↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた世界の還し方〜不死身のエリンと、癒しのレン〜  作者: 佐藤 要


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/50

第39話 帰れる場所、帰りたくない場所


 セント・ウォールによるテロから10日後、私達は王宮へと招かれた。

 この戦闘において多大な功績を上げたということで、国から報奨金が与えられるとのことだ。

 ジュストは、アランとマリアを捕まえれば2万マールの5倍は出す、と嘯いていたので、それなりの報酬があると期待できる。

 ただ、ベルトリア国民でもなければ、正式な傭兵などでもない私達がどこまで評価されるのか不安なところもあった。


「あいつ、信用できないんスよね。」


 王宮に向かう道中、ボーンズが呟いた。


「誰のこと?」

「ジュストのことっスよ。今回のテロの最中も執務室で呑気にお茶してたってアデルの兄さんが言ってましたよ!」


 ボーンズは納得いかない様子だった。


「まあ、私は約束どおりマデリーンの手記を見せてもらえたらいいけど。もちろん報酬も。」

「死ぬような思いを、というより普通なら死んでるのに、大らかっスね……。」

「マリアに対しては私にも思うことがあったし。それにさ、国民とか関係なくテロなんか許したらダメなんじゃないの?一人間として。」


 私の率直な意見にボーンズは固まった。


「ま、真っ当すぎてぐうの音も出ないっス……。」

「エリンさんは凄いです。実は、私もちょっと疑っています。アランとマリアの捕獲を私達に頼んだのは何でだろうって。ベルトリアには巨大な戦力があるはずなのに。」 


 レンが私の方を見つめながら言った。


「確かにね。流石にアデルとレイナード以外にも強い人間はいただろうし。」

「色々考えたんですが、ジュストさんは、このテロのタイミングや規模間を把握していたと思うんです。アデルさんを王宮に呼んでいたのもそうですし……もっと疑えば、事前に潰そうと思えば潰せたのに、そうしなかったんじゃないかと。」

「そうだとしたら何でなのかな?自分の周囲にも危険が及ぶのに。」

「正確には分からないです。考えすぎだといいんですが……。」


 レンは眉を顰めた。

 私はレンの頬っぺたを優しく撫でた。


「今日の席にジュストもいるみたいだし、本人に聞いてみようよ。悪いこと企んでますね、ってレンから言われたら、私だったら罪悪感で吐くと思う。」

「わわ……。そんな、わけないですよ。」

「酷くなってる……。」


 顔を真っ赤にしたレンと、へらへら笑う私を見て、ボーンズは呆れた。



--------------------------------------------------



 かしこまった席は苦手だ。

 元老院がずらりと座った席の前で、功労者が一人ずつ読み上げられ、報酬と叙勲などを受ける。部外者の私達は後ろの席に座り、ベルトリアの軍人達の名前が読み上げられるのをひたすら聞いていた。


「聞いてる限り大した額じゃなさそうっスね。」

「軍に所属している以上、業務の範囲内ではありますからね。」


 なるほど。私達はその点違うからね。

 そこは評価してもらいたいね。


 私達以外の人間が報酬を受け取ると、元老院による訓示が始まった。


「あれ?」


 そのまま全員が立ち上がり、部屋を後にする。

 狼狽える私達を横目に、兵達はみな帰ってしまった。


「待たせてすまないね。三人とも前に来てくれるかね」


 ジュストが私達に声を掛けた。

 私達は元老院達の前に整列した。


「この度は国家の危機に対し、その勇壮と力を持って多大な貢献をしていただき、あらためて感謝申し上げる。」


 そう言って元老院が皆頭を下げた。


「まず、だまし討ちのエリン殿」

「フルネームみたいに言わないでよ!」


 思わず声に出てしまった。

 元老院や兵士達も噴き出している。


 あ、これはジュストなりの冗談か。


「済まない。少し堅くなっていたのでね。あらためてエリン殿。この度はテロ組織の中核的な協力者を捕らえたこと、その功績は多大なものであると評価する。」


 堅いのか、抜けているのか微妙な言い回しだ。

 ジュストの雰囲気もテロの前とは全然違う。

 どっちが本質なんだ?


「その功績を称え、報酬100万マールを与える。」


 ひゃ……


「100万!?」


 想像の10倍だ。

 横にいるレンの方を振り向くと、目がまん丸になっていた。


「次いで、レン殿。」

「は、はい。」


 まだ驚いたまま、レンは慌てて返事をした。


「同様に、協力者の確保に尽力していただいた功績を称え、報酬100万マールを与える。」


 レンも!2人合わせて200万マールも!

 5000マールもあれば1カ月は暮らせるし、大きな買い物をしなければ何年もお金で悩まずに済む。

 ベルトリアに長期滞在するなら、宿泊施設住まいじゃなくて、賃貸住宅とかでもいいかもしれない。


「そして、ボーンズ殿。」

「うっす。」


 緩い返事とは裏腹に、ガチガチに固まったボーンズは、直立不動だった。


「王宮に侵入したテロ組織の首魁アラン=グラスナーを確保し、実質的にテロ行為を終結させた功績は極めて大きく、国家の安全保障を司る者として、特に感謝と経緯を表する。」


 あれ?なんかボーンズだけ凄い評価されてない?


「貴殿には、報酬100万マールを与える。さらに、貴殿の要望により、3名にはベルトリアの永住権及びクイーンズパーク内の所定区画を付与する。」


 永住権?所定区画?


「な、何?どういうこと?」

「要は、クイーンズパーク内の住宅地を与えるので、永住してよいということだ。」


 ジュストが微笑みながら言った。

 家まで!?

 思わずボーンズの方を振り返る。


「エリン姐さんとレン姐さんも、帰ってきてゆっくり落ち着く場所がいると思いまして。旅を続けるにしてもね。」

「凄い……ありがとう。ボーンズ。」

「ボーンズさん、ありがとうございます。」

「いやあ、いつもご飯食べさせてもらってますし、これでやっと親的なことが出来ましたかね?な、サリー。」


 ボーンズの後ろに浮かんでいるサリーも微笑んでいる。


「一応、3人分の家を要望したんスけど……。」

「家は1棟だ。ただ、3人で居住しても十分な広さだろう。」


 ジュストが答えた。


 1棟……。


「レンと一緒に暮らせる……?」


 そう思うと胸が高鳴った。ボーンズとサリーもいるから、2人だけじゃないんだけど。

 レンの方を見ると、私と視線が合った。

 キラキラした目で私を見つめてくれた。めちゃくちゃ可愛い……。


 衝動的にレンを抱きしめた。


「やったー!」

「エ、エリンさんー!?」

「ちょ!人前っスよ!」


 どたばたする私達を見て、また周囲から笑いが漏れた。


「まあ、喜んでもらえて何よりだ。手続きは速やかに終え、住宅への案内もしよう。」


 そう言いながら、ジュストは自席に戻った。

 そしてあらたまって話を続ける。


「さて、一つだけ謝らなくてはいけないことがある。」

「何?」


 私はレンからゆっくりと身体を離して、ジュストを見た。


「君達に話していたマデリーン女王の手記だが、見せることは難しくなった。」

「は?」


 私は前のめりになった。


「話が違うよ。」

「すまない。」

「理由を説明してもらえませんか?」


 レンが冷静に言った。


「君達に見せると言ったのは私の独断だった。だが、国家の安全保障に関わる重要な文書ということで元老院の了承が得られなかった。」


 ずらりと並んだ元老院のメンバー達が厳しい目を向ける。


 納得いかない。

 これまでの喜びが半減だ。報酬で誤魔化そうとしているようにしか思えない。

 また記憶の手がかりがなくなった。


「そしてもう一つ、重大なことを伝えておきたい。」


 今度はジュストではなく、恰幅のいい男が口を開いた。声が大きく、威圧感がある。


「元老院のインゲイツ=ゴルドーだ。軍は私の配下にある。」


 この人がインゲイツか。ジュストと並んでマデリーン時代の側近だったという。

 見ても特に何も感じなかった。


「その立場で言わせてもらう。とても言いづらいのだが……。」


 インゲイツは若干口ごもっていた。


「マリア・デ・ラウエレスの身柄が強奪された。」



 ……え?



「……どういうこと?」


 しん、とした空気が部屋中に漂った。


「厳重な警備の元、一級刑務所に収監していた。魔力を使わせないように何重もの防壁まで張ってな。だが、昨日の晩、刑務所を訪れた男が警備をすり抜けてマリアを攫った。」


 そんな……。

 あれだけ苦労して捕まえたのに……。


「その男は、セント・ウォールの関係者なんでしょうか。」

「いや……何者かは分からない。ただ、警備には全く被害が出なかった。居合わせた刑務官によると、本当にただ悠然とすり抜けて行った、とのことだ。」


 何かの能力だろうか。いずれにしても、恐ろしい話だ。


「正体は不明だが、男がどこに向かったかは公安が掴んでいる。」


 ジュストが口を挟んだ。


「だが、厄介だ。」


 何だか胸がざわつく。

 嫌な予感がした。


「……どこに行ったんスか?」


 ボーンズが尋ねた。




「ハルバート。」


 ジュストがそう答えた時、レンの身体が震えた。


ちょっとずつ話が重たくなっていきます。


☆もし面白いと思っていただければ、コメントや評価などをしていただけると、嬉しすぎて舞い上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。