第16話 休みの日までスーツ着たくはない
次の週の土曜日、午後。
そのショップ予選が開かれるカードショップは、普段行きつけのカードショップからちょっと歩いたところ、繁華街のビルに入っている。大手チェーンの加盟店でもあり、『マ・ザ』以外のタイトルも扱っている大型店舗だ。
その目的地に向かって歩いているが……しかし、土曜日の午後というのは人通りが多い。普段は出不精なので、人の流れにおぼれてしまいそうだ。
ようやくそのビルの前までたどり着くと、すでにアキラくんが待ち構えていた。
「あ! スーツじゃないんですね、オジさん」とアキラくんは、何故だか嬉しそうに言った。
「そりゃ、休みの日までスーツ着たくはないよ」と、わたしは苦笑する。
エレベーター待ちの間、アキラくんはふと口を開いた。
「そういえば昨日の麻雀、どうでした?」
「まあ、ぼちぼちかな。損はしないくらい」
「麻雀って面白いんスか?」
「運と実力のバランスが半々で、それが楽しい、って感じかな」
「ふーん。……今度、麻雀教えてくださいよ」
「それはやめておくよ」
「えっ! なんで? いいじゃないスか、ケチだなあ」
「麻雀って結局、ギャンブルだしね。アキラくんはみたいな学生さんにそれを教えて、変なことになったらいやだからさ」
「……そういう考えなら、まあ、許します」
「アキラくんのほうは、昨日の金曜日大会はどうだったの」
「あー、昨日は大会出ませんでした」
「そうなの?」
「オジさんもいないし、良いかなって」
「なんだよ、こっちのことは気にしないでいいのに」
そうこう言っていると、エレベーターがやってきた。
このショップに入店するのは、久しぶりである。広く明るい空間と、立ち並ぶショーケース、ストレージコーナー、そして奥に広がる広大なプレイスペース。国産タイトルも一通り扱っているということもあり、全体的に客層も若く、賑やかだ。普段は、こじんまりとした、おっさんばかりの『マ・ザ』専門店でばかり遊んでいるせいで、余計に差異を感じるのだろう。
ちょうど入店したタイミングで、店内にアナウンスが流れた。
「本日の『マ・ザ』ショップ予選に参加のお客様は、大会受付カウンターで参加申請をお願いします。繰り返します、本日の『マ・ザ』ショップ予選に──」
はきはきとした女性の声だった。それは、とても聞き覚えのある声。
……今日はちょうど、あの人のシフトの日だったらしい。
「オジさん、どうしたんスか? 大会受付カウンターに行きましょうよ」
「……うん、そうだね」




