第7話 夜の繁華街のきらめきを背景にして
ざっくりと対戦し、サイドボードプランを見てやり、大会で当たった他のデッキについてしゃべりあったり……と、フリープレイをしていたところ、あっという間に時間は過ぎていて、いつの間にか閉店時間になっていた。
カードを触っていると、時間の流れが恐ろしく早いものである。
「あー、ごめん。学生さんをこんな時間まで」
「全然問題ないっスよ。楽しかったし、タメになったんで。……あの、オジさんは、来週もこの金曜日大会にでるんスか?」
「他に特に予定がないときは参加しているから、たぶん出るかなあ。たぶん仕事も忙しくはならないだろうし」
「じゃあ、また会えますね」と、アキラくんは嬉しそうに目を細めてみせた。
二人連れだってビルを出る。すっかり暗くなった夜空の下に、飲み屋なんかの灯がチカチカきらめいていた。
さすがにちょっと遊びすぎたか……と思っていると、アキラくんが振り返って、こちらに向き直った。──夜の繁華街のきらめきを背景にして、野球帽と黒マスクのガラが悪い若者は、それでいながらも幼さを感じさせる無邪気な笑顔だった。
「今日は本当にいろいろとありがとうございました。思い切って、大会参加してみてよかったっス。それじゃあ、また来週!」
帰宅後。とりあえず今日の大会の戦績を、自慢げにSNSに投稿した。シャワーをさっさと浴びて出て、就寝の準備をする。
振り返ってみると、今日はなんだか奇妙な一日だった。大会の第1回戦で不良青年と当たってげんなりしたかと思えば、そいつが存外にかわいげのある若者で、まさか大会終了後にフリープレイまでして、挙句の果てには『また来週!』と挨拶を交わするなんて。
……学生さんと相対するというのも随分久しぶりだった。職場の新人たちでさえも年の差を感じずにはいられないのに、現役の学生さんとなれば、なおのことだ。たしかアキラくんはメディア系の専門学校に通っているとか言っていたが、たしかに言葉遣いや態度の端々から『若さ』がにじみ出ていた。そしてその『若さ』というのは、良くも悪くも、わたしのような人間を縮み上がらせる──強烈な日射のようなものだ。
SNSの通知があるのに気がついた。知り合いからの反応に混じり、なにやら見知らぬアカウントからのフォローがあったようだ。一体なんだろうと思ったが──しかし、すぐに気づいた。そのアカウントは、『アンドウ・アキラ』のもじりのようなユーザーネームだったのだ。
フットワークが軽いなあ、と思いながら、わたしはそのアカウントをフォローし返した。




