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壊れた世界の還し方〜不死身のエリンと、癒しのレン〜  作者: 佐藤 要


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第15話 ベルトリアへ

 リンデールは落ち着きを取り戻していた。

 巨大な樹の残骸に人々は戸惑い、ここ最近の記憶が曖昧ながらも、少しずつ日常を取り戻している。

 

 私とレンは、町で必要な買い物を済ませてから、宿への帰路についた。

 美しい夕陽とのんびりした人々の流れを見ながら、少しの間、二人の時間を楽しむ。


「本当は、こんなに穏やかな町なんだね。」

「そうですね。別の町みたいです。」


 そう言って笑い合った。

 ゆっくりとした時間が愛おしい。

 レンの手と私の手が触れ合う。

 お互いに一瞬顔を見合わせた。


「あ!エリン姐さん!レン姐さん!」


 私は指を止めた。遠くからボーンズが声を掛けてきたのだ。


「この町のダークエルフの歴史を見つけたんスよ!」

「ありがとう。……やっぱりウザいなあ。」


 私はボソッと言った。

 間が悪いんだよ、いつも!


 古い言い伝えではダークエルフというのは静かで閉鎖的な種族だったらしい。

 この土地には古くから存在していたとされ、後から入ってきたのは人間の方だった。魔法に優れた彼らは、人間と明確な主従関係を築くことでこの地で繁栄してきた。


 500年ほど前に一部の者達が町を出て、他の精霊と共に世界を支配し始めた。

 圧倒的な魔力を元に、人間を始めほとんどの種族をその支配下に置き、一時は本当に世界の覇者となったのだ。

 しかし、人間の英雄バッドガイに精霊達が敗れると、この地に残ったダークエルフ達も人間に反旗を翻され、駆逐されていった……。


 何とも言えない。


「まあ、一部の精霊達のせいで皆殺しってのは罪のない精霊は可哀想っスけどね。でも、血の誓約なんて仕込んでるんだから自業自得ではありますよね。」


 ボーンズは突き放すように言った。哀れんでも彼にとっては愛しいサリーの仇には違いない。


「もうこの町には関係なくなりましたけどね。」

「そうだねえ。」

「姐さん達、いつまでゆっくりするんスか?」

「まあちょっと落ち着くまで。」

「俺、家を解約しちゃったんスよ!」

「何でそんな短絡的なの?」


 のらりくらりとした答えに、ボーンズは肩をすくめた。

 勢いよく言っていた手前、拍子抜けしてるようだけど、知ったことではない。


「ねえ、レン。またあの店のジュース飲もうよ。」

「いいですね。オレンジが絶品です。」

「ちょっと~!俺宿代だけできついっスよ~!」

「奢らないよ?」


 レンと一緒にオレンジジュースを飲みながら歩く。

 新鮮な搾りたてのオレンジの味を堪能しながら、可愛いレンと一緒に歩く。

 このままずっとここに居てもいいなあ、と思ってしまう。


 でも、本気でそう考えているわけではない。出発しなかったのはレンのことが心配だったからだ。


 あの日の後、レンは少し落ち込んでいた。魔法を使ってしまったトラウマだと思う。だからずっと一緒にいて、魔法とか関係ない話をして笑い合っていた。

 その甲斐あってか今ではレンも元気になったと思う。



 ボーンズと別れ、私達は宿に到着した。


「エリンさん。」


 宿に着くなり、レンがベッドに座りながら言った。私は向かいに転がる。


「なあに?」

「ありがとうございます。」


 私はむくっと身体を起こす。レンは少し恥ずかしそうに笑った。


「ずっと一緒にいてくれて……嬉しかった。」


 また目がちょっと潤んでいる。可愛いな……。


「あ、ごめんなさい。」


 レンは目元を拭う。


「無理しなくていいからね。私が一緒にいたいだけだし。」

「ううん。大丈夫です。そろそろベルトリアに行きましょう。」


 そっか。そうだね。

 この時間が愛おしくもあるけど、それはまだ先かな。


「うん。じゃあ、明日行こうか。サリーさんだけ連れてボーンズは置いていこう。」


 冗談ぽく言って、また二人で笑い合った。


「どんな国か分からないけど、レンの行きたかった場所に行こう。メルトだったっけ?」


 戦争で焼け出された人々の集う難民キャンプのような町。住人はロクな治療も受けれず、善意のヒーラー団体が支えているという。

 レンはそこに行ってヒーラーとして活動したいと言っていた。


「いいんですか?」

「いいよ。最初から行くつもりだったじゃん。」


 私の記憶のことを優先してくれているのが分かった。でも、正直何をしていいのか分からない。レンと一緒にいる以上に望むこともない。

 

 レンは可愛らしく笑ってくれた。


 その後、二人で荷造りをしたり、のんびり話したりして布団に入った。

 電気を消して暗くなると、少しずつ眠りに入っていく。


「エリンさん。」


 レンが目を閉じながら言った。ちょっと眠たそうな声だ。


「うん?どうしたの?」

「エリンさんの声、とっても安心します。」

「ははは。そうかなあ。」

「はい。……大好きです。」


 一瞬で体温が跳ね上がった。

 レンの声が優しくて、心から信頼してくれてるのが分かったから。


「エリンさんのお陰で良く眠れそうです。」


 嬉しいなあ。ちょっとウルっとする。

 ……私は胸がドキドキしてすぐに寝れそうにないけど。


 何か最近ちょっと変だなあ。

 レンの言葉や仕草に一喜一憂して、レンが危険に晒されたら頭がおかしくなるくらい血が上る。


 過保護かなあ。

 よく分からないまま、私も目を瞑った。


-------------------------------------------------------------


 翌日、寝不足な私達は駅でボーンズ(来たか……)と合流し、ベルトリア行きの汽車に乗った。


 これからほぼ一日掛けてベルトリアに行く。

 

 導かれるように訪れる国で何が見つかるのか、私にはまだ分からなかった。


 汽車は長い牧草地帯を横断していった。

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