戦闘/会話
数は五人ね…なんとかなるか…
無理矢理起こされたフアルは眠そうな声で
「何?」
不満気な顔でこちらを睨みつける。
「前にいるだろ、あれだよ」
俺が前方を見て言うとフアルも視線を前に向ける。
「…はやいとこ片付けて」
この眠り姫は中々洞察力が鋭い様だ、
彼女の言動にはドキッとさせられる事が多い。
「テメェら声が聞こえねぇのか?それとも
死にてぇのか!」
山賊達が待ち切れないと言った様子でそれぞれのエモノを
構える。
「いや、すまんすまん少し話しててな」
「もう一度だけ言ってやる、命が惜しければその荷物を置いていけ」
よくもこんな甘さで山賊なんてやれるものだ。
「そうだな、命も惜しいし荷物を大事なんでな
反抗させてもらうとしよう。」
俺は今にも襲って来かねないほどの怒気をはらんだ息を
吐いている山賊たちにそう言うと御者席のすぐ裏に
横向きに金具で固定してある剣を手に取る。
「なんだ?やろうってのか商人ごときが?」
山賊たちは余裕を含んだ笑みを浮かべている。
自信に満ちた表情、油断。
本当に甘いなこいつら。商人でもなんでも本当に命が惜しければ荷物なんてすぐに置いていくはずだ、
なのに剣をとったって事は少しは腕が立つと思うのが
自然ではないだろうか。
俺は馬車から降りると足音を立てながら山賊の方に近づいていく。山賊達から数メートル離れたところで止まると
言い放つ。「さぁ、来いよ」
その言葉が引き金となり、山賊達は殺意を込めた武器を
大きく振りかぶりながらこちらに向かって走ってくる。
しかし見るにどれも単調、子供が遊びで振る木の棒と
何も変わらない。襲いくる刃を俺はひらりひらりと
躱しながら、相手を一撃で無力化できる急所に鞘を
つけたままの剣で殴打する。鳩尾、後頭部、顎やこめかみ
など、切っ先に少し力を込めて攻撃をしていく。
あっという間に5人の山賊は地にひれ伏す。
重量のある鉄製の剣で的確に急所を突かれたのだ、
呻き声を上げてそれぞれの箇所を抑えて痛みに耐えている。
「こいつ…こんだけの剣術をどこで…」
5人の中でボス格の男が唸る様に呟く。
「申し訳ないのだが先に進みたいんだ、どいてもらっても
いいかな?」
山賊達は悔し気な眼で睨んでくる。
「くくっ…捕まえて街に引き渡せば金になるぜ…?」
自虐的な笑みを浮かべて山賊は言う。
「お前たちはそれでいいのか?」
「所詮、俺達には向いてなかったってだけの話だ。」
向いてなかった…か。
「なんで賊なんてやっている?」
ボス格の自虐的な笑みのまま質問に答える。
実に陰りのある表情でもあった。
「俺たちの街では生きていけないからさ、理由は…
わかるだろ?」
理由…商売などで旅を続ける内に世界各国の色々な地方の
風に乗ってやってきた噂や情報が耳に届くのはよくある事だ。
今、ここよりもう少し東南の方向にある国と南よりの
国が戦争を勃発させている最中という情報を聞いたていた。なんでもこの二国は昔から、そのニ国との間に広がっている平原の領地を巡って争ってきたのだと言う。それがいよいよ本格的な争いに発展したという。その戦争の影響により、国の近くの街や村はほぼ全壊状態だという事も。
つまり今、東の国の人々は他の人間を殺し、奪い
それ程の事をしなければ生きてはいけない状態なのだ。
「そうだな…仕方ない、少しだけだが食料を分けるから
それで見逃してくれ」
俺の言葉で山賊たちは信じられないといった様子で
驚きと困惑の表情に変わる。
「なっ…あんた」
ボス格が何か言おうとするが言葉に詰まっている。
そこまで人の優しさに甘えることができなかった…
侮辱かも知れないが余りにも不憫に俺は思えてしまった。
俺は何も言わずに引き返して馬車の中に入る。
途中、御者席に座っているフアルがこちらに不思議なもの
を見る様な視線を向けていたが気には止めなかった。
俺は少しだけ大きめの袋に干し肉を詰めると
ボス格に渡す。
「これでここを通してくれるか?」
未だに信じられないという表情で言う。
「あんた…一体何を企んでいるんだ…?」
「別に何も企んじゃいないさ、ただ道を開けてほしいだけ
だよ」
ふっと笑みを浮かべた俺は山賊たちにそう答えた。
「おっ、お前らっ急いで道の脇に避けろ!」
はっとした顔になったボス格は仲間に号令をかける。
「すまないな、じゃあ通させてもらうぞ」
俺は御者席に座るとジルに進むように促す。
馬車はガタガタと音を立てながらまた、ゆっくりと進み始めた。
*
「貴方って本当に不思議な人」
気だる気そうな瞳でこちらを見ながらフアルが口を開く。
俺はそうか?と言うように首をかしげる。
「だって、あの人達を簡単に倒したのにわざわざ貴重な
食べ物をあげるなんて」
「まぁ…そうだな、ちょっと優しいお兄さんだ」
フアルは眉をひそめに聞いてくる。
「…貴方何歳なの?」
お兄さんという言葉に引っかかったのか別の意味で不思議そうに見てくる。
「21だな今年で」
「えっ…」
なんだよ、えってそんなに老けてみえるのだろうか…
せっかく答えたのに…。
俺が少しショックを受けていると、フアルは俺の心を
見透かすように言う。
「いえ、思ったよりも年齢が高かったの。それだけ」
「じゃあ、幾つくらいに見えてんだ?」
「17くらい」
フアルは素っ気なく答える。
そんなに俺は童顔なのだろうか。
そこで、俺はまた疑問を口にする。
「なぁフアル、お前はいつくなんだ?」
フアルは瞼を伏せ、消え入るような声で答える。
「わからない…」
フアルはとても哀しそうな表情だった。
やばい…やっちまったぁ聞いちゃいけんやつだったぁ
「そ、そうか…わからないなら別にいいんだけどな…?」
我ながらひどい有り様のフォローだ、なんのフォローにもなっていないだろうが。
少しの間、気まずい沈黙が二人の間に流れる。
俺は何とかしようと別の質問をしようと考えた。
「フアル、好きな食べ物…」
「すやぁ……」
あー…。言葉を発するのと同時にフアルの方を見ると
フアルはいつの間にか寝ていた。気まずいと思ってたの
俺だけ…?静かだったのは寝ていたからか…?
「まぁ…いいか、おやすみ」
しかし、西の空を見るとオレンジに輝く太陽が山々を照らしている。もの凄く綺麗な眺めだった。
「勿体ないなぁ、こんな綺麗なものを前に寝るなんて」
俺はフアルの方を見ながら言うがもちろん睡眠中であるため返事はない。
「暗くなる前に休めるとこ、見つけなきゃな」
俺はそう呟きながら馬車の足を速めた。
どうも皆さま嘘嘘と申します。
まずは読んでいただきまして本当に感謝です!
ありがとうです!
本文につきましては初戦闘で主人公の強さを
垣間見る話となっております。
フアルの年齢を聞かれた時の哀しそうな表情など
後に理由がわかるのでお楽しみに!
それと…
私の投稿頻度が少なくなっているかと思います。
最近、少し忙しく書いてる時間が…
も、もちろんゲームやアニメなんて見てませんよ?!
ごほん…そんなこんなで読んでいただき
ありがとうございます!
次回も是非読んで頂けると幸いです!




