第20話 最後の方はもう
「いやー、負けちゃいましたね」とアキラくんは笑いながら言った。「最後の方はもう、ガス欠でした」
「普段は完全3回戦でやっているから、全然違うよね。スイスラウンド5回戦と決勝ラウンドもあると、体力勝負だよ本当に」
「あーあ、オジさんと東京に行きたかったんだけどなー」
「アキラくんは、トップ8に残っただけでも大健闘だよ。まだ『マ・ザ』を初めて何カ月もたってないのに。やっぱり、センスあるよ」
「えへへ、そうっスかね」
二人ともどちらからということもなく、プレイスペースの椅子に座りこんでいた。すぐそこでは、勝ち残ったプレイヤーによる決勝ラウンドが引き続き行われている。
多少の見物人を残して、すでに他の予選参加者たちも退散しているようだった。
時間は、夜の7時。
熱戦の余波で頭の中に熱はこもっているように感じるが、同時に、全身には疲労がズシリとのしかかっていた。
トップ8の商品として受け取ったパックを剥いたりしながら、座り込んでだらだらしていたが、しかし、さすがに良い時間だろう。
「アキラくん。わたしはそろそろ帰るよ」
「そうっスね。オレもそうします」
プレイスペースから出ようとすると、途中、エザキさんに声をかけられた。
「あ、オジくん。帰るの」
「はい。もう疲れちゃって」
「あっちの店ばっかりじゃなくて、たまにはこっちにも来てよね」
「まあ、努力します。それじゃあ失礼します」
「うん、お疲れ様」
わたしはそそくさとその場を後にした──
突然、後ろからアキラくんに脇腹を突っつかれる。
「痛い! なにすんだ」
振り向いた地らを、アキラくんは不信の目で覗き込む。
「やっぱり、オジさんはあの人と親密っぽいっすよね」
「エザキさんとは、ただの先輩後輩だって言っただろ」
「『素人女とは目を合わせたこともない』って言ってたくせに」
……なぜだかわからないが、アキラくんは、わたしとエザキさんの関係を妙に疑わしく思い、そして気に入らないらしい。今後は留意しよう。
ビルを出ると、外はすっかり夜の世界となっていた。
ちょうど腹も減っていたので、何の気なしにアキラくんに声をかける。
「そこの中華屋にでも、入っていくかい?」
「えっ、あー……」と、アキラくんは珍しく言いよどむ。「あの、本当はご一緒したいんスけどね。でも、オジさんと飯に行くのは、なんていうか、願掛けにしているっていうか」
「ああ、優勝したときのやつか」
「そうっス。だから今日はすいません。でも、オレそのうち優勝するつもりなんで、そんときに連れてってください! ……今、飯に行かなかった分とあわせて、2倍おごってくださいね」




