第5話 対戦結果の報告を終えて
「対戦ありがとうございました」と、対面の若者はさわやかに笑った──ずっとつけたままの野球帽と黒マスクで目元しかうかがえないが、猫のように大きな目のおかげで、その表情の豊かさが見て取れた。
周りを見れば、まだ対戦が終わっていない卓があるようだった。全ての卓での対戦が終わるまでは、2回戦は始まらない。
大会ジャッジへの対戦結果の報告を終えてもまだ少し時間があるようで、さてどうしたものかと思っていると、対面の若者が身を乗り出して話しかけてきた。
「あの、オジさんってやっぱり、『マ・ザ』歴長いんスか?」
「10年くらいですかね」
「やっぱり! 強いと思ったんスよ。使ってるデッキもオリジナルデッキですよね」
「うん。デッキを考えるのが好きなんでね」
「うわー、すごいなあ。オレもオリジナルのデッキ作ってみようと思ったんですけど、なんか全然勝てなくって。だからネット上にあるデッキをそのまま使って、アプリ版ではそこそこ勝ててたんスけど……やっぱり、実物のカードで『マ・ザ』をやっている人って強いんスねー」
「いやー、きょうはたまたまドローが強くてね」
こうまっすぐに持ち上げられると面映ゆく、わたしは話題を相手に逸らす。
「ええっと、アンドウくんは──」
「あ、アキラでいいっすよ。それに、タメ語でも」
「……アキラくんはさ、なんのきっかけで『マ・ザ』を始めたの? 若い人が『マ・ザ』をやるのって結構珍しいよね。カードゲームを始めるにしても、普通は国産の流行っているタイトルをやりそうなもんだけど」
「推しのユーチューバーがやってたんで!」
「あー……。もしかして、あれか。わたしもたまに見るよ」
「そう、それ! それでためしにアプリ版をやってみたらハマっちゃって。どうせなら実物のカードも揃えてみようかなって──」
存外にアキラくんとの話は弾んだ。
他の卓の対戦もいつの間にか終わっていたようだった。やがて、店内モニタに2回戦の組み合わせが表示される。
「じゃあ、オジさん。スンマセンけど、このサイコロとかお借りしていきます!」
そう言って、アキラくんは2回戦の卓へと向かっていった。




