40話 ネコミミ着ぐるみ(マギスーツ)の秘密
鏡界、Y08ベース――。
中央ロビーは、昨日とは打って変わってガラガラだった。昨日の惨劇を目の当たりにして、自分達の力に相当自信のあるレイド組しか狩りに出ていないのだろう。
まだリレッタと約束した時間よりかなり早いのだが、今日はどうしても気になることがあり、早めに変身解除の許可をもらって鏡界へ転移してきた。
気になること――それはズバリ『ニャンニャン動画』である。
何度か耳にしただけの単語だが、聞き逃せない不穏な響きを感じる。
『ニャンニャン動画』と言われて思い当たるのは、例のネコミミ着ぐるみしかない。
あれを着ていたのは現界だ。鏡界にも着て行っていたが、変身解除した状態なので、動画としては映っていない。
つまり、映っているのは『現界のわたし』のはずなのだ。
だが、変身解除している『わたし』に向かって「ニャンニャン動画見たよ」と言ってきた。
完全に個人情報漏洩であり、非常に由々しき事態である!
考えられるのは、変身体のわたしと、変身解除したわたしの両方を知っている人物――つまり、魔法少女研修の関係者しかいない。
勤務部の人達が機密を漏らすとは思えない。
となると、容疑者はおのずと絞られる。
「アンナさん、居ますかー?」
カプセルルームに入って声をかける。
昨日のレイド級魔塊獣との戦闘で負傷者が多かったようで、半分以上のカプセルが稼働中だ。
返事がないので奥へ進むと、眠そうな目をした青髪ショートの白衣の魔法少女がヒョコっと現れた。雰囲気的には……ちょっとアンナに似てる。悪口じゃないよ?
「あのぉ、アンナさん居ますか?」
白衣の魔法少女は無言で、以前アンナと入った奥のドアを指さす。
お礼を言おうとしたが、彼女は無言でサササッと自分のワークスペースへ戻ってしまった。
あの子が治療係っぽい? よく分からんが、とりあえず「ありがとうございましたー」とだけ言って、指さされた奥の部屋へ入る。
「アンナさん……」
アンナは、だらしない格好で床に置かれたエアーベッドに寝そべり、ポテチを食べながらマンガを読んでいた。横にはコーラのペットボトル(大)。
オイっ! 仕事中じゃねーのかよ!?
「おっ、おおっ!」
アンナはフラフラと立ち上がり、珍しく目を丸くして近づいてくる。
「ゆ、夢……じゃない!? ま、まさか、本当に……本当にリリナさんが訪ねてきてくれるとは……あぁ、ああっ! お姉ちゃんは……お姉ちゃんは、本当に嬉しいです……グスっ」
アンナ、涙ぐんでる!?
『ニャンニャン動画』の件を問い詰めて、エクレアでも奢らせようと思ってただけなのに……泣かれると困る。
「ええと、お姉ちゃん、会いたかったよ?」
こないだ『演技でもいい』って言ってたし、ちょっと可哀そうになったので、なだめておく。
「うっ、うううっ……グスっ……リ゛、リ゛リ゛ナ゛ざぁ゛あ゛あ゛っん!!」
まさかの号泣である。
アンナはわたしにギュッとしがみつき、わんわん泣き始めた。
内心、のり塩ポテチのギトギト指で触らないで欲しいと思ったが、マジ泣きしてるので言えず、我慢。部屋中に貼られたわたしのコスプレポスターを眺めながら、落ち着くのを待つ。
「ううっ……グスっ、リリナさん……ポテチ食べます? コーラもありますよ? グスっ……」
ポテチはありがたくいただく。コーラはラッパ飲みしてたっぽいので遠慮。
「えーと、アンナさん大丈夫ですか……?」
「グスっ……まさか、リリナさんが、こんなに頻繁に会いに来てくれるなんて……幸せです……グスっ。せっかくですので、今後は『お姉ちゃん』って呼んでください……グスっ」
ずうずうしいなオイ! 何が『せっかく』なんだよ!?
まあ、いいけどさ。千桜製造の姉妹機(?)みたいなもんだし、そういうのは慣れてるからな……。
「分かったよ、アンナお姉ちゃん……」
ちょっと哀れになったので、これからは(ポンコツ)アンナお姉ちゃんと呼んであげよう。
「フフ、これで私とリリナさんは、コッチでも姉妹ですね……これでリリナさんは逃げられませんからね? フフッ、フフフ……」
なんか目が据わってて怖いよ?
「えーと、仕事しなくて大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。お姉ちゃんのお仕事は、魔法少女の製造と強化なので、製造が終わると仕事はほとんどありません」
「強化のお客さん(?)は結構来るんじゃないの?」
「大体、隣のカプセル室のソフィアがやってくれます。医療課以外でこの部屋まで来られたのは、今までリリナさんだけです」
あの眠そうな娘はソフィアさんか。
そりゃ、普通はソフィアさんに頼むよな。ここに部屋あるなんて普通、知らんだろうし。
「それ大丈夫じゃないでしょ! 職務怠慢でクビになったりしないの!?」
「問題ありません。上層部も理解していますので、雑用に便利使いされています。新造魔法少女の教育任務も普通に許可が下りましたし……ああ、あの時は楽に稼がせていただきました。ありがとうございます」
指導教官は内勤魔法少女の『良いバイト』らしいが、長期間拘束できる人が少ないので、アンナが何度もやっているらしい。
講義は確かに上手かった。他はアレだったけど……。
「でも、ソフィアさんに迷惑かけてない? 大丈夫?」
「はい、忙しい時は手伝っていますし、ソフィアも時々居なくなるので『お互いさま』です」
絶対『お互いさま』じゃない気がする……。
帰りにソフィアさんに挨拶しとこう。こんなんでも一応お姉ちゃんになっちゃったし。
「あ、そうそう、ちょっとアンナお姉ちゃんに聞きたいことがあったんだ」
「『杏お姉ちゃん』も素晴らしいですが、『アンナお姉ちゃん』も素晴らしい響きです。今度、鏡界でも録音できる魔法具を技研に――」
喜んでるっぽい。まあ、安いもんだ。
「ええと、『ニャニャン動画』って知ってる?」
「はい、知ってますよ」
やっぱりコイツか! と思ったが、妙に素直だ。
「あれ、リリナさん怒ってませんか? 『ニャニャン動画』については、お姉ちゃんはまったく悪くないですよ?」
「んー、ちゃんと説明してほしいんだけど……?」
「ええとですね、動画再生用の魔法具を持った技研の魔法少女が来て、『ニャニャン動画』を見せられたんですよ。その後、以前着た時と同じか聞かれたのです――」
アンナの説明によると、技研にネコミミ着ぐるみの記録映像を渡したら、以前のデータと食い違う箇所があったらしく、着用経験者に記録映像を見せて検証させているらしい。
「正直、明確な違いは分からなかったので、『私が着た時より尻尾とかネコミミがよく動くようになってる気がする』と言っておきました」
何だそりゃ。
「他の着用経験者にも検証してもらっていると言っていましたので、ソレを見たのではないでしょうか」
「いや、でもこのベースにいる時に『ニャンニャン動画見たよ?』って言われたんですよ?」
「ん…………あっ!」
アンナも気づいたようだ。
「それはおかしいですね。お姉ちゃんは、あの映像がリリナさんだと知っていますが、他の魔法少女は『ニャニャン動画』の理奈さんが、リリナさんの変身体だとは気づかないはずです」
アンナが言いふらしたのかと思っていたが……冤罪だった。
ゴメン、アンナお姉ちゃん! これからずっと『アンナお姉ちゃん』って呼ぶから許して! と心の中で謝っておく。
「それで、ちょっと聞きたいんだけど……ほら、変身体って髪や瞳の色は変わるけど、容姿自体は変わらないでしょ? 認識阻害が効かない魔法少女っていないの?」
「変身体を見て『人間離れした美少女』だと見抜くことは可能ですが、『同一人物』だと認識できるという話は聞いたことがありません。しかも、リリナさんのトレードマークであるツインテールが隠れているのに、見抜けるなんて考えられませんね」
わたしとしてはツインテールをトレードマークにしたつもりはないんだけど……まあ、いいけど。
「これは、結構な問題です。技研に行ってみましょう!」
アンナが言い放つ。
「それはいいんだけど、まずギトギトの手を洗って、服に付いたポテチのカスを綺麗にしてからね?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
技研の魔法少女に話を聞けば何か分かるかもしれないと、アンナに連れられて技研の部屋へ向かう。
あ、ソフィアさんにはアンナと一緒に挨拶してきたよ。狙撃の待ち時間にでも食べようと持ってきた駄菓子屋のアメを渡したら、ちょっと喜んでた。次はちゃんとした物を持っていこう……。
「ここですね」
「うーん、何かボロくない?」
この前アンナと行った任務課の部屋は広くはなかったが、ちゃんと『仕事場』という雰囲気だった。だが、この技術研究部はさらに狭く、何というか……物置っぽい。
色々な資材が雑然と積まれ、わずかに空いたスペースに置かれた小さな机に、金髪を一本の三つ編みにした魔法少女が座り、文庫本(鏡界は電子機器が使えないので紙の本が主流)を読んでいた。
「あの?」
「なに?」
金髪三つ編みさんは、文庫本から視線を移さず、面倒くさそうにボソッと返事をする。
まあ、技研は客商売じゃないし、こんな対応だろう。
「あの、ネコミミ着ぐるみの件で少々ご相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ん……? あ、ああ! あの被験者の方ですか! 色々検証していただいたみたいで、技研も助かりましたよ! 『ニャン』を1回言ったらどうなるのかとか、分かりやすい検証方法だって技研のチーフが褒めてました! 今日は留守番ローテーションでたまたまココに来てるだけなんですが、私、あのネコミミ着ぐるみプロジェクトのメンバーなんです! おかげで、以前のネコミミ着ぐるみから効果が変質しているのが確認できたので、再度教育課から借り受けて、今いろいろ実験しているところなんです!」
わたしがネコミミ着ぐるみの装着者だと認識した途端、不愛想だった金髪三つ編みさんが急に饒舌になった……。
「えっと、それでですね――」
簡単に事情を説明すると、元々興奮気味だった金髪三つ編みさんの顔がさらに赤くなり、鼻息まで荒くなっていく。
「それは素晴らしい! こんなことしていられません! 今すぐ技研の本部に行きましょう!」
「「えっ!?」」
わたしの話を聞いた金髪三つ編みさんは、爛々と目を輝かせながら立ち上がり、強引にわたしとアンナの手を引いて歩き始めた――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
新宿ベース、技術研究部・一室――。
Y08ベースの技術研究部の部屋から、転移装置を使って新宿ベースの技術研究部の一室に連れ込まれるまで、わずか15分程。金髪三つ編みさんの強引過ぎる早業である。
アンナと2人、応接室っぽい部屋に通されてしばらく待っていると、ツンツンと跳ねた赤髪ロングに、赤と白の可愛らしい魔法少女衣装の上から白衣を羽織った、少し垂れ目で優しそうな美少女……。
なのだが……その紅い瞳は爛々と輝き、明らかに普通と違う『マッド』な気配を漂わせている魔法少女が現れた。正直な感想、『ヤバそうな魔法少女キターーー!』である。
「いやぁ、今、ネコミミ着ぐるみの記録映像を見たことがない者に視聴させてるんで、もうちょっとだけお待ちくださいねぇ。ああ、わたくし、ルビーと申します。よろしくお願いいたしますねぇ」
そう言って笑顔を浮かべる……のだが、擬音で表すなら『ニタァ~』。
かなり怖い。
しかも、いつか会った某腹黒エミリー嬢と同レベルの強烈なプレッシャーを放っているので、できれば今すぐ帰りたいレベル!
アンナなんて、わたしの袖口を掴んだまま黙って下を向いているし……。
「髪も目も衣服まで全部赤いから『ルビー』とか、センスを疑うネーミングですがぁ、まあ名前は選べないので笑ってやってくださいぃ、フヒヒ」
いや、見た目は優しそうな美少女なんだよ?
でも、ネットリ絡みつくような喋り方と笑顔が、正直めっちゃキモい……。
背筋にゾゾゾッと震えが走るレベル!
「失礼します。今、ネコミミ着ぐるみの記録映像の視聴が終わりました」
ルビーさんと同じような雰囲気の白衣の魔法少女が入ってくるなり、わたしを見て目を見開く。
「被験者の証言通りです! ネコミミ着ぐるみがメタルチョーカーの認識阻害機能を完全に無効化しています!」
「ほぉ、キミには被験者がどう見えるのか説明してくれないかねぇ?」
「はい。髪色、瞳の色、肌の色、服装が違うだけで、完全に同一人物に見えます。間違いありません! 認識阻害機能どころか、認識低下機能も発現していません!」
「ふむ、ふむ、これはどうだねぇ?」
ルビーさんが傍らから、わたしがネコミミ着ぐるみを着てニャンニャンポーズを取っているポスターを取り出し、広げて見せる。
ちょっ、まっ、何でそんなもん持ってんだよ!? 恥ずかしいからやめてぇ!!
「ネコミミ着ぐるみの記録映像と同じですね。そのポスターの被験者も、そこにいる被験者の色違いにしか見えません。記録映像だけの現象ではなく、別媒体でも認識阻害機能を完全に無効化しています」
「なるほど、なるほどぉ! これは素晴らしい! 魔法具の機能を無効化する魔法具はいくつかありますが、どれも大型のものです。ネコミミ着ぐるみの研究を進めて、どの部位の機能なのか特定できれば、色々な使い道がありそうですねぇ」
えーーと、なんかすごい大事になってるんですけど……。
というか、やっぱり。ネコミミ着ぐるみ着てる画像だけ、やけに他人の注意をひいてたみただから、おかしいと思ってたんだ。
「ああ、現界に出回っているネコミミ着ぐるみの画像・動画類は全て回収するように、外事部に事情を説明してお願いしておいてください。フヒヒヒ、これは楽しみですねぇ。久しぶりに楽しい研究ができそうですぅ」
そのキモい笑い方、怖いからやめてほしいんですけど……。
とはいえ文句を言えるはずもなく、適当に愛想笑いを浮かべる。
「あ、あのぉ、わたし達はそろそろ帰ってもいいでしょうか?」
「うーん、そうですねぇ。今回の件について、第帰三者への開示・口外を禁止する守秘義務契約書にサインしていただいた後、今日は帰ってっていただいてもかまいませんよ?」
「は、はあ……」
「また、ネコミミ着ぐるみの件でご連絡することがあると思います。その時はご協力くださいねぇ?」
「あ、あ、あの、私は付き添いで来ただけなんで、私の協力とかは必要ないのではないでしょうか……?」
ポンコツお姉ちゃん、自分だけ逃げようとしてるな!?
逃がすものか!
「アンナお姉ちゃんとは一心同体なんで、協力する時は2人一緒でお願いします!」
「えっ……ああっ、ううっ」
「もちろん、勤務部医療課マギドール整備・製造係のアンナさんにもご協力願いますよぉ。あなたもネコミミ着ぐるみを着用した経験があるのでしょう?」
「うっ、あうぅぅ……」
「はい、一心同体のアンナお姉ちゃんと2人で協力させていただきます。ああ、もちろん協力の報酬はマギトで頂けるんですよね?」
どうせ協力させられるなら、毟れるだけ毟っとく!
これがわたしのジャスティス!
「フヒヒ、いいですねぇ、あなた。わたくし、そういう性格好きですよ? 分かりました、相応のマギトを用意しておきましょう」
マギトを貰えれば、ネコミミ着ぐるみの研究に協力するのはやぶさかではない。
ネコミミ着ぐるみを着てニャンニャン言ってる恥辱映像を知らない連中に研究材料として視聴されるという、人生最大級の辱めを受けた後なので、もはや『もう何も怖くない!』状態である。
「そういえば、リリナさんは、地獄の殺戮者という強力な魔法具をお使いになるとか。ぜひ1度、拝見したいと思っていたのです。よろしければ、拝見させていただけないですかねぇ?」
よく知ってるな……と思ったけど、一応、今のわたしって千桜内では有名魔法少女なんだっけ?
減るもんじゃないし、別に見せるくらいならいいけど。
「いいですよ。じゃあ召喚しますね?」
ルビーさんとアンナの前で、小恥ずかしい召喚呪文(これはもう慣れた)を唱え、地獄の殺戮者を召喚する。
「リリナさんの魔法具は、召喚時に魔法発動光が発生しないのですねぇ。珍しいです。ふむ、今後は魔法少女の基礎データを記録する際に、チェック項目を増やしていただきましょう。ええと、リリナさん、少し触らせていただいてもよろしいでしょうか?」
紅い瞳を爛々と輝かせ、興味津々といった様子でズイッと顔を近づけてくるルビーさんに、思わず仰け反ってしまう。
「ど、どうぞ……」
地獄の殺戮者を渡すと、まず全体をじっくり眺め、次に構造を確かめるように触り、可動部分を動かしたり、マガジンを外して覗き込んだりしている。
「これは、もしかして魔力を込めずに動作するのではないでしょうか?」
おお、さすが技研の人。リレッタにしか言ってなかったことを見抜いたな。
「そうです。攻撃に弾薬を消費しますけど、魔力は一切消費しません。その代わり、3発入りのマガジン1つが200万マギトもするんですけどね」
「それは、さすがに弾代が賄えないのではないでしょうか?」
「ああ、大体1晩経てばマガジン内に勝手に再装填されてるので大丈夫です。ただ、1日に持ってる弾分しか撃てないので……今ですと1日9発撃つのが限界ですね」
「なるほど、最初に巨額の投資が必要というわけですか。魔力を消費しないのであれば、他の魔法少女がこの魔法具を使用することも可能なのではないでしょうか?」
それは考えたことがなかった。
普通の兵器っぽいから、可能……なのかなぁ?
「どうですかね? わたし以外の魔法少女が撃てるかどうかは分かりませんね。考えたこともありませんでした」
「射爆場があるのですが、試射させていただいてもかまいませんかねぇ? ああ、お時間は取らせませんよ、ほんの10分ほどです」
「あー、すいません。これから狩りに行く予定なので、弾薬を消費したくないんですが……」
「それはごもっとも。ならば、そうですねぇ……もしご協力いただけるのであれば、わたくしのポケットマネーから200万マギトお支払いしましょう。それでいかがですか?」
えっ、1発撃たせたら1マガジンくれるの!?
やるやる! やります!
「そういうことでしたら、ぜひご協力させてください! できれば先払いで!」
「フヒヒヒ、もちろんですよ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうですか、この覆道射爆場は? なかなかのものでしょう?」
ルビーさん、その他の技研の魔法少女達と一緒に案内されたのは、技研の部屋の奥にある、コンクリート(?)で囲まれた射撃場だった。向こう側にはブルズアイターゲットが並び、距離は400mほどありそうだ。
新宿ベースの地下どうなってんだよ?
思っていた以上に新宿ベースは広いのかもしれない。まあ千桜の本拠地だし、Y08ベースと比べること自体が間違ってるか。
「では、魔法具をお借りしてもよろしいですか?」
「はい、どうぞ。バイポッドとか使います? 反動が結構あるので注意してくださいね? 射撃姿勢とか分かります? ああ、ボルトを引いて弾を装填してから撃ってくださいね?」
ルビーさんは200万マギトをポンと支払えるマギト持ちである。懇意にしておいて損はない。というか、懇意にしてほしい。
えっ、マッドな気配とか強烈なプレッシャー? マギトの前では抵抗は無意味なのである!
「ご心配ありがとうございます。まあ、大丈夫でしょう」
隣に立ったルビーさんは、わたしより頭ひとつ分くらい背が高く、(見た目だけは)女子大生の優しいお姉さんって感じだ。
後方組にしては結構強化していそうだが、地獄の殺戮者の異様な大きさはどうしようもなく、小さな女の子が巨大な銃を振り回すアニメのような絵面になっている。
ルビーさんの立射姿勢は様になっている。というか、わたしより上手そうだ。銃身もブレず、巨大な地獄の殺戮者をしっかりホールドして構えている。
「撃ちますね」
カチッ。
どうやら不発(?)のようだ。
ルビーさんは再装填してもう一度引き金を引くが、やはり発砲しない。
「これは、わたくしが使用するのはムリそうですねぇ。すいません、リリナさん、1発撃ってみていただけますか?」
さっき不発だった弾丸をマガジンに戻し、わたしが撃つと普通に発砲できた。
ルビーさんは薬莢をつまみ上げると、懐から片眼鏡を取り出し、しげしげと眺める。
「銃の発射機構は、現界のボルトアクションライフルと同様のもののようですねぇ。おそらく、弾の推進薬に相当する物質が、リリナさんの魔力に反応する特殊な物質で構成されているのでしょう。魔法少女の召喚する魔法具は固有魔法具なので、こうなる可能性は高いと思っていました」
え、撃てないと思ってて200万も払ってくれたの?
その……なんか悪いな……。
「なんか、すいません。でも、もうマガジン買っちゃったので200万はお返しできませんよ?」
わたしグッジョブ!
ルビーさんに200万もらって、すぐマガジン買っておいてよかったぜ!
「フヒヒ、大丈夫ですよ。撃てれば最高でしたが、撃てないという事実が分かっただけでも実験した意味がありますからねぇ。しかし、狙撃銃なのにスコープとかは付けないのですか?」
「ああ、スコープは1000万マギトもするんですよ。金銭的にしばらくはムリですね」
「それは高額ですねぇ。ふむ、実験に協力していただくお礼に、その銃のスコープを技研で安くお作りしましょうか?」
マジで!? そんなことできんの!?
「ああ、もちろんリリナさんがショップ機能で購入する固有魔法具のスコープと比べると、性能はかなり劣ると思いますがね。費用は……そうですねぇ、100万マギトほどでしょうか?」
スコープ欲しい!
1000万マギトのスコープまでの『つなぎ』として使うから、今すぐ欲しい!
あー、でも全部マガジン買っちゃったから、マギトねぇわ。
「お願いします! ああー、でも今、100万マギトも手持ちがないです……溜まってから、あらためてご相談させていただけますか?」
今の状況なら、100万くらい、リレッタと狩りをすればすぐ貯まるだろう。
「お代は後でかまいませんよ。製作にはそれなりに時間がかかりますので、早速製作に取り掛からせましょう。フヒヒ、リリナさんは最近では珍しい誠実な魔法少女ですねぇ」
ルビーさんに頭をポンポンされたが、スコープが手に入るなら全然OKだぜ!
好きなだけ頭ポンポンしてくれ!
そんなこんなで、ルビーさんの伝手でスコープを作ってもらえることになったわたしはホクホク顔で守秘義務契約書にサイン。
『ニャンニャン動画』から思わぬ大事になってしまったが、目標だった12発の確保もできたし悪くはなかった。
ニコニコ顔のわたしの袖をつかんだまま、トボトボと歩く死んだ目のアンナを連れ、Y08ベースへ戻るのであった。
あ、今回は契約書の隅から隅まで、入念に目を通してからサインしたよ?
あの……で、できればでいいんですけど、ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると、凄っごく嬉しいかなって……あ、いえ、面倒くさいなら全然いいですから! でも……できればでいいんで、お願いします!




