第3話 ミッドレンジとはすなわち中速デッキのことである
試合が始まる前、無作為化のためにデッキをシャッフルしていく──こちらの手元を見て、対面の若者は目を丸くした。
「うわー、やっぱり、カードゲームをやっている人ってシャッフルうまいんスすね」
「まあ、ずっとこればっかやっていますからね」
「オレの方は手際悪くて、なんかすみません」
「ちゃんと混ざるのなら、全然問題ありませんよ」
確かにその若者のシャッフルは、本人が言う通りなんだかぎこちなかった。手つきを見ればわかるが、初心者というのは本当なのだろう。
さて。互いのデッキのカットや、先攻後攻の決定も終わり(大会においてはこれらにもお作法みたいなものがあり、これについても、ついでにこの若者に伝授してやった)、ついに第一試合が始まった。
対面の若者──もとい、アンドウ・アキラくんが使うデッキは、トップティアの一角であるミッドレンジデッキだった。──ミッドレンジとはすなわち中速デッキのことである。速攻により相手が動き出す前に勝負を終わらせる高速デッキや、遅滞防御によって相手の息切れを狙う低速デッキとは異なり、中速のミッドレンジデッキは、対戦相手と真っ向勝負をする形になる。必然的に採用されるカードはカードパワーが高いものになりやすく、結果的に、値段も高くなる傾向がある。
初心者ではあるが、初期投資をしてきちんと環境で戦えるデッキを用意したということなのだろう。なかなか気合が入っているじゃないか。
……いまだと、インターネットを見れば強いデッキのレシピを入手できるからなあ。わたしが『マ・ザ』をはじめたときなんかはまだそういう情報化は中途半端だった。初心者からしたらどんなデッキを作ったらいいかもよくわからず、なんとかひねり出したオリジナルデッキが、既存のデッキにコテンパンにやられる、なんてのがよくあったものだが……
さて。
試合の中で、アンドウくんは次々と盤面へとパワーカードを投下していく。それぞれのターンにそれぞれベストなカードを使えば、それだけで優位に立てるという戦術だ。
──しかし、この戦術も完璧ではない。この『マ・ザ』というカードゲームは対戦ゲームなのだから。
強いカードを採用した強いデッキが存在するというのなら──その強いデッキの存在を予期して、それに対して相性が良いデッキを使えばいい、というのが論理的帰結というものである。
わたしはとあるユニットを盤面に送りだした。
「これをプレイして、ターンエンドまで」
「すみません、カードの能力を読んでもいいですか」とアンドウくん。
「どうぞ」
「えーっと、ダメージを受けたら、その分のダメージを反射する能力……なるほど、なるほど?」と、若者は不思議そうに首をひねった。




