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12話 生還

「姐さん、すんません。ホントすんません……」


「クソっ、クソっ……」


 俺は謝り続けるエステラを背負い、毒づくリレッタの身体を支えながら、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)を杖代わりにして真っ赤な夕焼けの下、瓦礫の中を歩いていた。


 3人とも全身血まみれで、ぐちゃぐちゃだがちゃんと生きている……というか、瀕死だった2人を回復させここまで歩いてきたのだ。


 少し前――。


 金髪を倒してしばらく呆然としていた俺は、2人のうめき声で我に返った。


 リレッタは右腕を失い、額から左胸にかけて深い切創を負い、エステラは両脚のくるぶしから下が切断されうつ伏せで転がっている。


 強靭なマギドールの肉体を持つ魔法少女とはいえ、このままにしておけば2人とも失血死間違いなしの重体。


「リレッタ、どうすりゃいい?」


 リレッタの怪我は深刻だが、負傷時の対応を知っていそうなのは彼女しかいない。2年もこんな生活を続けてたんなら、何かしらの処置は心得ているはずだ、多分……。


「リレッタ!」


 俺はリレッタの頬を叩きながら声をかける。マギドールの身体は痛覚の8割はカットされるので大丈夫だろ、多分……。


「っ……か、回復……剤……」


 回復剤? そういえば、そんなのがあるって話を聞いたような気がする。俺は急いでショップで回復剤を探すが……1つ10万マギト!? そんな金ねえよ! なんで死んだ後も、金で困んなくちゃいけねーんだよ!


「あ……あたしの……ポーチ……」


 リレッタの腰のポーチを探ると、回復剤と思しき針なし注射器(NFI)! すぐに切断された右腕の付け根あたりに注射する。


「おおっ!?」


 あっという間に、リレッタの右腕の切断部の出血が止まる。急いで回復剤をエステラの切断された片足の付け根に注射すると、見る間に両脚の切断部の出血が止まった。


 ――と、そんな感じで、リレッタの持ってた回復剤を使って2人を回復させ、今に至る。


「はぁ……姐さん……重くないっスか? はぁはぁ……すんません……オレが、トロいせいで……」


「いや、あの時、エステラが金髪に突っ込んなければ、3人とも間違いなく死んでたからな。これくらい、どうってことない」


 この辺りも、戦闘があったのか建物も道も瓦礫の山になっていて歩き辛いことこの上ない。幸い、敵は撤退したのか静まり返っている。しかし、味方の姿もまったく見えない。


「はぁ……姐さん、オレ、オレ……はぁ、はぁ……」


「エステラの足とリレッタの腕は、持ってきてる。心配すんな。マギドールの身体なら、ベースに戻れば元通りにくっつけてもらえるさ。大丈夫だから、少し寝ろ」


 回復剤である程度は回復したものの、大量に出血し重体だったのだ。背負ったエステレは、大量出血のためか荒い息遣いで、苦しげに呼吸を繰り返している。


「クソっ! 何で、あたしがこんな目に……あっー、ムカつく、ムカつく、ムカつくっーー!」


 しばらくすると、エステラは俺の肩に顔をうずめて静かになったが、リレッタは顔を蒼白にしながら必死に俺にしがみつき、喚き続けている。


 エステラよりリレッタの怪我の方が深刻だったのに、今はリレッタの方が回復しているようにみえる。経験の差だろうか?


「まったく、簡単な新人研修のミッションだったはずなのに、何で200万マギトも大損した上、右腕まで……あああっ、ムカつく!」


 歩き始めてからずっと喚きっぱなしなのでかなりウザいが、悪態をつくと痛みが軽減するらしいし放っておこう……。


「ああー、マジでムカつく! おい、リリナ! お前、200万もやったんだから、戻ったら抱かせろ!」


 リレッタが突然おかしなことを叫び始めた。出血しすぎてラリったか?


「はぁ? 今、俺に抱き着いてるだろ」


「うるせぇ! バックからぶち込んで、その金髪ツインテールをハンドルにしてヒィーヒィー言わせてやる!」


 なに言ってるんだコイツ?


「はぁ……何をぶち込むんだよ。お前、女じゃん」


「うっせえ! 何とかなんだよ、そーいうのは!」


「だいたい男同士……ん? 女同士か?? あれっ!?」


 俺の方もどうも頭がちゃんと回ってないようで、くだらないことを真剣に考えてしまう。


「お前さ、身体がハゲたオッサンで中身が美女と、身体が美女で中身がハゲたオッサンとだったらどっち抱くよ?」


 何だそれ、中学生かよ。うーん、どうだろう……。


「ハゲたオッサンはちょっと……」


 中身が美女でも、ハゲたオッサンはムリかなぁ……。


「だろ! 見た目が美女なら、他はどーでもいいんだよ!」


「うーん」


 あまり賛成したくないなぁ……。


「じゃあ、お前、ハゲたオッサンに抱かれたいか?」


「それはちょっと……」


「だろ! こんな美少女に抱かれるんだから、文句ねーだろ!」


「それ、全然関係ないだろ?」


 話に脈絡がない……。


「はぁ……だいたい200万マギトっていったら、あたしが……はぁ、はぁ……」


 喚き続けたせいか、息が上がってきている。


「もういいから静かにしてろ」


「うっせぇ……200万マギトと回復剤と右腕の分、元を取んなきゃ、納得、いかねぇだろうが……」


「生きてるだけで丸儲けっていうし、今回はあきらめろ……」


「はぁ……あたしは先輩……として……女の身体の快感を……先輩として徹底的に……はぁ、はぁ……身体に教え込んで……」


 しつこいなコイツ。絶対飲んだら絡んでくるタイプだ。


「息が上がってんぞ。静かにしてろよ……」


「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ……」


 リレッタの身体からフっと力が抜ける。


「限界なら現界だって言えよ……」


 リレッタを見ると、汗を流し、荒い呼吸を繰り返しながらぐったりしている。大量出血による発熱と発汗だろう。いくらマギドールの身体とはいえ、あれだけ出血すれば、こうもなるだろう。


「しょうがないなぁ……」


 脱がせた服でエステラの身体を背中に固定し、左腕で腰を抱きかかえるようにリレッタの身体を持ち上げる。


「くっ」


 マギドールの身体能力がなければ無理だったろうが、なんとか地獄の殺戮者(ヘルマーダー)を杖代わりに、二人を担いで歩き始める。


「こりゃ、結構キツいわ……」


 金髪に斬られた肩口からまた出血が始まる。回復剤が足りなくて、俺の分がなかったのだ。本当に、本当に、金がないってのは、いつも最悪だ。


 右腕にはほとんど力が入らないが、地獄の殺戮者(ヘルマーダー)を握り締め歩き続ける。


「リ……リリナ……お前、怪我して……」


 しばらく歩いていると、抱え方が雑だったせいかリレッタが目を覚ました。


「リレッタやエステラに比べれた大した傷じゃない。リレッタがアホなことを喚かなきゃ何も問題ないから、黙って寝てろ」


 腕や足を斬り飛ばされたわけじゃない。少し脚がふらつくくらいだ。これくらいの出血なら大丈夫だろ、多分……。


「顔……真っ青、じゃねぇか……もういい……あたしを置いていけ……リリナとエステラだけなら、ベースまでたどり着ける……あたしは、後から助……けにくれば……いい……」


「後からって、それまで身体が持たないだろ。大丈夫だから、黙って大人しくしてろ」


「ク……ソ……先輩の……命令……だ。あたしを……置いて……いけ……2人だけでも、助かれば……」


「くだらないところで先輩風吹かすなよ。ベースまでちゃんと連れてってやるから、大人しくしてろ……」


「……………………」


 現界だったのだろう。リレッタから返事はなく、俺の腕に身体を預け、苦しげに荒い呼吸を繰り返すだけだ。


「ハハッ……アハハハッ……」


 まあ、こんなもんだよな……俺みたいなクズの末路なんて。だが、これはこれで悪くないか。戦友を命がけで救う俺、カッコよくね?


 最悪もう1回死ぬだけだし、大したことじゃない。


「アハハハッ……アハハッ……アハハハハッ!」


 何だか、楽しくなってきた。契約は守られるべきだ。俺はちゃんと契約を守って、全力で魔法少女をやっている! ああ、契約通り、ちゃんと最後まで魔法少女をやりきってやる……!


「アハハッ、アハハハ! アハハハハハッ……!」


 視界が霞み、だんだんと力が抜けていく中、俺は笑いながら歩き続ける。


 ああ、もうすぐだ、もうすぐたどり着く。あともう少しだけ、ほんのもう少しだけ歩けば、俺は……。


 そこでプッツリと意識が途切れた――。


 あの……で、できればでいいんですけど、ブックマークとか、評価ポイントとか、感想とか、頂けると、凄っごく嬉しいかなって……あ、いえ、面倒くさいなら全然いいですから! でも……できればでいいんで、お願いします!

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