第30話 レンの夢
※この話には鬱・暴力的な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
子どもは幸せな夢を見て育つもの。
あなた達には一人一人役目がある。
何がしたいか、何ができるか、ゆっくり考えなさい。
施設の先生はそう言った。
夢を見た。
昔の夢。
父と母と幼い私。
「魔術学校に入れるぞ!」
「本当に!?」
「ああ。この子は天才だ!我々のような身分の子供が入れるなんて異例のことだ!」
「何でもするわ!この子のためだもの!」
― 魔術学校ってどんなところ?
「最高峰のメイジとして、この国のために戦うんだ。最高の教育と環境、社会的な身分が保証される。カリキュラムは厳しいが、レンなら絶対に大丈夫だよ!」
― 戦う?
「そうだ!若い内から戦場に出て成果を上げるんだ。そうすれば身分なんて関係ない。お前は誰からも尊敬される人になるんだよ!」
― 戦うとどうなるの?
「温かくて美味しいものを食べられる。こんなボロボロの家に住まなくて済む。私達の生活が変わるし、差別されることもなくなるんだ。」
「レン、あなたが希望なの。絶対にチャンスを逃しちゃダメよ!」
― うん。私、頑張るよ。
「入学式には目いっぱい綺麗な服を着せてあげるからね。」
どこの子供?
みすぼらしい。
何かしらあの服。みっともないわ。
髪の毛もボサボサ。手入れしてないのかしら。
あんな子がどうして?
親の顔が見てみたい。
フルベングの奴隷上がりの家系らしいわ。
汚れてる。血の中まで。
― ねえ、お母さん、お父さん。
「座学だけはいいのね。でも実戦ではまるでダメね。」
「また俺達のグループだけ遅かった!お前のせいだぞ。下手くそ!」
「ねえ、何でそんな汚いの?あなたのカバン、捨てちゃっていい?」
「あらごめんなさい。でも奴隷上がりだったらいいでしょ?どれだけ踏んづけても。」
「やられて嫌なことだってやり返してはいけないよ。あなたは本来ここに入れる人じゃないんだから。」
― 苦しいよ。
「逃げろ!陣形が崩れた!後ろからだ!」
「防壁を張れ!下級魔術師達!」
「助けて!助けて……!」
― 怖いよ。
「……ゾゾ討伐。下級魔術師第52期第2部隊、100名中、死者97名。生存3名。うち再起不能2名、重傷1名。」
「唯一の生き残りか。こんな劣等生が。」
「戦略の試験は常に1位。軍師の才能はありそうだ。」
「また勝った。」
「また殺した。」
「また殲滅だ。」
「また生き残った。」
― 助けて。
「連戦連勝。素晴らしい才能だ。」
「奴隷上がりの家系だぞ?」
「彼女の考えた作戦なら大丈夫だ。」
「また勝った。」
「また生き残った。」
― 痛い。辛い。怖い。誰か。
「重症だ!意識不明!」
「これはもう助からないかもしれない。」
― もう……
「世界にハルバートの健在を示した。」
「一命は取り留めた。」
「不死身のレンだ。」
― もう、だめ……
「せっかく生き残ったのに!?」
「何を考えてるの?魔術学校はどうするの!?」
「お願いだレン!魔術学校に戻るんだ!」
「あなたが辞めたら、私達はまたあの生活に戻るのよ!?」
― 許して……
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!!!!!!!」
「身体をバラバラにして、切り刻んで、ぐちゃぐちゃにしてやる!お前なんかお前なんかお前なんか!!!!!!!」
「生きているのが悪いんだ!死ね!殺してやる!私が殺してやる!死ね!殺してやる!」
― 死んじゃった方がいいんだ
「撃たれた!?」
「錯乱したのか!?医療班!!」
― ごめんなさい
「一命は取り留めましたが、もうダメでしょうね。」
「彼女は去ります。」
「特任軍師はどうするんだ。」
「残った戦術所をアップデートしていけばいい。」
― 痛い。痛いよ。
「禁術を知っていないだろうな?」
「よし。どこへでも行け。」
― 腕、痛いよ。
― 忘れたいのに。
― どうやっても忘れさせてくれない。
「ずっと大切にするから。」
「絶対守るから……。今日みたいな事があっても、次は絶対守って見せるから。」
「だから、一緒にいて。」
― エリンさん。
「レン!」
― ああ、貴女だ。
「どうしたの!?腕が痛む!?」
― 貴女の顔、貴女の声、貴女の手。
「泣かないで。大丈夫だよ。私がいるよ。」
「そっか。怖い夢見たんだね。よしよし。」
― 愛おしい。
「ん。随分甘えたさんだね。ううん。めちゃめちゃ嬉しい。」
― 優しい貴女なら、本当の私を知っても許してくれるかもしれない。
「いや、ヤバいなあ……。私……。」
― 汚くて、出来損ないで、薄情者。
「どうしたの?ちょっと疲れちゃったかな。」
― 私なんかが、大好きな貴女に幻滅されるのが怖いなんてどうかしてる。
「泣かないで。」
― でも、どうか。
「大好きだよ。」
― 貴女の傍にいられますように。
どうか幸せになりますように……と思いながら書いていました。(矛盾)




