22話 魔法少女研修6 新宿ベース
魔法少女研修所とは別のどっかのビルに入ると階段で地下へと降り、何人かの魔法少女達とすれ違いながら、迷路のような通路をアンナの後ろからついていく。
全員魔法具を装備した完全武装状態なので、警備の人(?)なのかもしれない。
さらに検問所のようなゲートを何か所か通り、エレベータを乗りさらに地下に降りる。ゲートを通り大きな自動ドアを抜けると、天井がドーム状になった広場のような場所に出た。
Y08べースの広間なんか比べ物にならないくらい広く明るい。
中央には立体映像のモニターがいくつも浮かび、魔法少女たちが忙しなく行き交っている。周囲には地下街のような商店街が広がり、外周からは巨大な通路がさらに奥へと伸びており、いったいこの新宿ベースがどれほど広いのか、まるで見当がつかない。
魔法少女ってこんなに沢山いるんだなぁとか、東京駅の地下街より広いんじゃないかとか、みんな強そうとか、わたしは完全にお上りさん状態。
「新宿ベース、なんか凄いですね、魔法少女がいっぱいますよ。アンナさんの知り合いとか居るんですか?」
「千桜の本部である新宿ベースに所属しているのは、いわゆるエリート魔法少女の方々です。残念ながら、ずっと神奈川勤務の私には縁のない世界ですね」
ああ、全国に支社がある大企業の本社勤務みたいなもんか。
テクテクと先を歩くアンナに続いて広場を歩いていくと、周囲からチラチラと視線を感じる。というか、何だかかなり注目されてるっぽくて居心地が悪い。
そういえば、会社でも新入社員が部署に配属されると、やたら注目を浴びていた。わたしはアンナを含めここに居る魔法少女達よりは一回り身体がちっちゃいので、新人だとバレたのかもしれない。
なるべき気にしないようにして、アンナに続いて通路の奥へと向かう。
ゲートを抜け入った部屋は、さっきの広場ほどではないが、そこそこ広く、中央には巨大な水晶球が浮かんでいる。
もちろん普通の水晶球ではなく、水晶の中央部には星空のように無数の小さな光が瞬いている。魔法の発動光みたいな感じ。
「あれが転移装置です。今後も色々なベースに登録することになるので、ご自分でやってみてください」
「ええと、どうすればいいんですか?」
「転移装置に近づけば、ピってバーコード通した時みたいな音がするので、すぐ分かります」
分かりやすいな。結構ユーザーフレンドリーな作りのようだ。
アンナに言われた通り、転移装置に近づこうとすると、フっと前方が光り、ブルーの髪で片目が隠れている、ちょっと海賊っぽい感じの衣装を着た魔法少女が現れた!
おお、これが転移ってやつか、凄げぇ! 目の前で見ると、マジで魔法って感じ!
「おっ、金髪ツインテール! 珍しー!」
わたしが驚きながら見ていると、向こうの海賊風の魔法少女も驚いたような表情で近づいてきて、珍しそうにわたしのツインテールをしげしげと眺めている。
「こ、こんにちは?」
「お、ちっちゃい、新人ちゃんかな? あっ! もしかして、新造ユニットを奇襲してきた魔法騎士3ユニットを撃破したっていうツインテールってキミのこと?」
それほどちっちゃくねーだろ。10cmくらいじゃん! などと思いながら、間違いを訂正する。
「撃破したのは、わたしとエステラとリレッタの3人ですね」
ツインテールが代名詞になっているのは心外だが、初対面の相手に文句をいうのもなんなので黙っている。
「そうなの? ツインテールが3ユニット撃破したって聞いたけど?」
結果的に撃破したのはわたしだけど、3人で協力したからだしなぁ。さすがに命がけで戦った2人の名誉のためにちゃんと言っておかんと。
「わたしがトドメを刺したってだけで、3人で協力して倒したんです。エステラとリレッタが居なかったら死んでました」
「そうんんだ……。あ、自己紹介がまだだったね、あたしは航空機動部隊のレニー。よろしく!」
航空機動部隊ってのは、空を飛ぶ能力のある魔法少女だけで編成された精鋭部隊……だと教わった。
緊急展開部隊みたいに運用され、危ない所に航空機動で急行するって感じ。わたし達の所には来なかったけど……。
あと一般魔法少女とは決定的な違いがあって、一般の魔法少女は発行された任務を受けて戦うけど、航空機動部と特殊作戦部は統合参謀本部の命令で戦う職業軍人的な集団なのだ。
一般の魔法少女が農民兵だとすると、航空機動部と特殊作戦部は常備兵という感じ。
ぶっちゃけ千桜のエリート兵士だね。
「リリナです。今日は魔法少女研修で、転移装置の登録に来ました。よろしくお願いします、レニーさん」
ずっとツインテール呼びされるのは癪なので、ちゃんと名乗ってから、新人として無難そうな挨拶をする。
「リリナちゃんね。新人って感じで初々しくていいね! もうちょっとお話したいけど、今日はちょっと急ぐんだ。またどっかで合ったらお話しようね!」
「はい、よろしくお願いします」
手をヒラヒラさせて去っていく海賊系魔法少女にもう一度頭を下げた。
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無事、転移装置への登録に成功。時間もちょうどいいので、アンナとお昼を食べてから研修所に戻ることにした。
アンナのおごりで新宿ベース内のおしゃれっぽいパスタレストランに入り、奥の目立たないように奥の席に座る。
「リリナさんは、誰にでも愛想がいいですよね。嫉妬してしまいます」
アンナがアラビアータを食べながらちょっとツンな感じでそんなことを言ってくる。ちなみに、わたしはカルボナーラ。
「普通の社交辞令だと思いますが」
おっ、意外にこのカルボナーラ美味いな。鏡界でどうやって食べ物やら何やらを作ってるのか一度聞いてみたい、などと思いながら適当に返事をする。
「むぅ……」
無表情で不機嫌アピール。アンナは一応わたしの指導教官なので、一応気を使って話題を変えることにした。
「でも、あのレニーさんって人、わたしが聖導連盟の連中を撃破したことをよく知ってましたね。ツインテール呼びされたのは心外ですが」
フォークにパスタをくるくると巻きながら、さっきの片目を隠した海賊系魔法少女のことを思いだす。
「ああ。今、千桜では、ツインテールの新造魔法少女が、魔法騎士3ユニットを撃破したという話題で持ち切りなのです。リリナさんはちょっとした有名人ですよ」
有名人ってわりには、ツインテール呼びされてたけどな。もしかして、名前じゃなくツインテールとして認識されてるのか!? ちょっと嫌だなぁ……。
「撃破っていっても、リレッタとエステラと一緒に戦って、わたしがトドメを刺したってだけなんですけどねぇ」
あの状況で、わたしだけで倒せたかっていったら絶対無理だって断言できる。
「まあ、それはそれです。今回の損害から目を逸らすために、上層部が意図的に噂を流しているのでしょう。正式な被害状況は公表されていませんが、相当手ひどくやられたようですから。あんな屈辱的な奇襲を受けておきながら休戦提案を受け入れたのは、経戦能力に不安があるからだと私は見ています」
アンナの分析が正しいかどうか、千桜の詳しい内情を知らないので何とも言えないが、確かに政治的な匂いがするな。
「リリナさんに勲章を授与しようという話もあるそうですよ」
完全にプロパガンダの道化役じゃねーか。そういうゴタゴタには関わりたくないんだけどなぁ。今の立場だと逃げるに逃げられないっぽいけど……。
「別に勲章とかいらないんですけどね」
この軍服風の服だと結構に合いそうだけど、メダル貰ってもねぇ。不祥事起こしても、もみ消してもらえるとかあるのかな?
「いらないのですか? お祝い金が貰えるのにもったいないですよ?」
「えっ、お金貰えるんですか!?」
「ええ、名誉なんて貰っても魔法少女は誰も喜びませんから、ちゃんとお祝い金が出るのですよ。勲章の種類にもよりますが、だいたい300万から2000万マギトくらい貰えるそうです」
おお、マガジンが1つ増やせそうだ。そういうことならな、ぜひ欲しい。勲章くれ!
「あっ、エステラとリレッタはどうなるんですかね?」
一緒に戦ったのに、わたしだけウハウハなのは、さすがに後ろめたい。
「エステラさんは十分可能性がありますね。リレッタさんは……ちょっと分からないですね」
ああ、遅刻して担当新人ほぼ全滅だもんな。200万マギトの支出に加え、治療費のローン……さすがにちょっとリレッタが可哀そうだな。勲章貰ってマギトが入ったら、見舞金として少し渡してやるか。
「そういえば、いつもアンナさんにご馳走になっちゃってますけど、マギトの方、大丈夫なんですか?」
ちょっと気になっていたので、アンナに聞いてみる。
「ええ、全部経費で落ちますから」
やっぱり経費とかあるんだ。そうだよねー、担当新人のエロコス写真売ろうとしてるガチクズが、自腹切っておごらないよね。ふむ、経費で落ちるなら遠慮することないか。
「それなら、デザートもいいですかね? アンナさんもご一緒にどうです?」
「良いですね、良いですね。せっかくですのでスイーツカフェに行ってみましょう。魔法少女達に人気のスイーツカフェがあるのです」
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