第17話 素人女とは話したこともない
大会受付カウンターに並ぶ行列はどんどん進んでいき、ついに自分の番になった。
受付業務を行っていたのは、ひっつめ頭に細縁眼鏡の女性店員──彼女はこちらの顔を見上て、目をぱちくりさせた。
「あれっ、オジくん。この店に来るの珍しいね」
「……どうも、エザキさん。お久しぶりです」
細縁眼鏡の奥で、彼女の目がにやりと細まった。
「オジくん、最近あっちの店で若い男に入れ込んでいるって、噂できいたけど」
「え、噂になってんですかそれ」
「あはは、みんな冗談半分だから大丈夫だって。今日はショップ予選参加ね。──はい、登録オーケー。じゃあ頑張って」
「……」
冗談半分、ということは半分は本気で、まことしやかに語られているってことじゃないんですか? そう突っ込みたかったが、登録受付の行列は後ろに続いていたので、わたしはおとなしくその場を離れた。
フリースペースの一角に腰を下ろすと、やがて、わたしの直後に参加登録をしたアキラくんもやってくる。アキラくんは、何やら大会受付カウンターの方を気にしながら言った。
「オジさん、あの女性店員さんと、なにやら親し気でしたね」
「んー、あの人はエザキさん。大学時代のサークルの一つ上の先輩だよ。ジャッジの資格も持っていたはずから、何か困ったことがあったらあの人に聞けばいいよ」
「化粧っけはないけど、綺麗な人でしたね。テキパキしていて、作業も早かったし」
「昔からさっぱりしてる人だったな」
「ふーん……」
アキラくんは、こちらの顔をじっと見た。その目には、訝しむような、責めるような、そんな色の光が込められている。
「……なんだいアキラくん、その目は」
「『素人女とは話したこともない』って、オジさん言ってたのに」
「わたし、そんなこと言ったかなあ!」
「そういうようなことは言ってたでしょ」
「そういうようなこと言ったかなあ! ……別に、やましいことは何もないって。学生時代の、同じサークルの先輩と後輩ってだけ」
「その割には、妙に挙動不審ですよね、オジさん」
「……大人にはいろいろとあんの」
「ふーん」
アキラくんの視線は冷たい。
──いやいや。そもそも、どうしてわたしがアキラくんにこう責められなくてはいけないんだ? これではあたかも、浮気を疑われる男みたいじゃないか。
仮にわたしが女性と何らかの関係があったとしても、アキラくんには何も関係がないはずだろうに……




