表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
商人兼傭兵やってます。  作者: 嘘嘘
2/4

目覚め/出発

光の眩しさに耐えかねて目が覚める。

体を起こすと朝のまだ寒いような涼しいような風が

部屋全体に広がっている。


俺としては寒いのだが


吹いてきた風を感じた方向にまだ寝起きでかすむ目をやると、部屋の東側の窓から入ってきたものらしい。

そして日光も丁度俺が寝ていた時に頭があった部分に

直撃である。


だが、それよりも驚きが大きかったのは、その開け放った窓の方に顔を向けている少女であった。

部屋備え付けの椅子を移動させたのか窓側で椅子に座り

窓枠にひじをつき、

頬杖をしながら街の様子を眺めている。


少女の髪は糸のように繊細でベージュがかった灰色が窓から入ってくる風に輝きながらなびいていた。

そして、視線を感じたのかこちらに振り向く


幼い顔立ち、こちらを真っ直ぐ見つめるその瞳は

金色だった。しかしどこか気だるげそうな眼には

光は無く太陽に雲がかかるようだ。

「貴方が私をここに連れてきた人…?」

少女は表情一つ変えず問いかけてきた。

「…そうだな、道の真ん中に倒れたんでな」


少女は俺の答えを聞いても、まるで興味が無さそうに

俺から少し視線を外してなおも聞いてくる。

「それで?私をどうする気?奴隷商にでも引き渡す?」


「まさか、君の好きにするといいさ。もしどこかに行きたいならそんなに遠くなければ連れて行ってもいい」


せっかく資金に余裕ができたのだ、送るくらいの寄り道

今の俺にとっては何でもない。

すると少女はフッと笑いながら言った。

「じゃあ、貴方についていく」


…どういう事だろうか? ついていく?旅に同行するという

事だろうか…?だが俺はもちろん、この少女に職もこれから何をするのかも何も伝えてないはずである。


「ついていくって俺がこれから何をするのか知ってるのか?」

少女はすぐに表情を曇らせ

「連れていってくれるんでしょ?それが可能って事は

商人か旅人…じゃないの?」


まぁ…そうだよな、それくらいは予想はつくか。

俺は少女の目を真っ直ぐに見据えて言った

「俺は商人だがこれから本格的に旅にでようと思ってる。

だから少しくらいの遠回りは平気だし、どこでも連れて行っても良いって事だ。」


俺の言葉を聞いた少女はやっぱりという表情に変わって

椅子から立ち上がって言った。

「じゃあ、その旅…ずっと同行するのはアリ?」





目の前でパンを食べながら肉入りスープを食べている

少女は先程とは打って変わって幸せそうな顔で夢中になって食事をしている。

こうして見ると可愛いものだ、何というか年相応と言った

感じで。

俺たちは今宿を出て近くの酒場で食事をしている。

部屋での問いに対して少し考えていたら、お腹が空いたと

言うので近くで食事ができるところに移動したのだ。

「な、なぁ…本当に旅についてくるのか…?」

少女の耳には俺の問いかけなんて届いていないようで

おかわりを注文している。

ていうか何回目だよ、どんだけ食べるんだこの子は…。


「あ、あのー?ねぇ?」


するとやっと気づいたのか口に食べ物を含みながら

顔を上げる、まるでリスの様だ。

「ふぁい?」


「えっと、だから本当に俺の旅についてくる…ねぇ

一回顔上げたんだから最後まで…」

「食ふぇてるからあほへ」


ぁあ…ダメだ

これは邪魔したら怒るやつだ。

仕方ない食べ終わるまで待とう…もうこの子俺より食べてるし、そろそろお腹いっぱいになるだろ…。




「で、本当についてくる気か?」

少女はたくさん食べて満足したのか上機嫌で

ずっと笑顔のままである。

「もちろん、行くとこも行きたいところもないしね」


行くところもない…か この少女は一体どこから来て

何故あんなところで倒れていたんだろうか…しかも傷だらけで。


「わかった、俺も余裕があるし大丈夫だと思う」

「じゃあ決まり、早く行きたい」


それから俺たちは店からでると宿に戻り、部屋の契約を

解除するとすぐに愛馬のジルと馬車を返却してもらい

街の門を抜け、外に出て東の方へ続く道を進んで

いる。

少女は手綱を握る俺の隣に座っている。

東は景色が綺麗だと風の噂で聞いたことがあったが、

もうその片鱗を体感しているまっ最中である。

かなり遠くだが青々とした綺麗な緑色の山とその奥に

石が切り立った蒼い山脈に北の地方でも見られる雪が

積もっている。

清涼な風が吹く草原、雲一つない空、そんな道を

柔らかな日差しを浴びながら進む旅の初日はこの先に

沢山の出会いと希望を感じさせる程、綺麗で最高の

スタートだった。


それからしばらく進み、昼過ぎになって気候が少し

乾きを含んだ真昼の暑さになった頃に丁度森に入る。

ガタガタと車輪が動いているのを聞いていてなんとなく

今更ながら、まだ少女の名前などを聞いていない事を

思い出した。

「なぁお前、名前教えてくれないか?」

少女は昼飯を食べて眠くなっていたのか うとうと していたが、眠そうな声で

「ふある…」

そう答えた。

「フアル か…わかった、教えてくれてありがとう、眠いんだろ?寝ていいぞ」

「………ぅん」

小さく答えるとフアルは俺の方に体を預けて寝息を立て

はじめる。


こうすぐ隣で寝られると俺も少し眠くなってしまう。

空が明るいうちは寝ない様にしてはいるが。


すると少し前の方からガサガサと音を立て数人の男達が

出てくる。手に持っているのは斧や剣…山賊か…。

「テメェらぁ!止まれ!荷物だけ置いて

行くか!反抗してここで死ぬかぁ!さっさと選べぇ!」


俺は一つ息を吐くとフアルを起こした。

「フアル起きろ、少し面倒なことになった」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ