第8話 金曜日大会に優勝したら
それからというものの、アキラくんは毎週のようにあのカードショップの金曜日大会に顔を出すようになっていた。いまでは他の常連客たちともすっかりなじみ、可愛がられている。
カードゲームの腕も着実に上達しているようで、戦績は少しずつ良くなってきている──が、いまだに、良くて2勝1敗どまりで、まだ3戦全勝は果たしていなかった。
「オレ、この店の金曜日大会で優勝するのが目標なんスよ」
と、彼はフリープレイの折に語っていたことがある。
……そう、フリープレイ。アキラくんが初めて大会にやってきたあの日から今に至るまで、大会終わりのフリープレイは、わたしと彼の二人の恒例となっていた。どちらから言い出したというわけでもないが、なんとなく、そうなっていた。その日の大会の振り返りや、あるいはとりとめのない雑談をしながら対戦を行うのだ。
「アキラくん、飲み込みが早いから、そのうちに優勝できそうなもんだけどね」
「いやー、手慣れているオジさんはそう簡単にいいますけどね。実際、調子よく2連勝しても、そのあとの3回戦目は、俺からするとかなり難しいっスよ。対戦相手も2連勝していて調子がいいわけで、その上、オレよりも確実に経験と実力が格上なんスから」
「そうかもしれないけど、『マ・ザ』は運も絡むゲームだからね。2回戦突破を続けていれば、そのうちに案外あっさりと優勝できるさ」
「えー、運ですか」
「最終的には運が絡むけど、高いアベレージを出して、安定して2回戦突破を続ければ、必然的に優勝できるってことだよ。まあ、応援してるよ」
「高いアベレージって言われると、なんか余計に難しそうな……。あっ、そうだ、オジさん」
「なに?」
アキラくんは、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「もしもオレが金曜日大会に優勝したら、その時はどっか飯に連れてってくださいよ。お祝いとして」
「飯かあ」
そういえば、アキラくんとは毎週のようにこのカードショップで顔を合わせているが、いつも時間いっぱいまでフリープレイをしていることもあり、他の場所に連れ立って行ったことがない。
他の顔なじみたちとはこれまで何度も飯に行ったことがあるのだから、アキラくんと行くのも問題は無かろう。
「──うん。それもいいね」
「やった! よーし、頑張るぞ」




