第14話 索敵男・大グループとの遭遇・人狼の予感
第二層二日目の夕方、廃都市の中心部に近いエリアに辿り着いた。
そこに、大きなグループがいた。
数えると十二人。第二層で見た中で最大のグループだった。
様々なスキルを持つプレイヤーたちが集まっている。数の力で安全を確保しようとしているグループだ。
リーダー格らしき三十代の男が声をかけてきた。
「……見ない顔だ。合流するか」
「検討する。少し話を聞かせてくれ」
聖夜が言うと、男は快く頷いた。
「うちらは廃都市に入って最初から集まってきたグループだ。数があれば安全だという考えで動いてる」
「モンスターとはどれだけ戦った」
「三回。全部、人数で押し切った。一人の怪我人も出ていない」
「LVRの管理は」
「……そこが問題でな。告白タイムで全員が達成できるか、正直まだわからない。数はいるが、感情的に繋がっているかどうかは別の話だ」
聖夜はそのグループを見渡した。
田中が言っていた「おかしいやつ」が、どこかにいるはずだ。
ここなが聖夜の隣に来た。小声で言った。
「……靄を読んでる。十二人の中に、一人だけ靄が均質すぎる人間がいる」
「均質すぎる、というのは」
「……感情が変化しない。他のみんなは、状況に応じて靄が動いてる。でも一人だけ、ずっと同じ形。計算で動いてる人間の靄だ」
「特定できるか」
「……あそこ」
ここなが視線だけで示した。
三十代の男の隣に立っている、二十代の青年だった。
清潔感がある。笑顔が自然だ。でも、ここなには見えている。
◆
その青年が聖夜に近づいてきた。
「……索敵スキルを持っています。一緒に動けば、廃都市の安全ルートが確保しやすくなると思いますが」
「スキルを見せてもらえるか」
「発動してみます」
青年が索敵スキルを使った。
周囲の反応を確認した。問題なく機能している。
でも、ここなが聖夜の袖を引いた。
「……靄が全然変わらなかった。スキルを使っても、感情が動かない。スキルを使う時って、少し緊張するか、集中するか、何かが変わる。この人は何も変わらなかった」
「わかった」
聖夜は青年に言った。
「……今は合流は保留にする。俺たちは独自に動く」
「なぜですか」
「俺たちのグループには、今の人数で十分だ。大きくなりすぎると機動力が落ちる」
青年が少し間を置いた。
「……そうですか。わかりました」
引き下がった。
でも、去り際に一度だけ、ここなの方を見た。
◆
大グループとは距離を置いて、廃都市の一角に拠点を確保した。
四人になっていた。聖夜、ユリア、美羽、ここな。
田中は大グループの方に合流することを選んだ。
「……田中、大グループに行ったな」
「ああ。あちらの方がLVRが稼ぎやすいと判断したんだろ。止める理由はない」
「……でも、あのグループにサクラがいるかもしれない」
「田中に話したか」
「……話した。気をつけてと言った」
「それでいい」
ここなが言った。
「……うち、さっきの青年の靄が気になって仕方ない」
「何が気になる」
「……全然変わらなかった。うちの読みが外れてるのかと思って、もう一回よく見たんだけど、やっぱり変わらない。外れてる可能性もあるけど」
「外れてなかった場合、あの青年はサクラだ」
「……あの青年が大グループに入って何をするか、想像してみた」
「何をすると思う」
「……直接的なことはしない。でも、少しずつ空気を変える。誰かが誰かを疑うような言葉を、さりげなく混ぜてくる。そういうタイプだと思う」
美羽が静かに言った。
「……人狼でいうところの狼の動き方ですね」
「そうだ」
「……勝てますか、あの動き方に」
「勝つというより、見抜くことだ。あのグループにそれができる人間がいれば、弾ける」
「……田中さんは」
「田中は人を見る目があると思う。足を怪我した状態で一晩耐えた。あれは判断力がある人間だ」
◆
夜、廃都市の中で聖夜は考えていた。
【LVR:54 → 48】
また削れた。一時間で十四減る。共闘で少し稼いだが、追いついていない。
「……ユリア」
「はい」
「お前の感情は、今どうだ」
ユリアが少し間を置いた。
「……今日は、美羽さんが罠に捕まった時と、廊下型のモンスターが来た時、同じ感覚がありました」
「何の感覚だ」
「……嫌だ、という感覚です。あなたがいる方向に何かが来た時の感覚と同じです。でも、今日は美羽さんに対しても同じ感覚がありました」
「それは」
「……美羽さんのことを、守りたいと思っているということかもしれません」
聖夜は少し考えた。
「……ユリア、お前は少しずつ増えてるな」
「何が増えていますか」
「守りたい人間が。最初は俺だけだったのが、今はここなも美羽も含まれてる」
「……そうかもしれません。それは、おかしいですか」
「おかしくない。それが、このゲームで生き残る力になってる」
【LVR:48 → 56】
ユリアとの会話で、数字が上がった。
――何かが、微かに笑った気がした。
◆◆◆
【第二層 2日目 夜】
【HP:71/100】【LVR:56】
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