出会い/始まり
使い古された木製の車輪が ガタガタと音を鳴らしながら明け方のまだ空が明るくならぬ内に
ビゥゥと冷たい風が通り抜ける闇に沈んだ街道を進んでいく。
「まだ…寒いな」
荷台を引いてくれている愛馬も心なしか寒そうにしている様に見える。ここは北寄りの街であるため毛皮なんかが
よく売れる。
俺のお得意先の街の一つだ。これからは真反対の方向の
ここより南の街へ寄って東の方に行ってみるつもりだ。
少しずつ売品を捌きつつ、まだ行ったことのないところへ
旅をするのもまた楽しいものである。美しい景色や新たな出会い、旅の醍醐味だ。旅先で出会った人々が増え繋がりが増えていくのも醍醐味の一つだし、俺はそれを楽しんでいる。そんなこれから先の新天地への想いを馳せ、フードを深く被り歩みを馬に任せ少しだけ眠りにつく。
不意に体に小さい衝撃が走り、目が覚める。
どうやら馬が止まった様だ。辺りはまだ暗い、時間は然程立っていない様だ。
「どうした?ジル」
愛馬であるジルに呼びかけると真っ直ぐ前…いや、少し下の方を見ている。何かが倒れている様だった。
場所は街をとうに抜け南北、どちらの方向へ行く際に必ず通る、アルラント森林の森道である。アルラントとはこの辺り、主に北の地方の名称だ。
この森道でも草食動物が狼などの肉食獣から命からがら逃げだして道の真ん中で限界を迎えそのまま事切れてしまう事もよくあるケースだがジルも慣れたものな筈だし、
この森林道に限った話ではない。止まるという事は何か
異質なものが倒れているのかも知れない。
馬車の上からでは少し見にくいのでランプを持ち降りて注意深く警戒しながら近づいてみる。
「これは…」
人間、更に言えば子供…少女だ…。
まだ息もある、脈も正常だ。
着ているものも奴隷が着る様なみすぼらしい薄汚れた服でよく見ると足や腕などにすり傷などあちらこちらに怪我を負っているようだ。
背丈的に年齢は13、4くらいだろうか。
しかし何故こんな場所に倒れているのだろう?
隷属の証である蛇の紋章もないし奴隷ではない…
大きな街なんかや城下街にある貧民街の住人…いや
この辺りにそんな街はない。
少なくとも人間の子供が歩いて行ける距離じゃない。
そもそも道中には魔物や人を襲う獣とも出くわすはずだ。
頭で色んな可能性が浮かんでは消えていくが
どれも筋が通らないし現実的ではないので考えるのをやめた。
しかしこのまま放置して肉食獣に喰い殺されても目覚めが悪いので東の方への旅の準備をする為に立ち寄る次の
小さい街まで連れていく事にした。
荷台へ乗せる為に持ち上げようと触れてみると
とても冷たい。
「あと少し遅かったら死んでいたかもな…」
俺は持ち上げた少女を荷台に寝かせると俺が使っている毛布と上に寒さしのぎに着ていた。フード付きのマントも
被せた。これで夜が明けていくにつれて時期に温まっていくだろう。
すっかり目が覚めてしまったので手綱を握りジルに進むように促す。ジルは小さく嘶き歩き始める。
少しして東の方が明るくなり太陽が顔を覗かせる。
空には雲が少なく直射的に日が当たるのですごく眩しい。
まぁ、現状的にはその方が早く温まるからいいのだが。
そんな事を考えていると街が少しずつ見えてきた。
街に行ったらまずは服を調達しなければならない
無論、この名も知らぬ少女の服だ。こんな服で歩かせたら
俺がどんな目で見られる事か…安易に想像がつく。
まったく我ながら損な性格してるなぁ…
街の門までつくと検問があるが、まぁ見知った顔なので
軽い会釈だけで済んだ。
この街も良く旅支度に使うので服や小物の店などは
よく知ってる。しかし…この少女はまだ目が覚めないのか。
度々心配になり息があるか確認するが大丈夫なようで
その度にほっとする。
もし死なれたら遺体の処理なんかも大変そうだしその辺にポイなんてそんな真似は俺にはできないので
大変困るわけだ。しかし起きてくれないと服の寸法もわからないわけだが…まぁ少し大きめのやつ選べばいいか。
「おっさん、ケープコート見せてくれ」
顔馴染みの店主のおっさんは「おっ」と言って店の中で
上質な方の品を出してくれた。
「あー…もう少し小さいの あるかい?」
「あることにゃあるけどよ、お前さん…転売かい?」
まぁ、そういう事になるよなぁ…だってこの服のサイズ
俺に合わせて出してくれてるしな。
職業柄、転売はもちろんする事もあるわけだが。
「いや、違うんだ。二着だけ子供サイズのものが欲しい」
ここは正直に行こう。
「ふむ、わかった。詳しく詮索はしないでおこう。
サイズは?」
「大きめのものを出してくれ」
理由を聞かれないのは本当にありがたい、この店主は
良い奴だよ、子供を拾って連れているなんて奴隷商と
間違われても文句言えないからな。
その後出されたコートを二着選び購入した。
他にも医療系の道具を購入し少女の傷になっていることろを洗い包帯で巻いたりして処置をして元々着ていた服の
上から購入したケープコートを着せ、
旅に必須な道具や干し肉なんかの携帯食料を買い集め
いよいよ街を出発する準備を完了させた。
その頃にはもう日は落ちかけていた。
「今日は宿屋で泊まって明日発つか」
普段は宿屋に泊まることなど滅多にないのだが、
金銭面は北の街で持って行った商品が高額で飛ぶように売れたのでまったくもって困らない。
俺は適当な宿屋を見つけると荷物を載せた馬車と愛馬の
ジルを宿屋備え付けの厩舎に預け、受け付けでダブルベットの部屋を借り少女をおぶったまま借り部屋への階段を
上がる。部屋に入ると少女をベッドに寝かせた。
「ふぅ…」俺は小さく息を吐くと、ベッドで横になり
どっと襲ってきた疲れに身を任せそのまま深い眠りの中に
落ちた。
どうも皆様 嘘嘘と申します。
まずは読んでいただき本当に感謝です。
ありがとうです。
本作のコンセプトは「出会い」と「旅」でございます。
これから2話3話と見ていくうち
全然コンセプト通りじゃねぇしゃねぇか!ふざんけんな!バカ作者! と思う事があるかもしれませんが、何卒
温かい目で読んでいただくと大変ありがたいです。
そして、もしそう思ってしまわれた時の為に謝罪します。ほんっっとうに申し訳ありません!
では次のお話の時にお会いしましょう。
ありがとうございました!




