14話 聖導連盟 だって頑張って設定考えたら書きたくなるじゃん?
鏡界、神奈川県某所――。
鏡界内に作られた聖導連盟の前線司令部。半円形の戦術管制卓には戦況が映し出され、周囲には指揮官クラスの魔法騎士達が居並ぶ。通信オペレーターが随時伝える各地区の戦況に、彼女らの視線は鋭く注がれていた。
その中でもひときわ目を引くのは、癖のある赤茶色の髪を高々と結い、紅蓮の甲冑を纏った堂々たる姿。聖導連盟のAAAランク魔法騎士にして、魔法騎士戦団、第一作戦群司令官――テッサである。
「おおむね作戦通りに進行しているようね」
テッサは戦術管制卓の戦況を見つめながら、未制圧の中間エリアを踏破しての千桜への奇襲攻撃が成功したことを確信し、琥珀がかった赤い瞳を炎のように輝かせニヤリと微笑んだ。
本来なら通信不能の未制圧中間エリアに魔法騎士を配置し、個人のマギリングによる短距離データリンクを中継することで構築された指揮系統は、想定以上に円滑に機能していた。
「さて、目標の新造魔法少女は補足できたのかしら?」
「想定通りY12エリアで『アーカム』パーティーが敵を補足、奇襲に成功し交戦状態に入ったようです。詳細は『アーカム』からのデータ送信待ちになります」
『神環協盟』への侵攻準備のため、今回の作戦にはCランク以上の魔法騎士は作戦に参加していない。『アーカム』はDランク1ユニットとEランク2ユニットで構成された、今回の作戦では最も強力なパーティーの1つだ。
「『アーカム』の3騎士なら新造魔法少女の10や20は屠ってくれるでしょう。できれば、20ユニット以上の戦果が欲しいところだけど、そこまで欲張りはしないわ」
聖導連盟には、神環協盟との開戦前に千桜からの干渉の可能性を確実に消す必要があった。
聖導連盟統合参謀本部麾下のG-2とG-3は、千桜に戦力の大幅増強を許した場合、半年以内に旧黒狼領、神奈川東部の制圧を終え、余剰戦力が発生する分析していた。
神環協盟との開戦後に千桜に攻撃されれば、確実に黒狼の二の舞になる。
千桜が黒狼の西進と同時に聖導連盟と同盟を締結し、東西から黒狼を挟撃て滅ぼした経緯を知っており、なにより千桜の西進の極秘計画の情報を掴んでいる状況で、千桜に背中を預けるわけにはいかない。
聖導連盟としては千桜とは友好的関係を保っていたかったが、神環協盟を黙らせるまで、千桜の干渉を確実に止める保証が必要だった。
それが今回の、千桜の魔法少女の漸減を目標としたこの作戦だ。
G-2とG-3のシミュレーションだと、15ユニット以上撃破できれば、千桜は戦力的に13か月間は聖導連盟へ干渉することが不可能になる。
千桜とのことは神環協盟を屈服させた後に改めて対処すればよい。
千桜の戦力が回復するころには、我々聖導連盟は東西両面に十分な戦力を展開できるようになっている。安定志向の強い千桜は、強力な魔法騎士を有する聖導連盟と正面から戦うことを望まないはずだ。
しばらくは感情的なシコリが残るかもしれないが、千桜も旧黒狼領全域を掌握できるとなれば文句はないはず。改めて不可侵条約なり、同盟なりを結べばよい……。
「おっと、今は目の前の作戦に集中しないとダメよね。ねえ、全戦線での状況を教えて。分かっているだけでいいわ」
テッサは目の前の戦術管制卓へと視線を戻すと、チーフオペレータへ指示をとばす。
「ログを確認していないので正確ではありませんが、報告によると撃破6、味方の損害はありません」
作戦は予想以上に順調に推移している。全ての作戦区で奇襲が成功し、後は今回の目標地域での戦果報告を待つだけだ。
「今まで一緒に戦ってきた千桜への奇襲は、少し心が痛みますけどね」
奇襲作戦の成功に高揚したオペレーターが笑みを浮かべながら軽口をたたく。
「そうね。顔なじみの航空機動部隊が到着する前に、撤退できればいいのだけど……」
「そうですね。Dランク以下の魔法騎士に、連中の対応は少し荷が勝ちすぎますね」
精鋭と名高い千桜の航空機動部隊とは、何度か共同作戦をしたことがあった。今回の作戦に参加しているDランク以下の魔法騎士では、正面からは太刀打ちできないだろう。
作戦では千桜の航空機動部隊が到着する前に撤退できる予定なのだが……。
「Y12エリア、『アーカム』のアリーシャから報告。10ユニット以上の破壊を確認するも、レノンのマギリング反応ロスト。戦闘を継続するとのこと」
その報告に、テッサな表情が曇る。
「さすがに少し千桜を舐め過ぎていたかしら。新造とはいえ40ユニットが相手だと、ある程度の損害はやむを得ないわね……。Y12エリアで10ユニット以上破壊したのであれば作戦目標は達成したわ。全ユニットに撤退命令を出して」
現在まで全戦線で16ユニット以上を破壊している。
テッサが目標としていた20ユニットには達していないが、戦略目標は達成している。これ以上の戦果は必要ない。後はできる限りこちらの戦力の損耗を抑えて千桜と休戦できればいい……。
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撤退命令を発令、作戦は終了した。出撃した全ユニットは戦闘を中止、未制圧の中間エリアを通過して帰還中だ。
『アーカム』パーティーの全ユニットのマギリング反応をロストしたと報告を受けたのは、それからしばらくたった後だ。
「新造魔法少女10ユニットに、他の戦線を合わせて合計18ユニットを撃破。こちらの損害が、5ユニット。キルレシオ3.6ね……Dランク以下の魔法騎士での作戦だということを考慮すれば、次第点といったところかしら」
おおむねG-2の想定した範囲内の数値だったが、奇襲攻撃が完全に成功していることを考えれば、テッサとしては不満が残る。
戦闘処女の新造魔法少女ごときに、『アーカム』の3騎士が殲滅されたことについては、完全にテッサの想定外だった。
「指揮官がよほど優秀だったのだろう。千桜の対応力を褒めるべきだろうな」
『アーカム』の実力を評価しての今回の配置だった。千桜の指揮官が優秀だったのだろう。
「テッサ司令、G-4から連絡が入っています」
G-4、情報・諜報部門からもたらされた情報は、不満げだったテッサの顔を思わず綻ばせるのに十分な内容だった。
「うふふふ……」
新造魔法少女38ユニット、通常魔法少女8ユニット、合計46ユニットを撃破。望外の大戦果である。
「素晴らしいわ! これでしばらくは心置きなく西に専念できる!」
さらに戦力を消耗した千桜は、聖導連盟の休戦提案を受けざるを得ない。
千桜が聖導連盟との戦闘継続を選んだとしても、予定通り戦わずに全戦力を後方に撤退させてしまえばいいだけだ。今の千桜に、広大な未制圧領域を制圧する戦力は存在しないのだ。
「うふふ、これで腰を据えて小うるさい西のゴミ共の相手ができるわ。今までさんざんおちょくってくれたお礼をしっかりしないとね」
テッサは西の方へと視線を向けると、歯をむき出して獰猛な笑みを浮かべた――。
※こんな感じ。
聖導連盟
├魔導参謀本部(G-1~G-4)
├魔法騎士生産局
├魔法騎士戦団
│ ├第1作戦群:テッサ
│ └第2作戦群
└聖導学院
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