第19話 一緒に東京旅行!
何か問題が起こったらすぐにジャッジを呼ぼうと思い、隣の卓を気にしていたが、しかし、存外に勝負はつつがなく進行し、アキラくんは勝利した。
あの悪質プレイヤーが今回はおとなしかったんだな……と思ったが、そういえばアキラくんは見た目だけで言えばだいぶガラが悪い人間なので、もしかしたらそれが功を奏したのかもしれない。
さて。そうこうしているうちにスイスラウンドは終わり、決勝ラウンド進出の8名が選出された。そしてその中に、わたしとアキラくんはいた。
決勝ラウンドが始まるまでのちょっとした休憩時間。わたしはさすがに疲労を感じ、椅子に座りこんでいた。競技性のあるカードゲームというのは、思考も体力も消耗するものなのだ。
駆け寄ってきたアキラくんは、手振り身振り、興奮気味に言った。
「あと2回勝てば次は地域予選っスよ! そうなったら、どうします?」
「おいおい、気が早いなあ」
「いやいや、いけますって! 決勝ラウンドの組み合わせ的に、どっちも決勝戦まで進めるんスから。そうしたら、いっしょに東京っスよ」
プロツアー地域予選は東京で執り行われる予定となっている。
ちょっと舞い上がりすぎじゃないか……とも思ったが、しかし水を差すのも悪いので、適当に話を合わせた。
「そうだね。もしそうなったら、一緒に東京旅行だな」
「一緒に東京旅行!」とアキラくんは目を輝かせた。「行きましょう行きましょう! 東京って、何が美味しいんスかね? 寿司? 洋食?」
「……」
若者っていうのはいいなあ、とわたしは思わずにはいられなかった。未来に希望があふれていて、楽観的で、素直で……
わたしなんかは、そもそもあと2回も勝てるものかと思い、仮に勝てたとしても、仕事の都合や旅費なんかは大丈夫かと悩んでしまうというのに。
アキラくんが眩しくて仕方がない。この若者は、未来というのは前途あるものだと信じて疑っていないのだ。そして実際、本人にとってはそうなのかもしれない。
決勝ラウンドが始まる前に、決勝進出者たちは店員のエザキさんから呼び集められた。写真撮影をするのだという。
アキラくんはわたしのすぐ隣に陣取り、ぴったりと肩を寄せた──オーバーサイズの服の下のその肩は、まるで子供のように細く感じられた。
そして、決勝ラウンド。
──結果的には、わたしもアキラくんも、決勝ラウンドの1回戦目でそれぞれ敗退となった。




