25話 魔法少女研修9 魔塊鬼(マゴル)との戦闘
新宿ベース、転移装置ルーム――。
メタルチョーカーを操作して光に包まれると、一瞬で新宿ベースの転移装置ルームへと転移される。
もちろん変身解除して、黒い軍服風の魔法少女の衣装だ。変身解除したら語尾のニャンが消えたので、あの呪物の呪いは現状解除されているっぽい!
さらに祈りが天に通じたのか、杏は研修所でお留守番。別の魔法少女が付き添ってくれるらしい! となれば、少しはヤル気も出てくるというもの。
キョロキョロしていると、すぐに2人の魔法少女が近づいてくる。
1人は、わたしより明るい金髪をショートカットにして、白とライトブルーの可愛らしい魔法少女衣装を着たエメラルド色の瞳をした女の子。
もう1人は、白に赤いメッシュの入ったロングヘアーで、パンクっぽい感じの衣装を着て、どっかで見たような尖がったサングラスをかけた女の子だ。2人共わたしより10cm以上背が高く、杏と比べるとかなり頼もしい感じ。
でも、わたし1人に付き添いが2人も居るって、やっぱりVIP扱いってことなのだろうか? 話題の人っってこともあるだろうし、意外に結構大切にされてるのだろう。ベテランが2人もいれば、魔法騎士が襲ってきても逃げるだけならなんとかなりそうだしな。
「こんにちは、今日のOJTの付き添いをするラナです。よろしくね」
「初めまして、リリナです。今日はよろしくお願いします」
金髪ショートカットの女の子と笑顔で握手を交わす。いいね、普通の人っぽい。
「あたしは、あんたの着てるネコミミ着ぐるみの担当官のルースだ。貴重な魔法具なんだ、傷つけないようにしてくれよ」
どうやら、白に赤いメッシュのパンク系の子は、あの呪物の担当らしい!?
確かに語尾に強制的にニャンが付くとか、現界で排泄しなくていいとか、他にも何かありそうだったし、普通のモノじゃないとは思ってたけどさぁ……そんなモン着せるなよ!!
「ルース、ネコミミ着ぐるみって、あのヘンな娘……アンナだっけ? が着たやつだよね。アレって確かちょっと前に技術研究部に引き渡されたって聞いたけど、勤務部に戻ってたの?」
アンナ、やっぱりヘンな娘扱いなんだ……。
「ついこの前返却されて鏡界で保存されたんだが、このツインテールがアレをどうしても着たいって言いだしたらしいんだよ。あたしはよく分かんねーけど、ぜひ見たいってヤツが教育課の中に結構いてさ、記録動画が必要だってこともあって、着用許可が出たんだよ」
着たいって言いだしたって、渡されたカタログから選んだだけだし! って、えっ、なに記録動画って!? なに? 何がどうなってんの!?
「じゃあリリナさんって、今アレを着てるってこと?」
「そういうこと。アレを着た状態で変身解除した記録動画が必要なんだってさ。現界では監視カメラがあるけど、鏡界は撮影用の専用魔法具が必要だから、あたしが来たってわけ」
そう言って、パンク風の女の子がかけているサングラスを指さした。それ鏡界用のカメラなんかい!? って、現界でも動画撮られてたの!?
そういえば杏は『お姉ちゃんは報告書用の写真撮影しかしませんよ』って言ってたな。写真撮影なのに、なぜかニャンニャン言わされて……あの無表情女、動画撮ってるの知ってたな!
あれっ、じゃあ、あのニャンニャン言いながらネコちゃんポーズ取ってた姿が全部動画撮影されてたの!? アバババババババ。
顔が熱い。ヤバい羞恥心で死にそう……鏡界に穴があったら入りたい。いや、穴がなくても掘って入りたい。
「大丈夫、リリナさん? 顔が赤いし熱でもある? ルース、アレって何か副作用とかあるの? 魔法少女が発熱とか尋常じゃないよ」
「いや、聞いたことないな。技術研究部がさんざん弄り回したはずだけど……ツインテール、大丈夫か?」
やめて、そんなに心配しないで! ただ恥ずかしいだけだから……。
「だ、大丈夫です(大丈夫じゃないけど)。行きましょうか」
頭を掻きむしりながらベッドでゴロゴロ転がりまわりたい気分だが、こ、この程度の恥辱で怯むほどヤワじゃ、ヤワじゃ……狩る! 徹底的に魔塊鬼を狩ってやる! 弾は6発しかないけど……。
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鏡界、新宿西口近隣――。
「おっ、ツインテールだ。もしかして例の?」
「でしょ。魔法騎士3ユニット撃破したっていう……」
「OJTらしいよ。付き添い2人とか、さすが期待のルーキーは違うわ」
1人は呪物担当なんですけどね……。
新宿ベースを出て、地上を歩いていると、数人でグループを組んだ魔法少女達をチラホラ見かける。魔法少女ってRPGみたいにパーティー組んで活動するらしいので、魔塊鬼狩りだろう。
わたしは、そんな魔法少女達のパーティーとすれ違う度にジロジロ見られながら、ラナについていく。ルースは最後方、多分撮影中。
3人とも魔法具で完全武装。ラナはチュルチュルした飾り付きの小さな弓みたいなのを持ってる。ルースの方はナイフみたいなのを召喚して腰に装備しただけ……に見えるが、詳細は不明。
わたしは、地獄の殺戮者を久しぶりに召喚。マガジン2つは完全回復し、全部で6発は撃てる状態。
「リリナさんは、魔塊鬼狩りは初めてだよね?」
「はい、そうです。ラナさんは結構経験があるんですか?」
「まあ、そこそこね。私、探知追跡系がメインで、戦闘力はそれほど高くないの。だから、教育課で対魔塊鬼戦のノウハウとか教えてるってわけ。ああ、新宿に出る魔塊鬼くらいは楽勝だから安心してね」
「探知追跡系ってパーティーだと結構役に立ちそうですけど」
「まあね。自分で言うのもなんだけど、結構珍しい能力だから、何かあったら色々な部署から呼ばれてたりするわ。前線で死なないように後方勤務にスカウトされたんじゃないかな」
なるほど、いざって時に重宝しそうな能力だもんな。珍しい能力だと、後方勤務になれるのか……『フォーサイト』とかダメかな? ちょっと珍しと思うんだけど。
と、そんなこんなで、魔塊鬼の居そうな場所や探し方などの対魔塊鬼戦の基本的なノウハウをラナさんに教わっていった……。
「ちょうどいいのが居たわ。ほらあそこ」
そう言ってラナが遠くに見えるビルの影へと指を差す。よく見ると、遠くに黒い陽炎のようなモノが見える。あれが魔塊鬼だろう。距離は目測で200mくらいか。
「大きさは人間の子供くらい、まだ生まれたばかりね。ゴブリンって呼ばれてるヤツよ。群れてもないし、やっつけちゃおうか」
魔塊鬼には大きさ等によってRPGっぽい通称が付けられており、確かオークやオーガやトロールとかの通称のもいたはずだ。
「大丈夫、危なくなったら私が倒すし、ルースは護衛戦闘のプロだから安心して。ね、ルース?」
「あたしが守るのはネコミミ着ぐるみだけどな。ネコミミ着ぐるみのついでに、ツインテールも守ってやるから安心しな」
ツインテール呼ばわりはアレだが、ルースさんて悪い人じゃなさそうなんだよな。ツンデレっぽいっていうか。
2人が、わたしの後ろに下がる。このままヤれってことだろう。何か見た感じ弱そうだしパパっといくか。
魔法少女の視力でもここからだと小さくしか見えない。スコープが欲しいところだが、200m程度なら『フォーサイト』を使えば外れることはないだろう。
魔塊鬼へ意識を向けると『フォーサイト』が発動。光のラインは一瞬で収束し、立射で地獄の殺戮者を照準、発砲。
ガァァァァァーーーーーーン!
爆発音のような発砲音と共に強烈な反動。ちょっと久しぶりで懐かしい。魔塊鬼は……おお、完全に消滅したようだ。杏の言った通り、例の魔法騎士とは比べ物にならないほど弱いな。
「えっ、ここから撃っちゃったの!? ウソ、本当に撃破してる! 今の、照準ブレてなかったよね?」
えっ、もしかしてまだ撃っちゃマズかった?
「すいません。ラナさんが『やっつけちゃおうか』って言ったので、攻撃してもいいものだと思って……マズかったですか?」
「いえ、普通は接近してから倒すのよ。もっと近づいてから撃つと思ったから驚いちゃった。素晴らしい腕前ね。魔法騎士3ユニットを撃破したってのはダテじゃないわね」
射撃の腕はあんまり関係ないけどね。遠距離からの狙撃で攻撃できたら楽だったろうけど、実際は0距離での近接戦闘だったからなぁ……。
「おいおい、こっから200mはあるだろ。コイツ、魔法も使わず一発で仕留めやがったのかよ!」
ルースさんが驚いてる。『フォーサイト』は魔力消費が少ないから気づかなかったんだろう。さすがに探知系のラナさんは気づいたみたいな感じだけど……。
「いえ、かすかにだけど魔力を感じたわ。探知系の私が隣に居て、かすかにってのもおかしいいんだけど……多分、私でももう少し離れたら感知できないレベルの魔力だったわ」
「『フォーサイト』っていう、補助系の魔法を使ったっていうか、集中すると勝手に発動するんですけど、コレあんまり魔力を消費しないんですよ。わたし狙撃特化系っぽいんで、見つけにくくなってるんじゃないですかね? コレを召喚した時も魔法の発動光がなかったでしょ?」
そう言って地獄の殺戮者を示す。
「そういえばそうね。確かにリリナさんは狙撃特化タイプみたい。最大射程はどれくらいいけるのか、聞いてもいいかしら?」
「試したことがないんで正確には分からないですけど、4、500mくらいはいけるんじゃないですかね。スコープがあれば倍くらいイケそうなんですけど」
ヒマな時はマギリングで遊んでるんだけど、ショップにスコープが売ってるのを見つけたんだよね。まあ例によって、高すぎて買えないんだけどさ。なんとお値段1000万マギト……誰が買えるかっつーの!
「スコープもなしで、その距離は凄いわね。戦場では絶対戦いたくない相手だわ」
「距離だけじゃないな。まったくの未強化のヤツが、いくら生まれたてとはいえ魔塊鬼を1発で仕留められるってことは威力も相当なもんだ……まあ、悪くなかったぜ。狙撃」
2人共手放しで褒めてくれる。初めてツインテール以外を褒められて、少し気分良いわ! わたし自身の努力とかまったく関係ないけど、褒められたら嬉しいもんよ。
「次、行きましょうか?」
「OJTって普通は魔塊鬼1体倒すまでなのよ。新造魔法少女は接近方法とか、戦闘方法とか、色々課題が見えてくるから、そこの指導をするんだけど……私、長距離狙撃のやり方とか知らないし、リリナさんはコレでいいんじゃないかな」
「あたしとしては、もうちょっと鏡界でネコミミ着ぐるみの撮影をしたいところだけど、確かにリリナに狩りの指導は必要なさそうだな。リリナなら、ネットでスナイパーの講習動画とか見てた方が勉強になるんじゃないか?」
お、ルースさんが名前で呼んでくれた! ちょっと嬉しい。
「そうね、ここら辺って新宿ベースの強力な魔法少女達の狩場だから、元から魔塊鬼の数はそれほど多くないのよ。いっぱい狩って迷惑になるのも問題だから、今日はここまでにしておきましょう」
「じゃあ、どうだラナ、久しぶりにスイーツでも食べに行こうぜ! リリナの分くらいはおごるぜ。時間は大丈夫なんだろ?」
おお、ルースさんがデレた! おごりのスイーツとか最高!
「そうね、久しぶりに行こっか!」
こうして2度目のOJTはあっという間に終わり、楽しいスイーツタイムになったのであった!
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