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13話 ドキドキ! 初めてのシャワー✨

「っーーーーーんっ!?」


 目を開けると、どっかで見たような白い天井が見える……俺は瓦礫の中を歩き、歩き続けていたはずだ。覚えてるのはそこまでで……。


「んっ!」


 ってコレ、絶対あのカプセルの中だよね。魔法少女にされた時に入れられてたヤツ。


「目が覚めましたか。怪我は完治してますので起きてください」


 白い天井の前に、どっかで見たような白衣に赤髪ショートボブの少女が現れ、俺をのぞき込んでくる。数時間ぶり? の再会である。


 何んていうか身体がポカポカ温かい感じがする。身体を動かそうと思うと、前の時と違ってすんなり身体を動かせた。両手をついて上半身を起こす。


「あ、どうも……」


 一応、アンナ(だったよな確か)に挨拶し、上半身を起こしたまま自分の身体の点検を開始する。


 土埃や血反吐で汚れていた肌や衣服は綺麗になり、破けていた個所も全て元通りになっている! もちろん魔法少女の衣装と身体だよ。金色のツインテールが揺れてるの見えるし。


 手をにぎにぎしたり、髪をいじったり、衣服の確認をする俺をアンナがジーっと見つめてくる。もしかしたら俺が立つのを待っているのかもしれない。


「あ、すいません。すぐ起きますんで……」


 立ち上がりカプセルから出る。


 快調。疲れも痛みもなく、身体は快調そのもの……と、そこであの時(・・・)のことを思い出す。爆炎、衝撃、戦闘、血まみれで身体をバラバラにされ死んでいく魔法少女達……。


 映像は鮮明に思い出せるものの、本当にあったことなのか自信がない。全部夢のようで現実感がないのだ。映画をワンシーンを思い出すような感じ。痛みもなく、衣服や身体も綺麗だから全部夢だった……ような気がする。


「治療費は70万マギトになります」


「えっ!?」


 唐突に言われた一言に、俺は一瞬でコレ(・・)が現実だと理解する。


 回復剤が10万マギトだったから……まあ、保険もないし、そんなもんか。


 クソったれめ! また金か! やっぱ金か! まったく、死んだ後も金、金、金、金、金! 夢も希望もねーな、魔法少女……。


「すいません、今、手持ちがなくて……分割払いとかでお願いできませんか?」


 はいはい、文句は言うけどちゃんと払いますよ。サービスを受けたなら、ちゃんと対価は払うべきだよね。


 魂売ってまで金払ったくらいだし、そこらへんはちゃんとしてるよ、俺。千桜(ココ)じゃあ踏み倒しとて逃亡なんてできないだろうし、分割払いのシステムくらいあるだろ。


「いえ、OJT中の負傷ですので、治療費は千桜負担になります。治療にかかった費用を伝えるのは義務なので、一応伝えました」


 おおぅ、結構良いところかも千桜……って、いやいや騙されるな俺、OJTがほぼ全滅するまでの戦闘とか頭おかしいだろ! 千桜ヤベぇよ! レッドショルダーもビックリだよ!


「そ、そうですか……ありがとうございます。あっ、エステラとリレッタはどうしてます? 俺と一緒にいたと思うんですけど……」


「2ユニット共まだ治療中です。リリナさんが手足を持ってきてくれたので、あと1日もすれば完治すると思います。自己負担のリレッタさんの治療費も、かなり安く抑えられるかと」


 あー、リレッタは自己負担なんだ。200万どころじゃなかったな、すまんリレッタ。頑張ってローン払ってくれ。


「そうですか。まあ、無事ならよかったです。あの、俺達どうなったんですか?」


「そうですね。コーヒーでも飲みながら、説明しましょう。付いてきてください」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 カプセルの部屋から出てアンナの後ろについていくと、何かデパートのロビーみたいな広い部屋? に出た。


 天井から淡い白い光で照らされたロビーには、ソファーが沢山配置され、部屋の端には自動販売機らしきものも見える。


 マギリングを巨大化させたような立体映像のモニターがいくつか配置されており、その前には何人か魔法少女らしき人たちが居て、ジュースみたいの飲んでる。


 鏡界に自販機とかあるの? ジュース飲めるの??


「中央ロビーです。今は戦闘中なのでユニット数が少ないですが、いつもはもっと沢山いますよ。リリナさんは、コーヒーでいいですか?」


「あ、はい……すいません」


「では、そこに座って待っていてください」


 適当に近くのソファーに座る。普通のソファーだ。うーん、鏡界だよな? 鏡界って意外に普通? ベースの中だけ普通なのかな? スマホは使えないとか言ってたけど、カプセルの部屋の機械は普通に動いてたし……謎。


「あっ、ツインテールちゃんじゃん! ヤッホー! さっきぶりー! 元気になった?」


 何かギャルっぽい魔法少女? に突然話しかけられた。


 金に黒のメッシュの入った盛った髪に肩の空いたスウェット風のトップス、へそ出しでミニのレイヤードスカートに厚底ブーツ……その全体に魔法少女風の装飾を付けたような感じの魔法少女? が親しげに話しかけてくる。ギャル風メイクだが、もちろん美少女だ。


「あ、はい。えっと……」


「あーし、エリカ。あーしがツイテールちゃん助けたげたんよー。あと悪役令嬢ちゃんと、リレッタも。感謝して、感謝して!」


 悪役令嬢ちゃんってエステラか……まあ外見はソレっぽいな。もしかしてこの人が俺達をここまで運んでくれたのか?


「あの、エリカさんが、ここまで運んでくれたのでしょうか?」


「そそ。何か鎧着たのが突然襲ってきてさー、ヤバそうだからベースに逃げたんよ。そしたらツインテールちゃん達が落ちててさー、可愛かったから拾ってきちゃった。リレッタは捨ててこようかと思ったんだけどねー、キャハハハ!」


 リレッタ何したんだろ……でも、結構良い人っぽいな。言葉遣いはアレだけど。


 俺は急いで立ち上がる。厚底ブーツのせいか、エリカさんは俺より頭一つ分くらい大きいだろうか。


「そうなんですね。その節はありがとうございました。すいません、事情をまだ十分に把握できておらず……いずれ改めてご挨拶に伺わせていただきます」


 頭を下げて礼を言う。命の恩人には礼を尽くしたいのだが、先立つものもないので、とりあえずお礼だけ。


「あ、いーよ、いーよ別に。ほら、同じ千桜の魔法少女だしー、一心同体? 的な! 次に会うまで生きてるか分かんないしね、キャハハ」


 うーん、黒いセリフだなぁ。やっぱ魔法少女って過酷なんだな……。


「ああ、ちょうどよかったです。こちら、エリカさんです。エリカさんが、リリナさん達をベースまで運んでくれたのです。もう少し放置されていたら、危なかったのですよ」


 湯気の立つ紙コップを2つ持ったアンナが、戻ってくる。


「アンナちゃん、さっきぶりー! 今、ツインテールちゃんにお礼言ってもらったとこ。悪役令嬢ちゃんとリレッタは元気っぽい?」


「彼女たちは、もう少し時間がかかりそうですが。明日には完治するそうなので大丈夫です」


「そ、よかったー。リレッタには、あーしが助けたげたって言っといてね」


「はい、伝えておきます」


「あ、そうそう、ツインテールちゃん、ちょっと話し方固すぎー。ちゃんと魔法少女研修で練習するんだぞ! じゃあねー♪」


「あ、はい。ありがとうがいました!」


 手のひらをヒラヒラさせてエリカは去って行った。


「あんな話し方ですが、エリカさんは、とても真面目な方なのです。多分、リリナさん達のことを心配してベースに残ってたんだと思いますよ」


 アンナからカップを1つを受け取り、一緒にソファーに座る。


「あの独特な話し方も、エリカさんの血のにじむような努力の成果なのです。最初にあった時は、上品で気品溢れる立ち居振る舞いとエレガントな物言いに、優雅な老紳士の姿が幻視できるようでした」


 マジか!?


「魔法少女の外見は中身とまったく相関性がないのですが、そのままだと色々と不都合があるので、外見と言動に違和感がないように矯正するのです。外見にあった言動ができるよう、一生懸命取り組むエリカさんの姿はとても可愛かったです」


 そんなもんかねぇ。


「とても、ヤラかして魔法少女にされるような人には見ませんでした」


 いや、別にヤラかしたわけじゃないだろ。俺だってヤラかしてないし……ん? もしかしてアンナは何かヤラかしたのか!?


 やだなぁ、魔法少女……あまり深堀りしないようにしよう。


「えっと、俺達がエリカさんに拾われたのっていつ頃なんですか?」


 そういえば、あれからどれくらい経ったのがさっぱり分からない。本当にエリカが待っていたのでれば、それほど時間は経っていないだろう。


「3時間ほど前ですね」


 マジで!? たった3時間でここまで完全に回復するんだ! 結構深くまでザックリいってたと思うんだけど……。


「結構早く回復するものなんですね!?」


「基本的に戦闘用ですからね。すぐ修理可能な構造に創られているのでしょう。ああ、マギトを余分に支払えば、もっと早く回復できますよ」


 分かります、世の中『金』ってことですね! 凄っごくよく分かります!


「私がリリナさん担当の指導教官になりました。魔法少女研修が終わるまで、私がリリナさんにマンツーマンで指導に当たりますので、よろしくお願いします」


 マンツーマン? 魔法少女研修? 新入社員研修みたいなもんかな。マンツーマンとか、ずいぶんと手厚い新人教育だな。最初はあれだけ雑な扱いだったのに……ああ、生き残ったのが2人だから余裕できたのか。


「一生懸命頑張りますので、こちらこそよろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げる。先輩に嫌われて良いことなんか一つもない。従順で扱いやすい後輩を演じておけば、少なくとも悪いことはないだろう。


「今日はこの後、各種検査を受けてもらいます。部屋を用意してありますので、明朝、呼びにいくまでは部屋の中で自由にしてください」


 魔法少女の健康診断的なものかな? ホント、会社みたいだな……。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ふはぁーーーーーー」


 窓のないワンルームマンションの一室のような部屋に案内された俺は、ベッドにダイブして大きなため息をつく。


 身長体重にスリーサイズの測定から、血圧、視力、聴力、心電図、血液検査……健康診断でやるやつを一通りこなし、他にも身体機能の測定に、問診による心理検査っぽいのまで行い、結構疲れた、心が。


 あ、検査したのはアンナじゃないよ。白衣を羽織った|女医さんっぽい魔法少女風の衣装・・・・・・・・・・・・・・・を着た高校生くらいの女の子だった。多分魔法少女。アンナは付き添いでずっと一緒にいてくれた、さすがマンツーマン。


 女医さんぽい女の子の診察とか問診とか、プロっぽかったので、千桜には戦う魔法少女以外の専門職(?)もあるんじゃないかな。配置転換とかできるなら、戦闘職じゃないのがいいなぁ……などと思いながらベッドでゴロゴロする。


 魔法少女は魔力さえあれば睡眠も食事も必要ない。だが寝れば魔力が回復するし、食べれば100%エネルギーに変換され排泄の必要もないという便利な身体なので、『食っちゃ寝』はウェルカムだ。


 さっきベースの食堂でアンナのおごり(・・・)で食べたトンカツ美味かったわ! 正確には千桜の魔法の機械で合成した『トンンカツっぽいモノ』らしいが、完全にトンカツだった。メチャ美味かった。この身体、美味しさも倍増するのかもしれない。


「……………………」


 備え付けの時計のアラームを予定の時間の少し前にセットすると、ベッドの上をゴロゴロ転がる。ツインテールと魔法少女の衣装がゴツゴツするが気にしない。


「……………………」


 うーん、眠くないんだよね。魔法少女だし。


 この身体、新陳代謝がないので老いることもなく、外的要因で身体が汚れることがなければ風呂に入る必要もない……必要は、ないんだが……風呂でも入るか。別にエッチな気持ちとかじゃないよ!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ふぅ……」


 気持ちいい!


 狭いユニットバスで熱いシャワーを浴びると、オッサンのように呻き声がでた。可愛らしい声なので誰かに聞かれても文句を言われることはないだろう。


 ちょっと心配してた魔法少女衣装は、普通に脱げた。下着も……。


 破れたりほつれたりしても、いつの間にか修復され、さらに洗濯まで済んでいるという、まさにメンテナンスフリーのブラボーな衣装らしい。普段着にするには目立つし露出多めだけど……。


「ふむ、普通に女の子の身体だ」


 シャワーを浴びながら下を向くと、起伏の少ないスレンダーボディーが見える。上から見ても、感慨もクソもない。ああ、これが今の俺の身体なのか、というつまらない感想。


 シャワーを止め長い髪を苦心して洗い(湯シャンだけど)、そのままボディータオルにボディーソープを付けて身体を洗う。


「なんか思ってたより全然余裕だな。これなら普通にいけるわ」


 『前』の通りに普通に胸や股間も洗い、最後にシャワーで流す。


 女の身体は男より色々敏感だと聞いたので、ちょっとドキドキしていたんだけど……別になんともなかった。本当に普通。残念なような、ホッとしたような……。


「はぁ、サッパリしたぁ! 冷えたコーラが欲しいところだけど、さすがに無理だよなー」


 バスタオルで身体と髪を拭き、バスローブが置いてあったんで着てみる。下着無しで。だってさっき脱いだ下着をもう一度着るの、何か嫌じゃん! どうせ着ることになるとは思うけど。


 洗面台でドライヤーを探すが見当たらない。仕方がないので、鏡をみながらバスタオルで髪を拭くことにした。


「おお、凄げぇ!」


 長い金髪が、一度バスタオルで拭いただけで完全に乾いた状態になっている! 世のロングヘアーのお手入れに苦心している女性達からの嫉妬間違いなしの、マジカルヘアーである!


「しかし……やっぱ美少女だよなー」


 髪を拭き終え、あらためて鏡に写る姿を見た俺は、自分でもしょーもないと思うような感想を思わず呟いてしまう。


 上から見下ろした時は何の感慨もなかったが、こうやって正面から見ると……わずかに上気し桜色に染まる頬に、少し釣り目気味の碧い瞳、絹糸のように輝く長い金髪、はだけたバスローブから覗く膨らみかけた胸元は色気はないが、これはこれで結構……いや、かなり良いんじゃない?


「これ、間違いなくツンデ……」


 一瞬、何かとてつもなく嫌な記憶が頭をよぎりかけ、思考を止める。


「とりあえずベッドでゴロゴロするか……よっと!」


 バスローブを着たままベッドにダイブ、ゴロゴロする。


 気持ちいいー! 『前』よりベッドがすごく大きく感じる。気持ちよく布団の上をゴロゴロする。


 ゴロゴロゴロゴロ……。


 ココはテレビもないし、スマホなんかもちろんない。時間はまだ9時前……ゴロゴロするしかやることがない。


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。


 魔法少女だからだろう、あれだけ過酷な戦闘を経験し精神的に疲労しているはずなのに、まったく眠くならない。戦闘用怖いわー。


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。


「はぁ……」


 いつまでもゴロゴロしててもしょうがないな……意外に楽しかったけど。寝る努力はしよう。


 目を瞑ったが、ドキドキと胸が高鳴ったままだ。


 魔法少女は眠くならないけど、普通に眠れるはずなんだけどな……。どうやって寝るのかアンナに聞いておけば……。


 そこで突然スイッチが切れたように、スパンと俺の意識は途絶えた――。


 あの……で、できればでいいんですけど、ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると、凄っごく嬉しいかなって……あ、いえ、面倒くさいなら全然いいですから! でも……できればでいいんで、お願いします!

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