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30話 クラスメイト

 ミアと机をくっつけ(ろと命令され)て、仲良く(?)雑談(ミアって凄っごいお喋りで、一方的に話しを聞かされ続けた)しながら一応(・・)授業(数学だった)を受ける。


 JCとキャッキャウフフってこんな感じなのか??


 授業の最後に例の真面目系イケメン君が号令をかける。わたしも「起立」一緒に立ち、「礼」で礼をし、「着席」で席に着く。日本の6・3制で身体に刻み込まれた本能が、自然に号令に従ってしまうのである。教育って大事だよね?


「別に、そんなことしなくていいのに?」


「アニメとかマンガで見て、やってみたかったんだ」


 ミアの突っ込みに、用意していた言葉で答える。


 身体が弱く、ずっとサナトリウムで暮らしていたため学校に通ったことがなく、マンガやアニメで見た学校という場所に強い憧れを抱いていた……という設定(・・)なのだ。


「ふーん。澪がしたいなら、別にいいけどさ」


「こんにちは。ボクは、久遠(くおん)ソラ。よろしくね、澪ちゃん」


 突然話しかけてきたのは、ミアの前方に座っていた爽やかイケメンだ。挨拶だけでもキラキラ星が舞いそうな眩さがある。


「はい、よろしくお願……」


「コッチくんな、クズ!」


 わたしの言葉を遮ったミアが、爽やかイケメンこと久遠くんを口汚く罵った。


「?」


「コイツ、見た目はいいけど中身クズだから、澪は近づいちゃダメだからね!」


「酷いなぁ、ミアちゃん」


 ミアに口汚く罵られても、久遠くんは爽やかな笑顔のまま、あたりにキラキラと星を振りまいている。


「アンタのせい(・・)で、あたしまでこんな所に来るハメになったんでしょ!  澪、コイツね、前の学校で女の先生や女の子に色々手ぇ出して、隠しきれなくなってココに飛ばされたのよ!」


 ミア達が通ってたなら、それなりの名門校なんだろう。そんな名門校に通ってる女の子なら、それなりの家の子なわけで……そりゃ隠しきれなくなるわなぁ。


 それより、色々な女の先生(・・・・・・・)ってどういうことよ!? そっちのが気になるわ! 犯罪案件じゃねーか!


「あたしはコイツの従妹ってだけで前の学校に居場所がなくなって……結局、親族会議であたしまで一緒にココに飛ばされることになったの!」


 それはご愁傷さま……あ、それ言っちゃってよかったの!?


「えっと……家同士の揉め事になるから、プライベートのことは話しちゃダメなんじゃなかったっけ?」


「はぁ? 澪って本当に箱入りのお嬢様ね。『家同士の揉め事』なんてただの建前よ。龍鳳学園(ココ)に来られる家なんて限られてるんだから、学年と見た目の特徴さえ言えば、家の人間がそいつの素性なんて一瞬で割り出すわ。問題が起きた時に『うちは関係ありません』って言い張るために、普段は知らないフリしてるだけなの」


 そ、そうなの!? 真面目に信じちゃってたよ……。って、もしかして、わたしの素性もバレてる!?


「あ、澪は三枝の関係者だってところまでで圧力がかかったわ。それで『揉め事は起こすな』ってわざわざお父さまから連絡がきたの。澪が(スール)になってくれてよかったわ!」


 揉め事は起こすなって言われててあの態度(・・・・)だったのかよ! 友達少なそうなタイプだなぁ……。


 だけど、わたしの転入手続きしたのっていつだ? 調べるのメチャクチャ早くない!? 超上級国民怖っ!


「ということで、アンタは絶対、澪に手を出さないこと! 三枝と揉めたら、今度こそ海外送りよ! しかも欧米じゃないトコ!」


 ミアはそう宣言すると、元祖ツンデレツインテール娘らしく、ビシッと久遠くんに指を突きつけた。拍手したくなるほど見事なツンデレ娘っぷりである。


「フフ、ボクだってそれくらい分かってるさ。クラスメイトとして澪ちゃんに挨拶しに来ただけだよ。澪ちゃん、ミアが色々言ってたけど、ほとんど誤解だからね?」


「早くアッチ行け! 澪に近づくな!」


 ミアが『シャーッ』と尻尾を逆立てているのが見えるような勢いで怒りまくっている。


「澪ちゃん、ずいぶんミアに気に入られちゃったね。ミアって、かなり面倒くさい子だから、今度ミアの上手い扱い方を教えてあげるよ」


「うっさい! 早くむこう行け、クズ!」


「じゃあね澪ちゃん。また今度、ゆっくりお話ししようね!」


 ミアに『シッシ』と手を振られながらも、久遠くんは最後まで爽やかな笑顔でキラキラを振りまきつつ去っていった。


「澪は世間知らずのお嬢様なんだから気をつけなさい! アイツ、口は上手いけど絶対騙されちゃダメよ! 見た目は良いけど、中身はクズ……いえ、野獣よ! 何人の女の子がアイツの毒牙にかけられたか……。澪のことは、あたしが守ってあげるからね!」


 いや、世間知らずでも、お嬢様でもないんですけど……。


 まあ『女を食いまくる爽やかイケメン』と『元祖ツンデレツインテール娘』なら、『元祖ツンデレツインテール娘』が圧勝なので、ミアについていくことにする。


「うん、ありがと、ミアお姉ちゃん!」


 こういうのは杏との魔法少女研修でバッチリ習得済みだぜ!


「くぅっ……!? あ、あたしに任せなさい! 澪には指一本触れさせないからね!」


 ツインテールがふりふり揺れて、ミアお姉ちゃん、メッチャ嬉しそうである。このチョロイン感、少し心配になるレベルだ。


「初めまして。クラスメイトとして、自己紹介をさせていただきたい」


 久遠くんが去るのを待っていたかのように声をかけてきたのは、例の真面目系イケメン君だった。


「何よアンタ!」


「私は、東雲(しののめ)レイ。白銀さん、今後はクラスメイトとしてよろしくお願いします」


 真面目系イケメン君こと東雲くんは、ミアを完全にガン無視して、まっすぐわたしに話しかけてくる。


 特別クラスでは、一番まともそう(・・・・・)な人だし、知己を得ておいて損はないだろう。


「初めまして。白銀澪と申します。こちらこそ、今後はクラスメイトとしてよろしくお願いします。学校に通うのは初めてで、至らないところもあると思いますが……色々教えていただけると嬉しいです」


 立ち上がると、そう言って頭を下げる。


「ああ、よかった。ようやくまともなクラスメイトに巡り合えました。授業の前後の号令さえまともにできない、礼儀知らずの愚か者ばかりで辟易していたのです」


「はぁ? 誰が礼儀知らずの愚か者なのよぉ?」


 立ち上がったミアが、チンピラのように東雲くんを下から見上げ、ガンを飛ばす。


「何か分からないことがあったら、学業のことでも私的なことでも、何でも遠慮なく聞いてください。これは私のIDです。直接言いづらいことがあれば連絡ください」


 東雲くんはミアを完全にガン無視したまま、スっとメモを差し出してくる。ミアが邪魔するように手を伸ばしてきたが、ササッと受け取ってしまう。これは良い情報源をゲットだぜ!


「はぁ? アンタも澪に手を出そうっての?」


「では、今日はこれで」


「なに無視してんのよ!」


「はい、ご丁寧にありがとうございました」


 自分の席へ戻っていく東雲くんに、ガルガル言ってるミアを宥めながら席へと戻る。


「澪は、ああいうのが好みなの?」


 頬をふくらませたミアが、不機嫌そうに聞いてくる。


「マンガで見た学級委員みたいだなって」


「マンガで見たって……そういえば、学校に通うのは初めてって、どういうこと? あっ、言いたくなかったらいいけど……」


 よし! 少しくらいプライベートのことを話しても大丈夫そうだし、苦労して覚えた設定(・・)を披露するか!


「――――――で、ようやく元気になったんだけど、わたしのことを心配したお爺さまが、安全な学校を探してくれたんだ」


「安全って……まあ、30センチ砲の直撃に耐えるベトン製の壁で囲まれてるから、安全って言えば安全だけど……」


 30センチ砲の直撃に耐えるベトン製の壁って、そんなに有名なの!?


「気軽にショッピングにも行けないし、顔を合わせるのは特別クラスのどうしようもない連中ばっかり。お金だって学園から支給されるカードで月30万ぽっちしか使えないし、ちょっと広い刑務所って感じだよ?」


 月30万支給されて文句言うな! でも外出できないのは、中学生くらいの子には確かに辛いかもな。わたしは全然平気だけど!


「わたしは、ほら、ずっと山奥のサナトリウムにいたから、全然平気だよ」


 と、そんな話をしていると、ふと他のクラスメイトに挨拶をしていなかったことに気づく。社会人経験者として、まさかの失態である。どんな相手でも、ちゃんと挨拶さえしておけば意外に良い関係を築けるものなのだ……限度はあるけどね。


「あっ、他のクラスメイトの人に挨拶してくるね?」


「いらないわよ、そんなの! みんなどうしようもない連中ばっかよ?」


「あはは、行ってくる!」


 まずは一番近く、教室中央後ろに座っている不良っぽいガタイの良い男子のところへ向かう。


 不良クンは腕を組んだまま、ギョロリと近づくわたしを睨んでくる。強面の不良顔だが、よく見ると意外に顔立ちは整っている。


「初めまして、白銀澪です。今日からよろしくね?」


「ふんっ……」


 不良クンはわたしの挨拶に鼻を鳴らしただけだ。まあ、ガン無視されても挨拶だけはしようと思っていたので、反応があるだけでもありがたい。


真壁(まかべ)リクトだ……」


 さすがに良い所のお坊ちゃんだから教育はされているのか、不良っぽいくせに名乗るだけは名乗ることにしたようだ。まあどうせ偽名だしな。


「真壁くん、よろしくね!」


「あ、ああ……」


 ん? んん? 真壁くん、ちょっと顔が赤い!? フフフ、小悪魔ツインテールの澪ちゃんの魅力にメロメロになってしまったな! でもゴメンね、中身はアレな魔法少女なんだ……。


「じゃあね、真壁くん!」


 良心がちょっと痛むが、ニッコリ笑顔を真壁くんに見せてから、次へと向かうことにする。廊下側の後方の席でタブレットを操作しているデ……恰幅のいいメガネの男子だ。


「初めまして、白銀澪です。今日からよろしくね?」


「ん、ああっ……ん? んんっ!? おお、ツインテールっ娘が分裂してる!?」


 面白いことを言うデ……恰幅のいいメガネである。


「あはは、違うよ。ミアちゃんとキャラ被りしちゃってる白銀澪です。よろしくね!」


「お、おおお……光のツインテールっ娘だ! 闇のツインテールっ娘、ミア様の汚らわしいゴミを見るような視線もゾクゾクするけど、光のツインテールも別の意味でゾクゾクするぅぅ!!」


 見た目通りにヘンタイだった。別の意味ってどういう意味か聞いてみたいような、聞いてみたくないような……。


「そういうことは、思っても口に出して言わないほうがいいと思うよ?」


 元社会人としての忠告だ!


「なるほど……確かに! ああ、澪ちゃん知ってた? ずーーーーーっと1人でいると、頭の中で考えているのか、独り言を言ってるのか、区別がつかなくなっちゃうんだよ?」


 マジか!? 1人でいるのって怖えぇな!


「孤独って怖いんだね? ずーーーーーっと1人にならないように気をつけるよ。とりあえず、今日からよろしくね?」


「おおぅ、了解! オレは水無瀬(みなせ)カイ、偽名だけどね。澪ちゃん、よろしく!」


 と、デ……恰幅のいいメガネは、ニコっと笑ってサムズアップ! オタク陰キャだと思ったら意外にノリがいい。結構話しやすそうかも?


「うん、じゃあねー!」


 次はメカクレ系少女のところだな。


「初めまして」


 ひたすら文庫本を読み耽っているメカクレ系少女の正面に回り、静かに声をかけると、ゆっくり顔を上げてくれる。やっぱり前髪で完全に隠れていて目は見えないけども。


「白銀澪です。今日からよろしくね?」


「………………」


「ゴメンね、読書の邪魔しちゃって。じゃあね?」


 まあこのタイプはこんな感じだろう。反応があっただけでも、よしとするか。


羽音(はねおと)……ユナ……です……」


 おお、小さいけど可愛い声! ちゃんと自己紹介してくれたよ!


「羽音ユナちゃんね。今日からよろしくね!」


「よ……よろしく……お願いします……」


 よっしゃミッションコンプリート! これで全員に挨拶は済んだ。どうせ今後も挨拶くらいしかしない関係だろうから、こんなもんでいいだろ。


「ミアお姉ちゃん、お待たせ!」


 頬をふくらませたミアの元に戻ってそう言うと、一瞬で機嫌がよくなり、ツインテールがふりふり揺れる。


「あんな連中に挨拶なんかしなくていいわよ? 澪が汚れちゃうわ!」


 何だそりゃ。


「新参者はみんなに挨拶しなくちゃいけないらしいよ? マンガに描いてあった」


「本当に澪はマンガ好きねぇ」


 ボロが出た時や想定外のアクシデントがあった時は、全部マンガやアニメのせいにするというのは、当初からの計画なんだよね!


「ねえ、ミアお姉ちゃん、IDの交換しない? わたしずっと1人でサナトリウムに居たから、こういうの憧れてたんだ!」


 学園から支給されたスマホを取りだす。東雲くんのIDは貰ったのに、ミアのIDがないというのも不自然でしょ。


「あー、ソレね。学校側に全部データ抜かれてるから、みんな使ってないよ。下手にログが残っちゃうの嫌だしね。あんなの使ってるの、あのマジメぶったキモ男くらいじゃないかなぁ」


 まさかのID交換拒否!?


 わたしとしては、機密データを扱うわけでもないし、データを抜かれたところで大した問題じゃないと思うんだけど……思春期真っ只中の中学生にとっては、そういうのって許せないラインなのかもしれない。


「そうなんだ? じゃ連絡とかどうしてるの?」


「今までは別に必要なかったけど……澪とは連絡とりたいわね。方法は考えておくから、ちょっと待ってなさい。それより次の休み時間、レストランに行くわよ! 美味しいパフェがあるの。ここ、食べ物だけは本当に凄っごく美味しいんだから!」


「ホント!? 楽しみー!」


 よし! 今度こそ今日のJCターンは終了ーー!


星名(ほしな)ミア :元祖ツンデレツインテール娘

久遠(くおん)ソラ :女を食いまくる(?)爽やかイケメン

東雲(しののめ)レイ :真面目系イケメン君

真壁(まかべ)リクト:純情(?)不良

水無瀬(みなせ)カイ:デ……恰幅のいいメガネ

羽音(はねおと)ユナ :メカクレ系文学少女

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 あの……で、できればでいいんですけど、ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると、凄っごく嬉しいかなって……あ、いえ、面倒くさいなら全然いいですから! でも……できればでいいんで、お願いします!

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