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魔法少女ダイアリー♡  作者: 鈴森京也


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100話 Vチューバ―企画・初顔合わせ・後編

 放課後、龍鳳学園・特別クラス、応接室――。


 地下駐車場に面会用に造られた応接室ではなく、特別クラス敷地内の本物の応接室である。

 そのため、全員、恒例の全裸身体検査を受けることとなった。

 生徒以外にも厳しさがまったく変わらない龍鳳学園の厳しい方針は素直に評価できる。

 毎週来ることになる花梨さんは、『これ毎週やるのは面倒くさいわねー』とぼやいていたけどね……。


「霧島さん、先日はありがとうございました」


 応接室に入ると、すでに到着していた3人が立ち上がる。

 ミアと、コンサートツアーの時にお世話になったマネージャーの筒井さん、そして20代前半と思しき女性――おそらく彼女がアシスタントマネージャーだろう。


「こちらこそ先日はありがとうございます。筒井さん、今日はよろしくお願いいたします」


 契約の時に面識がある霧島さんと筒井さんが挨拶を交わし、それぞれ初対面のメンバー同士で名刺交換を始める――。


「彼女は、アシスタントマネージャーの飯塚(いいづか)理香(りか)」


「飯塚(いいづか)理香(りか)です! よろしくお願いします!」


 筒井さんに紹介された、ライトブラウンのショートカットにスーツ姿の飯塚さんが、両手で名刺を差し出しながら元気よく頭を下げる。

 新人ぽい初々しさは好感がもてる!


「今回、ミアお姉ちゃんとVチューバ―としてデビューするミオです。タレントとしては、名刺の裏側の『四樹(しき)莉里(りり)』名義で活動しています(活動してないけど!)ので、よろしくお願いします。彼女は、わたしの……」


「理奈お嬢さまの|パーソナルアシスタント《PA》を申し付けられております、白樺(しらかば)花梨(かりん)と申します。以後、お見知りおきを」


 花梨さんが、まるで『出来るキャリアウーマン』のような落ち着いた所作で挨拶する。

 『優秀な女執事』っぽい雰囲気で、妙に板についている。演技派である。


 ミアも社会人っぽく(ってよく考えたらもう立派な社会人だったわ!)、いつもと違う丁寧な態度で、霧島さん、花梨さんと名刺交換している。


 全員の名刺交換が終わり、『白鳥プロダクション』と『雪月華風』のメンバーが向かい合う形でソファーへ座ると、今回のプロジェクトの責任者である筒井さんが説明を始める。


「それでは、今回のVチューバ―『ミア&ミオ』企画について、ざっと説明させていただきますね。まず、各人の担当ですが――」


 筒井さんはプロデューサーとして、全体の管理運営。


 そして飯塚さんがディレクターとして、企画・構成から、機材やソフト、部材の手配など、現場の一切を仕切るとのこと。

 飯塚さんは、筒井さんがVチューバ―界隈で見つけてきた人材で、若いけどVチューバ―界では経験も実績もあり、本人は今でも現役Vチューバーとして活躍中らしい。


 わたしとミアは、飯塚さんの指示に従っていればいいらしいので、楽チンである!


 ちなみに花梨さんは、『三枝本家』として方針に従って内容の監督をする、という役割なのだが、わたしのマネージャー的なポジションと紹介された。


「次は公開までのスケジュールについてです――」


 役割分担やら製作開始から公開までのスケジュールや流れなど、一通りの説明が終わり、予定されていた『白鳥プロ』と『雪月華風』との顔合わせはひとまず終了。


 霧島《ヴェイル》さんは別件の仕事があるとのことで、白鳥プロのメンバーに丁寧に挨拶してから帰り、なし崩し的に、雑談タイムへなだれ込むのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 今、応接室に残っているのは、わたし、ミア、筒井さん、飯塚さん、花梨さんの5名。

 霧島(ヴェイル)さんが帰った後は、何とな~~く雑談モードに突入中である――。


「澪ちゃん、元気そうね! ようやくコラボデビューまでこぎつけたわよ! Vチューバ―だけど、まずは第一歩ね! 次は『期間限定ユニット』を目指すわ! よろしくね!」


 筒井さんは、本気でわたしとミアの『期間限定ユニット』を画策しているらしい。

 残念ながら『雪月華風』から許可が下りることは絶対にないので、申し訳ない気持ちになってしまう。


「筒井さんもお元気そうでなによりです! よろしくお願いします!」


 とりあえずVチューバ―のお仕事だけでも頑張ろうと思い、元気よく返事をすると、なぜか筒井さんがわたしの顔をジーーーーーッと見つめてくる。


「ん、んんーーーーっ! うん! やっぱり澪ちゃん、前より可愛くなってるわ! どうしたの? 成長期かしら?」


 いえ、魔法少女に成長期はありません。『認識投影装置』のせいです!


「「…………………………」」


 筒井さんの言葉に、ミアと飯塚さんもジーーーーーッとわたしの顔を見つめてくる。


「ミ、ミオさん、すっごく、すっごーーく可愛いです! はわぁ~っ……ミアさんに初めてお会いした時も思いましたけど、芸能人になる人って、やっぱり私たちと違うんだなーって思います! 本当、抱きしめたくなるくらい可愛いです! 目の保養になります!」


 飯塚さんが興奮しながら、上気した顔で見つめてくる。


「本当! 澪がすっごく可愛くなってるわ! 分かった! デビューが決まったからスターとして輝き始めたのよ! さすがあたしの妹(スール)だわ! 澪はあたしと一緒にスターになる運命なのよ!」


 『認識投影装置』、効果ありすぎじゃね!?

 再調整してもらったほうがよくない!?

 あー、いや、芸能人用の調整だとこんなものなのかな? どうなんだろう?


「ああ、可愛いわ! 澪は、何て可愛いの! いい、澪はあたしと一緒にトップスターを目指すのよ!」


 ミアが熱血スポ根モノのようなことを言い出す。


「が、頑張るよ?」


 Vチューバ―は顔出ししないから、トップスターとかないと思うけどねー。


「あれ? そういえば澪は一度も特別クラスから出てないけど、どうやって契約を進めたの? ちゃんとそこら辺の管理はできてるの? 澪はこれからスターになるんだから、契約関係はちゃんとしておかないとダメよ!」


 ミアの言葉に、予定していた答えを返す。


「花梨さんが色々動いてくれたんだ。特別クラス(ココ)にも何度も来てもらってたんだよ」


 そう。千桜関連の事で不審に思われそうなことは、すべて花梨さんが請け負うことになっているのである! ありがとう花梨さん!


「はい。サインは理奈お嬢さまにしていただきましたが、その他の雑務はすべて私が処理させていただきました」


 花梨さんがスっと立ち上がり、『できる女執事』のように一礼する。

 いつもと違うキレのある所作で、本物の『できる女執事』みたいだ。外見は全然変わっていないのに、所作と口調だけでここまで印象が変わるのは驚きである。


 花梨さん、『前』はお芝居とかやってたんじゃないのかなぁ?

 やけに芸が細かいし、すっごく楽しそうなんだよね。


「皆様も、理奈お嬢さまと同じように、私のことは花梨とお呼びください」


 目を伏せながら落ち着いた口調で答える花梨さん。

 普段の明るくてチャランポランな花梨さんを知っていると、違和感マックスである!


「白樺……花梨さん、私からいいかしら?」


 筒井さんが声を上げると、花梨さんが軽く肯き続きを促(うなが)す。


「先ほど、澪ちゃんの|パーソナルアシスタント《PA》を申し付けられていると伺いましたが、『雪月華風』からの外部委託、ということなのですか?」


「正確に申しますと、私は『三枝本家』から理奈お嬢さまの|パーソナルアシスタント《PA》をするよう申し付けられております。つまり、理奈お嬢さまに関して、私の判断は『雪月華風』の判断に優越します。トラブルなどがありましたら、私にご相談ください」


 まあぶっちゃけ、わたしのことで『雪月華風』や霧島(ヴェイル)さんにいちいち話を通すのが面倒なので、『三枝本家』から花梨さんに一任されている、という設定にしたのだ。

 何かあっても即応できるし、忙しい霧島(ヴェイル)さんの手を煩わせることもない。


「なるほど、やはり『三枝』と『雪月華風』は、そういう(・・・・)関係なのですね。ああ、もちろん口外はしませんのでご安心ください」


 筒井さんはニッコリ笑う。


 筒井さんは、『雪月華風』が裏で『三枝グループ』と関係があると思ったようだ。

 さらに、裏社会とのつながりが噂される『雪月華風』と『三枝グループ』の関係を公に認める訳にはいかないだろう、という深読みも入っているのだろう。


 実際には、『三枝グループ』と『雪月華風』には何の関係もないが、両方とも『千桜』傘下なので、裏で関係があるというのは間違いではない。


「私としても、霧島さんより花梨さんの方が話しやすいので助かります。今後、澪ちゃんのことは、花梨さんに相談させていただきますね。実は……これは花梨さんが『雪月華風』とは関係のない方だから言ってしまいますが、霧島さんにはオフレコでお願いします」


「はい……」


「霧島さんって、人当たりも良くて温厚そうなんですけど、どうにも業界に古くから居座る海千山千の古狸どもと同じ『臭い』がするんですよね」


 そう言うと、筒井さんは少し眉をひそめた。


「煮ても焼いても食えないと言いますか、老獪と言いますか……霧島さんと話していると、いつのまにか手玉に取られているような気がするんですよ。見た目は私と同じくらいなのに、どんな経験を積んだらあんなふうになるのかしら。やはり『雪月華風』は侮れませんね。あ、これ、絶対オフレコでお願いしますね」


「ああ、そういう感じ、ありますね」


 花梨さんも何やら心当たりがあるようで、うんうんと頷いている。


 まあ、霧島(ヴェイル)さん(あの人)、『前』も合わせたら、多分、筒井さんの言う『古狸』と同じか、それ以上いってるんじゃないかな。

 情報部のクロウさんでさえ、いいように扱われている感じだったから、人物評価としては的を射ているかもしれない。


 でも、筒井さんの唐突な『ヴェイル(霧島)さん話』も、ちょっと怪しいんだよね。

 『秘密の共有効果』って呼ばれる、相手との『特別感』や『仲間意識』を生み出すためのテクニックじゃないのかな?

 わたしに関して『雪月華風』より強力な決定権を持つ花梨さんを攻略するために、仕掛けてきたようにも思える……。


 年齢に似合わない老獪さを持っているのは、むしろ筒井さんの方じゃないのかなぁ。

 うーん、芸能界って、やっぱり怖いよねー!


「申し訳ございません。私からひとつ、理奈お嬢さまのお身体のことで、皆さんにお願いがございます……」


 筒井さんの『ヴェイル(霧島)さん話』が一段落したところで、花梨さんが神妙な表情で口を開いた。


「理奈お嬢さまはサナトリウムを退所したとはいえ、時折、体調を崩されることがあります。『三枝本家』は理奈お嬢さまの体調を案じ、芸能活動を止めていたのです」


 わたしは日々、魔塊獣(マゴル)と戦闘を繰り返している魔法少女であり、さらに所属している『千桜』は、かなりの頻度で他の魔法少女組織と戦争を繰り返す物騒な組織である。

 つまり、いつどんな状況になるか分からないということだ。


 そんなわたしがVチューバーとして活動するとなれば、わたしに何かあった場合、各方面へ迷惑をかけることになる。


 そこで、『千桜』の長期任務に駆り出された時や、最悪、わたしが死んだ時のカバーストーリー用の設定をつくっておいた方がいい、という判断になった。


「理奈お嬢さまのたっての希望で芸能活動が許可されましたが、理奈お嬢さまの体調によっては長期の療養が必要となることもありえます。その際は、なにとぞご理解をお願いいたします」


 花梨さんが『白鳥プロ』のメンバーに頭を下げる。


 これは契約書にも記載されている内容だが、スタッフ全員に周知しておいた方がよいだろうということで、花梨さんとも前もって打ち合わせしていたことだ。


「ここにいる全員、そのことは理解しています。澪ちゃんに無理をさせるつもりはありませんから、大丈夫ですよ」


「はい! 筒井さんからちゃんと話は聞いています。ミオさんに負担をかけないようにディレクションしますので、ご安心ください!」


「話は聞いてますけど、その……澪ってそんなに身体が悪いの? もし無理してるなら、ちゃんと言って欲しい。そりゃあ澪と一緒に活動したいけど、あたしだって澪の身体が一番だって思ってるんだから」


 ミアが複雑な表情を浮かべる。


「どこかが悪いということではありません。身体検査では異常はありませんし、それでなければサナトリウムから退所の許可は下りません。ただ、たまに発作のように、原因不明の体調不良になることがあるのです。理奈お嬢さまが皆さまにご迷惑をおかけするのでは、と心配なされていたので、一応ご説明させていただいた次第です」


 花梨さんの説明を聞いたミアが、確認するようにわたしへ視線を向けてくる。


「本当に大丈夫だよ、ミアお姉ちゃん! 原因は分からないんだけど、時々、体調が悪くなることがあるんだ。いつも少し休めば治るし、お医者さんも異常はないって言ってるから大丈夫だよ! ただ、突然お休みして、ミアお姉ちゃんたちに迷惑かけたら嫌だなぁって思ったんだ」


 台本通りの言い訳をミアに話すと、ようやくミアが納得した表情になる。


「分かったわ。じゃあ一緒に頑張りましょ! でも、体調が悪くなったら絶対に無理したらダメよ! 絶対だからね! 約束破ったら、お仕置きよ!」


「うん、分かったよ、ミアお姉ちゃん!」


「本当に、大丈夫なのよね?」


 ミアがもう一度確認してくる。

 妹(スール)思いの、最高のお姉ちゃんである!


「うん! 大丈夫だよ。トレーニングだって、一緒にしてるでしょ?」


「そういえば、澪のトレーニングメニューを作ってもらった時も、『体格は平均より小さいけど、健康体』って言ってたわね」


 やっぱりこの身体、平均より体格は小さいのか。

 だが、MG(マギト)さえあれば、すぐに解決する問題。頑張って稼ぐしかない。


「じゃあ、『ミア&ミオ』で頑張って、Vチューバ―の星を目指すわよ! いいわね!」


「はーい!」


 そんなこんなで、初顔合わせは無事に終了したのであった――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 『ミア&ミオ』企画の打ち合わせ終了後、龍鳳学園・特別クラス、学生棟――。


 企画スタッフのみんなでワイワイお喋りして、ちょっとだけVチューバ―デビューが楽しみになったわたしは、『認識投影装置』のスイッチを切って自室へ向かう。


 『Vチューバ―動画でも見て研究するかー』などと思いながら、鼻歌交じりに自室のドアを開けると――リビングに点けた覚えのない灯りが灯っている!?


「リリナ、お帰り―!」


 金の装飾が施された濃紺の軍服風の衣装に身を包み、濃紺のサイドポニーに金色の星の瞳の可愛らしい顔立ちの魔法少女――AAA(トリプル・エー)ランクの内務部部長・ステラさんが、缶ビールを掲げて笑っている――。


「来ちゃった♪」


 ステラさんとの宅飲み会と秘密の依頼・前編 

 ※9月28日(月)19時投稿予定

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