけど)断れないだろ!


 痛そうだけど、リレッタも千切れた腕がくっついてたし、ここは大恩人のルビーさん(技研製マガジン入手)のために(おとこ)(女だけど)を見せないとな!

 どうせネコミミ着ぐるみ(マギスーツ)の実験も、アンナと一緒に手伝うって言っちゃったし、うむ、覚悟完了!


「分かりました、その実験に協力させてください! その……なるべく痛くないような感じでお願いできれば、いいかなぁ、なんて……」


 (おとこ)を見せる(女だけど)と言っておいて、この軟弱さ。我ながら情けないと思うけど、痛いの嫌じゃん?


「おお、実験に協力していただけますか! 実はですね、この前、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)を試射してもらった時に各種データを計測したのですが、どうもリリナさんの戦果と、計測したデータとに食い違いが出ているのですよ」


 この前、試射した時にデータなんか取ってたんだ!?

 まあ、何もせずに200万MG(マギト)のマガジンはくれないか……。


「魔法具の攻撃力は、物理的な力と魔法的な力、さらに魔法少女の能力、魔法などが複雑に組み合わされて発揮されるのですが、計測したリリナさんの地獄の殺戮者(ヘルマーダー)の攻撃力では、絶対に魔法騎士のチャージアーマーを破壊できるはずがないのですよ。もし、その原因を究明できれば、今の魔法少女の戦闘力は数倍に跳ね上がりますぅ!」


 あー、そりゃ、『フォーサイト』のせいだな。

 さすがに、この焼け焦げて煙の立ち上る戦場跡で種明かしをする気はないし、とりあえずベースに戻りたい。みんなもヘトヘトだし。


「ええと、一度ベースに戻った後でいいでしょうか? みんな魔力切れでヘトヘトなんで……すいません」


「ああ、わたくしとしたことが、失礼しました。それでは、いつでもかまいませんので、リリナさんの都合のいい時に新宿ベースの技研を訪ねてください」


「はい。色々ありがとうございました!」


「フヒヒ、AAA(トリプル・エー)ランク魔法少女がフラフラ出歩くと問題になりますので、すいませんが、先に失礼させていただきます。周辺エリアの魔塊獣(マゴル)は、一掃しておきましたので、リリナさん達はのんびり帰還してください」


 ルビーさんはみんなに『マナ結晶』を1つずつ渡し、さらにわたしには『技研製マガジン』を試供品として1つ渡した後、そのままフワッと浮き上がると、飛んで(・・・)帰っていったのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 『桜華乱舞』作戦7日目、『落花清域(らっかせいいき)』作戦1日目、19時。Y08ベース、第3ブリーフィングルーム――。


 あの後、ルビーさんに貰った『マナ結晶』を使用し魔力を回復。

 山道を下り、滅茶苦茶に破壊されたOD04エリアから海岸沿いを走り抜け、無事Y08ベースへと帰還した。


 あれから分かった状況を説明すると、まず『第11レイド級討伐隊』のAチーム・航空機動部の7人とレニーさんは、飛行偵察中にBB(ビービー)ランク魔塊獣(マゴル)の対空砲撃を受け墜落。


 3人が負傷した状態で複数のBランク魔塊獣(マゴル)による攻撃を受け、神奈川西部方面へ逃走するも、そこでさらに複数の魔塊獣(マゴル)の攻撃を受け、さらに2人の負傷者を出しながらも、藤沢・FJ01ベースへ到着。


 『第11レイド級討伐隊』のBチーム・特殊作戦部の3人は、『落花清域(らっかせいいき)』作戦発動で周辺の魔塊獣(マゴル)が掃討されたのを確認後、自力で脱出して藤沢・FJ01ベースへ到着。

 わたし達Cチームの状況を報告し、救援依頼をしてくれたらしい。


 『第7レイド級討伐隊』のグレース達は、何度も魔塊獣(マゴル)の攻撃を受けながらも強引に移動を続け、2人が死亡するも、グレースともう1人は生きて藤沢・FJ01ベースへ到着……したらしいのだが、死んだ2人は、わたし達の時みたいに囮にされたんじゃないかと勘繰ってしまう。

 まあ、博愛主義者ではないので、ざまぁ案件だけど。


 案の定、グレース達は「わたし達が彼女達を囮にしようとした」と騒いだらしいが、Bチームの証言と、『第7レイド級討伐隊』の特殊作戦部チームの生き残りの証言(わたし達にしたようなことをしていたらしい)と合わせてギルティ判定され、拘束されたとのこと。

 容疑が固まれば、懲罰部隊みたいな所に送られるらしい。


 と、ここまでの話は、目の前ですまなそうな顔をしたレニーさんから聞いたのだが……。

 第3ブリーフィングルームのCチームの5人とレニーさんとの間には、非常に重苦しい空気が漂っていた。


「今回は色々想定外のことが重なり、こんなことになってしまい、本当に申し訳なかった……」


 レニーさんはそう言って頭を下げるが、準備不足で作戦を強行した話をルビーさんから聞いていたわたし達は、『想定外か?』としか思えない。


「「「「「…………………………」」」」」


 レニーさんの謝罪に、全員無言で返事を返す。


 普段から高給取りの航空機動部や特殊作戦部のメンバーと違い、ハッキリ言って安い報酬しかもらえない強制任務に駆り出された挙句、わたし達Cチームだけ別地域へ転戦させられ、引率(?)のレニーさんはわたし達を放置して自分達だけで脱出。

 グレース達や航空機動部の連中には囮にされ、死ぬところを救出してくれたのは、今回の任務とまったく関係ない技研のルビーさん。


 謝罪とかどうでもいいから、正直、早く帰りたい――それがCチーム全員の本音だった。


「それで、報告を聞きたいのだけど……」


「はぁ? 報告は、何時間もかけて(・・・・・・・)タップリしましたよね、取調室で。さすがにもう報告することなんてないですけど?」


 皮肉たっぷりに言ったのはミレイユさん。

 そう、Y08ベースに戻ったのは数時間前。それから取調室で個別報告という名の尋問を何時間も受け、ようやくさっき解放されたのだ。

 グレース達の虚言絡みだとは思うけど、不愉快極まりない。


「結局、追加のマギトは支払われないんですよね? 一般魔法少女は高給取りの方々(・・・・・・・)とは違うんで、早く帰って次の任務の準備をしたいんですけど?」


 半眼でレニーさんを見ながら冷たく言い放ったのはシルヴァさん。

 結局レニーさんに交渉してもらっていた追加マギトは支払われず、わたし達Cチームだけが非道い目にあっただけである。


「まだ何かあるなら、早くしてください。本当に凄く疲れてるんで」


「さすがにボク、疲れちゃったよ! 帰っていい?」


 珍しく冷たい口調のエルフィーネさん。普段優しいだけに、逆に怖い。

 ラティーナも、いつものニコニコ顔なのが逆に怖い。


「んんっ……」


 重苦しい沈黙の中、レニーさんが小さく咳払いをした。


「報告は……あたしの方で処理しておきます。それでは、報酬の件について説明します」


 レニーさんは、申し訳なさそうな表情のまま言葉を続ける。


「今回の作戦におけるCチームのみなさんの活躍は、高く評価されています。Cチームは全員、今回の強制任務において優秀な功績をあげたと評価され、『特別報酬』が支払われることになりました」


「「「「「『特別報酬』!?」」」」」


 みんなから今までの不機嫌さが消え、目を輝かせる。現金なものである。

 まあ、わたしもそうなんだけどね!


「あれ? でもさっき追加のマギトは支払われないって言ってませんでした?」


 残業になったCチームのために追加マギトが貰えるよう掛け合ったけど、結局ダメだったと、さっきレニーさんが言っていたのだ。


「あれは『強制任務の報酬に追加マギトは支払われない』って意味です。『特別報酬』は優秀な功績をあげた魔法少女へのものだから別枠です。まあ『特別報酬』っていっても、そんな大金じゃないから、あんまり期待されても困るんだけど……」


 レニーさんが端末を操作し、部屋前の立体モニターへ金額を表示した。


『Cチーム特別報酬:1人あたり80万MG(マギト)


「「「「「へぇ……?」」」」」


 うーん、微妙な金額だな、オイ。


「本来の強制任務報酬は21万MG(マギト)だけど、あなた達の優秀な功績を評価して『特別報酬』が上乗せされて、この金額となりました」


 まあ、本来の報酬の4倍貰えるのは凄いんだけど、命がけの報酬だと考えると微妙……。

 でも、よく考えたら魔法少女ってそういうモノ(・・・・・・)だという気もして、納得いくような、納得いかないような……凄っごく微妙な金額である。

 ある意味、この金額を決めた人事(?)の人は天才かも!?


「なお、当然だけど、今回の件でCチームのみんなに対しての処罰等は一切ありません。むしろ、今回の行動は『模範的』と評価されています」


「模範的……?」


 エルフィーネさんが不思議そうな顔をする。


「模範的って……わたし達、放置されて、勝手に逃げ回ってただけなんですけど?」


「結果的にだとは思うけど、Bチームの3人を救助し、Cチーム単独でBB(ビービー)ランク魔塊獣(マゴル)1匹と、Bランク魔塊獣(マゴル)3匹を討伐。これは凄い功績よ? あたしの方から、Cチーム全員を千桜功労勲章に推薦しておきます」


 そんな勲章あるんだ。そういえば勲章の話ってどうなったんだろう?

 マギト貰えるなら、勲章くれ!


「本当のこと言うと、Bチームから報告が来た時点で、Cチームの生存確率は『絶望的』と評価されてたの……生きて帰ってきてくれて、本当に、本当にありがとう」


 レニーさんは深く頭を下げた。

 その言葉だけは、素直に胸に響いた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 19時30分。Y08ベース、中央ロビー、カフェスペース――。


 とりあえず、わたし達の強制任務は無事(?)終了!

 1週間留守にしていた現界に戻るための諸々の手続き待ちで、Cチームの4人と中央ロビーのカフェスペースでダベっている。


 身体の方は支給された回復剤で回復済みなのだが、ボロボロの衣装は直っていないので周囲の視線を集めている。

 だが、生存確率が絶望的と評価される地獄からの生還。その高揚感でそんなことどーでもいい状態!


「あの技研の死神博士と知合いとか、リリナすごいね! さすが有名人って感じ! 他にも有名魔法少女に知合いがいたりする? ねえ、教えてよ!」


 シルヴァさんが興味津々といった顔で聞いてくる。有名魔法少女ってなんぞ? しかし、こういうの大好きだよね、この人……。


「有名魔法少女かどうかは知らないけど、お偉いさんだと、特殊作戦部のエミリーさんとは話をしたことあるよ?(あんまり好きになれるタイプじゃないけどな)」


 久々のコーヒーを楽しみながら適当に答えると、ミレイユさんが食いついてきた。


「エミリーって、特殊作戦部長のエミリー!? マジで、お偉いさんと知合いなんだ! もしかして特殊作戦部に誘われたとか? アソコ、メチャ給料いいらしいけど!」


「特殊作戦部って、たしかBランク以上じゃないと入れないんじゃなかったかしら? まあ、Bランクになったとしても、お勧めしないけどね」


「知ってる。給料いいけど、死傷率激高なんでしょ? そんなとこ入らないよ」


「そうだよ! リリナちゃんは、ボクと一緒にいるんだから! あ、ミレイユちゃんに、シルヴァちゃん、エルフィーネちゃんも、みーんな一緒だよ! これからは、ずっとみんな一緒だよね!」


「「「「……………………」」」」


 さて、どうやってラティーナを誤魔化そうかと全員(ラティーナ除く)が視線を絡ませる……あっ、カリアさん発見!


「あっ、カリアさんだ! ゴメン、わたしの担当の生活支援課の人が来たから、行ってくる! じゃあ、またね! カリアさーん!」


 この野郎、上手いこと逃げやがって――という3人の視線を痛いほど背中に受けながら、わたしは久しぶりに会うカリアさんの方へ向かったのであった……。


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