第11話 いかにも若者って感じ
その後のアキラくんはプレイングに精彩を欠き、1回戦はこちらの勝ちとなった。
試合終了後も、アキラくんは席を立とうとはしなかった。あえて壁際の方を見ないようにしているらしく、困ったような顔をこちらに向けてきた。
「イクミのやつ、まだあそこにいますか? ……あ、イクミっていうのはさっきの女なんスけど」
「うん、まだいるね。なんか不機嫌そうにスマホをいじりながら、ちょくちょく君のほうを伺ってるよ」
「はあ~……」と、アキラくんは項垂れた。「あいつ、本当に迷惑ですよね。大会に参加している他の皆さんにも、申し訳ない……でも、オレもちょっと強く言いすぎましたかね……」
普段元気で明るいアキラくんが弱っているのを見るのは、なんだか新鮮だった。──新鮮でいえば、さっきのイクミさんと言い争っていたときの彼のあからさまに不機嫌な様子もそうだ。
「アキラくんって、普段、同級生たちの前ではああいう感じなの?」
こちらの何の気のない質問に、アキラくんはバツが悪そうな顔をした。
「いや、普段からピリピリしているわけではないんスけど……。でも、ここでカードしばいているときと比べたら、そうかもしんないっスね」ふー、と一つため息。「……なんでかこう、同級生の女友達によく突っかかられるんスよね。気に入らないことがあるのなら、放っておいてくれりゃあいいのに」
「……」
それは君が女の子に気を持たせて、それでいろいろこじれているのではないの? ──と口には出さず心の中で言った。見てきたわけではないので推測に過ぎないが、しかし、もっともらしい推測にも思えた。女の子の方がアキラくんのことをどうでもいいと思っていなければ、そもそも突っかかるようなことをしないわけだから。
「まあ、若い学生さんたちなら、感情の衝突もあるかもね」
「そういうもんスかね」
「そういうもんだよ、たぶん。社会人なんかだと、頭に来たときに、それでも態度には出さないで、穏当に何事もなかったかのように話を進めるのってよくあるからさ。腹の中では相手への侮蔑を抱えているのに、表向きには平然としてさ……そういう文字通りビジネスライクな日常になれきっているとさ、さっきのアキラくんとイクミさんのやりとりは、いかにも若者って感じがする。良くも悪くもね」
「……そういわれると、恥ずいっスね」
その後、大会は進んでいく。アキラくんは完全に調子が狂ったようで、2回戦、3回戦と全て敗戦となったようだった。苦々しい表情が、遠くの席からも良く見えた。
反対に、わたしは妙に調子が良かった、あれよあれよと3連勝し、この日の優勝者とあいなった。どうも、初戦でアキラくんを倒すと、弾みがつくようだ。
さて。
優勝者への表彰と賞品の授与が終わり、この日の大会は終了となった──
ずっと壁際にいたイクミさんが椅子から立ち上がり、アキラくんのいる方へとツカツカと歩きだすのが視界に入った。そして同時に、アキラくんがいつものようにわたしの方へと駆け寄ってくるのも見えた。
──結果的にわたしは、アキラくんとイクミさんの両方と対峙することとなった。




